国語 平成 27 年度 一般選抜入学試験 個別学力試験 出題意図

平成 27 年度 一般選抜入学試験 個別学力試験 出題意図
国語
一
鶴岡真弓『装飾する魂 日本の文様芸術』からの出題。この文章では、蝶に対する人間の反応が装飾美術との関係で
論じられている。前半での、蝶の翅の美しさについての生態学的説明を出発点に、中段では、その美しさゆえに人間は
蝶を捕らえ、その形象を装飾のために模倣するということが語られる。後段では、蝶を捕らえたいという欲望の背後に
は翅の完璧さへの嫉妬があり、その嫉妬が、見事な装飾芸術の蝶の原因ではないかという指摘がなされている。文章を
通じて、蝶の生態を出発点に、様々な対比を用いて装飾美術の秘密に迫っており、こうした議論の構図を正しく把握す
る読解力を問うとともに、定められた字数制限のなかで要点を的確に説明する表現力を問うことが設問の趣旨である。
問(一)常用漢字や、常用漢字によって構成された熟語の知識を問う。
問(二)指示された表現が文脈のなかで持つ意味を正確に理解し、その内容を端的に説明できるかを問う。
問(三)指示された箇所を含む段落の内容を踏まえて、指示された対比表現を的確に説明できるかを問う。
問(四)指示された箇所を含む段落とその直前の段落の内容を踏まえて、指示された箇所が表す皮肉な状況を的確に表
現できるかを問う。
問(五)指示された箇所を含む段落の内容を踏まえて、指示された箇所の含蓄を的確に説明できるかを問う
二
開高健の「揺れる」からの出題。新進作家である主人公(「小説家」)が、ある新人作家(
「著者」
)の出版記念会に出
かけて行った場面である。本文がすべて空白であるという『最後の書』をめぐって「小説家」と「著者」の間で交わさ
れる会話が中心となっており、設問ではその会話の中からそれぞれの心情を丁寧に読み取ることが求められている。
問(一)
「頭を下げる」という「小説家」の予期に反して「著者」がお世辞を「つっぱねた」理由を問うものであり、両
者の会話からその心情を読み取る必要がある。
問(二)指示詞の示す内容を正確に把握できるかを問う。
問(三)
「著者」の発言にあらわれた考えを問うものであり、彼の著した『最後の書』の内容を踏まえつつ、前後の発言
内容からその心情を読み取る必要がある。
問(四)指示詞の示す内容を正確に把握できるかを問う。直前の箇所だけでなく、ひとつ前の発言の中で「著者」が対
になる概念を列挙している点にも留意する必要がある。
問(五)
「感動」しながら「たじろ」ぐという複雑な状況を説明することを求めるものである。文中にあらわれた「小説
家」の心情を丁寧に読み取り、それをひとつの文章にまとめる必要がある。
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三
八島定岡の『狂歌現在奇人譚』から、狂歌師の浅穎庵千本とその友人である俳諧師との間の、秋月を愛でる風流心に
かかわる話を出題。古文の語彙、文法の知識を生かして、本文のストーリーと、文中の登場人物の関係、心情をどれだ
け正しく深く理解できるかを見ることを通して、古文の基本的な読解力を問う。
問(一)基礎的な古語の知識を生かし、文脈に即して的確に口語訳できるかを問う。
問(二)文中の登場人物の心情を正しく理解し、
「明日ありと思ふはあさき月夜かな」の句の意味を適切に示せるかを問
う。「あさき」という語に込められた、俳諧師の千本に対する思いを捉えることが読解の要点となる。
問(三)本文のストーリーと文中の登場人物の心情を正しく深く理解し、
「明日ありと思ふ心のおこたりはなくてさやけ
き秋の夜の月」の歌の意味を適切に示せるかを問う。本文の展開に即して、この歌に込められた千本の心情を
丁寧に読み取る必要がある。その際に、
「おこたり」や「さやけき」の意味を正確に解することも欠かせない。
問(四)本文のストーリー展開において重要な意味を持つ「声」の正体を的確に指摘できるかを問う。
問(五)本文全体の主たるモチーフである千本の「風流」を明確に理解し、適切に説明できるかを問う。際立った性急
さと悠長さを兼ね備えた千本の「風流」な言動を総合的に捉え、周到に要約することが求められている。
四
清代初期の学者である向璿の文集『向惕斎先生集』の第一巻に載る「羅麻伝」からの出題。問題文は、その前半で欲
望のとりこになった羅麻の生涯を冷静に分析し、後半では、羅麻を嘲笑する世間の人びとについて、羅麻と同様、欲望
にとりつかれているにもかかわらず、自身の醜態からは目をそらそうとするかれらの姿を批判的に描く。漢文の基本的
な語句や文型、訓読方法が確実に習得されているかを確認するとともに、全体の文脈に対する理解力を見る問題である。
問(一)(1)も(2)も漢文に頻出する基本的な文字の訓みを問う。
問(二)
(3)は「自」と「至」の呼応、
「壮」と「老」の対の関係が理解できているかを問う。
(4)は「掘」が目的語
をとる動詞であり、その目的語のかたちも漢文に特有のものであることが理解できているかを問う。訓読に関
しては問題文の類似表現がヒントとなる。
(5)の句は(4)に較べてやや複雑だが、やはり動詞とその目的語
とより成る。この点の理解と「与」字の理解を、あわせて問う。
問(三)
(a)は「少」が問題文の「及長」に呼応し、それ以下の文字は「以 A 為 B」という漢文の基本句型である。こ
れらの点の理解を問う。(b)は「日之力」が「窮」字の目的語であることをふまえさせ、それぞれの語の意味
を文脈から推測させる。
問(四)「溺」や「拙」がどのような事柄に対する態度であるのか、またその態度に対し作者がどう論評しているかを、
問題文に即して的確に説明させる。
問(五)問(四)で明らかにした作者の論評を前提とした問題であり、羅麻を憫笑する世間の人びとに対し作者がどう
観察したのかを問う。返り点や送り仮名をつけた「可勝悼哉」に対する正確な解釈にもとづき、作者が抱いた
感慨を過不足なくまとめたい。
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