市場単価方式に関する調査研究 調 整 役 柳谷 和正 調 整 役 山田 隆清 調 整 役 月居 章 総括主席研究員 岩松 準 主席研究員 植村 福夫 主席研究員 西尾 育也 主席研究員 武藤 昇一 1. はじめに 建築工事市場単価方式は、 積算の機動性の確保、客観性・説明性の向上及び積算の省力 化等の観点から 平成11年4月より本施行され、その後順次工種の拡大が 図られ、平成23年度ま でに建築工事、電気設備工事、機械設備工事において表1に示す「18工種40分類」の 建築工事 市場単価(以下「市場単価」という) が本施行されている。しかし、平成23年度をもって市場単価 の工種拡大は困難との結論に至り、平成24年度からは、市場単価へ移行した工種の安定的 な運用を図るため、フォローアップの取り組みを行ってきたが、平成25年度もこれを継続した。 表1 市場単価(本施行)導入工種及び分類 年度 H11 H12 H13 H14 建築工事 電気設備工事 工種 型枠工事 鉄筋工事 防水工事 分類 工種 配管工事 型枠 加工組立 アスファルト防水 (3分類) コンクリート工事 打設手間 配管工事 コンクリート工事 ポンプ圧送 鉄筋工事 圧接 (3分類) 左官工事 左官 配管工事 動力設備工事 接地工事 雷保護設備工事 (1分類) 土工事 土工 配管工事 塗装工事 塗装 金属工事 (2分類) 軽量鉄骨下地 配管工事 内外装工事 (1分類) 内装ボード 内外装工事 内装床 建具工事 ガラス 防水工事 (1分類) シーリング 配線工事 H15 機械設備工事 工種 分類 電線管 ダクト設備工事 アングルフランジ工法 コーナーボルト工法 スパイラルダクト (1分類) (3分類) ケーブルラック 衛生器具設備工事 衛生器具取付け 位置ボックス 分類 (2分類) プルボックス ダクト設備工事 電動機その他接続材料 接地極 接地極埋設標 (4分類) 2種金属線ぴ ダクト設備工事 (1分類) 防火区画貫通処理 保温工事 (ケーブルラック、 金属管用) (1分類) (1分類) チャンバー 組立てチャンバー ボックス (3分類) 制気口等 排煙口 ダンパー類取付け (3分類) ダクト (1分類) H16 (1分類) 配線工事 絶縁電線 H17 (1分類) (1分類) H18 絶縁ケーブル H19 (1分類) (1分類) H20 左官工事 吹付け 保温工事 配管 H21 (1分類) (1分類) H22 防水工事 防水入隅処理 (コーナーキャント) H23 左官工事 防水入隅処理 (入隅面取モルタル) (2分類) 計 10工種 17分類 5工種 11分類 - 65 - 3工種 12分類 2. 平成25年度の取り組み 平成25年度は、市場単価へ移行した工種の安定的な運用を図るため、フォローアップを重点と する以下の取り組みを行った。 市場単価のフォローアップ等に関する検討は、学識者、発注者、受注者、第三者機関、調査機 関、当研究所(事務局)等で構成する「建築工事市場単価方式調査研究会」及び研究会の下に 設置した検討部会及び作業部会において調査・検討等を行った。 (1)市場単価調査票の改善 (2)市場単価の経年変化の動向把握 (3)標準仕様書の改定に関する検討 (4)市場単価本施行調査の追加細目の検討 (5)建築工事市場単価フォローアップ要領の運用(案)の検討 3. 研究内容 (1)市場単価調査票の改善 1)共通事項 前年度に実施した調査票の共通事項の改善内容のうち、専門工事業者の諸経費(現場管理 費・一般管理費等)の内訳項目を平成25年10月号より刊行物に明記した。 2)調査票の整合、改善 両調査会調査票の整合、建築・電気設備・機械設備間及び工種間の整合を行い、調査票を改 善した。 (2)市場単価の経年変化の動向把握 1)検討品目 市場単価への移行以前の施工単価及び導入以降の単価の推移及び挙動の要因等の動向把 握することを目的として、以下の品目について検討した。(当研究所のホームページ参照) 市場単価:40品目(建築18、電気13、機械9) 施工単価:6品目(建築4、電気1、機械1) 材料単価:18品目(建築12、電気4、機械2) 労務単価:11工種(建築9、電気1、機械1) 2)検討内容 ①価格変動のパターン化 ②経済動向の影響(オイルショック、バブル、東日本大震災など) ③地域間の価格差及びタイムラグ ④土木工事市場単価との比較 ⑤市場単価に占める労務比率との関連 ⑥直近1年間の価格動向の報告 - 66 - 3)検討事例 以下に鉄筋加工組立(表-2、図1)と普通合板型枠(表-3、図2)の検討例を示す。(平成26年 1月現在のデータ) ①鉄筋加工組立 (RCラーメン構造 階高3.5m~4.0m程度 共通) 東日本大震災の復興需要などの影響で、バブル期と同程度の価格上昇が見られるようにな ってきている。 表-2 鉄筋加工組立(施工費のみ)の市場単価と変動率の推移 価格推移 名称・仕様 鉄筋加工組立(施工費のみ) 運搬費別 (単位:円/t) 平成11年度市場単価移行 変動率 東京 Tokyo 年 月 物調 CRI 1 42,000 4 42,000 7 43,000 10 46,000 14 1 51,000 0.0% 2.3% 6.9% 14 1 10.8% 東京 Tokyo 大阪 Osaka 大阪 Osaka 経調 ERA 物調 CRI 経調 ERA 40,000 32,000 30,000 41,000 33,000 31,000 41,000 34,000 31,000 45,000 36,000 36,000 46,000 39,000 37,000 2.4% 3.1% 3.3% 0.0% 3.0% 0.0% 9.7% 5.8% 16.1% 2.2% 8.3% 2.7% 名古屋 Nagoya 名古屋 Nagoya 福岡 Fukuoka 物調 CRI 経調 ERA 物調 CRI 33,000 30,000 33,000 33,000 32,000 33,000 35,000 32,000 34,000 38,000 39,000 35,000 43,000 39,000 37,000 0.0% 6.6% 0.0% 6.0% 0.0% 3.0% 8.5% 21.8% 2.9% 13.1% 0.0% 5.7% 福岡 Fukuoka 広島 Hiroshima 広島 Hiroshima 経調 ERA 物調 CRI 経調 ERA 30,000 32,000 30,000 31,000 32,000 31,000 31,000 33,000 31,000 35,000 34,000 34,000 37,000 37,000 34,000 3.3% 0.0% 3.3% 0.0% 3.1% 0.0% 12.9% 3.0% 9.6% 5.7% 8.8% 0.0% 仙台 Sendai 仙台 Sendai 札幌 Sapporo 物調 CRI 経調 ERA 物調 CRI 44,000 41,000 34,000 45,000 43,000 35,000 47,000 43,000 36,000 50,000 47,000 38,000 53,000 49,000 41,000 2.2% 4.8% 2.9% 4.4% 0.0% 2.8% 6.3% 9.3% 5.5% 6.0% 4.2% 7.8% 札幌 Sapporo 新潟 Niigata 経調 ERA 物調 CRI 34,000 38,000 34,000 38,000 34,000 40,000 38,000 44,000 39,000 47,000 0.0% 0.0% 0.0% 5.2% 11.7% 10.0% 2.6% 6.8% 新潟 Niigata 高松 Takamatsu 高松 Takamatsu 施工単価(CPUP) / 経調 ERA 物調 CRI 経調 ERA 市場単価(MUP) 37,000 33,000 31,000 37,000 33,000 31,000 37,000 33,000 31,000 44,000 34,000 37,000 45,000 37,000 38,000 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 18.9% 3.0% 19.3% 2.2% 8.8% 2.7% 地域 13 70500 円 ↑ 41000 円 (72%アップ) 図-1 鉄筋加工組立(施工費のみ)の市場単価の経年推移 - 67 - 13 7 4 10 51000 円 ↑ 26000 円 (96%アップ) ②普通合板型枠(ラーメン構造 地上軸部 階高3.5m~4.0m程度 共通) 鉄筋加工組立と同様に、東日本大震災の復興需要などの影響で、バブル期に準ずる価格上 昇が見られるようになってきている。 表-3 普通合板型枠(材工)の市場単価と変動率の推移 価格推移 名称・仕様 普通合板型枠 ラーメン構造用、運搬費別 (単位:円/㎡) 平成11年度市場単価移行 変動率 東京 Tokyo 年 月 物調 CRI 1 3,880 4 3,950 7 4,050 10 4,300 14 1 4,600 1.8% 2.5% 6.1% 6.9% 東京 Tokyo 大阪 Osaka 大阪 Osaka 経調 ERA 物調 CRI 経調 ERA 4,000 2,750 2,500 4,200 2,900 2,700 4,200 3,000 2,700 4,300 3,200 3,000 4,500 3,350 3,100 5.0% 5.4% 8.0% 0.0% 3.4% 0.0% 2.3% 6.6% 11.1% 4.6% 4.6% 3.3% 名古屋 Nagoya 名古屋 Nagoya 福岡 Fukuoka 物調 CRI 経調 ERA 物調 CRI 3,100 2,700 2,550 3,150 3,100 2,650 3,400 3,100 2,850 3,500 3,600 3,200 3,700 3,700 3,400 1.6% 14.8% 3.9% 7.9% 0.0% 7.5% 2.9% 16.1% 12.2% 5.7% 2.7% 6.2% 福岡 Fukuoka 広島 Hiroshima 広島 Hiroshima 経調 ERA 物調 CRI 経調 ERA 2,400 2,850 2,600 2,600 3,000 2,900 2,600 3,100 2,900 3,200 3,200 3,200 3,300 3,500 3,300 8.3% 5.2% 11.5% 0.0% 3.3% 0.0% 23.0% 3.2% 10.3% 3.1% 9.3% 3.1% 仙台 Sendai 仙台 Sendai 札幌 Sapporo 物調 CRI 経調 ERA 物調 CRI 4,200 4,200 2,650 4,300 4,400 2,650 4,500 4,400 2,750 4,800 4,600 2,850 5,100 4,800 3,000 2.3% 4.7% 0.0% 4.6% 0.0% 3.7% 6.6% 4.5% 3.6% 6.2% 4.3% 5.2% 札幌 Sapporo 新潟 Niigata 経調 ERA 物調 CRI 2,600 3,300 2,600 3,400 2,600 3,500 3,100 3,700 3,200 4,100 0.0% 3.0% 0.0% 2.9% 19.2% 5.7% 3.2% 10.8% 新潟 Niigata 高松 Takamatsu 高松 Takamatsu 施工単価(CPUP) / 経調 ERA 物調 CRI 経調 ERA 市場単価(MUP) 3,000 2,650 2,400 3,100 2,900 2,500 3,100 3,050 2,500 3,700 3,400 3,600 3,800 3,700 3,700 3.3% 9.4% 4.1% 0.0% 5.1% 0.0% 19.3% 11.4% 44.0% 2.7% 8.8% 2.7% 地域 13 6550 円 ↑ 3000 円 (118%アップ) 図-2 普通合板型枠(材工)の市場単価の経年推移 - 68 - 13 7 4 14 1 10 4600 円 ↑ 2630 円 (75%アップ) (3)標準仕様書の改定に関する検討 公共建築工事標準仕様書(平成25年版)改定に伴うアスファルト防水工事A-3の新規細目に ついては、導入時期等を含め内容を検討したが、実績が少なかったため、今後も継続して検討す ることとなった。 (4)市場単価本施行調査の追加細目の検討 1)電気設備工事 平成13年から接地極の市場単価が本施行された。その後JISの改定に伴い標準仕様書に銅版 式1.5t×600×600が追記されたが、市場性が確認された時点で市場単価への移行することとし た。 平成25年10月時の本施施行調査で確認を行ったところ十分に市場性の確認ができたため、平 成26年1月の本施行調査結果を、平成26年4月より刊行物に市場単価として掲載することとした。 2)機械設備工事 平成24年から保温工事の合成樹脂カバー1(シートタイプ)の市場単価が本施行されたが、平成 25年の標準仕様書には更に合成樹脂製カバー2(ジャケットタイプ)が追加されたため、平成25年 度に以下の対応を行った。 平成25年4月の定点調査時に25Aと100Aの2点のみ予備的な調査を実施した結果、基本調査 (全細目調査)が可能であることが確認できた。このため、平成25年7月の基本調査時に本施行調 査を行い、平成25年10月より刊行物に市場単価として掲載した。 (5)建築工事市場単価フォローアップ要領の運用(案)の検討 フォローアップ要領の運用(案)をもとに、以下の項目について検討した。 ①前回調査より、10%を越える価格変動があった細目については、定点調査(代表細目調査)か ら、基本調査(全数調査)に変更して調査を実施した。 屋 根 アスファルト防 水 : 平成25年10月実施 鉄 筋 加 工 組 立 : 平成26年4月実施(予定) 普 通 合 板 型 枠 : 平成26年4月実施(予定) ②調査機関による調査方法等の確認のため、2社に対するヒアリングを実施した。 ③平成26年度は、以下の価格変動期における対策を検討し、実施することとした。 ・改善後の調査票による基本調査の実施(7月) ・調査概要(調査の意義)、記載例(単価計算例)、Q&A、調査協力依頼書の添付 ・調査の共通設定条件の周知徹底(現場管理費、一般管理費等) ・全国主要都市で調査対象企業への「市場単価説明会」の開催 - 69 - 4. 今後の予定 平成26年度も、以下の市場単価のフォローアップを重点に取り組むこととする。 (1)市場単価の経年変化の動向把握 (2)標準仕様書の改定に関する検討 (3)市場単価本施行調査の追加細目の検討 (4)建築工事市場単価フォローアップ要領の運用(案)の検討 - 70 -
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