ラットにおける脂肪肝と Glucagon like peptide-1(GLP

17. 糖 尿 病 肥 満
( SDTF)ラ ット に お け る 脂 肪 肝 と
Glucagon like peptide-1
( GLP-1)
および 胆 汁 酸 の
関連について
愛知医科大学 消化器内科
中出 幸臣、山本 高也、小林 佑次、
石井 紀光、大橋 知彦、佐藤 顕、
伊藤 清顕、福沢 嘉孝、米田 政志
【目的】肥満糖尿病モデルである Spontaneous Diabetic Torii fatty( SDTF)
ラットは高脂肪食により肥満糖尿病を発症し脂肪肝を誘発することが知られ
ている。私たちはこれまでに SDTF ラットにおいて脂肪肝が誘発される際、
血中GLP- 1 濃度は低下していることを報告してきた。一方、近年胆汁酸は脂
質吸収の役割のみならず、生体のエネルギーセンサーとしての役割が注目さ
れている。2次胆汁酸の一つであるデオキシコール酸( DCA)は小腸の L 細胞
においてTGR5 を介して、GLP- 1分泌を促進することが知られている。本研
究ではSDTF ラットにおける高脂肪食投与下の脂肪肝発現と、血清 GLP- 1 濃
度および肝内胆汁酸濃度を測定し、脂肪肝との関連を検討した。
【方法】8 週齢雄性 SDTF およびコントロールラットに高脂肪食および対照食
を 12 週間にわたり摂食させ犠死させた。血液、肝を採取し組織学的に脂肪肝
を評価し、肝中性脂肪を定量した。また血清および肝の総胆汁酸( TBA)、一
次胆汁酸であるコール酸( CA)および二次胆汁酸であるデオキシコール酸
( DCA)を 定 量 し、DCA/CA を 算 出 し 比 較 し た。さ ら に 血 清 GLP-1 濃 度 を
ELISA 法で定量し比較し、脂肪肝発現および胆汁酸との関連を検討した。
【成績】コントロールラットに高脂肪食を投与しても脂肪肝を認めなかった
が、血清 GLP- 1 濃度は有意に増加した。血清および肝TBA、CA、DCAには
変化はなかったが、血清 DCA/CA は有意に増加した。SDTFラットに対照食
を投与すると、コントロールラットに比べ、体重、精巣上体脂肪は増加した
が脂肪肝は誘発せず、血清 GLP- 1 濃度も増加しなかった。血清 TBA、CA、
DCAは有意に増加し、肝 TBA、CA は増加したが、DCA は変化がなかった。
さらに血清 DCA/CA は有意に低下していた。SDTFラットに高脂肪食を投与
すると体重、精巣上体脂肪増加とともに脂肪肝を誘発し、血清 GLP- 1 濃度は
低下した。血清および肝内 TBA、CA、DCAはすべて低下し、DCA/CAも増
加しなかった。
【考案】コントロールラットに高脂肪食を投与しても脂肪肝は誘発せず、血
清 DCA/CA は増加し血清 GLP- 1 濃度は増加した。一方 SDTFにおいて高脂肪
食を投与すると脂肪肝を誘発し、DCA は低下し血清 DCA/CA は変化しなかっ
たことから、DCA の低下は GLP- 1低下を招き脂肪肝誘発に寄与している可能
性が示唆された。
【結語】SDTF ラットにおける高脂肪食誘発脂肪肝と血清 GLP- 1 濃度は負の
相関にあった。肥満糖尿病では高脂肪食投与で 1 次胆汁酸から 2 次胆汁酸へ合
成が阻害され肝および血清 DCA が低下し、GLP-1 濃度を低下させている可能
性が示唆された。