建築材料 - 名城大学 理工学部建築学科ウェブサイト

建築材料
PC鋼材・金属材料
遮音材料
名城大学 理工学部建築学科
平岩 陸
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鉄鋼の性質
常識として知っておくこと
弾性係数
ポアソン
比
(N/mm2)
1/3
2.1×105
密度
(g/cm3)
線膨張係数
(/℃)
7.85
1×10-5
2.3
1×10-5
コンクリートでは・・・
2.1×104
1桁小さい
=柔らかい
1/6
軽い!
同じ!
2
応力
鉄鋼の性質:応力-ひずみ曲線
引張強度
降伏点
降伏の踊り場
弾性係数
弾性域
ひずみ硬化域
破断
ひずみ軟化域
ひずみ
塑性域
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鉄鋼の性質:PC鋼材(炭素の多い最硬鋼)
応力
降伏点が明確でないものもある
引張強度
破断
0.2%オフセット降伏点
便宜上の降伏点
除荷したときに・・・
ひずみ
0.2%残留ひずみ
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PC鋼材の使用先
プレストレストコンクリート工法用
その考え方
上からの荷重に対して・・
PC鋼材を使用
プレ
ストレスト
あらかじめ 力を与えておけば、強くなるのでは?
5
構造の違い
引張に弱く、割れてしまう
コンクリートのみ
鉄筋
鉄筋コンクリート造
鉄筋によって引張部分を補強
ひび割れは入る
構造体としてはOK
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構造の違い
PC鋼材
プレストレス
プレストレストコンクリート造
ひび割れも入らない
ようにできる!
特徴
・大スパンが取れる
=大空間、橋梁で多く採用される
・ひび割れ、たわみの低減が可能
・RC造よりも梁せいを小さくできる
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プレテンションとポストテンション
・プレテンション工法
プレ
テンション
あらかじめ 引張力を与える工法
・ポストテンション工法
ポスト
テンション
あとで 引張力を与える工法
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プレテンション工法
プレ
あらかじめ
テンション
引張力を与える
・工場施工向き
9
ポストテンション工法
ポスト
あとで
テンション
引張力を与える
・現場施工
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どうしてPC鋼材を使うのか?
・通常の鋼材より2~4倍引張強度が高い
・リラクセーション値が規定されている
PC鋼材と異形棒鋼の比較
降伏点 引張強度
(N/mm2) (N/mm2)
伸び
(%)
リラクセー
ション値
(%)
-
SD 295 295以上 440以上 16以上
SBPR
785以上 1030以上 5以上 4.0以下
785/1030
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PC鋼材
・PC鋼線
・PCより線(ストランド)
・PC棒鋼
SBPR785/1030
引張強さ(N/mm2)
見かけの降伏値(N/mm2)
Round
SWPR7
Pre-stress
Bar
鋼線の数
Wire
Steel
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PC鋼材による応力の導入の問題点
こうやってプレストレスを
与えるわけですが・・・
しばらくすると・・・
ストレスが減ってしまう
その理由は?
・コンクリートのクリープ
・PC鋼材のリラクセーション
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リラクセーション
一定のひずみを与えた場合に、
時間とともに荷重が減少する現象
→プレストレスが減少する
PC鋼材の品質にリラクセーション値の規定がある
:1000時間後の荷重減退量の割合 4%以下
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リラクセーションとクリープ
長時間経つと・・・?
輪ゴムを広げてひっかける
=輪ゴムが一定の変形を長時間保つ
=輪ゴムに一定の力が長時間働く
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リラクセーションとクリープ
長時間経つと・・・?
>
もとの大きさより
大きくなっている
=クリープ
:ひずみの増大
締め付ける力は
もとよりも小さくなっている
=リラクセーション
:応力の緩和
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定着具のいろいろ
応力を導入するときに
端部の定着方法が重要
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鉄鋼
Fe:鉄(iron)?
目的にあった強度、靭性の材質にするために、
純鉄に微量な添加物を加える
鉄鋼(steel)は、鉄に炭素(C)を加えたもの
この量で性質が変わる
構造材料:鉄筋、鉄骨
炭素以外の物を加えると?
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ステンレス鋼
語源は Stain + less Steel
錆び にくい 鋼
屋根材
鉄鋼にニッケル(Ni)やクロム(Cr)などを加えたもの
→高い耐食性、耐候性
よく使われるのは
SUS304:18%Cr+8%Niを加えたもの
通称18-8ステンレス
SUS430:18%Crを加えたもの
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耐候性鋼(コールテン鋼)
・鉄鋼に銅(Cu)を加えて耐候性を改善したもの
コールテン鋼とも呼ばれる
・表面に酸化皮膜(錆)を生じ、
内部へは錆が進展しない
外壁
・ステンレス鋼よりも安価だが、性能は劣る
・塩分によっては腐食する
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アルミニウム合金
アルミニウム(Al):
鉄鋼に対して、密度は1/3、強度は1/2→比強度大
純アルミニウムは軟らかいので、
通常は他の金属を添加して合金として用いる
銅(Cu)、マンガン(Mn)、すず(Si)・・・
ジュラルミン:Al+Cuの合金
ジュラルミンケース
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アルミニウム合金
アルミカーテンウォール
アルミサッシの
コンクリート躯体への取りつけ
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銅・銅合金
銅(Cu):
精錬方法が簡単であり
古くから使用されてきた
黄銅(真鍮)
銅+亜鉛 5円玉
銅葺き屋根
青銅(ブロンズ)
銅+すず 10円玉
洋白(ホワイトブロンズ)
銅+亜鉛+ニッケル 500円玉
ろくしょう
緑青+少し錆び
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チタン合金
Ti
・比強度が高い
・耐食性に優れる
・電解着色が可能
・加工は難しい
・高価
チタン屋根
(緑青に似せた物)
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亜鉛・すず・鉛
・亜鉛(Zn) ・すず(Sn)
用途:主として合金、めっき
トタン板の劣化
・鉛(Pb):密度が大きく軟らかい
放射線遮蔽効果がある
鉛中毒
用途:免震構造物用のダンパー
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金属の腐食
・金属が酸化する腐食
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例:2Fe + 2 O2 → Fe2O3(酸化鉄)
・金属同士が接触してイオン化する腐食
K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb Cu Hg Ag Pt Au
イオン化傾向大
Fe Al
eeee-
イオン化傾向の大きい
アルミがイオン化=腐食
・大きなひずみ下では応力腐食も生じる
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金属の防食方法1
・設計上の対策
異種金属、非金属と接触させない
表面に水やゴミがたまりにくい設計とする
・表面保護
めっき:金属による被膜
化学処理:表面に酸化被膜などを作る
ホーロー、モルタルなどによる保護
塗料や油による保護
ホーローバット
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めっき
・鋼板+すず(Sn)めっき = ブリキ
・鋼板+亜鉛(Zn)めっき = トタン
(溶融亜鉛めっき鋼板)
波トタン屋根
・溶融亜鉛+5%アルミニウム合金によるめっき
=ガルファン鋼板
・溶融55%アルミニウム+亜鉛合金によるめっき
=ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板屋根
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化学処理
アルマイト
:アルミニウム合金表面の酸化被膜
電解して表面を人工的に酸化させる
耐候性鋼の表面錆や
各種めっきもこの処理の一種
しゅう酸アルマイト鍋
耐候性鋼
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金属の防食方法2
・環境条件
湿度を下げる
結露を発生させない
腐食を生じさせる有害物質を除去する
・電気防食法
通電することによりイオン化を防ぐ
ee鉄筋のさびも防ぐことができる
Fe Al
e-e+
e-
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吸音・遮音材料
入射音
衝撃音
透過音
反射音 吸音
透過音・衝撃音の低減:遮音材料
隣室・階下への伝達の低減
反射音・吸音の調整:吸音材料
音楽施設などの音の残響時間の調整
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吸音材料
吸音機構:入射した音を内部で振動させて
エネルギーを減衰させる
多孔質・繊維質材料≒断熱材料
:ロックウール、グラスウール、ウレタンフォーム
板状・膜状材料
:合板、石こうボード、ハードボード
孔あき板材料
:孔あき合板、孔あき石こうボード
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吸音材料
ロックウール化粧吸音板
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吸音材料
吸音石こうボード:天井
孔あき合板:壁
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吸音特性
周波数によって吸音できる能力が異なる
多孔質・繊維質材料
:高音域に効く
吸音率
周波数
板状・膜状材料
:低音域に効く
吸音率
周波数
孔あき板材料
:効く山がある
吸音率
周波数
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遮音材料
・質量の重い方が遮音性能は高い:質量則
:コンクリート壁、鉛遮音板
・組合せで防止することも多い
:空気層、剛性材を含む二重構造
重く厚い材料
材料の組合せ
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建築材料2
吸音材料に関する次の記述のうち、最も不適当
なものはどれか。
1.多孔質材料の吸音率は、一般に、低音より高音のほ
うが大きい。
2. JISによる床衝撃音レベルに関する遮音等級では、そ
の数値が小さいほど遮音性能に優れている。
3.板状材料と剛壁の間に空気層を設けた吸音構造は、
一般に、低音域の吸音よりも高音域の吸音に効果が
ある。
4.壁体における音響透過損失の値が大きいほど、遮音
性能が優れている。
5.同じ厚さの一重壁であれば、一般に、壁の単位面積当
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たりの質量が大きいものほど、透過損失が大きい。