乃木坂RT2013 第11章小児・良性 疾患の放射線治療 国際医療福祉大学病院 放射線治療・核医学センター 北原 規 1.小児腫瘍 1)頻度 2)横紋筋肉腫 3)ウイルムス腫瘍 4)神経芽細胞腫 5)小児白血病 1.小児腫瘍 小児腫瘍:頻度 急性白血病 24% ----ALL 18% AML 4% 中枢神経系 18%-----glial tumors 12% medulloblastoma 3% 悪性リンパ腫 15% 神経芽細胞腫 5% Wilms 腫瘍 4% 網膜芽細胞腫 4% 軟部肉腫 7%-----rhabdomyosarcoma 4% 骨肉腫 6% Cancer 78:532, 1996 1.小児腫瘍 横紋筋肉腫 Rhabdomyosarcoma 局所的に浸潤し、筋膜に沿って進展する腫瘍 組織型 頻度 5年生存率 年齢 部位 Favorable embryonal 60-70% 70-80% 3-12 GU,HN,orbit botryoid 5-10% 85-95% 0-3 粘膜 Unfavorable alveolar 20-30% 50-60% 6-21 四肢,体幹 undiff. Sa. <5% 1.小児腫瘍 横紋筋肉腫:原発部位と予後 • 予後不良の原発部位がある 1.小児腫瘍 International Rhabdomyosarcoma study clinical grouping 分類 1.小児腫瘍 International RMS study I-IV結果 1.小児腫瘍 International RMS study V 治療 1.小児腫瘍 International RMS study V 放射線治療 1.小児腫瘍 放射線治療の体積 放射線治療のタイミング Low risk Intermediate Metastatic disease week 3 week 12 week 15 照射体積概念図 1.小児腫瘍 Parameningeal RMS の計画 三次元照射と isodose curve 1.小児腫瘍 眼窩のRMSに対する照射 1.小児腫瘍 骨盤RMSに対する三次元照射 1.小児腫瘍 放射線治療の有害事象 *治療部位により異なる *成長障害,臓器機能障害,二次発癌 *骨軟部腫瘍の治療後の二次発癌 →2~5% (照射後10-15年) *年齢,総線量,化療併用,遺伝子 異常などにより異なる 1.小児腫瘍 ウイルムス 腫瘍 *Nephroblastomaともいい,腎臓の腫瘍 *1814年に最初に報告 →1899 Max Wilms 腫瘍の性状を確認 *20世紀初頭90%死亡率⇒90%生存率へ *北米 National Wilms’ Tumor Study Group 欧州 International Society of Pediatric Oncology Group *3-4歳が発症のピーク,日本では約50人/年 1.小児腫瘍 ウイルムス腫瘍の病理 Favorable histology Clear cell caricinom a Diffuse anaplasia Rhabdoid tumor 1.小児腫瘍 ウイルムス腫瘍:診断時に転移がない場 合の再発パターン 1.小児腫瘍 ウイルムス腫瘍:stagingと治療 病期年齢・予後因子 治療法 stage I/予後良好群 24ヵ月以下、腫瘍550g以下 手術,RTなし 化療なし 24ヵ月以上、腫瘍550g以上 stage I/未分化型(focal of diffuse) stage II/予後良好群 手術,RTなし EE-4A:AMD+VCR(18 weeks) stage III/予後良好群 stage II~III/未分化型(focal) stage IV/予後良好群 stage IV/未分化型(focal) 手術 10.8Gy DD-4A:AMD+VCR+ADR(24 weeks) 1.小児腫瘍 ウイルムス腫瘍:stagingと治療 stage I~III/腎臓明細胞肉腫 stage II~IV/未分化型(diffuse) ⇒手術 10.8Gy I:AMD+VCR+CPM+VP-16(24 weeks) stage I~IV/横紋筋肉腫様腫瘍 ⇒手術 10.8Gy RTK:CBDCA+VP-16+CPM(24 weeks) 1.小児腫瘍 ウイルムス腫瘍:放射線治療 Childrens’ Oncology Groupのプロトコール 1.小児腫瘍 ウイルムス腫瘍:治療成績 症例 10年無再発生存 10年生存 1582 91.4% 96.6% 1006 85.5 93.4 1038 84.2 89.5 344 65.1 77.9 170 67.1 77.1 Stage II-III anaplasia 128 43.0 49.2 IV anaplasia 55 18.2 18.2 Rhabdoid tumor 88 27.3 28.4 Stage/組織 Stage I FH II FH III FH IV FH Clear cell sa. 1.小児腫瘍 晩期有害事象 *配慮を怠ると ⇒側弯症や腎・肝・肺の有害反応 *ウイルムス腫瘍の治療15年後には 1.6%の二次がん発生の累積危険率 *NWTSの治療全体では期待値に対して8.4倍 (標準化発生率比率)の二次がんの発生 *初期治療としての放射線治療が15Gy以下 ならば期待値に対して5.5倍の二次がんの発生 1.小児腫瘍 神経芽細胞腫 Neuroblastoma *小児固形腫瘍の中で発生頻度高い (年間150-200例) *6か月乳児検診:尿中カテコールアミン 代謝産物:バニリルマンデル酸 (VMA), ホモバニリン酸 (HVA) →1歳以下のマススクリーニング例は ほとんど治癒,進行症例は悪い 1.小児腫瘍 神経芽腫国際分類(INSS) Stage 1 完全巨視的切除された限局した腫瘍、顕微鏡的腫瘍残存は問わない。 同側リンパ節に顕微鏡的転移を認めない(原発巣に所属し摘出されたリ ンパ節は転移を認めても良い)。 Stage 2A 不完全巨視的切除された限局した腫瘍;同側の癒着していないリンパ節 に顕微鏡的転移を認めない。 Stage 2B 完全または不完全巨視的切除された限局した腫瘍、同側の癒着していな いリンパ節に転移あり。腫大している対側のリンパ節は顕微鏡的転移が あってはならない。 Stage 3 摘出不能な正中線を超える一側性の腫瘍、局所リンパ節転移はありまた はなし、または対側の局所リンパ節転移がある片側性腫瘍または(摘出 不能な)浸潤あるいはリンパ節転移によって両側に進展する正中部腫瘍。 1.小児腫瘍 神経芽腫国際分類(INSS):続 Stage 4 遠隔リンパ節、骨、骨髄、肝、皮膚または/あるいは他臓 器転移(4S と確定されたものは除外する)を有する腫瘍で 原発部位は問わない。 Stage 4S 原発は(stage 1、2A あるいは 2B と確定された)限局性腫 瘍、転移は皮膚、肝または/あるいは骨髄に限局している (1歳以下の乳児に限る)。 stage 1 と、stage 2 でリンパ節転移なく全摘されたもの には 術後放射線治療は不要 1.小児腫瘍 神経芽腫:リスクグループ N-myc癌遺伝子増幅の有無は重要 1.小児腫瘍 神経芽細胞腫治療方針 術前療法 Stage 1 手術 完全巨視的摘出 2 A 2 B (-) 化学療法無 あるいは化学療 法 完全巨視的摘出 化学療法 不完全巨視的摘出 3 化学療法 手術 4 化学療法(+RT**) 手術 4S (化学療法あるいはRT***) 術後療法 手術 放射線療法 化学療法 放射線療法* 化学療法 ±ABMT 放射線療法* 化学療法 ±ABMT 化学療法無 あるいは化学療 法 1.小児腫瘍 放射線治療 *1日線量1.8~2Gyで週5日間照射を原則 *術後放射線治療 1歳以下:極力放射線治療を避けたいが、 20Gy/2.5~3週間は必要 2歳まで:24Gy/3週間 2歳以上:30Gy/3~4週間の外照射 *新生児期に腹部膨満で見つかる stage 4S 肝転移が巨大で肝破裂あるいは呼吸不全で致命的に なることがある →緊急放射線治療:1日1回1Gyを照射し、総線量5Gy 1.小児腫瘍 晩期有害事象 知能低下:5歳前の全脳照射 (放射線治療しない例も低下) 内分泌低下:成長ホルモン 成長障害 二次発癌:3~12%(5-24年) 1.小児腫瘍 治療成績 • 日本小児外科学会悪性腫瘍委員会 • 1986~1990年登録症例の予後追跡 • →累積5年生存率74.7% • マススクリーニング症例97.4% • マススクリーニング症例以外60.9% 有害事象 骨発育障害:6~10Gyで出現,20Gyで明らかとなり 40Gyで障害が飽和状態 卵母細胞の多い女児は成人に比べて不妊線量が高いが 手術で卵巣位置を照射野外に移動させた方が良い 小児白血病 • 急性リンパ球性白血病:ALL • 急性骨髄性白血病 : AML 1.小児腫瘍 小児白血病:ALLの予後因子 1.小児腫瘍 ALLの治療アルゴリズム RT適応:高リスクでCNS予防の全脳照射,CNS浸潤 睾丸再発時に睾丸へ,BMT時のTBI 1.小児腫瘍 ALLの4年生存率 • J Clin Oncol 14:20, 1996 AMLの分類:French-American-British (FAB) system RTの適応:骨髄移植時のTBI 1・良性脳腫瘍 • 脳腫瘍は頭蓋骨内という閉鎖空間に発生する為、 組織学的に良性であっても増殖に伴って周囲の 健常組織を破壊する。又外科的に摘出困難な場 合も多い。代表例が下垂体線種でるが、術後照 射が行われる事が多い。 • 近年ガンマ・ナイフや定位放射線治療により深部 発生の摘出困難な腫瘍に対しても根治的放射線 治療が行われている。適応は非腫瘍性疾患であ る動静脈奇形にも及んでいる。 • 問題点は、即効性が無いことと晩期反応の発生 に注意が必要なことである。 下垂体腫瘍 年齢 10歳以下 →ACTH releasing adenoma 20~40歳 →prolactin (PRL) 50~90歳 →nonfunctioning adenoma 性 男 →nonfuctioning/GH 女 →PRL/ACTH Hormone PRL 28%, GH 23%, ACTH 8%, gonadotropin 6%, TSH 1%, nonfunctioning 33% sellar and parasellar region Pituitary adenoma with extrasellar extensions 下垂体腫瘍の治療 1)medical therapy: dopamine agonist bromocriptine 2) surgery: 経蝶形骨洞 鼻腔や篩骨洞経由など 3)RT:術後に多い 3門や回転照射 50.4Gy/28回 SRSやSRTも可能 (視神経8Gy越えないように) 下垂体腺腫への3門照射 聴神経鞘腫 聴神経鞘腫の放射線治療 定位放射線治療 ガンマナイフの原理 良性疾患の放射線治療 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 はじめに 良性脳腫瘍・AVM ケロイド 各種良性腫瘍(血管腫等) 翼状片 甲状腺眼症 加齢性黄斑変性症 好酸球肉芽腫症 リンパ腫類似疾患 三叉神経痛 その他 良性疾患の放射線治療(始めに) 1995年のX線、及びその後の放射線同位元素の発見 の後、悪性腫瘍と同等に各種良性疾患に放射線治療が 行われて来た。その後代替治療の発達や、晩期皮膚障 害、発癌等の為殆どの良性疾患が放射線治療の適応外 となった。 その中である種の良性腫瘍、非腫瘍性増殖性疾患、難 治性炎症性疾患等が適応疾患として残り、最近では新し い放射線治療技術の開発や超高齢化社会の進行に伴い 新たな適応疾患が生まれている。 ケロイドとは? ケロイドは、傷が治る過程において原因不明の炎症が持続す ることにより、線維形成が収束しないことによる皮膚線維増殖 性疾患と考えられている。 手術後の縫合創などは、一時的に赤みが増して硬くなることも ある。通常は術後1-2ヶ月を過ぎた辺りから、赤みが減り軟らか くなってくるが、時間が経過しても赤みが引かず、盛り上がって 来てチクチクする痒み・痛みが出る事がある。この状態を「肥厚 性瘢痕」という。( ケロイドという診断で、受診する患者さんの多 くが、実は肥厚性瘢痕である。)更に元々の傷の範囲を越えて、 周りの皮膚に伸展していくものを「ケロイド」と呼ぶ。 ケロイドは、手術の痕(ただ、実はケロイドと肥厚性瘢痕を区別 する明確な診断基準は無い。) ケロイドに関わる因子 体質 一般的に傷がきれいに治るかどうかは体質が大きく関係する。どんなにひどい傷 でもきれいに治る人がいる一方、虫刺されの痕やニキビなどからケロイドが発症 する人もいる。 ケロイドができやすい体質(いわゆるケロイド体質)というものが 明らかに存在する。白人よりも有色人種の方がケロイド発症率の高い事が知られ ています。 2010年、ゲノムワイド関連解析という大規模な遺伝子解析の結果、ケロイド患者 に有意に高いSNPs変異が発見されたが、現時点では臨床的な意義は明らかに なっていない。 部位 胸、肩、耳たぶ(ピアス後)、下腹有毛部(帝王切開後)などがケロイドの好発部位 として知られている。逆に顔・頭・手足・下腿などでは、ケロイドの発症頻度は低い とされている。 皮膚の緊張 皮膚の緊張が強い胸部や肩がケロイドの好発部位である事、ケロイドが皮膚張 力の方向に伸展していく事等から、ケロイドの発症には皮膚の緊張が影響してい ると考えられる。テーピングやシリコンシートといった治療は、皮膚の張力を弱め ることを主な目的としている。 ここに挙げた因子はどれも重要であるが、それだ けでは「ケロイド体質」を説明できない。まだ未知の因子があると考えられる。 ケロイドの放射線治療 • ケロイドは皮膚の損傷に反応してコラーゲン代謝が 異常亢進し、線状組織が過剰産生される良性疾患 である。ケロイドは真性ケロイドと肥厚性瘢痕に大別 される。 • 誘因としては虫刺され、にきび、予防接種、鋭的外 傷、火傷、手術創等があり、白人よりも黄色人種、 黒人に発生頻度が高い。 • 手術後72時間以内の照射開始が望ましい。 • 軟X線(50~250kVp)又は6Mev以下の • 電子線を用い、12~20Gyを照射する。 ケロイド(肥厚性瘢痕)の症例 ケロイドの放射線治療(症例) ケロイドの放射線治療 1.形成外科にてケロイドを外科的に切除。 2.可及的速やかに放射線治療を開始。 通常電子線を使用して、4.0Gy X5又は 5.0Gy X4 が一般的。 必要であればボーラスを使用する。 3.特に小児の場合、2次発がんに注意。 <Kasabach-Merritt症候群> 概 歴 念 : 巨大血管腫に血小板減少症を伴う疾患(小児血管腫の10%) 史 : 1940年 KasabachとMerrittによって発表された 1957年 日本で初の報告 性 別 : 男=女 遺 伝 : 同一家系に発生した報告(ー) 出 生 時 : 異常分娩が比較的多い傾向にある(約67%) 発症年齢 : 約80%が3か月以内までに何らかの形で血管腫様症状がある 発生部位 : 顔面〜頚部>躯幹>上肢>下肢>内臓 治療方法 : 放射線治療(ステロイドの併用療法が多い) 血管腫は照射後も縮小効果を示すこと考慮する 1回線量1〜2Gy以下,週1〜3回,総線量10〜18Gy 効果の指標 → 血小板数と血管腫のサイズの変化 病理組織学的には未熟な血管腫の放射線治療が有効である (Capillary hemangioma,hemangioendothelioma) 手術療法 塞栓療法 薬物療法 → ステロイド,抗血栓剤,抗プラスミン剤 etc… 再 発 : 約30% → 6か月以上経っての再発率は低い(治癒宣言の時期?) 予 後 : 放射線治療後に誘発癌が発症した報告はない 各種良性腫瘍の放射線治療 (血管腫等) • 頭蓋内血管腫以外では、脊椎と肝巨大血管 腫が治療の対象となる。 • 両者とも、手術適応の無い場合若しくは手術 不能の場合に放射線治療の適応となる。 • 照射線量は、1回線量1~1.5Gyで20Gy 程度を照射する。周辺臓器の晩期障害に対 する配慮が必要である。 • 小児では10Gyで様子を見て、必要であれば 更に10Gy追加する。 症例:生後4ヶ月男児 <主訴> 左前腕腫脹 <現病歴> 生下時は特に気づかなかったが、生後4ヶ月目に左前腕腫脹 と血尿が出現し、小児科を受診。著明な血小板減少を認め、 ステロイド療法、圧迫療法を試みるも改善せず、放射線治療 目的にて紹介となる。 <紹介時現症> 血小板:0.5×104 <放射線治療> 1回1Gyを週2回、5週間で 計10Gy照射 <経過> 照射4週後 治療後4週間目には血小板 14×104 へ 照射前 照射直後 放射線治療中は血小板が 0.5~1×104 で推移、輸血が必要であった 治療後1週間目より血小板 4×104 へ 上昇 治療後2週間目には血小板 7×104 へ 照射1年6ヶ月後 翼状片の放射線治療 • 翼状片は球結膜上に繊維血管組織が増殖す る良性疾患である。20~60歳代に好発。 • 紫外線や外傷が原因とされる。増大は緩徐。 片眼の鼻側球結膜発生例が多い。 • 角膜上への増殖伸展により視力低下、異物 感、眼球運動障害が生じ、美容上の問題とな ることもある。 • 症状を有する症例に対しては切除術が施行さ れるが、20~40%に再発する。その為術後 の追加治療が必要となり、術後照射や抗がん 剤点眼が行われる。 翼状片の放射線治療の実際 • 翼状片の術後放射線治療は、切除後可急的 速やかに90Sr眼科アプリケータを使用して開 始する。(切除当日の治療も可能である。) • 90Sr眼科アプリケータは、高エネルギーβ線を 利用可能な90Sr-90Y線源を密封した線源部 と、それを保持する為の金属棒及び円盤状プ ラスチック製遮蔽板からなる。 • 治療時には局所麻酔を点眼し、開眼器を使用 して線源部を患部に密着させる。 • 照射線量は凡そ30Gy/3f/15日程度。 甲状腺眼症の放射線治療 • 甲状腺自己免疫疾患のバセドウ病に伴う眼か 内・周囲の炎症反応により惹起される様々な 臨床症状を指す。 • バセドウ病の20~40%に臨床的に眼症が発 症する。軽症は自然治癒するが、5~15%は 重症かつ進行性で積極的治療が必要。 • 治療の主体はステロイド、放射線治療、手術。 • 通常4~6MVX線を使用する。水晶体の線量 軽減の為、half-beam technique を用いた左右 対抗2門か、線束を3~5°傾ける。 • 照射野は約4X4cmで20Gy/10fが標準的 甲状腺眼症の放射線治療 加齢性黄斑変性症の放射線治療 主として65才以上の高齢者に発症する、 網膜黄斑部の変性により、中心性視力を喪失する 疾患。 1)Wet type:黄斑の下に血管新生を来たす。 2)Dry type:黄斑部の網膜色素上皮萎縮を来たす。 の2タイプがあり、RTの適応となるのは1)のWet typeであり、新生血管の増殖を阻止することを目的 とする。(視力障害の進行抑制が目的であり、視力 改善は期待出来ない)照射線量は、10~20Gy/ 5~10f が適当とされている。 加齢性黄斑変性症の放射線治療 好酸球性肉芽腫 Letterer-Siwe病、HAND-Schuller-Christian病等 と同系列に入る腫瘍である。放射線感受性が 高い為、照射効果は極めて良好である。 照射線量 放射線に高感受性の為、約10Gy程度で根治 することが多い。 Langerhans細胞組織球症 • 以前はHistiocytosisXと呼ばれた症候群で、 全身臓器に悪性のLangerhans細胞の増殖を来た す疾患である。病理組織学的にはCD1a,S-100が 陽性。 1.Letterer-Siwe病:乳幼児の全身に急激に発症。 発熱、肝・脾腫、肺病変を呈し予後不良。 2.Hand-Schuller-Christian病:小児期に好発。頭蓋 骨膜様欠損・眼球突出・尿崩症が3主徴。 3.好酸球肉芽腫:年長時~成人に発症。 予後良好。 リンパ腫類似疾患 三叉神経痛の放射線治療 • 三叉神経痛は、異常血管による三叉神経根部の圧 迫や脱髄を原因として、片側三叉神経支配領域に電 撃痛が突発する疾患である。 • 中年以降の女性に好発する。 • 放射線治療としては、γーナイフ等のSRTが行われ、 非侵襲的治療として有用である。 • γーナイフによる治療では、4mmのコリメータを使用 して、脳幹部の線量を出来るだけ • 軽減する。中心線量として70~80Gyを照射する。 それ以上照射すると三叉神経の近く鈍麻を生じ易い。 その他良性疾患の放射線治療 • 有痛性整形外科疾患(関節炎、関節包炎、 腱付着部炎、強直性脊椎症 等) • 急性炎症(膵炎、術後急性耳下腺炎 等) • 木村氏病(頚部軟部組織肉芽腫症) • 血管内治療後の再狭窄 • 脾腫(疼痛、臓器圧迫症状、脾機能亢進症) • 放射線的去勢(卵巣、睾丸照射) • 血液照射(移植片対宿主病GVHD予防) • 再生医療・移植医療への応用 おことわり 図表は 北原 規・相羽恵介編著 ・「化学放射線療法プラクティカル ・ガイド」2009より引用 (一部改変)致しました。
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