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電圧不平衡における配電系統の電力品質向上
E02058
杉山
潤
指導教員
1.はじめに
藤田
吾郎
るが,これは電気鉄道による電圧不平衡率であり,一般的
電気設備からみて高品質な電力とは,電圧・周波数が所
定の値に維持され,波形ひずみのないことである。社会シ
な電力品質や系統においての電圧不平衡率は規定されて
いない。
ステムが大規模化,複雑化している現在,停電,瞬時電圧
低下,電圧変動などの電源品質に起因した経済損失の大き
さは,2003 年 8 月の北米・カナダ大停電事故でも明らか
[1]
3.研究方法
図 1 のような 1MW 小規模需要家を想定して, A 系統
さらに最近では,パワーエレクトロニクス応
と B 系統の U,V,W の三相配電系統において単相負荷
用機器の普及に伴う高調波問題や電磁波障害が顕在化す
を接続し,需要家構内の電圧不平衡率を図 2 の
ることに加え,環境問題や化石燃料の枯渇化や電力の規制
MATLAB/simulimk を用いて算出する。単相負荷の接続
緩和に伴い次世代エネルギーとして風力,太陽光,燃料電
パターンを表 1 に示し,シミュレーション条件を表 2 に
池などといった「新エネルギー」の普及により需要化構内
示す。MATLAB/simulimk では図 3 に示すように Y 結線
においての電圧不平衡の増加により,いっそう電源品質の
の三相交流において相電圧から線間電圧を求め,各イン
確保は困難となり重要な課題と認識されてきている。
ピーダンスで割り,線間電流を求め,相電流を出力すると
である。
本研究では低圧系統において分散型電源(太陽光発電,
いう一連の流れを一つのブロックで計算をしている。
燃料電池)が大規模導入された場合を想定して電圧不平衡
の発生,抑制と対策および調査を行っていき,低圧系統に
100m
100m
100m
200kVA
300kVA
B
C
D
Single
3-phase
3-phase
Load
Load
Load
100m
おける電力品質の向上を目的とする。
200kVA
2.電圧不平衡
300kVA
100m
三相交流電圧が三相間において振幅の大きさ,または
A
位相差 120°が異なる状態である。電圧不平衡率は次式で
表すことができる。
Single
Load
電圧不平衡率(%)=逆相電圧/正相電圧×100
図1
本研究では逆相電圧と正相電圧は対称座標法により算
1MW 小規模需要家モデル
出した。電圧不平衡率の発生原因として,送電線のイン
表 1 単相負荷接続 CASE
ピーダンスの不平衡率,配電線の柱状変圧器や負荷のばら
つき,需要家の大容量単相負荷の使用があげられる。電圧
CASE
不平衡の影響としては人災に繋がる様な大きな事故とい
1
2
3
4
5
6
7
8
9
うのは今現在報告されてないが,送電線の付近の通信線に
誘導障害,電気機器に対して誤作動を引き起こす。
[ 2]
系統における基準値としては電気設備の技術基準省令
第 55 条により,電技の解釈の第 260 条において,交流式
電気鉄道の単相負荷による電圧不平衡率の限度は,その変
電所の受電点において 3%以上であることとなっている。
この 3%が今現在日本での雄一の電圧不平衡の限度値であ
U-V
○
○
○
○
○
○
○
○
○
System A
V-W
W-U
○
○
○
○
○
○
○
○
○
×
○
×
×
×
×
×
×
×
U-V
○
○
○
×
○
○
○
×
×
System B
V-W
W-U
○
○
○
×
×
×
×
×
○
×
×
×
×
×
○
×
×
×
続している。これより,各系統における不平衡率というの
は同じであったが,合計の不平衡率は CASE7 に比べて
CASE8 の方が低下しており,同相に単相負荷を接続して
いくと不平衡率が増大するという結果が得られた。
図 2 MATLAB/simulink モデル
I& U
U
U
V& U
V&W
V
W
V&V
I& V
W
V
I& W
I&
V&
Load
Block
図 4 シミュレーション結果
5.まとめ
V&UV
V&U
1 Z&
I& UV
I& U
V&
同相に単相負荷が集中的に接続されると不平衡率が増
I&
V&V
Y-Δ V&VW
1 Z&
I& VW Δ-Y
I& V
V&WU
1 Z&
I& WU
I& W
V&W
大することがこのシミュレーションで判明した。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)でも太陽光
発電システムを配電系統に局所集中的に導入された場合
における検証を行っているが,そこでも同相に太陽光発電
が導入された場合に対しての検証を行っている。
図 3 MATLAB/simulink の三相不平衡の計算方法
[ 3]
今回のシミュレーションでは単相負荷のみでの検証を
行ったが,小規模な発電機(太陽光発電,燃料電池)を付け
表 2 シミュレーション条件
Standard power
Standard voltage
Standard impedance
Single load volume
High voltage
system
1[MW]
6.6[kV]
43.56[Ω]
加えた場合を検証するとともに,電圧不平衡率を抑える調
Low voltage
system
相設備を導入したシミュレーションを行い,現実的な大規
模モデルの構築に繋げていきたい。
200[V]
0.04[Ω]
50[kW]
4.検討結果
図 4 に今回のシミュレーション結果を示す。CASE5~9
では A 系統,B 系統で不平衡率が増大したとしても,合
計の不平衡率として換算すると減少していることがこの
結果からわかる。注目されるべき点が CASE7 と CASE8
である。CASE7 では A,B 系統共に同相に単相負荷を接
続しているのに対して,CASE8では異相に単相負荷を接
参考文献
[1]中島廣一,「電源品質問題の現状と対策」,電気設備学
会誌,Vol.24,No4,2004
[2]小西博雄,「電圧・電流の不平衡とその対策」,電気設
備学会誌,Vol.24,No.4,2004
[3]「集中連系型太陽光発電システム実証研究」,独立行政
法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構の Web サ
イト http://www.nedo.go.jp/