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テンサイのヨトウガに対する各種IGR剤の残効期間と散布
適期
誌名
北日本病害虫研究会報
ISSN
0368623X
著者
武澤, 友二
岩崎, 暁生
巻/号
60号
掲載ページ
p. 204-207
発行年月
2009年12月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
北日本病虫研報 6
0:2
0
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7(
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テンサイのヨトウガに対する各種 IGR剤の残効期間と散布適期
武津友二*・岩崎暁生*
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sandOptimalTimingo
fApplicationo
fSeveralInsectGrowth
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nSugarBeet
RegulatorsonCabbageArmywormMamestrab
YujiTAKEZAW A*andAkeoIWASAKI*
テンサイにおいて 8月下旬から発生するヨトウガ第 2世代幼虫に対し,昆虫
I
G
R剤)を 7月上旬から 8月中旬に散布し,各薬剤の効果的な散布
生育制御剤 (
時期を明らかにした
フルフェノクスロン乳剤とノパルロン乳剤は 7月中旬以
降,ルフェヌロン乳剤とテブフェノジド水和剤は 8月中旬以降の散布で被害を
許容水準程度に抑制した
また,クロルフルアズロン乳剤は 7月上旬散布でル
フェヌロン乳剤と同程度の効果があると考えられた.一方,テフルベンズロン
乳剤は 7月上旬散布でほとんど効呆が認められず,メトキシフェノジド水和剤
は 8月中旬散布でも被害を充分に抑制できなかった
フルフェノクスロン乳剤
は散布後 4
0日の時点でヨトウガ鮮化幼虫に対して高い殺虫活性が確認され,散
0日から 9
0日でも目立った残留成分量の減少は認められなかった
布後 1
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earmyworm,i
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,M
amestrab
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北海道においてヨトウガは,第 l世代幼虫が 6月下旬
効率的な散布時期を検討した
から,第 2世代幼虫が 8月下旬からそれぞれ 1ヶ月以上
BASFアグロ株式会社の福原英晃氏・日詰
圭氏に
にわたりテンサイを加害する. 7月上旬に脱皮阻害作用
は,フルフェノクスロンの残留量分析にあたってご協力
を持つ昆虫生育制御剤 (
I
G
R剤)を散布したテンサイで
いただいた
記して深謝する
は,ヨトウガ第 2世代幼虫の被害が無処理区と比較し抑
制されることが明らかとなり, IGR剤の長期残効が確認
材料および方法
2
) 通常使用されている合成ピレスロイド剤や
された (
試験は,北海道長沼町の中央農業試験場で実施した
テンサイは畦間 60cm株間 25cmで栽培し,試験は 1区
15m2 (
2
0
0
7年)または 1
0.
5
m2 (
2
0
0
8年
)
, 3反復で実施
し た ヨ ト ウ ガ 第 l世代防除として無処理区を含む全て
0
0
7年は 6月 2
5日にフルシトリネート 4
.
4
%液
の区に, 2
剤
(
1
,0
0
0
1
音)を, 2
0
0
8年は 7月 1日にアセフェート 50%
水和剤(1,0
0
0倍
)
, 7月 8日にフルシトリネート液剤
(
1,
0
0
0倍)を散布した
有機リン剤でのヨトウガ第 2世代に対する防除適期は,
加害開始期の 8月下旬頃であるが, 8月中旬以前の IGR
剤散布で、被害を許容水準以下に抑えることが可能であれ
ば,防除適期を失して大きな被害を受ける危険性を軽減
できると期待される.
また,北海道では侵入害虫のアシグロハモグリバエの
発生地域が拡大しており,テンサイにおいて本種に有効
なI
GR斉
J
j (1)による薬剤防除が必要となってきている
ヨトウガ第 2 世代の被害程度指数 (0~4) を,各区 25
アシグロハモグリバエ幼虫による被害が増加し始める 7
株について 8月 2
0日以降ほぼ 7日間隔で以下の基準に
月中旬から 8月上旬に IGR剤の散布をおこなう場合,ヨ
従い調査し, 1
12
:(被害程度指数)/(4x調査株数)I
x1
0
0
J
トウガ第 2世代幼虫に対する防除を省略できる可能性が
によって被害程度を算出した被害程度指数 0;食痕な
ある.
し
, 1;小さい食痕が数個みられる, 2;半数内外の葉に
本稿では, IGR剤の散布時期とヨトウガ第 2世代幼虫
食痕があり大きい食痕も点在する, 3;ほとんどの葉に大
に対する防除効呆の関係を調査し,その残効期間および
きい食痕がみられる, 4;ほとんどの葉が網目状に食害さ
*北海道立中央農業試験場
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n,Naganuma
,H
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9
1
3
9
5,
JAPAN
2
0
4
れている
す.調査を開始した 8月 2
0日はヨトウガ第 2世代加害前
1
. 各種 IGR剤の効果比較試験 (2007,2008年)
で,各処理区の被害程度はいす、れもほぼ Oだ っ た 以 降
2
0
0
7年は 7月 2日
, 2
008年は 7月 1
3日および 8月 1
1
の被害の推移は散布薬剤によって大きく異なった.最終
日に,下記の各種目R剤を散布し,被害程度の調査をお
調査日である 9月 3
0日の被害程度は,無処理区でほぼ
007年:フルフェノクスロン 10%乳剤 (
2,
000
こなった目 2
1
0
0に達した. もっとも効果が高かったフルフェノクス
倍),ルフェヌロン 5%乳剤 (
3,
0
0
0倍),ノバルロン 8.
5
%
ロン乳剤散布区で被害程度は 3
6
.
7だった ノバルロン乳
乳剤 (
2,
0
0
0倍),クロルフルアズロン 5%乳剤 (
2,
000倍
)
,
剤は効果がやや劣った(被害程度 5
0
.
7
) ルフェヌロン乳
テフルベンズロン 5%
乳剤(1.0
00倍 )
.
2
0
0
8年フルフェノ
5
.
3,
剤とクロルフルアズロン乳剤は効果が低く(同 6
クスロン乳剤 (
4
,
000倍
, 2,
000倍
)
, )レフェヌロン乳剤
6
7
目
0
),テフルベンズロン乳剤はほとんど効果が認められ
(
3,
0
0
0倍),ノバルロン乳剤 (
2,
0
0
0倍),テブフェノジド
8
.
7
)
.
なかった(同 8
3日に散布した結果を第 2図に示す 8月 20日の
7月 1
20%
水和剤 (
2,
0
0
0倍),メトキシフェノジド 20%
水手口剤
(
4
,
0
0
0倍).
各処理区の被害程度はいずれもほぼ Oだった.以降の被
2
. フルフェノクス口ン乳剤残効試験 (2007,2008年)
害の推移は散布薬剤によって大きく異なった最終調査
2
0
0
7年は 7月 2日
, 2
3日
, 3
0日
, 8月 6日
, 1
3日に,
7日の被害程度は,無処理区で 8
0を超え
日である 9月 1
2
0
0
8年は 7月 2日
, 1
3日
, 2
3日
, 8月 l日
, 1
1日に,フ
0
0
0
ていたのに対し,フルフェノクスロン乳剤散布区は 4,
ルフェノクスロン乳剤 (
2
0
0
7年 初0
0倍
,2
0
0
8年 :4,
0
0
0
倍
, 2
,
000倍希釈ともに効果が高く(被害程度 2
3
.
0
),ノパ
倍)を散布し,被害程度の調査をおこなった
ルロン乳剤もほぼ同等(同 2
5
.
7
)だったルフェヌロン乳
3
. フルフェノクス口ン残留量 (2008年)
0
.
0,
剤とテブフェノジド水和剤は効果がやや劣り(同 4
4,
000倍
, 2
,
000倍)散布直前
フルフェノクスロン乳剤 (
に展開葉をマーキングした
8月 1
1日および 9月 3
0日
51
.7
),メトキシフェノジド水和剤はほとんど効果が認め
3
.
3
)
.
られなかった(同 7
に,フルフェノクスロン乳剤散布区および無処理区の各
区1
0株のマーキング葉の中央部から,直径 5cmの鋼鉄
1
0
0r ベ〉ー無処理
0葉片をまとめ
製円筒で 2葉片をくり抜き,各処理合計 6
てフルフェノクスロン残留量の分析に供した分析は株
側
ク
ス
ノフ
ルブ
ー量ーメトキシフェノジド
一・ーテプフェノジド
一仁トルフェヌロン
士+
4
. 各種 IGR斉J
I
殺虫効果の室内検定 (2008年)
nU
フィーによる公定法によっておこなった.
M
m製 肺 穏
式会社エコプロ・リサーチに委託し,液体クロマトグラ
7
5
1日
薬剤散布直前に展開葉をマーキングした. 8月 1
に,すべての IGR剤散布区および無処理区から前項と同
0頭(無
様に採取した葉片を,解化直後のヨトウガ幼虫 2
O
処理区のみ 2
5頭)に与え, 2
0'
C
で 5日間飼育し生死を判
8
1
2
0
8
1
2
7
9
/
3
9
/
1
0
9/17
定した.
第 2図 IGR剤 7月 1
3日散布によるヨトウガ第 2世代被
害推移 (
2
0
0
8年)
結 果
点、線は被害許容水準(被害程度2
5
) を示す
1.各種 IGR剤の効果比較試験
7月 2日に各種 IGR剤を散布した結果を第 l図に示
1
0
0r ベ〉ー無処理
t
1
0
01<
>
ー畳
血処理
.
.
.
.
.
.
テ 71
レベンズロン
7
5ト
I
-←クノ ロル 71
レアスロン
4コールブェヌロン
制
挺
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日
悩
主
単
5
0
盟
a
3
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g
寸 ノ パJ
レロン
一
・-71
レフェノクスロン
メトキシフェノジド
一仁ト jレフェヌロン
一合一ノノ、ルロン
国 + 川 正 ノ 山 ノ 叫 醐
2
5
2
5
O
8/20 8
/
2
7
9
/
3
O
8
/
2
0
9
/
1
0 9/17 9/24 1
0
/
1
第 1図 IGR剤 7月 2日散布によるヨトウガ第 2世代被
8
1
2
7
9/3
9/10
9/17
第 3図 IGR剤 8月1
1日散布によるヨトウガ第 2世代被
害推移 (
2
0
0
7年)
∞
害推移 (
2 8年)
5
) を示す.
点線は被害許容水準(被害程度 2
5
) を示すー
点、線は被害許容水準(被害程度 2
-205一
1
5
0
1
0
0I
r
--.-無処理
7
/
2
散布
7
5トゴト 7/23散布
I-0- 7/30散布
│ベ>- 8
/
6
散布
5
0トす 8/13散布
べ〉ー
1
l
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E凶
高
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"
昌
之 1
0
0
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2
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酬
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慾
5
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~H!
8
1
2
0 8
1
2
7
2
,
0
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0
倍希釈
0
0
倍希釈
均一生0
(
9
/
3
9
/
1
0 9
/
1
7 9
/
2
4 1
0
/
1
O
O
第 4図 フ ル フ ェ ノ ク ス ロ ン 乳 剤 (
2,
0
0
0
倍希釈)の散
6
0
3
0
9
0
経過日数
布時期とヨトウガ第 2世代被害推移 (
2
0
0
7
年)
点線は被害許容水準(被害程度 2
5
) を示す
第 6図
フルフェノクスロン乳剤の散布後経過日数と成
分残留量推移 (
2
0
0
8
年)
1
0
0
i
魁
o~40 日
採取日 8 月 11 日,経過日数50~
→・-盤処理
経過日数
ベ〉ー 7
/
2
散布
9
0日 採 取 日 9月3
0日.
イト7
/
2
3散布
第 1表 各 種 I
GR剤 の 殺 虫 効 果
ベ守811散布
器 50I
-+-8111
製
散布薬剤
散布
フルフェノクスロン
(x4
0
0
0
)
2
5
O
8
/
2
0
8
/
2
7
9
/
3
9
/
1
0
9
/
1
7
フルフェノクスロン
第 5図 フ ル フ ェ ノ ク ス ロ ン 乳 剤 (
4,
0
0
0
倍希釈)の散
(x2
0
0
0
)
布時期とヨトウガ第 2世 代 被 害 推 移 (
2
0
0
8年)
ノノ¥)レロン
点線は被害許容水準(被害程度2
5
) を示す.
8月 1
1日に散布した結果を第 3図 に 示 す い ず れ の 薬
ルフェヌロン
剤も, 7月 1
3日散布と比較して最終調査時の被害程度は
,
0
0
0倍
,
フルフェノクスロン乳剤散布区は 4
2
,
0
0
0倍 希 釈 と も に 効 果 が 非 常 に 高 く ( 被 害 程 度 1
0
.
3,
1
2
.
0
),ノパルロン乳剤もほぼ同等(同 1
3
.
3
) だった.次
低くなった
ァフつフェノジド
メトキシフェノジド
いでルフェヌロン乳剤とテブフェノジド水和剤の効呆が
高かった(阿 2
0
.
3,2
6
.
0
)
. メトキシフェノジド水和剤は
経過日数
%
)
a
)
補正死虫率 (
O
1
0
1
9
2
9
4
0
O
2
9
O
2
9
O
2
9
O
2
9
O
2
9
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
0
9
4
.
6
8
3
.
7
1
0
0
1
0
0
9
4
.
6
1
3
.
0
a
) 補正死虫率は下式を用いて算出した.
効果がやや劣った(同 4
6.
3
)•
補正死虫率(%) = !(無処理区の生存率一処理区
の生存率) 1
無処理区の生存率 Ix1
0
0
2
. フルフヱノクスロン乳剤残効試験
2
0
0
7年の結果を第 4図に示した 7月 2
3日以降に散布
した場合, 9月 3
0日の被害程度は散布時期にかかわらず
1
6以下でいずれも高い被害抑制効果が認められた 7月
2日散布では 9月 3
0日の被害程度は 3
6
.
7とやや高く, 7
月2
3日以降に散布した場合に比べ,効果は劣った
2
0
0
8年の結果を第 5図に示した 7月 2
3日以降に散布
した場合, 9月 1
7日の被害程度は散布時期にかかわらず
1
6以下でいずれも 2
0
0
7年の結呆と同様に高い被害抑制
効果が認められたが, 7月 1
3日散布で、は若干効果は劣っ
を第 6図に示した 4
,
0
0
0倍 希 釈 の 経 過 日 数 O日では残留
量は 6
8
.
4ng/cm2で , 1
0日で 44.
3ng/cm2に急激に減少
した
0日から 6
0日の減少は緩やかで, 6
0日
しかし 1
2程 度 と ほ ぼ 一 定 量 だ っ た
以降は 9
0日まで 2
5n
g
lcm
2
,
0
0
0倍 希 釈 で は O日の残留量は 1
3
7
.
0ng/cm2で,その
,
0
0
0倍希釈の約 2倍の水準で推移した.なお,無
後も ,4
処理区からはフルフェノクスロンは検出されなかった.
4 各 種 IGR剤殺虫効果の室内検定
た(被害程度 2
3
.
0
)
.2
0
0
7年と同様に, 7月 2日散布では
各処理区から
8月 1
1日に採取した葉片で鮮化幼虫を
効果は劣った(同 4
8
.
7
)
.
飼育して死虫率を調査した結果を第 l表に示した. 4
,
0
0
0
3
. フルフェノクス口ン残留量
倍希釈フルフェノクスロン乳剤では経過日数 0
,1
0,1
9,
2
9,4
0日のいずれも補正死虫率は 100%だった 2
,
0
0
0倍
散布後の経過日数とフルフェノクスロン残留量の関係
2
0
6
希釈フルフェノクスロン乳剤,ノバルロン乳剤,テブフ
は目立った減少を示さなかった本試験に用いた IGR剤
, 2
9日ともに
エノジド水和剤においても経過日数 O日
はいずれも浸透移行性がなく,新規展開葉に対する食害
1
0
0
%,ルフェヌロン乳斉J
Iは O日で 9
4
.
6
%,2
9日で 8
3
.
7
%
を直接的には抑制できないフルフェノクスロン乳剤が,
といずれも高い補正死虫率だ、った.一方,メトキシフェ
産卵期間以前の散布でも長期間にわたり高い防除効果を
ノジド水和剤は O日での補正死虫率は他剤とほぼ同等の
9
4
.
6
%だったが, 2
9日では 1
3
.
0
%と大きく低下していた
であったが,第 l世代防除
なお,無処理区では死虫率 8%
得られたのは,ヨトウガのテンサイにおける主要な産卵
(アセフェート水和剤およびフルシトリネート液剤)の影
月 2日散布では 7月 1
3日以降の散布に比べ防除効果が
響はなかったものと考えられる.
劣っていたが,成分残留量は鮮化幼虫に対する殺虫効果
部位である外葉に残留していた成分が,勝化幼虫に対し
ては低濃度でも効果的に作用したためと推測される
7
を損なうほどには減少していないと考えられる. 7月 2
考 察
日散布での防除効果の低さの原因は,成分の残留量の経
各種 I
GR剤の効果比較試験から,本試験で供試した薬
時的減少ではなく,成分が付着した葉が産卵期の 8月中
剤の中で長期残効による紡除効果が最も高いのはフルフ
旬以降には老化・下垂してヨトウガの産卵に好適ではな
ェノクスロン乳剤およびノパルロン乳剤であると判断さ
くなり,散布後に展開した葉にも産卵がおこなわれた可
両剤は 7月中旬以降の散布であれば,テンサイの
能性が考えられる.ノパルロン,ルフェヌロン,テブフ
ヨトウガ第 2世代幼虫による被害を被害許容水準(被害
ェノジドについても散布後 2
9日の 8月 1
1日までは十分
れた
5
) (3)程度に抑えることが可能だが, 7月上旬以
程度 2
GR剤で,散布後数
な殺虫活性が確認されている.各種 I
前の散布では実用上十分な防除効果は得られないものと
十日程度経過した後のヨトウガ幼虫に対する防除効果に
考えられる.ルフェヌロン乳剤は,上記 2剤に次ぐ高い
差が生じた原因としては,薬剤によって,成分残留量の
効果が確認されたが,被害を許容水準程度に抑えるため
減少速度と濃度低下時における殺虫効果の強さの,いず
には散布時期を 8月中旬以降にするのが望ましい.クロ
れかもしくは両方に違いがあるものと考えられる
ルフルアズロン乳剤は,本試験の 7月上旬散布では許容
近年,侵入害虫のアシグロハモグリパエの発生地域が
水準程度に被害を抑制できなかったが,同日散布のルフ
拡大傾向にあり,発生地域ではヨトウガと並ぶテンサイ
エヌロン乳剤と同等の効果が認められ,同剤と同系統の
の重要害虫となりつつある
アシグロハモグリパエは多
キチン合成阻害作用を持つベンゾイルウレア系化合物で
くの薬剤に対して感受性が低いが(1),テンサイでの本
ある事から,ルフェヌロン乳剤と同様に 8月中旬以降の
種に対し,フルフェノクスロン乳剤,ノパルロン乳剤,
散布で十分な防除効果が得られる可能性がある.テフル
2
0
0
9年
ルフェヌロン乳剤の 3剤が農薬登録されている (
4月現在).テンサイのアシグロハモグリバエ防除におい
て,フルフェノクスロン乳剤かノパルロン乳剤を 7月中
ベンズロン乳剤については, 7月上旬散布では無処理と
比較して目立った被害抑制効果は確認できなかった
句から 8月上旬に,ルフェヌロン乳剤を 8月中旬に散布
テブフェノジドおよびメトキシフェノジドは,鱗麹目
幼虫に対し特異的に摂食阻害・異常脱皮を誘発する脱皮
した場合は, I
GR剤の長期残効により,ヨトウガ第 2世代
GR
促進作用をもっベンゾヒドラジド系化合物であり, I
幼虫の被害を抑制できると考えられる.
剤として一般的には同系統に扱われてはいるが,キチン
合 成 阻 害 作 用 を も っ 上 記 5剤 と は 化 学 構 造 や 作 用 機
引用文献
構が異なる.テブフェノジド水和剤は, 8月中旬散布でル
1)岩崎暁生 (
2
0
0
4
)アシグロハモグリパエの発生生態と
8(
1
2
):1
7
21
.
薬剤感受性今月の農業 4
2) 岩崎暁生・三宅規文・武津友二 (
2
0
0
7
)ヨトウガに対
する I
GR剤の長期残効.北日本病害虫研報 5
8:
1
3
8
1
4
0
.
3) 小野寺鶴将・奥山七郎(19
9
7
)てん菜のヨトウガ第 I
フェヌロン乳剤と同程度の効果が認められ,被害を許容
水準程度に抑えることができたが,メトキシフェノジド
水和剤は,ヨトウガ第 2世代加害開始時期に近い 8月
中旬散布でも被害を許容水準程度に抑えることができ
なかった
テンサイに散布されたフルフェノクスロン乳剤は,散
世代の防除時期を決定するためのモニタリング手
布後 4
0日の時点でもヨトウカ、解化幼虫に対し十分な殺
法北農
0日の時点でも残留成分量
虫活性を持ち,以降,散布後 9
2
0
7
6
4
:1
3
1
7
.