2015春季[PDF:17.9MB]

「巻頭言」
ソフトウエアが企業活力を創り出す時代の到来
東京大学 政策ビジョン研究センター
シニア・リサーチャー
(ものづくり懇話会座長)
小川 紘一
世界のインダストリーは、1990年代から100年に一度とも言うべき転換期に立った。ソフト
ウエアがイノベーションを先導し、ソフトウエアが製品システムの価値を形成し、ソフトウエ
アが企業活力を創り出すようになったからである。
約200年前の18世紀後半にイギリスで起きた第一次経済革命は、人類が数千年にわたって蓄
積した“経験則の産業化”であった。その代表的な事例が技術モジュールとしての蒸気機関や、
モジュール化された機械式の織り機工場である。
100年前の19世紀末にドイツではじまる第二次経済革命は、科学者が発見した自然法則の組
み合わせが、電機産業や化学産業など、人類が経験し得なかった巨大産業をこの世にもたらし
た。この意味で第二次経済革命は“自然法則の産業化”といってもよい。
本稿が焦点を当てる第三次経済革命は、アメリカのパソコン産業やインターネット産業から
始まった。第三次経済革命と第一次、第二次との違いは、製品やシステムの設計にソフトウエ
アが介在するデジタル型か否かという点である。ソフトウエアはプログラミング言語、つまり
人間が創りだした人工的な論理体系によって開発される。人間は神が作った自然法則を変える
ことはできないが、ソフトウエアならプログラミングを工夫するたけで、アイデアや期待を製
品機能やシステム機能として自由自在に具体化できる。この意味で今回の第三の産業革命を、
“論理体系の産業化”と定義することができる。
ソフトウエアを動かすマイクロプロセッサーの性能は、1970年代にせいぜい10倍しか進化しな
かったが、1980年代の30倍を経て1990年代には更にその100倍となった。マイクロプロセッサーが
生まれた1971年から3万倍も向上するこの技術革新が、ソフトウエア主導の第三次経済革命をこの
世にもたらしたのである。プロセッサーの性能は今後も10年で100倍以上のスピードで進化する。
シュンペーターは、経済活動の中で生産手段や資源などが従来とは異なる形で新結合する
ことをイノベーションと定義したが、多くのモノがソフトウエアを介して結合する21世紀は、
100年前のシュンペーターが見た世界より遥かに容易に、そして無限に新しい組み合わせを作
ることができる。しかも結合スピードが自然法則の結合よりも遥かに速い。
ここから、これまで存在し得なかった価値がソフトウエア主導の新結合によって次々に生み
出され、自動車の価値さえソフトウエアが決める時代となった。2010年代になると、インター
ネット・クラウドがこの潮流を更に拡大させ、全く異なる巨大産業をつないで新たな価値を創
り出す。ソフトウエアを駆使したビッグデータ分析がその代表的な事例である。
我々は、第三次経済革命がもたらす価値形成のメカニズム変化を冷静に受け入れ、企業活力
の源泉を再構築しなければならない。そして国の競争政策はもとより競争政策それ自身をも再
構築しなければならなくなったのである。これを本巻頭言の基本メッセ−ジとしたい。
参考図書
小川紘一(2014)『オープン&クローズ戦略―日本企業再興の条件』、翔泳社
企業活力
1
産業 日本経済の再興に
政策 向けて
経営戦略・産業政策委員会
経営戦略・産業政策委員会は、平成27年1月30日(金)に太田 克彦(新日鐵住金株式会社 代
表取締役副社長)委員長の進行により開催されました。
菅原 郁郎経済産業政策局長から「日本経済の再興に向けて」に関する説明があり、参加者によ
る活発な意見交換が行われました。
写真左から太田委員長・菅原経済産業政策局長
ご出席者名簿
経営戦略・産業政策委員会の様子
清成 忠男 事業構想大学院大学 学長
髙橋 宏 一橋総合研究所 理事長
前原 金一 (公社)経済同友会 副代表幹事・専務理事
松坂 英孝 大阪ガス㈱ 取締役 常務執行役員 経営企画本部長
森山 幸二 コスモ石油㈱ 執行役員 経営企画部長
寺畑 雅史 JFEスチール㈱ 常務執行役員
長尾 正彦 スズキ㈱ 常務役員 経営企画室長
大賀 正一 ソニー㈱ 渉外部 渉外グループ
ジェネラルマネジャー
矢野 功 損害保険ジャパン日本興亜㈱ 企画開発部長
奥住 直明 ㈱東芝 コーポレートコミュニケーション部長
川久保玲子 東燃ゼネラル石油㈱ 執行役員 広報渉外統括部長
若林 邦広 ㈱日立製作所 渉外本部長
五嶋 賢二 富士電機㈱ 執行役員
橋本 修 三井化学㈱ 理事 経営企画部長
中原 秀人 三菱商事㈱ 代表取締役副社長 執行役員
委 員:
委 員 代 理:
坂本 讓二 ㈱IHI 取締役
水野 雄氏 ㈱旭リサーチセンター 代表取締役社長
今堀 勝 アステラス製薬㈱ 上席執行役員 渉外部長
馬場 一壽 四国電力㈱ 執行役員 調査役
阿部 俊徳 東北電力㈱ 執行役員 東京支社長
(企業名・役職名は当時、企業名五十音順 敬称略)
委 員 長:
太田 克彦 新日鐵住金㈱ 代表取締役副社長
経済産業省:
菅原 郁郎 経済産業政策局長
松永 明 大臣官房審議官(経済産業政策局担当)
新居 泰人 企業行動課長
顧 問:
日本経済の再興に向けて
1
日本経済の現状認識
○政府経済見通し(1月12日閣議了解)
平成26(2014)年度の成長率は、実質▲0.5%程度
2
企業活力
の見込み。
平成27(2015)年度の成長率は、「緊急経済対策」
や政労使の取組等による雇用・所得環境の改善、原
油価格の下落に伴う交易条件の改善等が期待される
産業
政策
中、民需が堅調に推移し、実質+1.5%程度の見通
し。
○実質賃金の推移(前回増税時との比較)
前回引き上げ時と比べても、実質賃金の下落は大きい。
○実質GDP成長率の推移
2014年7−9月期の実質GDPは、前期比年率▲1.9%
と2期連続のマイナス。
マイナスとなった最大の要因は、在庫調整の進展。
○家計消費は消費税率引き上げ後に減少傾向
政権交代後、家計消費はほぼ横ばいで推移していた
が、消費税率引上げ後は減少傾向に。
○原油・ガソリン価格
原油価格の下落を受け、7月14日以降、国内ガソリ
ン価格は26週連続で下落するも、円安の影響で下げ
幅は限定的。
2014年初来、原油価格は、ドル建で▲56.3%下落、
円建で▲49.9%下落。ガソリン価格は、足下(1月
平均)で143.9円となり、2014年初対比で小幅の下
落となっている。
○消費者物価の動向
○実質賃金の低下
エネルギーの上昇寄与度の縮小により、消費者物価
賃金上昇を上回る物価上昇により、実質賃金(一人
(生鮮食品を除く総合)(コアCPI)は、14年5月
当たり)は下落。消費の押し下げ要因に。
以降、前年比の上昇幅が縮小。
消費者物価(食料(酒類除く)及びエネルギーを除
○名目・実質総雇用者所得
名目総雇用者所得は、2013年1月以降、増加基調で
く総合)(コアコアCPI)で見ると、14年10月以降
は、前年比の上昇幅が縮小。
推移。
一方、実質総雇用者所得は、消費税率が引き上げら
○原油の先物価格
れた2014年4月以降、前年比マイナス。消費増税に伴
市場参加者の価格見通しを示すとされる原油先物価
う特殊要因を除けば、6月以降、6ヶ月連続でプラス。
格は、直近では、期近安・期先高。
足下の需給の緩みを受け、我が国の輸入原油価格
と相関の高いブレントの価格は、2015年1−3月期の
47.2ドル/バレルに対し、現在から1年後の期先物
は、58.6ドル/バレルで取引されている。
○エネルギー価格の積み上げによる試算(エネルギーの
下落寄与)
エネルギー価格を個別に試算すると、原油価格下落シ
ナリオでは、2015年半ばに、電気代が前年比▲10%以
企業活力
3
産業
政策
日本経済の再興に向けて
上、ガソリン代が同▲20%以上下落する見込み。
日銀は「デフレマインドの転換が遅延するリスク」
これらを機械的に積み上げると、エネルギーの下落
を未然に防ぐため追加緩和を決定。欧州も緩和策を
寄与は最大▲1.4%pt程度となる。
実施中。ドル独歩高・円安の要因となっている。
○消費者物価(コアCPI、CPI(持家の帰属家賃を除く
総合))の見通し
○ドル・円相場の推移と民間機関の見通し
対ドルレートは、117円台から121円台まで円安方向に
民間機関によれば、2015年度のコアCPIは、前年比
推移した後、一時的に、116円台まで円高方向に推移。
+0.6%∼+1.1%(通期で+0.8%)で推移する見通し。
2014年末にかけて120円台まで再び円安に振れるも、
4−6月期以降は、消費増税(5%→8%)に伴う特殊
2015年には、再び円高方向に推移し、足下は1ドル
要因は剥落。
=117円台中盤で推移。
エネルギー(電気、都市ガス、プロパンガス、灯油
及びガソリン)は、物価を押し下げ。年度半ばにか
○輸出金額増加の要因
けて押し下げ効果が拡大。
2012年12月から足下にかけて、輸出金額(季節調整
2015年度において、CPI(持家の帰属家賃を除く総
値、単月ベース)は+26.2%増加。
合)は、コアCPIよりも、前年比の上昇率が0.1%pt
そのうち、価格要因は+18.0%と、7割程度の寄与
∼0.2%pt大きくなる見通し。
となる一方で、数量要因も+6.9%と、3割程度の寄
与となっている。
○実質賃金(一人当たり)の見通し
実質賃金(名目賃金をCPI(持家の帰属家賃を除く
総合)を用いて実質化)は、消費増税に伴う特殊要
2013年以降で見ると、円安の動きと比べ、輸出物価
因の剥落に伴い、エネルギー価格が前年比で下落に
(契約通貨ベース)の低下の動きは緩やか。
転じる2015年4−6月期以降は、プラスに転ずること
このところ、エネルギー価格の下落も相まって、前
が期待される。
年比のマイナス幅が拡大。今後、輸出数量の増加に
2015年度の実質賃金は、名目賃金の増加のペースに
つながることが期待される。
応じ、前年度比+0.6%∼+1.2%となる見込み。
○日米欧の中央銀行の総資産推移
日米欧(ユーロ圏)の政策金利は、07年以降の金融
危機を経てゼロ近傍まで低下。
追加金融緩和策として、資産買入れ等によりバラン
スシートを拡大(市場への資金供給を拡大)。
14年10月、米国が資産買増し終了を決定した。一方、
4
○輸出物価
企業活力
産業
政策
2
経済の好循環の拡大と成長戦略の実現・実行
○改訂成長戦略の概要(昨年6月)
○海外設備投資比率の推移
海外設備投資比率は、円高とリーマンショック以降
の新興国ブームの中でのグローバル展開を背景に急
拡大を続けていたが、アベノミクス以降、頭打ちと
なっている。
○製造業の設備稼働率と生産能力
11月の製造業の設備稼働率指数は、前月比▲0.8%
と3ヶ月ぶりに低下。
11月の生産能力指数は、設備投資が手控えられる中、
依然として低下傾向で推移。
○労働生産性と実質賃金
諸外国では、労働生産性の上昇に伴って実質賃金も
増加。
他方、我が国では、労働生産性が伸びていたにもか
かわらず、実質賃金は減少。
○企業業績は改善
企業収益は改善傾向。
企業活力
5
産業
政策
日本経済の再興に向けて
○設備投資の推移
2014年の成長戦略においては、「3年間でリーマン
ショック前の投資水準(名目70兆円)を回復」する
ことを目標に掲げた。
名目設備投資額は、リーマンショックにより急減。
2013年度は68.2兆円まで回復し、直近の2014年7−9
月期は、年率換算で68.5兆円まで回復。
○経済の好循環の実現に向けた政労使会議(昨年12月)
○我が国の立地競争力・企業の競争力の強化に資する成
長志向型の法人税改革
昨年12月の政労使会議において、企業収益の拡大を、
賃上げ、設備投資や下請・中小企業の取引条件の改
平成26年度税制改正において決定した復興特別法人
善に結びつけていくことで、経済の好循環を拡大し
税の前倒し廃止により、法人実効税率は2.38%引き
ていくことが合意された。
下がった(37.00%⇒34.62%)。
平成27年度税制改正においては、以下のことが決定。
①法人実効税率は平成27年度においては2.51%、
平成28年度においては3.29%まで引き下がる
(34.62%⇒32.11%⇒31.33%)。
②平成 28 年度においては、課税ベースの拡大等に
より財源を確保して、税率引下げ幅の更なる上乗
せを図る。
③さらに、その後の年度以降の税制改正においても、
引き続き、法人実効税率を20%台まで引き下げる
ことを目指して、改革を継続する。
○「伊藤レポート」における視野(インベストメント・
チェーンの最適化)
「インベストメント・チェーン」※の全体最適化に
○生産性向上設備投資促進税制/ものづくり・商業・
サービス革新補助金
〈生産性向上設備投資促進税制〉
質の高い設備投資の促進によって事業者の生産性向
上を図るため、最新設備(A類型)や利益改善のた
向け、主要プレイヤー(企業、投資家、市場関係者
等)が一堂に会し、国内外からの参加・貢献を得て、
エビデンスベースでの分析と提言を実施。
※資金の拠出者から、最終的に事業活動に使う企業
に至るまでの経路及び各機能のつながり。
めの設備(B類型)を導入する際の税制措置を創設
(平成29年3月末までの時限措置)。
利用できる業種や企業に制限はなく、また、税制措
置としても、即時償却又は5%税額控除(中小企業
にあっては最大10%)と、今までに類を見ない大胆
な税制。
2014年1月より開始し、実績は12月末時点で既に12
万件超。
〈ものづくり・商業・サービス革新補助金〉
サービスやものづくりの新事業を創出するため、革
新的な設備投資やサービス開発・試作品の開発を行
う中小企業を支援。
○「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究
会」について
【1.趣旨および目的】
持続的成長に向けた企業と投資家の対話を促進する
6
企業活力
産業
政策
ためのインフラのあり方、具体的には、対話の場と
○コーポレートガバナンス・コードの策定に向けた検討
しての株主総会プロセスや企業情報開示のあり方に
東証と金融庁を共同事務局とする「コーポレートガ
ついて、グローバルな観点から検討を行う。
バナンス・コードの策定に関する有識者会議」(座
【2.検討の体制】
長 池尾和人 慶應義塾大学経済学部教授)を設置。
本年12月12日に有識者会議が「基本的な考え方」を
取りまとめ。Comply or Explainルールのもとで、
独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきで
あることも盛り込まれる。
これを受け、東証がコードを来年の株主総会のシーズ
ンに間に合うように策定し、Comply or Explainルー
ル(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由
を説明するルール)を上場規則に明記する予定。
○「攻め」のガバナンス体制の確保に向けた検討
企業価値を向上させるため、適切なリスクテイクを
【3.委員構成】
後押しする「攻め」のガバナンス体制を強化するこ
企業、投資家、市場関係者、学者・有識者、制度関
とが重要。
係者(東証、ASBJ)、各種団体・協会(経団連、
会社法の改正、コーポレートガバナンス・コード
株懇連合会、公認会計士協会、信託協会、投資顧問
策定の検討が進み、新たなルールが設けられる中、
業協会、生保協会、監査役協会)、関係省庁(経済
ルールを形式的に守るだけではなく、企業実務にお
産業省、法務省、金融庁)
いて前向きに生かすことが重要。
【4.検討スケジュール】
本年度末を目処に、報告書を取りまとめ、公表予定。
「攻め」のガバナンス体制の強化に向けた実務上・法
制上の論点を検討するため、コーポレート・ガバナン
ス・システムの在り方に関する研究会(座長 神田秀
○持続的成長に向けた企業と投資家の「対話」の構図
企業と投資家の「対話」については、以下の3つの要
素に分解。
樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授)を本年
12月より開催。来年6月を目途に取りまとめ予定。
〈コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に
(1)直接的な対話の場である株主総会プロセス
関する研究会での主要論点(案)〉
(2)対話の前提となる企業情報開示
①取締役会の役割
(3)継続的な対話・エンゲージメント
適切なリスクテイクを後押しし、プラスを伸ばす
「攻め」の体制を確保する観点から、取締役会の
役割をどう考えるか。
具体的には、
取締役会には監督と意思決定の大きく二つの役
割があるが、それらを今後どのようなバランス
で担っていくべきと考えるか。
取締役会の監督、社外取締役の導入、内部統制
システムの構築が定着してきていることも踏ま
えれば、企業における適切な取締役会の上程事
項の在り方も再考する必要があるのではないか。
監査役会設置会社においては、「重要な業務執
行の決定」は各取締役に委任することができな
企業活力
7
産業
政策
日本経済の再興に向けて
いが、その適切な範囲についてどう考えるか。
②適切な役員報酬の在り方
or Explainルールの下で、上場会社は独立社外取
報酬は、経営者等に対してインセンティブを付与
締役を少なくとも2名以上選任すべきとされる方向
する機能を有していることを踏まえ、経営者の果
で検討されているところ、こうした社外取締役に
敢な意思決定や社外取締役の活用を更に後押しす
期待される役割と責任についてどう考えるか。
る観点から、役員報酬をどのように設計するか。
具体的には、
具体的には、
2名以上の独立社外取締役が選任された場合、
現在、実務において普及しているストック・オ
具体的に、他の取締役と如何なる連携の下に如
プションをどのように評価するか。
何なる役割を担うことが期待されるのか。
会社法において、取締役の報酬を株主総会の
社外取締役に期待される役割や、内部統制シス
決議で定めなければならないとされているのは
テムによる監督も踏まえて、社外取締役の監視
「お手盛り」防止のためであると解されている
義務の合理的な範囲についてどう考えるか。
中で、望ましい報酬の決定手続及び報酬開示の
MBO交渉における値決めなど、社外取締役に
在り方についてどう考えるか。
期待されていると考えられる行為を行った場合
「業績」や「株価」に連動する変動型の経営者
に、当該行為が業務執行に該当し、法律上「社
報酬の活用についてどう考えるか。我が国企業
外」性を失うと解されてしまうおそれのある
において、こうした変動型の報酬を活用する場
ケースはないか。
合における課題は何か。
⑤社外取締役を構成員とする委員会の活用
海外で普及している新しいエクイティ型の報酬
社外取締役を構成員とする任意の委員会の活用に
(Performance Share、Restricted Stock等)
ついてどう考えるか。
をどのように評価するか。
具体的には、
社外取締役の適切な報酬の在り方についてどう
指名や報酬に関する委員会など、社外取締役を
考えるか。
構成員とする委員会を任意に設置し活用する我
変動型の報酬制度の導入に当たっての制度的課
が国のプラクティスにはどのようなものがあるか。
題は何か。
その他に、社外取締役を構成員とする委員会の
③保険等による適切な責任軽減
活用として、どのようなものが考えられるか。
経営者の果敢な意思決定を更に後押しし、内外か
例えば、米国においては、いわゆる訴訟委員会
ら社外取締役として適切な人材を確保する観点か
が設けられる場合があるが、我が国でのかかる
ら、役員の適切な責任軽減の仕組みや手続につい
委員会の活用についてどう考えるか。
てどう考えるか。
具体的には、
⑥社外取締役の選任を踏まえた監査役の在り方
社外取締役には「攻め」の経営を後押しする役割
現行の責任軽減の仕組み(会社法425条及び426
が期待されるところ、社外取締役が選任されたこ
条)をどのように評価するか。
とを踏まえて、監査役の在り方についてどう考え
会社役員賠償責任保険(D&O保険)の活用に
るべきか。
ついて各取締役の利益を適切に確保する観点か
具体的には、
ら実務上留意すべき点がないか。
監査役に期待すべき役割、社外取締役との連携
海外においては、一定の場合、会社補償(役員
や役割分担、内部統制システムを通じた監督と
が損害賠償責任を負った場合に、会社が当該損
の関係などについてどう考えるか。
害賠償責任額を補償すること)を認める明文の
規定を置く国もあるところ、我が国においては
どのように考えるか。
④社外取締役の役割と責任の明確化
8
コーポレートガバナンス・コードにより、Comply
企業活力
産業
政策
日本経済の再興に向けて
○アメリカ VS ドイツ プラットフォーム獲得競争
の構図
○ドイツの動き(製造業の高度化)
インダストリー4.0
サプライチェーン間及び工場内の生産設備・製品間
をネットワークで繋ぎ、製造業を高度化するための
産官学共同のアクションプラン(2012年発表)
̶政府(連邦経済エネルギー省、連邦教育研究省)
は、総額3.5億ユーロ以上を助成。
̶運営組織には、ドイツ内外の主要企業(シーメンス、
SAP、ボッシュ、ダイムラー、ABB等)が参加。
10
企業活力
「平成
27
年度税制改正に関する
企業 経済産業省要望」と「平成 27 年
税制 度経済産業関係税制改正について」
税制委員会
税制委員会は、
平成 26 年 10 月 9 日(木)及び平成 27 年 2 月 4 日(水)に、
住吉 克之委員長(東
京電力(株))の司会進行により開催されました。新居 泰人企業行動課長から「平成 27 年度税制
改正に関する経済産業省要望」
(10 月 9 日委員会)
、
「平成 27 年度経済産業関係税制改正について」
(2 月 4 日委員会)などのご説明があり、参加者による活発な意見交換が行われました。
写真左から住吉委員長・新居課長
御出席者名簿(10月9日開催委員会)○
( 2月4日開催委員会)●
委
員
長:
○●住吉 克之 東京電力㈱ 常務執行役
経済産業省:
○●新居 泰人 経済産業省 経済産業政策局 企業行動課 課長
委 員 : 税制委員会の様子
●山本 隆章 日本電気㈱ 経理部 主計室長
○ 平尾 幸男 (一社)日本貿易会 総務グループ担当部長
○ 山田 浩史 パナソニック㈱ 経理グループ 審議役
経理渉外担当
○●川 直行 ㈱日立製作所 グループ財務戦略本部 担当本部長
兼 税務統括部長
○●加藤 建治 (公社)リース事業協会 企画部長
委員代理:
●畠 義昌 コスモ石油㈱ 経理財務部・税務グループ長
○●菖蒲 静夫 キヤノン㈱ 財務経理統括センター 税務担当部長
○ 滝 健一 コスモ石油㈱ 常務執行役員 経理財務部長
○●合間 篤史 新日鐵住金㈱ 財務部 上席主幹
○●丹 昌敏 住友化学㈱ 経理室 部長(税務)
○●佐藤 政広 石油連盟 企画部 財務グループ長
●小野 和彦 ソニー㈱ 経理センター 税務企画担当 統括部長
○●秋元 茂樹 東京ガス㈱ 経理部長
○ 肥田 敬 トヨタ自動車㈱ 渉外部 担当課長
●石 正樹 トヨタ自動車㈱ 渉外部渉外室
○●小畑 良晴 (一社)日本経団連 経済基盤本部 主幹
○ 常間地 力 日本電気㈱ 経理部主計室シニアエキスパート
●坂本 隼人 パナソニック㈱ 経理・財務グループ
経理渉外担当部長
(企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略)
○ 鈴木 弘 太平洋セメント㈱ 経理部経理グループ
サブリーダー
平成 27 年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント(10/9 開催)
Ⅰ 成長志向型の法人税改革
成長志向型の法人税改革
○法人実効税率の引下げ
法人実効税率を国際的に遜色ない水準に引き下げる
ことを目指し、成長志向に重点を置いた法人税改革
に着手する。そのため、来年度から法人実効税率の
引下げを開始し、数年で20%台まで引き下げる。
財源については、骨太の方針を踏まえて具体案を得
企業活力
11
企業
税制
Ⅱ
「平成 27 年度税制改正に関する経済産業省要望」と「平成 27
年度経済産業関係税制改正について」
る。その際、租税特別措置を含む課税ベースについ
を図るため、主要国の研究開発税制とのイコール
ては、国際的なイコールフッティングや「真の(経
フッティングを確保しつつ、オープンイノベーショ
済の)好循環」の実現という観点等を重視しつつ、
ンの重点的推進等を含め、効率的・効果的な民間研
見直しを検討する。
究開発投資を促す仕組みとする。
地域経済再生、中小企業・小規模
事業者の活性化
−オープンイノベーション型の拡充を図る。
控除率の大幅引上げ(5倍程度)及び控除上限の
別枠化。
○中小企業者等に係る法人税の軽減税率の引下げ
対象研究費の範囲の拡大(中小・ベンチャー企業
中小企業者等に係る法人税の軽減税率については、
等への技術ライセンス料等を対象化)。
法人実効税率の引下げの検討状況を踏まえつつ、そ
の引下げを目指す。
−総額型の控除上限の引上げ措置(法人税額の30%)
の延長を図る。
○事業承継に係る贈与税の納税猶予制度の拡充
贈与税の納税猶予を受けている者(2代目)が3代目
に対する再贈与を行う場合に贈与税の納税義務が生
じないよう制度の拡充を図る。
Ⅳ 車体課税の抜本的見直し
車体課税の抜本的見直し
○自動車取得税の廃止
消費税率 10 %への引上げ時に廃止する。
○個人事業者の事業用資産に係る軽減措置の創設等
個人事業者が保有する事業用資産に係る事業承継時
の負担を軽減するための措置の創設を図る。
○自動車重量税のエコカー減税の拡充・基本構造の恒久
化
エコカー減税について対象車の基準を 2020 年度燃
○地方の創生に向けた取組
費基準へ切替え、軽減措置の拡充を図った上で恒久
地方の創生と人口減少の克服に向け、地方における
化する。これにあわせ、当分の間税率(旧暫定税率)
企業拠点の機能強化等のための支援措置について、
について廃止を前提としつつ、税制の一層のグリー
まち・ひと・しごと創生本部と連携しつつ検討する。
ン化を図る。
○中心市街地活性化のための税制措置
○自動車税の環境性能割の導入・グリーン化特例の拡充
改正中心市街地活性化法(26年7月施行)の認定計
環境性能割について 2020 年度燃費基準未達成車に
画で整備される建物等の割増償却措置の延長を図る
対するバッド課税との考え方で導入する。排気量割
とともに、認定事業者が土地等の取得等をした場合
について初年度月割課税を廃止し、コンパクトカー
の固定資産税等の軽減措置の創設を図る。
等の税率を引き下げる。グリーン化特例について対
象車の基準を 2020 年度燃費基準へ切替え、軽減措
○商業・サービス業・農林水産業活性化税制の延長
置の拡充を図る。
消費税動向等を踏まえつつ、商業・サービス業等を
営む中小企業者等の魅力向上や業務改善に資する設
備投資を促進するための措置の延長を図る。
○軽自動車税の軽課措置の導入
環境性能に優れた軽自動車に対する軽課措置の導入
等を図る。
Ⅲ イ
イノベーションの創出
○研究開発税制の強化・重点化
我が国の国際競争力を支える研究開発の維持・強化
12
企業活力
企業
税制
経済産業関係 平成 27年度税制改正のポイント(2/4 開催)
Ⅰ
法人税改革 ―法人実効税率の引下げ―
Ⅱ 研究開発税制の強化
研究開発税制の強化・重点化
法人税改革の初年度である平成27年度税制改正におい
企業のオープンイノベーション(外部の技術・知識を
ては、法人実効税率(標準税率ベースでは34.62%
活用した研究開発)を促進し、我が国のイノベーショ
※)を2.51%引き下げる。先行減税を確保し、法人税
ン・ナショナルシステムの強化を図るため、オープン
改革を起点とし、賃上げ、設備投資、下請・中小企業
イノベーション型の抜本的拡充を実現(①控除率の大
への波及などを通じて経済の好循環を実現する。※東
幅引上げ(現行12%→大学・特別試験研究機関等との
京都ベースでは35.64%
共同・委託研究:30%、企業間等:20%)②控除上限
さらに、平成28年度においては、初年度に決定された段階
の別枠化(法人税額の5%)③中小企業等の知的財産
的引下げにより3.29%まで引き下がるところ、税率引下げ
権の使用料等を対象化)
幅の更なる上乗せを図る。平成29年度以降も、法人実効
総額型(25%)とオープンイノベーション型(5%)
税率を20%台まで引き下げることを目指して、改革を継続。
をあわせ、控除上限30%を維持。
長期的な研究開発に不可欠な恒久措置の維持。
Ⅲ 地方拠点強化税制の創設
地方拠点強化税制の創設
地方創生を実現するため、東京からの移転や地方企業
の拡充等による企業の地方拠点の強化に対して、オ
フィス投資減税(最大25%の特別償却又は7%の税額
控除)や雇用促進税制の特例(増加雇用者1人当たり
最大80万円の税額控除等)を創設。自治体独自の減税
なお、平成27年度改正において、中小企業等の軽減税
率(15%)は2年延長。加えて、中小企業に対する外
形標準課税は「慎重に」検討を行うこととする。
措置に対する減収補填措置も併せて創設。
Ⅳ 車体課税の見直し
車体課税の見直し
○自動車取得税・自動車重量税
エコカー減税について、2020 年度燃費基準への切
替えを行うとともに、自動車の需要喚起の観点から、
2015 年度燃費基準によるエコカー減税対象車の一
部を引き続き減税対象とし、新たな減税枠を設ける
拡充措置を講じる。
2015 年度燃費基準達成の新車について、自動車重
量税の「当分の間税率」ではなく、本則税率を適用。
○自動車税
消費税率 10 %段階の車体課税の見直しにおいて、
自動車をめぐるグローバルな環境や課税のバランス
等を踏まえて議論。
企業活力
13
企業
税制
「平成 27 年度税制改正に関する経済産業省要望」と「平成 27
年度経済産業関係税制改正について」
○軽自動車税
○償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し
環境性能に優れた軽自動車に対する軽課措置の導
国際的に稀な償却資産課税の見直しについて、引き
入。
続き検討。
二輪車の税率引上げ時期について、平成 28 年度へ 1
年間延期。
Ⅴ 中小企業・地域
中小企業・地域
○中小企業者の事業承継を円滑化させる税制措置の強化
等
Ⅵ
森林吸収源対策及び地方の地球温暖化
対策の財源の確保について
【平成 27 年度 与党税制改正大綱 検討事項(抜粋)
】
森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する財
源の確保について、財政面での対応、森林整備等に要
中小企業における事業承継の円滑化を図るため、事
する費用を国民全体で負担する措置等、新たな仕組み
業承継税制を拡充。個人事業者の事業承継等に係る
の導入に関し、森林整備等に係る受益と負担の関係に
税制措置については、総合的に検討。
配意しつつ、COP21 に向けた 2020 年以降の温室効果
ガス削減目標の設定までに具体的な姿について結論を
○商業・サービス業・農林水産業活性化税制の延長
得る。
消費税率の再引上げに備えるべく、商業・サービス
業を営む中小企業等が経営改善設備を導入した際の
軽減措置について、適用期限を 2 年延長。
Ⅶ 資源・
資源・エネルギー
軽油引取税の課税免除の特例措置の延長。
○地方を訪れる外国人旅行者向け消費税免税店の拡大
商店街やショッピングセンター等において、各店舗
グリーン投資減税(風力発電設備を取得した場合の即
時償却)の 1 年延長。
の事業者が行う免税販売に係る手続を第三者に委託
(ワンストップ化)することを可能とする制度を創
設。
○中心市街地活性化のための税制措置の延長
14
Ⅷ 国際課税
国際課税
外国子会社合算税制の見直し(トリガー税率:20 %
地域コミュニティの活性化のため、中心市街地活性
以下⇒ 20 %未満 等)。
化法に基づく商業施設等の建物等の取得に対し、5
国境を越えた役務の提供に対する消費税制度の見直
年間 30 %の割増償却制度の適用期限を 2 年延長。
し。
企業活力
「女性が輝く社会」とは? ∼社会の第一線とPTA
経済産業省 経済産業政策局 企業行動課 課長
新居 泰人
数年前、大学時代の悪友から、同じ年生まれの集まりがあるから来い
よ、と誘われ、参加したら、みんな「社長」。自分でビジネスを立ち上
げ、又は大組織から飛び出した人ばかりで、役人は自分一人。驚いたの
は、女性の多さ。ものすごいコミュニケーション能力、溢れる才能、し
かも、肩肘張らない自然体、それでいて存在感抜群の女性達。毎回、昔
から知っていたような雰囲気の中、時間を忘れて盛り上がる。しかし、
話が少し仕事に及ぶと、アイデアが飛び交う。年1回の「昭和」縛りカラ
オケ大会では、70曲を途切れなく熱唱するバブル世代の仲間達。ルール
は「さん」付け禁止(さすがに議員の先生には私だけ例外にしてもらっ
た)だが、雑誌やネットを見ていると、えっ、こんなスゴイ女性だったんだと驚く。
究極の前向き女性達。こういう「輝く女性」がもっともっと増えてきたら、日本の将来は安泰だと思う。
別の「輝く女性」もいる。一昨年夏、海外勤務を終え、地元オヤジ飲みを再開したら、地元の公立小学校のPTA
会長を引き受けることになった(入学式と運動会と卒業式の挨拶だけやればよい、と言われて)。
毎月1回、役員会・運営委員会が開催される。十数名の委員の中で「黒一点」。平日で参加できないことも多い
が、月イチ休暇の率先取得ということで、できるだけ半休を取って参加している(朝イチの大臣レクや部会に出てか
ら地元に帰り、また午後出勤ということも)。
誰も面倒なPTAの仕事などやりたくない、だれかがやってくれたらラッキー、というのが世の相場。しかし、驚
くのは、イヤイヤながらも、ひとたび役を引き受けることになったら、やるべきことをテキパキと段取りを組み、話
し合い、行動し、大イベントを次々とこなしてしまうこと。反省会を持ち、きちんと簡潔な議事録に残して来年に
つなげる。「女社会は難しい」なんて言われるが、上手にゆる∼い雰囲気を作って、しかし、着実に物事を前に進め
ていく。「新居会長の仕事はこれ!よろしく!」「はい!」を繰り返す。(注:間違っても「会議は短く、結論を先
に」などと思ってはいけない。メル友・Lineつながりになったお母さま方からのPTA名文書チェック依頼に対し、
細かくテニオハを直すようなことはしない。これは勉強になります!)
お母さま方はこんなにレベルが高いのか、と驚いた。いつでも社会で活躍できる。日本の「主婦」の方の力はスゴ
イと実感した。
「同い年の集まりで一緒の、社会の第一線でしっかり稼ぎながら活躍する女性達」、「大勢の前での挨拶なんて
絶対イヤだが、無報酬で、地域・学校・子供達のために汗をかくことを厭わないお母さま方」。どちらが偉くて立派
か、どちらが日本経済にとって有用か、なんて愚問は発してはいけない。おそらく、その違いは紙一重だから。
そこで、この通常国会での総理の施政方針演説を、目線を変えて読み直した。
「私は女性の力を信じます」 そう、信じるどころか、僕なんてもう確信の域に入ってます。
「家庭で、地域社会で、職場で、それぞれの場で活躍している全ての女性が、輝くことができる社会を創り上げてま
いります」 そうそう、まさに、そのとおり!
「指導的地位の三割以上が女性となる社会を目指します」 もう一つ、「地域・PTA」での指導的地位の〇割以上
が「男性」となる社会、という目標があってもいいんじゃないかな、と思った次第である。
最後に、PTA会長の経験を通じて、公立学校の先生方の熱い思いと子供達の頑張りに、数多くの感動を頂いたこ
とも付言しておきたい。
企業活力
15
「コーポレート・ガバナンス・コー
企業 ドについて」と「独占禁止法に
法制 関する最近の動向について」
企業法制委員会
企業法制委員会は、平成26年11月12日(水)及び平成27年1月16日(金)に開催されました。
11月12日の委員会では「コーポレート・ガバナンス・コードについて」をテーマに、一般社団法
人 日本経済団体連合会 経済基盤本部長の阿部泰久委員にご説明いただきました。また、1月16
日の委員会では「独占禁止法に関する最近の動向について」をテーマに、経済産業省 経済産業政
策局 競争環境整備室の土橋秀義室長をお迎えし開催致しました。
両委員会は、川田順一委員長(JXホールディングス株式会社)の司会により進められ、それぞ
れご説明があった後、参加者を交えて活発な意見交換が行われました。
阿部委員
ご出席者名簿(11月12日開催委員会)○
( 1月16日開催委員会)●
委
員
長:
○●川田 順一 JX ホールディングス㈱ 取締役 常務執行役員
経済産業省:
○●中原 裕彦 経済産業政策局 産業組織課 課長
○●黒田 嘉彰 経済産業政策局 産業組織課 課長補佐
○●永田 真紀 パナソニック㈱ リーガル本部
コンプライアンスグループ グループマネージャー
●土井 淳 ㈱日立製作所 法務本部長
○ 松永 秋彦 三井化学㈱ 法務部長
●原田庸一郎 三菱重工業㈱ 総務法務部 法務担当部長
●藤田 和久 三菱商事㈱ 法務部長
委員代理:
●金子 菜穂 アステラス製薬㈱ 法務・コンプライアンス部
○●梶元孝太郎 経済産業政策局 産業組織課 課長補佐
○●中村 昌克 経済産業政策局 産業組織課 係長
係長
○ 国井 厚志 アステラス製薬㈱ 法務・コンプライアンス部
専任理事
●土橋 秀義 経済産業政策局 競争環境整備室 室長
●伊藤 香織 経済産業政策局 競争環境整備室 課長補佐
●加藤 肇 経済産業政策局 競争環境整備室 係長
○●宮原 淳 キヤノン㈱ 法務統括センター 法務部 部長
○ 大溝 貴史 ㈱神戸製鋼所 法務部 次長
●伊藤 亮 トヨタ自動車㈱ 法務部 国内法務室 室長
●和田 照子 (一社)日本経済団体連合会 経済基盤本部 主幹
○ 澤田 真周 ㈱日立製作所 法務本部 部長代理
委 員 : ●大久保 安 ㈱神戸製鋼所 法務部長
○●加藤 雅彦 四国電力㈱ 総務部 部長(法務担当)
○●古本 省三 新日鐵住金㈱ 法務部 部長
○●手島 俊裕 損害保険ジャパン日本興亜㈱ 文書法務部長
○●佐成 実 東京ガス㈱ 総務部 法務室長
○ 田中耕二朗 トヨタ自動車㈱ 法務部 部長
○ 永長 勉 日産自動車㈱ 法務室 主担
○ 阿部 泰久 (一社)日本経済団体連合会 常務理事
16
写真左から、川田委員長、中原課長、土橋室長
企業活力
○ 佐々木健太郎 富士通㈱ コーポレート法務部
●鈴木 裕子 富士通㈱ 法務・コンプライアンス部
マネージャー
●西岡 敦 三井化学㈱ 法務部
○ 本島 博 三菱重工業㈱ 総務法務部 管理グループ
主席部員
○ 黒澤 彰広 三菱商事㈱ 法務部 法務部長代行
(企業名・役職名は当時・企業名五十音順・敬称略)
企業
法制
コーポレート・ガバナンス・コードについて(11/12 開催)
「コーポレート・ガバナンス・コードの
策定に関する有識者会議」 の開催について
平成26年8月7日
金融庁
会社 東京証券取引所
松井 忠三 ㈱良品計画 代表取締役会長
森 公高 日本公認会計士協会 会長
アドバイザー
マッツ イサクソン
Head, Corporate Affairs Division, OECD
幹事
1.趣旨
坂本 三郎 法務省 大臣官房 参事官
「『日本再興戦略』改訂2014−未来への挑戦−」(平
中原 裕彦 経済産業省 経済産業政策局 産業組織課長
成26年6月24日閣議決定)においては、「持続的成長に
事務局 金融庁、㈱東京証券取引所
向けた企業の自律的な取組を促すため、東京証券取引
所が、新たに『コーポレート・ガバナンス・コード』を
策定する。」とされ、当該コードの策定に当たっては、
「東京証券取引所と金融庁を共同事務局とする有識者会
各国のコーポレート・ガバナンス・コード
―有識者会議資料より
議において、秋頃までを目途に基本的な考え方を取りま
とめる」こととされている。
このため、民間有識者の知見をいかしつつ、コーポ
レート・ガバナンス・コードの基本的な考え方について
提言を得ることを目的として、「コーポレート・ガバナ
ンス・コードの策定に関する有識者会議」(以下、「有
識者会議」という。)を開催する。
2.構成
このほか以下の国々において、プリンシプルベースか
座長
つ“Comply or Explain”型のコーポレート・ガバナン
池尾 和人 慶應義塾大学 経済学部 教授
ス・コードが導入されている。
メンバー
イタリア、スペイン、オランダ、ベルギー、スウェーデ
内田 章 東レ㈱ 常務取締役
ン、デンマーク、フィンランド、オーストラリア、ニュー
太田 順司 公益社団法人日本監査役協会 会長
ジーランド、タイ、マレーシア、シンガポール、香港 等
大場 昭義 東京海上アセットマネジメント㈱
代表取締役社
小口 俊朗 ガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン㈱
代表取締役
英独仏のコーポレート・ガバナンス・コード
―有識者会議資料より
神田 秀樹 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
スコット キャロン
日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク
理事
武井 一浩 弁護士(西村あさひ法律事務所)
冨山 和彦 ㈱経営共創基盤 代表取締役 CEO
中村 美華 ㈱セブン&アイ・ホールディングス
法務部 法務シニアオフィサー
堀江 貞之 ㈱野村総合研究所 上席研究員
企業活力
17
企業
法制
「コーポレート・ガバナンス・コードについて」と「独占禁止法
に関する最近の動向について」
「OECDコーポレート・ガバナンス原則」の概要(2004年改訂)
「OECDコーポレート・ガバナンス原則」の概要(2004年改訂)
○株主の権利
株主の権利の保護
会社とステークホルダーの積極的な協力関係の促進
○開示及び透明性
株主の権利行使の促進
会社に関する重要事項※についての適時かつ正確な開
○株主の平等な取扱い
示の確保
(少数株主・外国株主を含む)全ての株主の平等な取
扱いの確保
株主の権利侵害に対する有効な救済
○株主以外のステークホルダーの役割
株主以外のステークホルダーの権利の尊重
※財務状況、業績、株主構成、予見可能なリスク要因など
○取締役会の責任
会社の経営戦略の方向付け
経営陣の有効な監督
会社及び株主に対する説明責任
OECD原則と各国コードの比較
OECD原則と各国コードの比較―有識者会議資料より
東証 「上場会社コーポレート・ガバナンス
原則」 の概要
第1章 株主の権利
株主の基本的な権利の尊重
利益相反のおそれのある取引を行った場合の情報開示
既存株主の権利の侵害への配慮
の充実
第2章 株主の平等性
18
会社関係者による利益相反取引の防止体制の整備
企業活力
特定の株主に対する特別な利益提供の禁止
企業
法制
第3章 コーポレート・ガバナンスにおけるステークホ
ルダーとの関係
判断を下すことができるべきである。
(E の注釈 5 段落目)取締役会の独立のメンバーは、取
ステークホルダーの立場を尊重する企業風土の醸成、
締役会の意思決定に大きく貢献し得るものである。独立
社内体制の整備
のメンバーは、取締役会及び経営陣の業績評価について
ステークホルダーへの適時適切な情報提供のための社
客観的な意見を導入することができる。さらに、独立の
内体制の整備
メンバーは、執行役員の報酬、承継計画、企業支配権の
第4章 情報開示と透明性
変更、買収防御、大規模な資産取得、監査機能といった、
経営実態をより的確に把握するための定性的な情報開
経営陣、会社、株主の間で利益が異なる可能性のある分
示の充実
野において重要な役割を果たし得る。
株主が公平かつ容易に情報にアクセスできる機会の確保
(E の注釈 5 段落目)独立のメンバーがこの重要な役割
情報開示の適正性・迅速性を確保するための社内体制
を果たすためには、取締役会として「独立している」と
の整備
考えている者は誰か及び、その判断の基準は何かが示さ
第5章 取締役会・監査役(会)等の役割
れることが望ましい。一定の株主が自身の株式持分に比
取締役会・監査役(会)等による経営のモニタリング
して過大な支配力を持つことを可能にするような資本構
会社の価値の最大化に向けた経営者の動機づけ
造・取極めは、開示されるべきである。
取締役相互の監視体制の整備
株式持合について 有識者会議資料より
株式持合について―
(E の注釈 1 段落目)経営業績の監視、利益相反の防止、
会社に対する競合する要請の間のバランスをとることの
義務を果たすために、取締役会が客観的な判断を下せる
OECD原則
ことが重要である。第一に、これは、経営陣との関連で
ⅢD.一定の株主が自身の株式持分に比して過大な支配
の独立性と客観性を意味するものであり、取締役会の構
力を持つことを可能にするような資本構造・取極めは、
成・構造についても含意を有するものである。かかる状
開示されるべきである。
況において取締役会が独立であるためには、通常、十分
検討の視点
な数の取締役会メンバーが経営陣から独立していること
○政策保有目的での株式の持ち合いについて、保有者間
が必要とされるであろう。
の戦略的な連携を図るという観点と、他方で適切なガバ
検討の視点〈独立性・客観性、知識・経験・能力等〉
ナンスを確保すべき等の観点から、どのように考えるか。
○取締役会が、会社の業務について客観的な独立の判断
○政策保有目的での株式持ち合いについての合理的な理
を下すために、どのような点に留意すべきか。
由としては、具体的にどのようなことが考えられるか。 ○独立社外取締役に対し、以下のような役割を期待する
○政策保有目的での株式の持ち合いには、株価変動など
ことについて、どのように考えるか。
に伴うリスクがあるが、それに見合うようなリターン
・経営効率の向上のための助言を行うこと
が確保されているのか、あるいは今後見込まれるのか
・経営陣の評価・選解任その他の取締役会の重要な意
について明確な説明がなされていないとの指摘がある
が、どのように考えるか。
○上場企業の、自らの株主に対する受託者責任について、
どのように考えるか。
○特に、そうした上場企業が、株主として議決権などの行
思決定を通じ、経営の監督を行うこと
・会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督
すること
・経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主を含
む株主等の意見を取締役会に適切に反映させること
使を行うにあたり、相手企業の企業価値を持続的に高め、
その成長を促すことについて、どのように考えるか。
社外(独立)取締役について
取締役について― 有識者会議資料より
OECD原則
ⅣE.取締役会は、会社の業務について客観的な独立の
等
○上場企業は、金融商品取引所の定める独立性基準を満
たす独立役員を指定し、関連する情報を開示している
が、独立性基準と独立性に関する情報開示について留
意すべき点があるか。
○独立社外取締役に期待される役割を踏まえ、その知識・
企業活力
19
企業
法制
「コーポレート・ガバナンス・コードについて」と「独占禁止法
に関する最近の動向について」
経験・能力・適性等について、どのように考えるか。
を確保すべきとの指摘について、どのように考えるか。
○業務執行に対する実効的な監督を実施するという取締
・2名以上
役会の重要な機能を適切に発揮するために、取締役会
・3名以上
は、知識・経験・能力等において適正なバランスを有し、
(※)独 立社外 取 締役のみによる会合(e x e c u t i v e
かつ、実効的な議論ができるような適正な人数で構成さ
session)の開催や、当該会合の座長等を務める筆
れることが重要であるとの指摘があるが、取締役会の多
頭独立社外取締役(lead independent director)
様性と適正規模について、どのように考えるか。
の選定が可能となる人数。
○上場企業は、金融商品取引所の規則により、独立社外
・3分の1以上(仏・シンガポールのコード、仏のヴィエ
取締役を少なくとも1名以上確保するよう努めなけれ
ノ報告書)
ばならない。
(※)仏のコード:支配株主型の会社の場合。
この点、独立社外取締役の人数については、形式
(※)シンガポールのコード:取締役会議長が独立取
的に基準を設けることの弊害が指摘されることもあ
るが、他方で、一般に、独立社外取締役がその期待
締役である場合。
・2分の1以上(英・仏・シンガポールのコード、米の取
される役割を実効的に果たすためには、取締役会に
引所規則)
おいて十分な数の独立社外取締役を確保することが
(※)仏のコード:分散所有型の会社の場合。
必要との指摘もある。
(※)シンガポールのコード:取締役会議長が独立取
以上を踏まえ、例えば以下の人数の独立社外取締役
締役でない場合。 等
独占禁止法に関する最近の動向について(1/16 開催)
経済産業省における競争政策の取組
経済産業省における競争政策の取組
経済産業省では、企業間関係の改善の一つとして、独
〈改正の主なポイント〉
1.審判制度の廃止・排除措置命令等に係る訴訟手
続の整備
占禁止法を中心に競争政策について、法制度面の見直し
公正取引委員会が行う審判制度を廃止し、公正
と共に企業活動の啓発に取り組んでいる。以下、主な取
取引委員会の行政処分(排除措置命令等)に対す
組について説明する。
る不服審査については、抗告訴訟として東京地方
裁判所において審理することとする。
改正独占禁止法と行政調査手続の
見直しについて
2.排除措置命令等に係る意見聴取手続の整備
公正取引委員会が行政処分(排除措置命令等)
を行う際の処分前手続として、公正取引委員会が
1.平成25年独禁法改正の主なポイント
指定する職員が主宰する意見聴取手続、公正取引
平成25年12月7日第185回国会にて成立し、同年12月13
委員会の認定した事実を立証する証拠の閲覧・謄
日に公布された。今後は平成27年4月1日に施行が予定さ
写に係る規定等の整備を行う。
れている。
法改正により、①審判制度の廃止・排除措置命令等に
2.行政調査手続きの見直しについて
係る訴訟手続、②排除措置命令等に係る意見聴取手続が
平成26年2月12日、内閣府に検討のための有識者会議
整備されることとなった。なお、附則に基づき、公正取
(『独占禁止法審査手続についての懇談会』)が設置され、
引委員会が事件について調査を行う手続について、事件
同懇談会での関係団体等からのヒアリングやパブリックコ
関係人(企業及び従業員)が十分な防御を確保する観点
メント(同年6月実施)を経て、検討が行われた。平成26
から検討を行い、結論を得て、必要がある場合には、所
年12月24日に懇談会の報告書が取りまとめられた。なお、
要の措置(見直し)を行うことされた。
見直しの結果については以下のとおりとなっている。
20
企業活力
企業
法制
(1)立入検査に関連する論点
■弁護士の立会い
■調書作成時の供述人への調書の写しの交付、供述
聴取時の供述人によるメモの録取、自己負罪拒否
事実上できる。ただし、事業者は弁護士が到着し
特権
ないことを理由に立入検査を拒むことはできない。
認めるべきとの結論には至らなかった。
■提出物件の謄写
■指針等による公表事項
当日の謄写は、運用上、日々の営業活動に用
以下の事項について、指針等により公表すると
いる必要があると認められる物件を、立入検査の
同時に、うちいくつかの事項については、書面等
円滑な実施に支障がない範囲で謄写することは可
も活用しながら、事業者に伝えられる。
能。翌日以降の提出物件(留置物)の謄写は、円
・供述聴取が任意のものであるか間接強制権限に
滑な謄写を図るため、スキャナー等の電子機器の
よる審尋であるかを供述人に対して明確にする。
利用が可能であることを明らかにするとともに、
・聴取時間の目安を示す。
公正取引委員会において提出物件謄写用のコピー
・供述聴取に支障が生じない範囲で、食事時間等
機(有料)の導入を検討することが望ましい。
■指針等による公表事項
の休憩は供述人が弁護士に相談できる時間とな
るよう配慮しつつ適切に確保する。休憩時間に
以下の事項について、指針等により公表すると
は供述人が弁護士等の外部の者と連絡を取るこ
同時に、うちいくつかの事項については、書面等
とや記憶に基づいてメモを取ることが妨げられ
も活用しながら、事業者に伝えられる。
ないことを供述人に対して明確にする。
・立入検査の法的根拠及び性質
・事業者が立入検査に弁護士を立ち会わせること
ができる旨
・事業者は、弁護士が到着しないことを理由に立
入検査を拒むことはできない旨
・調書の読み聞かせの段階で誤りがないかどうか
を問い、供述人が増減変更の申立てをしたとき
は、審査担当官がその供述を調書に記載するこ
とを供述人に対して明確にする。
・供述聴取時において供述人が審査担当官の対応
・立入検査当日に、提出物件のうち日々の営業活
に不満がある場合に苦情を受け付ける仕組みを
動に用いる必要があると認められるものについ
公正取引委員会内部に整備する。その際、当該
て、立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で
仕組みの第三者性・中立性に配慮する。また、
謄写が認められる旨
苦情の申立理由及びその処理結果について、類
・立入検査の翌日以降は公正取引委員会の事務所
型化された形での公表を行う。
において提出物件(留置物)の謄写が認められ
る旨
(4)行政調査手続き全般
調査を行う際の標準的な行政調査手続についての
(2)弁護士・依頼者間秘匿特権
指針等を策定し、公表する。一定期間が経過した後
現段階で秘匿特権を導入することは適当ではない。
にフォローアップを実施し、その結果についても公
今後の検討課題として、調査権限の強化の問題と
表する。
並行して、本懇談会で示された懸念や疑問点を解決
できるよう、一層議論が深められることが望まれる。
(5)今後の検討に向けて
今後、本懇談会において現状の仕組みの下で実施
(3)供述聴取に関連する論点
■弁護士の立会い、供述聴取過程の録音
すべきとしているもの以外の防御権の強化を検討す
るのであれば、裁量型課徴金制度、和解手続、確
現状の仕組みの下で認めるべきとの結論には至
約手続を含む事業者が公正取引委員会の調査に協力
らなかった。実態解明の実効性を損なわない措置
するインセンティブ及び調査への非協力・妨害への
を検討する中で、今後、その必要性を含め導入の
ディスインセンティブを確保する仕組みの導入につ
可否を検討していくことが適当である。
いて併せて検討を進めていくことが適当である。
企業活力
21
企業
法制
「コーポレート・ガバナンス・コードについて」と「独占禁止法
に関する最近の動向について」
よって、今後、公正取引委員会が、懇談会の報告書を
受け、指針等を策定することになるが、その内容が報告
書の内容を満たすものであるか、更に裁量型課徴金制度
や、和解・確約手続等について検討を開始する可能性が
あるところ、その動向に注視する必要がある。また、今
回の報告書で導入が見送られた、弁護士・依頼者間特権
者厚生にも繋がるもの。
4.今回の見直しは、
・「価格が維持されるおそれ」を明確にし、事業者に
とって違法性の判断を示すことができるのか。
・「流通調査」はきちんと合法であることを示すこと
ができるのか。
や、供述聴取過程における弁護士の立会い、録音、メモ
・「選択的流通(販売方法等の基準)」制度について、
の録取等について、産業界側も引き続き導入を働きかけ
事業者が理解できるような基準を示すことができる
ていくことが重要である。
のか。
・再販売価格維持行為に対する「正当化理由」を示す
流通・取引慣行ガイドラインの見直しについて
ことができるのか。
5.上記について、単に例示を一つ示すということでは
1.流通・取引慣行ガイドラインとは
なく、多くの具体例を示すことで使い勝手のよいも
「流通・取引慣行ガイドライン」(「流通・取引慣行に
のができるのかが重要。
関する独占禁止法上の指針」)とは、メーカーと需要者
(流通事業者や消費者)間の流通・取引における、販売
3.ガイドライン見直しに向けた業界の要望
条件など、独占禁止法上の違法行為等を具体化したもの
以下のとおり、産業界の声としてガイドラインの見直
である。1991年に制定されたものであり、その当時は、
しに向けた要望が出ているところである。
日米構造協議による日本の閉鎖的市場問題(流通慣行の
■経済同友会 提言(平成26年11月26日)
改善の要求)があったとされていた。また、当時は、専
売制や返品制といったメーカー主導による流通の系列化
が高物価の要因とされ、一般的な認識として、メーカー
が流通を支配する構造であった。このような状況を踏ま
・垂直的制限行為には競争促進効果があることを明記
すべき
・再販売価格維持行為について、原則として適法であ
ることを明記して、具体例を示すべき
え、開かれた流通市場づくりと、小売価格の引下げ等の
・非価格制限行為、特に選択的流通について、原則と
ためのメーカーの価格・流通戦略への政策的制約といっ
して適法であることを明記して、具体例を示すべき
た観点からガイドラインを制定した背景がある。
・セーフハーバーの適用範囲を拡大すべき
■電子情報技術産業協会、日本電気工業会、日本冷凍空
しかしながら、ガイドラインが制定された当時から
調工業会要望と提言(平成26年12月10日)
取引市場は大きく変化しており、ガイドライン自体が現
・流通調査が合法であることを明記すべき
在の取引市場に対応していないと考えられる。また、実
・「価格が維持されるおそれ」に関する内容を明記す
態として、企業から見て、規制におけるグレー(あいま
べき
い)ゾーンが多く、結果として企業の販売戦略等におけ
・選択的流通の定義、合法性の判断基準を明記すべき
る対応を萎縮させていることから、見直しが必要である
・再販売価格維持の正当化事由を明記すべき
とされてきた。
・セーフハーバー基準を緩和すべき
2.具体的な見直しのポイント
〈参考〉重点的フォローアップ
具体的な見直しのポイントは以下のとおりである。
規制改革会議(平成26年9月26日)において、「流通・
1.今回のガイドライン見直しは、内容の“明確化”
取引慣行ガイドラインの見直し」は重点的フォローアッ
2.事業者(ガイドライン活用者)にとって、いかに分
プ項目として位置付けられた。
かりやすい内容となったかがポイント
3.分かりやすくすることは、事業者にとっては、法に
基づく健全な事業取引が可能となり、ひいては消費
22
企業活力
企業
法制
各国の競争法を巡る状況
1.米国
米国では、従前より、反トラスト法の国際的な事案への対応も含め、カルテルの摘発に非常に力を入れている。罰
金額は、大型事件の有無によりばらつきがあるが、近年は高額化する傾向にあり、我が国企業を含めて、1億ドルを
超える巨額の罰金が科されている。また、近年は個人に対する制裁も強化されており、外国人も含めて、違反行為者
に対する禁固刑の期間が長期化する傾向にある(1990∼1999年平均8ヶ月→2010∼2013年平均25ヶ月)。
1995年から2014年にかけて反トラスト法であるシャーマン法違反により1000万ドル以上の罰金を科された企業数及
び制裁金額について企業を国籍で比較すると、日本企業が最も摘発されており、支払った罰金の額も最大となってい
る。
企業活力
23
企業
法制
「コーポレート・ガバナンス・コードについて」と「独占禁止法
に関する最近の動向について」
2.欧州
制裁金ガイドラインが改定された2006年以降、カルテルの摘発件数及びそれに対する制裁金の額が急増している。
また、近年は我が国企業に多額の制裁金が科される事例も増えている。なお、欧州裁判所裁判官の資料によれば、過
去5年間の競争法違反の制裁金額のうち約65%が欧州企業であり、日本企業は10%、韓国企業が10%である。
3.中国
2008年の独占禁止法施行から7年が経過し、国内の物価高改善のための改革の影響もあり、徐々に中国当局による
カルテルの摘発は増加している。外資企業に対する本格的な摘発となったのは2013年の粉ミルク販売価格つりあげ事
件であり、昨年8月には日本の自動車部品12社(下表参照)が摘発され、過去最大規模(当時)となる総額約200億円
の制裁金が科された。
24
企業活力
企業
法制
4.自動車関連部品カルテルの各国への波及状況
2011年以降、自動車関連部品(ワイヤーハーネス、ベアリング等)において、日本企業がカルテルで摘発されるこ
とが増加している。これまで、日、米、欧州等6カ国・地域で摘発されており、その課徴金等の総額は約4892億円。
うち、日本企業が命じられた総額は約3705億円(2014年8月末時点)となっている。
5.今後の課題等
競争法を制定している国は2013年10月時点で世界127カ国。10年前に比べ1.5倍、1990年に比べて5倍にその数は拡
大しており、欧米をはじめ、各国における競争法の執行が年々強化されている。グローバル化の進展のなか、日本企
業が各国において摘発されることが増加しており、日本企業の摘発件数及び制裁金は他国の企業と比べ多くなってい
る。また、政府の制裁に加え、民事訴訟での係争も増加し企業負担は膨大となっている。
こうしたことから、日本企業が、各国競争当局からカルテルの摘発を受ける中で、各国における競争法制度や運用
方法の違いなどにより、特に域外適用における各国制裁の方法については、場合によって複数国間で多重の処罰等を
受けうるような問題が出てきている。この問題は、競争法を制定する国が多くなるほど、多重化の影響も大きくなる
可能性があることから、各国の域外適用に用いられる効果理論の考え方や執行の実態を踏まえ、制度面での整合性等
を含めた検討が必要ではないだろうかと考えている。また、企業の競争法コンプライアンスの整備等に向けた対応に
ついて、改めて検討を行うとともに、企業の意識向上を促す仕組みづくり等がより重要であると考えている。
企業活力
25
産業 最近の雇用・人材政
人材 策の動きについて
雇用・人材開発委員会
雇用・人材開発委員会は、委員長である平山喜三委員長(山九株式会社 常任顧問)の司会進行
により、平成26年11月10日(月)に開催されました。
委員会では、経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 小林浩史室長から、「最近の雇用・
人材政策の動き」についてご説明があった後、参加者による活発な意見交換が行われました。
写真左から平山委員長、小林室長
委員会の様子
ご出席者名簿
豊嶋 玲子 (一財)貿易研修センター 人材育成部
委員長:
安田 啓一 本田技研工業㈱ 人事部
プログラムオフィサー
平山 喜三 山九㈱ 常任顧問
グローバル人材開発センター 所長
経済産業省:
委員代理:
小林 浩史 経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室長
松井 千恵 ㈱神戸製鋼所 人事労政部 人事グループ 担当課長
委 員:
小西 亮 JX 日鉱日石エネルギー㈱ 人事部
勤労グループマネージャー
秋元 潤 ㈱ IHI 人事部 人材開発グループ 部長
朽網 雄利 昭和電工㈱ 総務・人事部 労制グループリーダー
鈴木 康公 コスモ石油㈱ 人事部 人事部長
赤間 俊一 スズキ㈱ 東京支店 次長
高島 正人 トヨタ自動車㈱ 東京総務部 人事室長
酒井美穂子 東京ガス㈱ 人事部 人材開発室
田代 康彦 日本電気㈱ 人事部長
明崎 雄大 (一社)日本経済団体連合会 労働政策本部員
三島 茂樹 パナソニック㈱ コーポレート戦略本部
渡辺 俊之 (公財)日本生産性本部 ワークライフ部 課長
人事戦略グループ グループマネージャー
神宮 純緒 ㈱日立製作所 人財統括本部
法原 弘明 富士ゼロックス㈱ 人事部 人事グループ 計画チーム長
ダイバーシティ推進センタ 部長代理
(企業名・役職名は当時、委員名五十音順、敬称略)
26
企業活力
産業
人材
「経済の好循環の実現に向けた政労使会議」について
再開する政労使会議の位置づけ
■昨年の政労使会議において、経済の好循環の実現に向
けて、下記の項目について一致協力して取り組むとの
2.労働の付加価値生産性に見合った賃金体系の在り方
■賃金の絶対額のみならず、賃金構造(賃金体系)も合
わせた議論が重要。
■①少子化問題、②消費の拡大、③シニア層の雇用機会
認識に至ったところ。
拡大、④非正規労働の正規化などの諸課題を解決する
①賃金上昇に向けた取組
ためにも、戦後形成された年功序列型賃金体系を見直
②中小企業・小規模事業者に関する取組
し(賃金カーブの見直し)、労働の付加価値生産性に
③非正規雇用労働者のキャリアアップ・処遇改善に向
見合った賃金体系(職務内容・役割・成果等に応じた
けた取組
④生産性向上と人材育成に向けた取組
■再開する政労使会議では、「企業収益→賃金の上昇→
消費の拡大」という好循環拡大に向けた環境整備を引
き続き図る。
■加えて、好循環定着のため、
①労働の付加価値生産性に見合った賃金体系の在り方
②休みと働き方改革を通じたワーク・ライフ・バラン
賃金)に移行することが必要ではないか。それにより、
子育て世代の処遇が改善され、子育てしやすい環境の
確保ができるのではないか。
■また、賃金体系の見直しは非正規労働者の正規労働者
への転換及び非正規労働者の処遇改善につながるので
はないか。
■賃上げを考える場合も、子育て世代に厚くする機運を
醸成することにもつながるのではないか。
スの推進
③能力発揮を最大化するための職業訓練・労働移動円
滑化
④人手不足問題への対応・労働生産性向上に向けた取
組
など、より構造的問題について政・労・使で議論。
■以上の通り、今回は、賃金の水準のみならず、雇用を
めぐる構造問題について、政・労・使三者が大所高所
から議論をし、共通認識を醸成することを目指す。
3.休み方と働き方改革を通じたワーク・ライフ・バラ
ンスの推進
■生産性向上、創造性確保のためにも、長時間労働是正
が必要。長時間労働を美徳とする文化を変え、効率よ
く働くことを重視するように変えていくことが重要で
はないか。
■仕事の評価を働いた時間だけでなく、成果も勘案して
決めることで生産性を上げるとともに、介護、子育て
など個々の従業員の状況に応じた柔軟な働き方を実現
1.賃金上昇に向けた取組など昨年の「政労使とりまと
め」記載事項のフォローアップ
することが必要ではないか。
■休み方改革は、少子化問題の解決、女性の活躍推進、
■昨年の政労使会議を受けた成果を確認。
地域活性化など多様な効果。有給を活用した秋の大型
■好循環の持続のため、引き続き、給与支給総額の増額
連休化等の推進、計画年休や時間単位の有休取得利用
(各社の利益に応じた形での賃上げ)を期待。
の促進に向けた労使協定の推進などを図るべきではな
−ベアにこだわらず、「賞与」、「手当」等での対応
いか。
を含む。
企業活力
27
産業
人材
最近の雇用・人材政策の動きについて
4.成熟産業から成長産業へ、都市から地方へ、能力発
揮を最大化するための職業訓練・移動円滑化
■人手不足の中で、人材余剰も言われる状況。ミスマッ
チを解消するため、シニア層を含め、能力を最大限発
■女性・高齢者・外国人の労働参加により新しい視点で
ものを見る創造性の発揮がなされるのではないか。そ
のための策として、女性・高齢者・外国人が働きやす
い環境の更なる整備が必要ではないか。
揮できるよう、成熟産業から成長産業へ、都市から地
■女性の活躍については、官民挙げて推進する必要があ
方へ、労働移動の円滑化策を政・労・使で整備すべき
り、税制や社会保障制度を女性の働き方に中立的なも
ではないか。
のとなるよう見直しを行うのと同時に、女性の活躍を
■具体的には、職業訓練、大学・専門学校での学び直し
阻害する雇用慣習について是正していくべきではない
や他企業への出向など企業内外での能力発揮、職業機
か。特に扶養者手当(民間では、妻の収入が 103 万円
会の紹介の充実を政・労・使で図るべきではないか。
以上で扶養者手当が削られる例が多い)を見直し、子
■都市部での、各地方への移住関連情報の提供(特に大
育て層に対する手当を考えるなど見直しを行うべきで
企業で仕事をしてきてノウハウを持った熟年層)等を
はないか。あわせて、公務員の扶養者手当(130 万円
考えるべきではないか。その際、広域移動支援の仕組
以上で手当が削られる)についても、見直すべきでは
みの強化が必要ではないか。
ないか。
■これら地方への労働移動円滑化は、
「人生二毛作」に
も貢献する効果があるのではないか。
■外国人労働力については、①高度人材については永住
権を取りやすくするなどの措置を、それ以外について
は、②建設業は来年 4 月 1 日から 3 年間の技能実習に
5.その他人手不足問題への対応・労働生産性向上に向
けた取組
■もはや、コストカットによる生産性向上は限界、労働
の付加価値生産性向上が不可欠。このためには、イノ
ベーションの喚起が必要。
■サービス業、飲食業や製造業等の労働の付加価値生産
28
加えてプラス 2 年(又は 3 年)追加、③製造業につい
ては短期間の研修派遣も認める等(日本のマザー工場
での研修)の措置を来年度から実施。これらの対応策
の経過を注視していくべきではないか。
■外国人については、現在推進中の規制改革に加え、
外国人が働き、生活しやすい環境を整備するため、
性を上昇させるため、ICT 投資・ソフトウェア投資・
JETRO など対内投資体制の強化、地域における受け
ロボットの導入等を推進すべきではないか。
入れ体制の構築を図るべきではないか。
企業活力
産業
人材
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案について
企業活力
29
企業 地 球 温 暖 化 問 題を
活力 めぐる状況について
企業活力委員会・企業活力政策研究会
企業活力委員会(企業活力政策研究会合同開催)は、平成26年12月17日(水)に「地球温暖化
問題をめぐる状況について」をテーマに、経済産業省 産業技術環境局 環境政策課 奈須野太課
長をお迎えし開催致しました。
委員会は、渡壁誠委員長(日本電気株式会社 理事)の司会により進められ、経済産業省からご
説明があった後、参加者を交えて活発な意見交換が行われました。
写真右から、渡壁委員長、奈須野課長
企業活力委員会の様子
ご出席者名簿
委員長:
渡壁 誠 日本電気㈱ 理事
講 師:
30
藤沢 勉 ダイキン工業㈱ 東京支店 渉外室 担当課長
森木 拓也 中国電力㈱ 東京支社(総務担当)
宇賀持 豊 東京電力㈱ 経営企画本部事務局 調査グループ
奈須野 太 経済産業省 産業技術環境局 環境政策課長
マネージャー
岩崎 哲久 ㈱東芝 コーポレートコミュニケーション部
ご出席者:
産業政策渉外室 産業関連渉外担当部長
七島 正人 東燃ゼネラル石油㈱ 広報渉外統括部 渉外部 部長
中出 朋彦 ㈱ IHI 総務部 渉外グループ 課長
竹本 裕士 アステラス製薬㈱ 渉外部 部長
松本 繁則 (一財)エンジニアリング協会 企画渉外部 主管
福井 克久 大阪ガス㈱ 東京支社 副支社長
木村 稔章 キヤノン㈱ 環境統括センター 環境推進部
橋浦 貴志 東北電力㈱ 東京支社 総務課
松田 英也 東北電力㈱ 東京支社 総務課
浅見 昭幸 トヨタ自動車㈱ 渉外部 担当部長
吉清元 造 (一社)日本化学工業協会 技術部 技術部長
松下 晃 日本電気㈱ 政策渉外部 課長
担当部長
佐藤 由理 JX ホールディングス㈱ 総務部 総務グループ
マネージャー
手塚 宏之 JFE スチール㈱ 技術企画部 理事
天野 賢 昭和電工㈱ 取締役 執行役員
齋藤 秀久 (一社)日本貿易会 常務理事
藤田 英樹 パナソニック㈱ 理事 渉外本部 渉外グループ
マネージャー
若林 邦広 ㈱日立製作所 渉外本部長
伊藤 潤平 三井化学㈱ 経営企画部
江嵜 茂太 新日鐵住金㈱ 経営企画室 上席主幹
杉山 正晃 石油連盟 企画部 マネージャー
笠原 隆男 石油化学工業協会 業務部 兼 企画部 部長
梶 達雄 ソニー㈱ 渉外部 シニアマネジャー
調査・渉外担当ダイレクター
友田 啓介 三菱商事㈱ グローバル渉外部 渉外企画チーム
次長
栗原 康剛 三菱商事㈱ グローバル渉外部 渉外企画チーム
徳田 達也 損害保険ジャパン日本興亜㈱ 企業営業企画部
代理店業務開発部長
リーダー
(企業名・役職名は当時、企業名五十音順、敬称略)
企業活力
企業
活力
1 国際交渉の背景
国際交渉の背景
温室効果ガス排出の世界的動向と我が国の位置づけ
・人為起源の温室効果ガス排出量は、1970年から2010年の間にかけて増え続けている。直近の10年間(2000∼10年)
の排出増加量は平均して2.2%/年であり、これは途上国の排出増によるもの。
・我が国の温室効果ガスの排出量シェアは2.8%。約95%がCO2(エネルギー起源CO2:約90%)。
温室効果ガス排出量:主要国の比較
企業活力
31
企業
活力
地球温暖化問題をめぐる状況について
我が国の部門別温室効果ガス排出量と電力からのCO2排出実績
・総排出量は1990年(12.61億トン)から2013年(13.95億トン)で増加。部門別では産業部門は減少する一方、家
庭・業務・運輸の各部門で増加している。
・また、震災以降(2010→2013)、電力分野の排出量が3.74億トンから4.84億トンと1.10億トン増加。これは、日本
全体の温室効果ガス排出量の約1割分の増加に当たる。
気候システムにおいて観測された変化
32
企業活力
企業
活力
気候感度の不確実性
・気候感度(ECS)とは、GHG濃度が上昇した時に気温がどの程度上昇するかを表す指標。気候感度が低いほど、
GHG濃度上昇が気温上昇に及ぼす影響は小さく、同じ気温上昇を達成するのに排出できる年間GHG排出量が多く
なるため、GHG削減費用も低くなる。
・気候感度(ECS)は、①気候モデル、②観測データに基づく2種類の求め方が存在。AR5では気候モデル派(最良
推定値:3.0℃)に比べ、観測データ派(最良推定値:1.7℃)の気候感度はかなり低いことが明確になったため、
AR4と比べて区間推定値の下限値が下がる(2.0→1.5℃)とともに、最良推定値が得られなかった。
・このため、AR5の最良推定値には便宜的にAR4と同じ3℃を使用したが、3℃に決めうちすべきでない(3℃未満へ
の見直しを含め再検討すべき)との声が科学者から出ている。
【気候感度が2.5℃で、2100年に2℃上昇で気温を安定化させる場合(RITE試算)】
・2050年に2010年比で19%減の年間GHG排出量で対応できる試算となる。(cf. 気候感度が3.0℃の場合、42%の排出
削減)
・気候感度が3.0℃の場合と比べて、2050年時点におけるCO2限界削減費用が約1/5になる。
国際交渉の経緯
企業活力
33
企業
活力
地球温暖化問題をめぐる状況について
2020年の削減目標:主要国の比較
京都議定書第一約束期間(2008∼12年度)6%削減約束の達成見通し
34
企業活力
企業
活力
2 2020年以降の将来枠組み交渉
2020年以降の将来枠組み交渉
今後の交渉スケジュール
COP20決定(気候行動のためのリマ声明)のポイント
COP20における日本の主な発信
企業活力
35
企業
活力
地球温暖化問題をめぐる状況について
3 我が国の対応
我が国の対応
今後の約束草案の検討について
・我が国の約束草案については、その提出時期を含め、COP19での決定、各国の動向や将来の枠組みにかかる議論
の状況、エネルギー政策やエネルギーミックスにかかる国内の検討状況等を踏まえ検討することとしている。
・約束草案提出に向けた検討を加速化するため、経産省の産業構造審議会地球環境小委員会と環境省の中央環境審議
会地球環境部会を中心に委員を選び、合同専門家会合での審議を開始した。
〈議題〉
第 1 回:10 月 28 日(金)「地球温暖化対策・国際交渉の現状」、「エネルギー政策の現状」
第 2 回:11 月 12 日(水)「IPCC 第 5 次評価報告書統合報告書」、「非エネルギー起源温室効果ガス対策」、「低炭素
社会実行計画」
第 3 回:12 月 5 日(金) 「エネルギー需要対策(省エネ対策)」、「国民運動」
自主行動計画方式に基づく産業界の自主的取組について
・業界団体が、産業特性、技術導入余地等を踏まえて、自ら温暖化対策のための目標(CO2/エネルギー,原単位/総
量)を設定し、その実現のための対策を推進。産業界自身のPDCAサイクルに加えて、政府も、毎年度、関係審議
会等による評価・検証を実施。
・ETSに見られるような排出枠の割当や取引制度の運用・管理に伴う問題は生じておらず、比較的低い運用コスト
で環境変化に対し柔軟に対応が可能。温対本部でも「十分に高い成果を上げてきた」と評価。
・現在90業種が2020年を目標年度とする「低炭素社会実行計画」を策定。産業・エネ転部門におけるカバー率は約8
割、日本のエネルギー起源CO2排出全体の約5割を占める。
○2020年以降の低炭素社会実行計画の検討
・2014年7月7日、経団連は「地球規模の温暖化対策への貢献∼日本産業界のさらなる挑戦∼」を発表し、自主行動計
画方式に基づき、業界ごとの2030年の目標等を設定することを決定。経団連会長より各業界団体の長に対し、年内
の計画策定を要請。
・「地球規模の温暖化対策への貢献∼日本産業界のさらなる挑戦∼」
(抄)
(2014年7月7日経団連発表)
3.取組みのさらなる拡充
気候変動を巡る国際交渉では、2015年12月のCOP21までに、すべての国に適用される2020年以降の国際枠組みにつ
いて合意することとされており、今後、わが国でも、2020年以降の温暖化対策の検討が行われる見込みである。
そこで、経団連として、地球規模・長期の温暖化対策に一層の貢献を果たすため、低炭素社会実行計画に基づく
取組みのさらなる拡充を図る(「経団連低炭素社会実行計画フェーズⅡ」)。
国内の事業活動からの排出について、従来の2020年目標に加え2030年の目標等を設定するとともに、主体間連
携、国際貢献、革新的技術開発の各分野において、可能な限り取組みの強化を図る。
また、実行計画の実効性・透明性・信頼性を確保するため、これまで同様、PDCAサイクルを推進する。その際、国内の
事業活動における2030年の目標等については、長期の取組みであることを踏まえ、前提となる条件を明確化し、透明性
を確保しながら、社会・産業の構造の変化や技術革新の進捗などさまざまな要因を考慮していくことが一層重要となる。
併せて、主体間連携、国際貢献、革新的技術開発を含む技術による温暖化対策への貢献についてわかりやすく
内外に情報発信する。
4.低炭素社会実行計画推進のための環境整備
経団連ではかねてより、低炭素社会実行計画推進のための環境整備を政府に求めてきたが、フェーズⅡに取り
組むにあたり、以下の通り改めて提言する。…(中略)…
(3)政府全体の温暖化政策(地球温暖化対策計画等)において低炭素社会実行計画を産業界の対策の柱に位置づ
ける。…(後略)
36
企業活力
企業
活力
Innovation for Cool Earth Forum(ICEF、アイセフ)
二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の概要
企業活力
37
産業 IoT がもたらす我が国製
研究 造業の変容と今後の対応
ものづくり懇話会
本調査研究は、IoT(Internet of Things)をとりまく国内外の最新動向や、IoTが我が国製造業
にもたらすインパクトを明らかにし、こうした新しい状況下においてこれまで日本が強みとしてき
たものづくり産業が直面する課題や問題点を明らかにすることを目的としています。
当研究所内にものづくり懇話会(座長:小川紘一 東京大学 政策ビジョン研究センター シニ
ア・リサーチャー)を設置し計6回にわたり、各分野の有識者から問題提起につながるプレゼンを
いただき、講師、経済産業省を交えたディスカッションを行っています。
本稿では、平成26年12月12日、ドイツで取り組みが進んでいる「Industrie4.0」をテーマに行わ
れた懇話会の様子を紹介します。
左から小川座長、西垣室長
永野講師
ものづくり懇話会メンバー名簿
座 長:
小川 紘一 東京大学 政策ビジョン研究センター
シニア・リサーチャー
講 演(平成 26 年 12 月 12 日)
永野 博 科学技術振興機構 研究開発戦略センター
特任フェロー
眞木 和俊 ㈱ジェネックスパートナーズ 代表取締役会長
眞木講師
参加者:
西垣 淳子 経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室長
川森 敬太 経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室 課長補佐
高梨千賀子 立命館大学 MOT 大学院
テクノロジー・マネジメント研究科 准教授
廣澤 孝夫 (一財)企業活力研究所 理事長
宮本 武史 (一財)企業活力研究所 専務理事
吉本 陽子 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング㈱ 主席研究員
国松 麻季 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング㈱ 主任研究員
ほか
(企業名・役職名は当時、氏名順不同、敬称略)
「ドイツ政府の第 4 次産業革命 Industrie4.0 ―日本のモノ作り産業へのインパクト―」
∼永野博 科学技術振興機構 研究開発戦略センター 特任フェロー 講演∼
【Industrie4.0 の概要】
Industrie4.0の目標は「デュアル戦略」とされており、
ドイツは次世代においても世界の製造業のリーダーで
高付加価値の完成品の輸出と、生産に必要なシステムの
あり続けるために、製造業高度化に向けた産官学共同の
輸出の両方で攻めていこうとしている。化学、自動車、
アクションである「Industrie4.0」を推進している。ド
機械、電機、農業およびICTの6分野をあわせた産業に
イツの社会的背景は日本とも似ており、少子高齢化の進
よる付加価値創造額を2025年までの間に年間1.7%ずつ
行、資源の制約、産業空洞化の懸念などがある。
成長させることにより、2025年のドイツ製造業の輸出額
38
企業活力
産業
研究
は、中国、米国を抜き世界一位になるものと展望してい
より将来、中小企業の参加を容易にすることや、EUに
る。産業全般が強ければこのような政策は出さないわけ
対してコンセプトを提案することなどを目的としている。
であり、ドイツ政府が将来を睨んで「何をやらなくては
プラットフォーム運営委員会のメンバーは企業が大半を
ならないか」という立場が見て取れる。Industrie4.0は
占めており、連邦政府3省庁(経済エネルギー省、教育研
2025年を一応の目標とした政策であり、ビジョンの段階
究省、内務省)や3業界団体(機械工業、IT・通信・ニュー
を過ぎ、現在は研究開発を行うとともに、標準化の方法
メディア産業、電気・電子)が一体となって支援している。
などに注力している。
Industrie4.0作業部会の最終報告書に掲載された企業
アンケートによると、Industrie4.0の実現における最重
【Industrie4.0 立上げに際しての政府および外部専門家
要課題が標準化であると回答した企業が多かった。報告
機関の動き】
書で言及されている「参照アーキテクチャ標準化戦略」
ドイツでは、2006年に連邦政府として初めての科学技術
は、複数の工場、特に製造プロセスと運営管理システム
イノベーションについての基本計画ともいうべき「ハイテク戦
全体をネットワークで結ぶために標準化が必要となる技
略」が策定された。2010年には「ハイテク戦略2020」へと改
術的な表現や実用段階の規則を総称したものである。
訂され、翌2011年11月に発表された「ハイテク戦略2020」の
Industrie4.0では、ドイツ電気技術委員会が標準化ロー
アクションプランにおいて、Industrie4.0は10件の「未来プロ
ドマップを発表したり、IEC(国際電気標準会議)など
ジェクト」の一つとして初めてその名称が登場した。その後、
の国際標準、CENELEC(欧州電気標準化委員会)など
メルケル政権第3期の戦略として「新ハイテク戦略」が2014
の欧州標準との連携を強めたりといった動きをとってい
年9月に発表され、Industrie4.0の位置付けが高まった。
る。また、標準化についての12のテーマ領域を設定して
政策の策定過程で注目すべきは、メルケル政権になっ
おり、システム関連の手続き等に重点を置いている。
て政府の外部からのアイディアを取り入れるようになっ
たという点である。「ハイテク戦略2020」の発表直後の
【産学連携、Industrie4.0 の事例“it's OWL”】
2011年1月に、連邦教育研究省の審議会ともいえる産業
地域分散型のドイツではクラスター支援が盛んで、政
界代表者ら外部専門家で構成される「研究連盟 経済・
府支援の金額も大規模である。産学連携の主要プロジェ
科学」と称される組織においてIndustrie4.0についての
クトのひとつで、Industrie4.0の事例でもあるit's OWL
検討を開始し、その結果が「ハイテク戦略2020」のアク
は、「考える工場」スマートファクトリーのモデルであ
ションプランに登場したことになる。また「研究連盟 り、デュッセルドルフ近くで実施している。5年間で連
経済・科学」は「ドイツ工学アカデミー」と共同で意見
邦政府からは4千万ユーロ(50∼60億円)、民間資金も
書を提出し、2013年4月にIndustrie4.0のためのプラット
含め全体では1億ユーロ(約140億円)の資金規模である。
フォーム(運営組織体制)を設立することとなった。
複数の大学、研究機関が実施しており、さらに研究主体
「ドイツ工学アカデミー」は、当初は政府からの資金は
として22社の企業が参加している。戦略目標として地域
入っていなかったが、メルケル首相らが連邦の法体制を
の雇用維持と新規雇用の創出、起業や研究所の新設等を
整備して政府資金を投入できるようにした。「ドイツ工
掲げて進行中である。it's OWL全体構成のうち、5つの
学アカデミー」会長の一人であるKagermann教授が、
分野横断的プロジェクトはベーシックな部分であり、フ
Industrie4.0の名付け親と言われている。
ラウンホーファー研究機構や大学等が担っている。さら
に個別企業が主体的に活動する33のプロジェクト(サブ
【Industrie4.0 の運営、標準化】
システム、システム、ネットワークシステムの3領域か
Industrie4.0のプラットフォームは、運営委員会を中心
らなる)がある。また、8つの「持続可能な措置」を通
とし、ここに対して戦略的な示唆を行う代表者会議と専
じ中小企業への技術移転等も行っている。
門家を派遣する科学的アドバイザリー会議がある。運営
委員会の下にはワーキンググループ(WG)がいくつか
【Industrie4.0 のインパクト、ドイツの中小企業対策】
あるが、たとえばWG1は「情報ネットワークの標準化と
新概念(「Industrie4.0」)によるビジョナリー効果は大き
参照アーキテクチャ」を担当しており、標準化の推進に
い。エネルギー政策についても同様だが、ビジョンの作成段
企業活力
39
産業
研究
IoT がもたらす我が国製造業の変容と今後の対応
階から多くの関係者を含めてディスカッションをしながら進
かったわけではない。1980年代のドイツは日本を模倣し
めていくということがドイツと日本の違いの一つでもある。
ようとしていたし、1990年以降しばらくは東西ドイツが
ドイツの中小企業政策は、
「強いものをより強く」という
統合した混乱の中、経済も低調で、2000年ごろは「ドイ
政策であり、弱いものを助ける内容ではない。クラスターな
ツ病」といわれていた。我が国は現在のドイツを見るだ
どでも、政策文書の中で、欧州で1番のものを世界で1番に
けではなく、この20∼30年の間にドイツがどのような発
すると明示するなど「強者を支援する」効果を狙っている。
展の仕方をしてきたのかを冷静にみるとともに、そこか
現在ドイツ経済は比較的堅調だが、いつも調子がよ
ら学べるものは何かを考える必要がある。
「実務・現場からみた 『日本版インダストリー 4.0』 に向けた課題認識と論点」
∼眞木和俊 ㈱ジェネックスパートナーズ 代表取締役会長 講演∼
【インダストリー 4.0 に相当する提言を進めるにあたっ
る中、組織的にはモラルハザードに陥りがちだ。
ての問題 その 1】
これらの問題が解決されないままでは、いくら優れた
日本の製造業においてインダストリー4.0に相当する提
戦略(インダストリー4.0に相当する提言)が描けたと
言を進めようとした場合、そのための条件はある程度揃っ
しても十分に機能しない可能性がある。
ており、日本発の仕掛けができる可能性もあると考えられ
る。ただし、それを進めることがプラスかマイナスか考え
【「日本版インダストリー 4.0」の世界観イメージ】
た段階で各社の足が止まってしまうことが懸念される。
今後、日本の製造業が具体的な検討を要するポイントと
まず想定される問題点として「製造ノウハウの外部流
なるのが、
「(消費者と生産者の)ボーダレス化」、
「曖昧な
失やガラパゴス化のリスク」がある。
VOC(お客様の声/Voice of the Customer)による検索
日本の中で人手不足や高齢化を補うためにIT化や自
(ニーズ)」、
「マルチEMS(Electronics Manufacturing
動化は進むが、それは、製造ノウハウの外部流失を容易
Service)」、
「スーパーサプライヤー」、
「ユーザーが意識し
にする。一方、あえてブラックボックスとして人間が介
ない製品メンテナンス/付加価値サービス」の5点だ。
在するところを残しすぎると、インダストリー4.0的な
動きに柔軟についていけないというジレンマがある。
また、日本が不得意なグローバル対応を効果的に併走
させないと、ガラパゴスとなり単なる自己満足的な結果
で終わる懸念もある。
なお日本の製造業は、製品の品質は世界トップだと自
負しており、現時点では実際そうだと思うが、将来的に
マルチEMS:「情報」さえもらえれば、後は、材料を各所から調
達、製造し、すぐ届けるというサービスを行えるアセンブラー
スーパーサプライヤー:高収益部材を作れて、市場影響力のあ
るサプライヤー
ユーザーが意識しない製品メンテナンス/付加価値サービス:
例えば、トラブル発生時に担当者が現地に行くことなく、ユー
ザーもトラブルに気づかないうちにインターネットを介して自
動で対応できるメンテナンスサービス。またこのようなデータ
を体系的・統計的に収集し、分析することにより、新たなビジ
ネス(付加価値サービス)機会を創出できる。
そうあり続けられるかは不透明だと思う。
なかでも日本の製造業が意識的に強化しなくてはならな
【インダストリー 4.0 に相当する提言を進めるにあたっ
いのが、低付加価値工程として国外に出してしまったマル
ての問題 その 2】
チEMSに相当するアセンブラー機能である。国内でどれ
さらに現場での実務的な問題点が2つあると考えられる。
ほど高付加価値材料を生み出したとしても、部品生産だけ
1つ目は「IT(標準化やグローバル対応等も含む)に
では過当競争にさらされる。最終製品の企画提案力と価格
対するリテラシーの欠如」である。これを克服するには
決定権はアセンブラーに委ねざるをえないからだ。
教育投資の増大が避けられないが、特に若い世代はお金
こうした取り組みを進めるうえでは、セットメーカー
をかけられて学んだ機会が少なく、こうした状況に対す
としてのコーディネート力、プロモーション力、ブラン
る経営者の理解も十分ではない。
ド力が重要になってくる。さらにこれらの能力を維持強
2つ目は「改善意欲の低下」である。いわゆる右肩上
化するうえで、日本勢に有利となる標準化推進や差別化
がりの高度経済成長が終焉し、非正規雇用の割合が増え
戦略が必要である。
40
企業活力
C
R
CSR
ヨーロッパと
CSR
S 研究会の意見交換会講演
(抜粋)
CSR 研究会
当研究所では、平成 26 年 10 月 21 日(火)に CSR ヨーロッパ エグゼクティブディレクター
の Mr. Stefan Crets を招き、CSR 研究会との「CSR 意見交換会」を開催致しました。当日は、
Mr. Stefan Crets から御講演を頂いた後、
ご出席者(19 名)を交えて活発な意見交換を行いました。
ここでは、Mr. Stefan Crets の講演内容の一部をご紹介させていただきます。
写真左から、髙座長、Mr. Stefan Crets、通訳、福本室長
CSR 意見交換会の様子
欧州における CSR のトレンドとチャレンジについて
欧州におけるCSRのトレンドは以下のような変遷を経
きている。所謂レポーティングだけではなく、CSRを
て(次図)、収束してきていると考えている。
「ビジネスのオペレーションにも組み込んでいく」とい
1つ目のトレンドは、インテグレイティド・レポー
うことが求められている。
ティングへの進化。企業の活動にお
いて「どのような価値が創出され」
「どのようなリスクがそこに内在す
るか」ということも含まれている。
2つ目のトレンドは、所謂コンプ
ライアンスやリスクマネジメントの
観点から、CSRをよりビジネスの方
に近づけて「価値を共有する」とい
う流れになってきている点である。
3つ目のトレンドは、「今までど
のようにビジネスをやってきたか」
自分自身(自社)の為だけにやって
きただけではなくて、もちろん社会
に貢献するということを踏まえ取り
組んできた。それから更に進み、マ
ルチステークホルダーと更に「エン
ゲージしていく」ことが要求されて
企業活力
41
C S
R
CSR ヨーロッパと CSR 研究会の意見交換会講演(抜粋)
以上の3つのトレンドは、どれか1つだけやっていれば
また、基本的にシェアホルダーのための付加価値をつけ
いいというわけではない。3つのトレンドの全てに対応す
ていくというだけではなく「社会に対しての付加価値」が重
ることが必要になってくる。ただレポーティングをする
要になってくる(次図)。「コミットメントをする」「ゴールを
だけでなく、ただマルチステークホルダーとの話ができ
提起している」企業は増えてきているが、まだ「アクション」
ればいいというだけではなく、また、ただ価値が上がっ
のところの難しさが課題として残されている。
てくればいいというだけではない。3つとも必要である。
CSRに関する課題をどのように克服していけばいいか
現在のレポーティングは本社のポリシーのストーリー
ということであるが、以下の6点が代表的なものとして
のみに重きを置いてしまいがちであるが、むしろ「ター
挙げられる(次図)。
ゲット」「成果」「チャレンジ」こういったものについて
①重要さ(マテリアリティー)
ステークホルダー向けにレポーティングをすべきである。
ビジネスに一番関連のあるものについてレポーティン
また、そのレポーティングは、パフォーマンスのビジネス
グをしていく。そして、それに基づきビジネスもステア
マネジメントにきちんと結びつけた形で、しかも統合され
リングしていくということである。その部分にはもちろ
た形で出していくということが必要になってきている。
んオポチュニティーもある。
④サプライチェーンマネジメント
②ステークホルダー・エンゲージメント
コンプライアンスをもっと効率よくやるということは
本社のレベルのみ、またレポーティングの目的のみで
様々な要因で難しい部分があるが「セクターや業界にお
行われているようなものが多いが、それを更にシステマ
いて協働で取り組む」「サプライチェーンのプロジェク
ティックにし、ステークホルダーとの対話も様々なレベ
トにおいて協働で取り組む」というのも一案であるし、
ルで持つという事が重要である。そして、戦略や優先順
バリューチェーン、イノベーションのためのパートナー
位の設定においても、その対話から導き出されたものを
シップといったものにもチャレンジしてもらいたい。
踏まえていく事が望まれる。新しいビジネスをそこで創
⑤ビジネス、イノベーション(R&D)への統合
出するということも含まれる。
経営企画或いは戦略部門等のセッションでCSRの影響
③インテグレイテッド・レポーティングと透明性
力を出していかなければ、ビジネスへの統合は難しい。
42
企業活力
C S
R
CSRという機能を持っている部門がどの位置にあるかと
ションの必要性を強く感じており、国際レベル、国、地
いうところによるが、今まで外(社外)ばかりを見過ぎて
域、都市のレベルまで「ビジネスのアライアンス」とい
いたところもあるかと思うので、中(社内)ももっと見て
うことも含め取り組んできている。
もらいたい。「製品」「ビジネスモデル」「ビジネスプロ
アドボカシーにおいては、例えばはっきりと「〇〇%
セス」こういったところもぜひフォーカスして欲しい。
を○○年まで削減する」ということをコミットメントし
⑥アドボカシー、コラボレーション
て公表する等、しっかり外に向かって発信していくとい
CSRヨーロッパもステークホルダーとのコラボレー
うことが重要だと感じる。
図表の出典:CSRヨーロッパ 2014年10月11日「CSR意見交換会」講演資料
企業活力
43
産業 CDGMラウンドテーブ
人材 ルセミナー レポート
第17期CDGMラウンドテーブルセミナー結果報告
CDGM(Creative Dynamic Group Method)とは、日本人で唯一エドワード・デミング博士の右腕として活躍
した吉田耕作博士が編み出した「創造的で成長し続ける小集団活動」のことです。
小集団活動を通じて「仕事のやりがい」(Joy of Work)とサービスの質と生産性を高めることを狙いとしてお
ります。
○第17期CDGMラウンドテーブルセミナー結果報告
て、仕事のローテーションを定期的に行うことを実施し
平成26年7月よりスタートした第17期CDGMラウンド
ました。また、仕事場のレイアウト変更を行いました。
テーブルセミナーは、平成26年12月に最終回を迎えまし
今までは、業務の担当ごとに配置された仕事場となって
た。
いたため、他の業務を手伝う機会、または、手伝いをお
12月13日に行われた最終回のセミナーでは、参加した
願いする機会が失われていました。レイアウト変更によ
各チームから半年間の総括について発表が行われ、指
り双方が協力できるような体制を作り、お互いの業務の
導講師の吉田耕作先生(カリフォルニア州立大学名誉教
理解を深めるのに役立つ配置としました。そして、必要
授)による講評がなされました。
なデータを誰でもわかりやすく取り出せるような施策を
今期5チームの活動結果は次の通りです。
しました。サーバーにあるフォルダの整理を行い、フォ
ルダに関するルールや、ファイルに関するルールを定め
〈チーム 1〉
ました。これで、初めてアクセスした人でもわかりやす
物流企業から参加したチームです。職場の問題として、 いものとなりました。2つめの拠点では、こちらも、イ
特定の人に仕事の負荷がかかっていたり、個人で仕事を
ンタビューででていた、物理的に人事交流がなく他の業
抱えていることがあったり、残業時間に偏りがあったり
務の理解が行われていないということから、1階と20階
といったものがあげられたため、「なぜ業務分担に偏り
の人の交流を図るため、定期的に一定の期間配置の入替
があるのか?」という問題をテーマに取り組みを行いま
を行うことを実施しました。この結果、業務レベルがあ
した。まずは、業務の偏りが、仕事の属人化が原因では
がった、新しい人に教えることでより業務を深堀できた、
ないかということで、3つある拠点それぞれの業務を洗
居ない人の分をフォローしあった、など業務の理解度が
い出し、属人化の具合を調査しました。属人化の定義と
あがったことと、協力体制がより強くなったことがわか
しては、ある作業項目にて、一人でこなせる者が二名に
りました。これらの施策により、属人化率は、1つめの
満たない状況にあることとしました。調査の結果、全36
拠点では、12.2%減少し、2つめの拠点では、6.3%減少
業務中、上位11業務の属人化解消を図ることで、全体作
しているという結果が得られました。まだまだ、属人化
業項目の77%を、属人化が解消された状況とすることが
されているところがあるため、このチームはさらに今後
出来るということが分かりました。次に、現場責任者に
も取り組んで行く予定としています。
インタビューをしてどのような背景で属人化してしまっ
たのか、そして、属人化に対しての施策を行っていると
〈チーム 2〉
ころはあるのかを調査しました。このインタビューによ
流通支援部から参加したチームです。職場のオペレー
り、現場で行っている施策と協力するところ、今回の活
ションの問題で拠点間の移動に無駄が多いということ
動で新たに施策するとことを検討しました。その結果、
があげられたため、「なぜ無駄な回送が多いのか?」を
2つの拠点で施策を実施することにしました。1つの拠点
テーマに取り組みを行いました。まずは、現状の把握の
では、インタビューにもでてきていた、仕事のローテー
ため、各拠点にどのくらいの取扱量があるのかを調査し
ション・配置転換を行ってこなかったということを受け
ました。その結果、東京の出庫が一番多かったのですが、
44
企業活力
産業
人材
東京はすでに対策を行っているため、2番目に多い大阪
広範囲で多くの宅配先があることと納品時間の重複に
について対策を考えることにしました。次に、大阪から
ありました。チームは、まず、納品時間指定でなくても
福岡の間のシャトル便について実態調査を行うことにし
よいものがあるのかを検討し、その後、チャーター便の
ました。シャトル便は、定期的に往復で配送する便で、
配車の効率化を検討しました。そして、新しい運行表を
その積載状況を調べました。すると、月によっては、積
作成しました。これにより、宅配便を減らしチャーター
載量が60%に満たないものもありました。この積載状況
便での配送としてコストの削減を行うことを目指しまし
を改善するとコスト削減につなげられるかと考えさらに
た。ちょうど同じ頃チャーター便を依頼していた依頼先
詳しくこのシャトル便を調べました。その結果、大阪か
が変更となり、このことによりさらにチャーター便の数
ら福岡の便は、シャトル便を使用しているのは広島まで
も半数台分減ることになりました。当初予定していた新
で、その先の福岡までは、別途料金が掛かっていました。 しい運行表での配送ルートの運用とチャーター便を0.5
また、配送リードタイムも1日プラスとなり、シャトル
本削減することにより、このチームの活動成果は、月に
便の運用変更の必要も出てくるため、今回の取り組みで
¥180,000の削減という結果となりました。
は、効果が得られないことがわかりました。そこで、再
度拠点間配送の取扱量を見直し、福岡物流センターから
〈チーム 4〉
東京物流センターへの荷物量が多いことに注目してその
人事異動で部署内の4人中3人が入れ替わってしまった
内容を確認しました。福岡から東京への荷物の種類は、
部署から参加したチームです。職場内の問題に、各業務
①商品、②化粧箱汚れ商品、③顧客返品商品の3つであ
の引継不足や業務不慣れによる業務の偏りや遅れが生じ
ることが分かりました。そのうち、時間的に余裕のあ
ていることがあげられました。このチームは、部内業務
る、②化粧箱汚れ商品と③顧客返品商品について施策を
内容の明確化と手順書化することで、業務の効率化を図
考えました。輸送方法については、現在個別に送ってい
り、現場へ影響のない仕組みを構築することをゴールと
るものを5トンコンテナにまとめて送ることにしました。
して、「なぜ業務が効率化されないのか」について原因
そして、輸送頻度は、現在その都度送っていたものを、
をあげました。その結果、「業務マニュアルがない」、
月に2回としました。その結果、検証期間の2ヶ月間で
「業務のやり方が伝承されていない/業務手順が解らな
¥134,730の削減を行うことが出来ました。このチーム
い」、「講師の機会が多い/講師が1名」、「規程が多
は、今後の展開として、輸送時間に余裕のある回送に関
い」、「前任者が業務多忙で引き継ぎ時間がない」と
しては、海上輸送など多種多様な輸送モードも検討した
いう原因が出てきました。それぞれ担当を分けて、実態
いとしています。
を調べました。「業務マニュアルがない」ことでは、マ
ニュアルの有無を確認しました。その結果、ほとんどの
〈チーム 3〉
マニュアルがないことが分かりました。「業務のやり方
流通支援部から参加のもう一つのチームです。職場
が伝承されていない/業務手順が解らない」ことでは、
の問題にパーツに掛かる費用が下がらないということが
どの業務をどの程度知っているのかメンバーで確認し、
あげられたため、「なぜパーツ運用コストが下げられな
どの業務が理解不足なのかが分かりました。「講師の機
いのか?」をテーマに取り組みを行いました。まずは、
会が多い/講師が1名」ことについては、誰がどのくら
パーツ運用のコストを調べました。その結果、パーツ
い講師を行っているのかを確認し、講師の業務に偏りが
配送費の割合が一番多いことが分かりました。次にこ
あることが分かりました。「規程が多い」ことについて
のパーツ配送費についてどの部分を自分たちが扱えるの
は、規程の量と改訂量と改訂工数を調べました。規程の
かを検討しました。その結果、SD倉庫の補充配送コス
改訂も多いことがわかり、改訂組と要・不要確認組とに
トであれば効率化出来ることが分かりました。そして、
分担して改善を行いました。「前任者が業務多忙で引き
SD倉庫補充配送コストの割合を調べました。配送は、
継ぎ時間がない」ことについては、メンバーがどのくら
宅配便とチャーター便がありますが、ほとんどの配送
い何を引き継いでいるのかを調べました。これらの結果
が宅配便であることが分かりました。宅配便だと個別
をもとに、①部門内担当業務一覧の作成、②各業務の簡
配送であり、コストが掛かっていますが、チャーター
易マニュアルの作成、③部内での教育(業務内容・手順
便であればコストが抑えられます。チームは、なぜ宅配
の勉強会の開催)に取り組みました。また、進捗状況を
便を使用しているのか原因をあげてみました。原因は、
お互いに把握するため、④朝礼シートに進捗状況報告欄
企業活力
45
産業
人材
CDGMラウンドテーブルセミナー レポート
を追加したフォームの作成、⑤ホワイトボード(A3サ
チームより経過発表が行われ、発表に対しては他の参加
イズ)に月単位での進捗管理表作成を行いました。この
者から鋭い質問や意見、アドバイスが出されていました。
結果、業務の協力体制が出来てくるようになりました。
特に、今回の参加チームでは、同じような問題を解決し
そして、このチームはどのくらい効率化されたのかを測
ているところもあり、それぞれのチームがお互いのチー
るために、それぞれの工数を調査しました。その結果、
ムの解決方法に大変興味を持って質問をしている場面も
施策を開始してから2ヶ月間で、作業工数は2人が下がり、 ありました。通常では見られない、他の会社の問題や解
2人は上がりました。上がった原因としては、特別なイ
決方法を見ることにより、共感したり、励ましあったり
ベントが入っていたからとのことでした。それぞれが担
しながら、多くの気づきをされていたようです。このよ
当している業務で見てみると、全員が下がっていること
うなセミナー形式の中で、お互いが学びあえたことを喜
が分かりました。このチームは、1月からの目標として
ぶ声も多くいただきました。
月1回有給休暇を取ることとしています。それは、今回
の活動により休んでも他のメンバーが業務を行うことが
最終回のセミナー後は打ち上げパーティーが開催され、
できるようになったからです。
その中で吉田先生から各参加者に段位が授与されました。
また、受講生同士が交流を図りつつ、半年間の労をねぎ
〈チーム 5〉
らいました。
工場の各部門から集まったチームは、職場で本当に
困っている事のアラームが共有できない(見えない)と
○第18期CDGMラウンドテーブルセミナー経過報告
いう問題が挙げられたため、「何故、問題発生時に情報
現在行われている第18期CDGMラウンドテーブルセ
共有出来ないのか?」ということをテーマに活動を行い
ミナーは、平成27年1月17日(土)にスタートいたしま
ました。まずは、問題と思われることがどの程度起こっ
した。今期は当初3チームのご参加をいただきましたが、
ているのかを確認しました。今回は、工場内の一つの部
第2回目の2月14日からは、4チーム20名となりました。
署の進捗を事例として、計画に対し実績がどうなってい
現在は、各チームが職場の問題をあげて、その中からど
るのかを確認しました。その結果、計画より実績が遅れ
の問題について活動を行うのかを検討しているところで
ているタイミングが8回あることが分かりました。次に、
す。今期も、参加されているチームは、業種の違う会社
なぜこのようなことが起こってしまったのかを調べるた
ですが、あがってくる問題は、共通する部分も多く、興
め、アンケートを行い、原因を調べました。その結果、
味深く他の会社のチームの発表を聞かれていました。今
問題が発生しても個人で抱えて解決をしていることが多
回も様々なテーマがあげられると思いますが、解決すべ
いということが分かりました。この結果を受けて、メン
き課題を捉え、半年間かけて具体的な改善策に取り組み、
バーは、問題発生時に個人の負荷を減らし、情報を共有
成果を上げていくものと期待されます。
できるようにするためのアラーム発信用のSOSシートと、
上司がアラームを受け取ってから対策するまでの対策
シートを作成しました。そして、まず2つの部門でテス
ト運用を行いました。運用の結果、SOSシートで期限を
CDGM ラウンドテーブルセミナーのお問い合わせ先
(一財)企業活力研究所 担当 関口・須藤
TEL 03 3503 7671 E-mail [email protected]
設定しているので回答が早くなり、口頭でのやり取りよ
り問題への意識が高まったとの意見がでました。また、
当初1人担当で納期が厳しいと感じていたものに対して
活用したところ、担当を増やしてもらいなおかつ時間に
余裕が出来て計画的に進められるようになったとの感想
も出ていました。チームは、この結果を受けて、さらに
今後運用を持続し、SOSシート運用を改善してくことに
しました。
毎回のセミナーでは、吉田先生からの講義のほか、各
46
企業活力
第 18 期 CDGM ラウンドテーブルセミナーの様子
研究所便り
コ ラ ム
平成26年度「研究交流事業」について
企画研究部 調査役 吉井 清
2015年恒例の「箱根駅伝」では、青山学院大学が10時間50分を切るすばらしい記録で総合優勝を果たしました。箱
根の凍てつく山道を下る選手達が転ばないかとハラハラ心配しながらテレビを見ていた時、TV映像の中に気になる
青いクルマが目にとまりました。選手の後方に大会関係車両として伴走している見慣れないクルマです。あの「燃
料電池自動車」でした。私もかって多少携わったことがありますが、燃料電池の開発には途方もなく長い歳月と多く
の資金が注ぎ込まれ、開発に携わった関係者一人一人のご苦労がしのばれます。水素燃料電池の開発・実証研究は、
1993年に化石燃料の枯渇と地球環境に対する不安から、ニューサンシャイン計画の一環として推進されてきました。
基礎研究から、実証研究開発、インフラ整備等を経て、やっと「燃料電池自動車」が本格的に公道を走るTV映像を
見ることができたのです。
ところで、当研究所の「研究交流事業」では、「国際経済研究会」「製造産業研究会」「産業技術研究会」「企業
経営研究会」「環境・エネルギー研究会」の5つの研究会が活動しております。それぞれ月一回のペースで毎回自由
闊達な意見交換が行われておりますが、この中にも創業時の事業化・商品化等「燃料電池自動車」に負けないような
先人達の苦労話をたくさんお聞きすることができます。
研究会メンバーは各業界・大学・経済産業省の方々で構成しており、普段お付き合いのない方々と気兼ねなく意
見交換ができるネットワーク作りの「場」でもあります。もちろん苦労話のみならず政策立案の背景から、新聞紙面
(ニュース)に掲載されない裏話。さらには、社員の「おもしろいアイディア」を上司に提案しても、キャリアを積
んだ一世代前の上司が判断するため、「アイディア」がなかなか製品化に結びつかないといった若手社員の悩みまで
多岐にわたり、興味深い研究会になっております。
事務局としては、お忙しい方々ばかりなので、カゼ等で体調を崩されていないか、遠方(関西方面)から参加され
る方には無事に研究会に来られるか(今晩中に帰宅できるか)。今日の「弁当」は、おいしく召し上がっていただけ
たか等々といったことも気になるところです。
メンバーの皆様、1年間の研究会も中間地点を折り返しました。引き続き積極的にご参加いただき有意義な研究会
になりますよう期待しております。
編
集
後
記
先日、大学時代に2年程アルバイトをしていた居酒屋の当時の店長が営んでいるお店(現在は、個人店の料理屋)
へ事前連絡無しで訪問してみました。当時からしますと私もかなり残念?な方へ容姿が変わりましたので、初めはな
かなか気付いてもらえませんでしたが、お声かけしたところ、、、一瞬間が空き、、、「オォーー」となり、そこか
らは一気に当時の話に花が咲きました。20年程前のことでもお互いに色々と覚えていて、あっという間に時間が過ぎ
ました。お金を稼ぐことの大変さ、社員の仕事に向き合う姿勢、チームで働く上での「和」の大切さ、お客様から教
わったこと等々、学生時代にアルバイトで経験したことはとても貴重で「働くこと」の喜び・やりがいのきっかけを
与えていただいたような気がします。
さて、今号にも掲載致しましたが、当研究所におきまして「ものづくり懇話会」をご関係者の皆様にご協力いただ
きつつ実施をしております。
「人材研究会」「CSR研究会」は調査研究報告書が間もなくまとまる予定でございます。こちらは、次号にて概要
など掲載させていただきます。 (小西 広晃)
企業活力
47