CBTの辞典

CBTの辞典
Computer Based Testing 2016
Dictionary
1
上巻 コア・カリ篇
CBT の辞典の会
序
説
平成 17 年 12 月から歯学 CBT と OSCE が正式に開始されました。
共用試験は、共通基準を設けた組織的評価を行うために、コア・カリキュラムに基づき、全国各大学が参加して試
験問題を作成し、知識の評価には CBT を、診察技能・態度の評価には OSCE を用いています。コア・カリキュラム
は平成 24 年から新コア・カリキュラムになりました。
CBT は 6 つのブロックで構成されています。解答する順番はブロック 1 からブロック 6 の順番で、合計 320 問出
題されます。320 問中、約 240 問はプール問題、残り 80 問は新規問題が出題されます。問題は受験生ごとにランダ
ムです。毎年、約 2,400 人が受験し、平均点は 70%前後で推移しています。
出題形式
・単純 5 肢択一形式:ブロック内で見直すことができます。
・多選択肢連問形式:先に進むと後戻りはできません。
・順次解答連問形式:先に進むと後戻りはできません。
の 3 種類です。
ブロックの構成は、
・ブロック1∼4:単純 5 肢択一形式(60 設問、1 時間)
・ブロック 5:多選択肢 2 連問(20 設問)、順次解答2連問(20 設問)(40 設問、1 時間)
・ブロック 6:順次解答 4 連問(40 設問、1 時間)
出題割合
コア・カリキュラム大項目を参考に、
・大項目A:約 4.2%
・大項目B:約 8.3%
・大項目C:約 25.0%
・大項目D:約 4.2%
・大項目E:約 58.3%
という割合になっています。
さて、この本では CBT で出題される「新コア・カリキュラム」の内容を大項目 A から順番に確認していきます。
「コア・カリ篇」を活用しながら「問題演習篇」を解いてみてください。CBT の問題を正解するためにはいろいろ
な『コツ』があります。この本ではそういった、いろいろな『コツ』を随所に散りばめて解説が書いてあるので参考
にして下さい。図表を多く用いているので、理解しやすくなっていると思います。
また、この本だけではちょっと足りないな!もっと問題を解きたいな!と思った時は、別売の CBT の辞典(誌上問
題篇)や KEY WORDS CBT シリーズ(医学評論社)も併用して勉強してください。
近い将来、CBT を今の歯科医師国家試験の位置付けにすることが考えられています。これに伴い多数の大学で CBT
の結果を重視し、進級判定の評価に用いています。スムーズに進級して歯科医師になるためには CBT は避けて通れま
せん。現在、本番の CBT では多数のプール問題が用意されています。すべての問題をこの本だけ勉強することは不可
能ですが、問題を解いていくうちに、こういう感じで解けばいいんだという雰囲気を感じて貰えればと考えています。
歯科医師として求められる基本的な資質
(歯科医師としての職責)
・豊かな人間性と生命の尊厳についての深い認識を有し、口腔の健康を通じて人の命と生活を守る歯科医師
としての職責を自覚する。
(患者中心の視点)
・患者およびその家族の秘密を守り、歯科医師の義務や医療倫理を遵守するとともに、患者の安全を最優先
し、常に患者中心の立場に立つ。
(コミュニケーション能力)
・歯科医療の内容を分かりやすく説明するなど、患者やその家族との対話を通じて、良好な人間関係を築く
ためのコミュニケーション能力を有する。
(チーム医療)
・医療チームの構成員として、相互の尊重のもとに適切な行動をとるとともに、後輩などに対する指導を行
う。
(総合的診療能力)
・統合された知識、技能、態度に基づき、口腔のみならず、全身的、精神的、社会的状況に対応可能な、総
合的に診療するための実践的能力を有する。
(地域医療)
・医療を巡る社会経済的動向を把握し、地域医療の向上に貢献するとともに、地域の保健・医療・福祉・介
護および行政などと連携協力する。
(研究志向)
・歯科医学・医療の進歩と改善に資するために研究を遂行する意欲と基礎的素養を有する。
(自己研鑽)
・男女を問わずキャリアを継続させて、生涯にわたり自己研鑽を続ける意欲と態度を有する。
目
次
A 基本事項
・・・・・・・
1
A−1 患者の尊厳 … 1
A−2 医の倫理 … 2
A−3 歯科医師の責務 … 3
A−4 インフォームドコンセント … 4
A−5 歯科医療における安全性への配慮と危機管理 … 4
5−1 安全性の確保 … 4
5−2 医療上の事故等への対処と予防 … 5
5−3 医療従事者の健康と安全 … 7
A−6 生涯学習
6−1 生涯学習への準備 *CBT での出題はありません
6−2 研究マインドの涵養
*CBT での出題はありません
A−7 対人関係能力 … 9
7−1 コミュニケーション … 9
7−2 医療面接 … 11
7−3 患者中心のチーム医療 … 12
B
社会と歯学
・・・・・・・
14
B−1 健康の概念 … 14
B−2 健康と社会、環境 … 15
2−1 歯科医師法・関係法規 … 15
2−2 保健・医療・福祉制度 … 25
2−3 歯科による個人識別
*CBT での出題はありません
2−4 環境と健康 … 59
B−3 予防と健康管理 … 64
3−1 予防の概念 … 64
3−2 口腔疾患の予防と健康管理 … 66
B−4 疫学・保健医療統計 … 83
4−1 口腔疾患の疫学 … 83
4−2 保健医療統計 … 94
4−3 保健医療情報 … 110
C 生命科学
C−1 生命の分子的基盤 … 112
1−1 生命を構成する基本物質 … 112
1−2 遺伝子と遺伝 … 124
1−3 細胞の構造と機能 … 129
1−4 細胞のコミュニケーション … 133
・・・・・・・
112
C−2 人体の構造と機能 … 140
2−1 身体の部位と方向用語 … 140
2−2 個体発生、器官発生 … 140
2−3 身体を構成する組織、器官 … 142
2−4 人体諸器官の成長、発育と加齢変化 … 201
C−3 感染と免疫 … 202
3−1 感 染 … 202
3−2 免 疫 … 219
C−4 病因と病態 … 228
4−1 細胞傷害、組織傷害および萎縮 … 228
4−2 修復と再生 … 229
4−3 循環障害 … 231
4−4 炎 症 … 233
4−5 腫 瘍 … 237
4−6 疼 痛 … 239
C−5 生体と薬物 … 240
5−1 薬物と医薬品 … 240
5−2 薬理作用 … 241
5−3 薬物の適用と体内動態 … 249
5−4 薬物の副作用と有害作用 … 252
D 歯科生体材料と歯科材料・器械
・・・・・・・
255
・・・・・・・
285
D−1 素材と器械・器具の所要性質 … 255
D−2 成形法と成形用材料 … 264
E
臨床歯学教育
E−1 診療の基本 … 285
1−1 基本的診療技能 … 285
1−2 画像検査 … 289
1−3 歯科麻酔の基本 … 313
1−4 小手術の基本手技 … 329
1−5 救急処置 … 336
1−6 口腔保健
*CBT での出題はありません
E−2 口唇・口腔・頭蓋・顎顔面領域の常態と疾患 … 347
2−1 頭頸部の基本構造と機能 … 347
2−2 口唇・口腔の基本構造と機能 … 373
2−3 口唇・口腔・頭蓋・顎顔面領域の発生、
成長・発育および加齢とその異常 … 383
2−4 口唇・口腔・顎顔面領域の疾患 … 389
E−3 歯と歯周組織の常態と疾患 … 443
3−1 歯と歯周組織の発生および構造と機能 … 443
3−2 歯と歯周組織の疾患の特徴と病因 … 457
3−3 歯と歯周組織の疾患の診断と治療 … 465
3−4 歯質欠損と歯の欠損の診断と治療 … 507
E−4 歯科医療の展開 … 551
4−1 不正咬合 … 551
4−2 小児の歯科治療 … 576
4−3 高齢者の歯科治療 … 593
4−4 障害者の歯科治療 … 608
4−5 心因性疾患 … 610
4−6 歯科医師に必要な医学的知識 … 611
A−2
医の倫理
到達目標:
*①医の倫理と生命倫理の歴史経過と諸問題を概説できる。
*②医の倫理に関する規範・国際規範(ヒポクラテスの誓い、ジュネーブ宣言、ヘルシンキ宣
言等)を概説できる。
*③生と死に関わる倫理的問題を説明できる。
(1)ニュルンベルグ綱領、ジュネーブ宣言、ヘルシンキ宣言、リスボン宣言、ヒポクラテスの誓い、
シドニー宣言
研究によって得られる医学的・社会的利益のために被検者を犠牲にしてはならないと
ニュルンベルグ綱領
いう基本精神で貫かれ、その内容は「ヘルシンキ宣言」の基礎となるもの、すなわち
医学研究についての倫理を謳ったものである。
世界医師会で採択された医の倫理宣言であり、「医師の奉仕宣言」や「医の倫理規定」
ジュネーブ宣言
と表現される。人類への奉仕、患者の非差別、良心と尊厳をもった医業、患者の秘密
の尊重などが述べられている。「ヒポクラテスの誓い」の現代版である。
ヘルシンキ宣言
現在の日本の医薬品の治験実施基準となっている GCP(Good Clinical Practice)の
基となっている。ヒトを対象とした医学研究の倫理指針である。
患者の自己決定権について述べられている。一般診療におけるインフォームドコンセ
ントの重要性を述べている。医師および医療従事者または医療組織はこの権利を認識
リスボン宣言
し、擁護していくうえで共同の責任を担っている。
患者の権利として8つの権利、
「良質の医療を受ける権利」、
「選択の自由の権利」、
「自
己決定の権利」、「情報に対する権利」、「守秘義務に対する権利」、「健康教育を受ける
権利」、「尊厳に対する権利」、「宗教的支援に対する権利」が宣言されている。
ヒポクラテスの誓い
シドニー宣言
医師の倫理・任務などについてのギリシア神への宣誓文である。
死に関する声明である。臓器移植という新たな医療技術の開発により、改めて死を定
義付ける必要が生じた。死の判定基準に関する基本指針を示したものである。
ヒポクラテスの誓い:医師の職業的倫理を明文化した古典
ジュネーブ宣言:医師のあるべき姿を宣誓したもの
現代版ヒポクラテスの誓い
(1948 年採択、1968 年修正)
ニュルンベルグ綱領:患者に危害・不正を加えない、ことなど(1947 年)
ヘルシンキ宣言:ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則(1964 年採択、2004 年修正)
リスボン宣言:患者の権利、価値観を尊重すべき、ことなど(1981 年採択、2005 年修正)
-2-
(2)エネルギーを調達する経路
細胞質で行われるグルコースの分解反応で、ピルビン酸と ATP が生成される。解糖は無酸素状態で起
こる反応であり、短距離走などの際のエネルギー供給にあずかる。ピルビン酸は酸素があれば TCA 回
解糖系
路に入って利用されるが、酸素供給がないと乳酸に変化し、筋などでは蓄積して疲労の原因となる。
解糖系の律速酵素としてはヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ1、ピルビン酸キナーゼが重要
である。
解糖系で生成されたピルビン酸がアセチル CoA を経て分解される反応系で、ミトコンドリアで起こ
TCA 回路
る。反応の途中で H が切り離され、酸素と結合して H2O を作る際に生じるエネルギーによって ATP
が生成される(電子伝達系)。酸素を必要とするため嫌気的状態でははたらかない。なお、TCA 回路
C
は糖質だけでなく、脂肪酸やアミノ酸代謝にも関わる。
生命科学
(3)核酸構成成分を調達する経路
核酸構成成分である五炭糖を調達する経路である。細胞質で行われる。エネルギーの産
ペントースリン酸回路
生には関与しない。ペントースリン酸回路で生成される NADPH は脂肪酸やコレステロ
ールの合成に、リボース5リン酸は DNA や RNA の合成に関与する。
- 113 -
(3)脂肪酸の分解
脂肪酸の異化はおもにβ酸化によりミトコンドリアのマトリックスで行われる。β酸化によりアシル
CoA の炭素が2個ずつ少なくなり、アセチル CoA や FADH2 などが生成し、TCA 回路や電子伝達系を経
てエネルギー産生に用いられる。
(4)ケトン体の合成
ダイエット時にはエネルギー源となるグルコースの吸収が行えない。また、重度の糖尿病ではグルコースを
ケトン体
利用できない。そのため、体内に存在するグリコーゲンを消費することにより、グルコースを産生し、体内
活動に必要な ATP を獲得している。さらに飢餓状態となると、エネルギー源を脂肪に依存するようになる。
脂肪は膵臓から分泌されるリパーゼによって、脂肪酸とグリセロールに加水分解される。肝臓は多量の脂肪
酸を摂取し、β-酸化によってアセチル CoA を生じ、ケトン体が生成される。ケトン体とはアセト酢酸、3ヒドロキシ酪酸、アセトンの3つの化合物の総称で酸性物質であり、血液中に増加すると代謝性アシドーシ
スとなる。
- 116 -
4
ビタミン
(1)脂溶性ビタミン
脂肪組織や肝臓に豊富に存在するだけでなく、貯蔵される。そのため、欠乏症だけでなく過剰症も認め
られる。脂溶性ビタミンにはビタミン A、D、E、K がある。ビタミン K は食物から摂取する以外に腸内
細菌により生成される。
ビタミン
レチノール
カルシフェロール
ビタミン E
トコフェロール
ビタミン K
フィロキノン
メナジオン
能
欠乏症
・夜盲症
・皮膚、粘膜、骨の形成と維持
・皮膚、粘膜の角化
・正常な成長の維持
・骨粗鬆症
・カルシウム代謝に関与
・くる病(乳幼児)
・骨や歯を形成
・骨軟化症(成人)
・抗酸化作用に関与
・ほとんどない
・血液凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)を合成
・骨形成(骨 Gla タンパク)に関与
・出血傾向(新生児)
(2)水溶性ビタミン
ビタミン B2 やビタミン B6、ビオチン、葉酸、ビタミン B12 は食物から摂取する以外に腸内細菌により
生成される。
ビタミン
化学名
ビタミン B1
チアミン
ビタミン B2
ビタミン B6
ナイアシン
ナイアシン
機
能
欠乏症
・グルコース代謝やアミノ酸代謝の補酵素(TPP)
・脚 気
リボフラビン
・脂質代謝に関与
・口内炎、口角炎
ピリドキシン
・アミノ酸代謝やグリコーゲン分解の補酵素(PLP) ・ほとんどない
・脱水素反応や還元反応の補酵素
・グルコースやアミノ酸代謝、脂肪酸の合成と分解、
パントテン酸
コレステロール合成の補酵素
ビオチン
葉 酸
・ペラグラ
・ほとんどない
・糖新生や脂肪酸合成に関与
・ほとんどない
・核酸合成、メチオニン合成の補酵素
・巨赤芽球性貧血
・造血に関与
・腸管障害
・メチオニン合成やプロピオン酸代謝の補酵素
ビタミン B12
コバラミン
・骨髄細胞の分化に関与
・中枢神経の維持や脂肪酸代謝に不可欠
・巨赤芽球性貧血
・吸収には胃の内因子が必要
・コラーゲンの合成
ビタミン C
アスコルビン酸
・ステロイドホルモンやアドレナリンの生成
・抗酸化作用に関与
- 121 -
・壊血病
生命科学
ビタミン D
機
・網膜で光を感知する物質(ロドプシン)の形成
C
ビタミン A
化学名
(2)良性上皮性歯原性腫瘍
エナメル上皮腫
特
徴:エナメル器に由来
浸潤性に発育、再発多い(局所悪性)
羊皮紙様感、顎骨膨隆
好発年齢:10∼30 歳代(若年者)
好発部位:下顎臼歯部∼下顎角部
エックス線所見:多房性透過像(石けん泡状)
歯根吸収(ナイフカット)
処
置:摘出、開窓
下顎管越えない:下顎骨辺縁切除
下顎管越える:下顎骨区域切除
濾胞型
叢状型
下顎骨辺縁 切除下顎 骨区 域切除
*エナメル上皮腫の処置
・摘出(保存療法)
局所浸潤性の程度が低いものや、WHO 分類の「単嚢胞型」などが適応となる。
再発防止のために、摘出後の創面に対して骨バーなどで掻爬を行うことがある(摘出・掻爬)。
その場合、内容的には辺縁切除とほぼ大差はなくなる。
・開窓 → 摘出(ときに切除)
嚢胞性のエナメル上皮腫、特に WHO 分類の「単嚢胞型」のうち、病変が下顎下縁に迫って
いたり、下顎枝方向に進展していたりする症例が適応となる。このような症例に対して開窓を
行うことで、病巣周囲に骨が再生し、結果的に病巣が縮小する。特に小児は造骨能が高く、十
分な骨新生が期待されるため、有効な処置である。開窓のみでは病巣の完全な消退には至らな
い。約半年の経過後、縮小した病巣を摘出(摘出・掻爬)や辺縁切除を行う必要がある。
- 410 -
・顎骨切除(根治療法)
顎骨の切除範囲によって、辺縁切除、区域切除、半側切除に分類される。
Eー2
局所浸潤性の程度が高いものや、WHO 分類の「充実性/多嚢胞型」のうち、摘出では不十
分と考えられるもの、充実性の部分が多いものなどが適応となる。
臨床歯学教育︵口腔・頭蓋・顎顔面領域の常態と疾患︶
- 411 -
6
不正咬合の治療
(1)年齢・歯列
乳歯列期は基本的には経過観察する。
乳歯列期
例外は、骨格性不正が著しい場合や前歯部反対咬合で早期に被蓋を改善させる場合である。
混合歯列期
混合歯列期は機能的、骨格的問題を改善する。
永久歯列期
永久歯列期はマルチブラケット装置が使用可能なため、歯槽性の問題を改善する。
成
人
(2)主
骨格の成長は終了している。骨格的不正のある場合は外科手術を併用する。
訴
矯正学の問題では主訴を治療するような選択肢を優先的に選ぶ。
(3)セファロ分析
SNA
上顎骨の成長
SNB
下顎骨の成長
(SNA−SNB)の値で Skeletal を診断する。
骨格的問題
ANB
FMA
歯槽性問題
Skeletal 1
1S.D.以内
Skeletal 2
骨格性上顎前突
Skeletal 3
骨格性下顎前突
垂直的な歯列不正がある場合に確認が必要となる。
FH 平面に対する上顎中切歯歯軸傾斜角
上顎中切歯の歯軸
下顎下縁平面に対する下顎中切歯歯軸傾斜角
下顎中切歯の歯軸
FMIA
抜歯・非抜歯の判定に用いる。
(4)口腔内写真
・Angle 分類を確認する。
・前歯部反対咬合や臼歯部交叉咬合を確認する。
・自分で分析した結果と同じなのかを口腔内写真で確認する。
(5)下顎枝矢状分割術を伴う骨格性反対咬合の矯正治療
・下顎埋伏智歯の抜歯(下顎枝矢状分割術の固定部位)
・叢生の改善
・デンタルコンペンセーションの改善
・上顎前歯の舌側傾斜:空隙がない場合は上顎両側第一小臼歯を抜歯する。
・下顎前歯の唇側傾斜
・下顎枝矢状分割術
・内骨片を後方に移動させる。
・顎骨の垂直的な位置(開咬)を改善できる。
・下顎骨の水平的な位置(交叉咬合)を改善できる。
・咬合の緊密化(術後矯正)
- 562 -
アクチバトール
バイオネーター
フレンケル装置
スライディングプレート
咬合挙上板
リップバンパー
タングクリブ
トランスパラタルアーチ
Nance のホールディングアーチ
- 568 -
準備期や口腔期に障害がある摂食・嚥下障害患者に行う。嚥下に関連する器
構音訓練
官の機能改善につながる。口腔期に障害があるときは構音点が舌根と軟口蓋
である「カ行」、「ガ行」の発音が有効である。
口唇訓練は流涎や食物がこぼれるなど口唇の閉鎖不全がみられるときや
麻痺や瘢痕により口唇力に左右差がみられるときに行う、嚥下の準備期
〈咀嚼期〉に対する間接訓練である。口唇訓練を行うことで構音や流涎の
改善が期待できる。
口唇訓練
舌筋のストレッチを行うことにより、舌の運動機能を高める。
舌訓練(口外法)
吹く動作(口腔気流)により鼻咽腔が反射的に閉鎖されることを利用して、
ブローイング訓練
鼻咽腔閉鎖に関わる神経・筋群の機能を改善させる。また、ソフトブローイ
ング は気管内圧を上昇させ、気道の虚脱を防ぐ効果や呼気持続時間を延長さ
せる効果など、口すぼめ呼吸と同様の効果が期待できる。
歯肉をマッサージすることで、刺激唾液による嚥下促通と口腔感覚を鋭敏に
する。
ガムラビング
j
嚥下反射の惹起が困難な者に対する嚥下促通訓練の1つである。嚥下反射誘
発部位を冷刺激と圧刺激を加えることにより、嚥下反射を誘発する。軟口蓋、
舌根部、咽頭後壁を刺激する。
冷圧刺激法
〈アイスマッサージ〉
押したり持ち上げたりといった上肢に力を入れる運動により、反射的に息こ
プッシング・プリング訓練
らえが起こることを利用して、軟口蓋の挙上、声帯の内転を改善させること
を目的とした訓練である。
- 604 -
(4)消化器系疾患
胃壁の部分的欠損が粘膜筋板の下層におよんだもの。欠損が粘膜上皮、粘膜固有層にとどまっているも
胃潰瘍
のはびらんという。一般に十二指腸潰瘍とともに消化性潰瘍として扱われる。発生要因は、攻撃因子(胃
酸/ペプシノーゲン)と粘膜防御因子(粘液/血液循環/プロスタグランジンなど)のバランスの破綻
とされる。胃液の分泌は、消化管ホルモン(ガストリン/ソマトスタチンなど)や迷走神経などによっ
て調節され、これらの調節不良も発症に関与する。なお、難治性消化性潰瘍の胃粘膜にヘリコバクター・
ピロリが高率にみいだされ、これを除菌することで潰瘍の再発が激減することから、潰瘍の発生に同菌
が関与していると考えられている。
肝硬変
肝細胞の壊死とそれを修復しようとする再生のくり返しにより肝の線維化が生じた病態。種々の肝障害
の終末像でもある。肝臓の再生により線維組織で囲まれた種々の大きさの再生結節(小葉の改築)がみ
られ、肝臓は全体的に硬くなる。つまり、肝臓の小葉構造が結節に置き換わるわけである。再生結節の
大きさにより、大結節性(径3mm∼2cm)、小結節性(径3mm まで)および大小混合型肝硬変に分類
される。大結節性肝硬変の多くは B 型肝炎ウイルス、小結節性肝硬変の多くは C 型肝炎ウイルスによる。
血漿中のビリルビン濃度が上昇し、皮膚や粘膜に沈着した状態。ビリルビン過剰生成(赤血球破壊の亢
黄
進)・ビリルビン代謝障害(肝細胞の障害)・胆道の通過障害(胆石/膵炎)などで生じる。間接ビリルビ
疸
ンが肝臓で代謝されて(グルクロン酸抱合を受けて)直接ビリルビンに変わるため、原因疾患によって
増加するビリルビンのタイプが異なる。血中濃度が2mg/dL(基準値:0.5∼1mg/dL)を超えると眼球
結膜の黄染が認められる。直接ビリルビンのほうが水溶性で皮膚のケラチンとも親和性が高く黄染が強
くみられる。
インスリン作用の不足によって生じる、グルコース利用障害と高血糖を特徴とする疾患。血糖が尿中に
排泄されるためにこの名があるが、腎障害による尿糖の出現(腎性糖尿)は糖尿病には含めない。正常
の血糖値は 70∼110mg/dL で、食後でも 140mg/dL 以下であるが、糖尿病では高値を示す。ふつう随
糖尿病
時血糖値 200mg/dL 以上、空腹時血糖値 126mg/dL 以上のいずれかの条件を満たす場合を糖尿病型と
いい、加えて糖尿病症状を示す場合に糖尿病と診断される。糖尿病は直接発症する 1 次性糖尿病と、ほ
かの疾患に伴って生じる 2 次性糖尿病に大別され、1 次性糖尿病はインスリン依存性(1 型)とインス
リン非依存性(2 型)とにわけられる。インスリン依存性糖尿病は、膵島の B(β)細胞が自分自身の
免疫系によって破壊され、インスリンが産生されなくなったものとされる。一方、インスリン非依存性
糖尿病は、肥満や遺伝子異常などにより、インスリンの合成・分泌・作用が正常に行われなくなったも
血液中の LDL コレステロール(LDL-C)や中性脂肪(トリグリセリド;TG)が異常に増加した状態、あ
るいは HDL コレステロール(HDL-C)が異常に減少している状態で、大きくわけると、原発性と続発性
Eー4
のと考えられている。
になる(LDL コレステロール≧140mg/dL、HDL コレステロール<40mg/dL、中性脂肪(トリグリセ
り、余剰の脂質が血液中に滞ることで起こる。とくにコレステロールは、本来は細胞膜や血管壁の重要
な成分であるが、異常に増加すると血管壁に蓄積して動脈硬化の原因となる。脂質はリポタンパクのか
たちで血中を運ばれる。リポタンパクは比重により、カイロミクロン・VLDL・LDL・HDL などに分け
られるが、中でも LDL はコレステロールを多く含み、その増加は高コレステロール血症と関係するので
悪玉コレステロールとよばれる。これに対し、HDL は末梢のコレステロールを肝臓に運び、血中コレス
テロールを低下させるため善玉コレステロールとよばれる。このため、最近では単なる高脂血症として
よりも、高リポタンパク血症あるいはその分画(LDL、HDL など)の値が重視されている。
- 613 -
臨床歯学教育︵歯科医療の展開︶
高脂血症
リド)≧150mg/dL)。脂質の過剰摂取・肝臓におけるコレステロール合成の亢進や処理の低下などによ