チリ政治情勢報告(5月) 平成27年6月 1.概要 (1)内政面では,11日に

チリ政治情勢報告(5月)
平成27年6月
1.概要
(1)内政面では,11日に9名の閣僚交代が実施されたほか,21日にはバ
チェレ大統領による年次教書演説が行われた。
(2)外交面では,ボリビアとの「海への出口」問題に関し,国際司法裁判所(I
CJ)における口頭弁論が実施された。
(3)6月2日発表のAdimark GfK社調査による5月のバチェレ大統領の支持率
は29%(前月比-2ポイント),不支持率は66%(前月比+2ポイント)
となった。
2.内政
(1)バチェレ大統領による閣僚交代の実施
11日,バチェレ大統領は9名の閣僚交代を実施した(一度に交代した人数と
しては,民政移管後最多)。「バ」大統領は今般の閣僚交代の理由に関し,「政
権運営の見直しや,政権2年目という新たなステージで共に働くチームメンバ
ーの見直しなど,複数の要素を見直す必要があると考えた」とコメント。ペン
タ社不正政治献金問題やカバル社土地売買問題,SQM社不正政治献金問題を
受け,大統領の政権運営に対する批判が高まるなか,大統領が自らのリーダー
シップを取り戻し,政治危機を乗り越えるために閣僚交代が行われたと見られ
ている。新たに就任した閣僚9名は以下のとおり。
ア 内務大臣:ホルヘ・ブルゴス(DC:キリスト教民主党,前国防大臣)
イ 国防大臣:ホセ・アントニオ・ゴメス(PRSD:急進社会民主党,前法
務大臣)
ウ 財務大臣:ロドリゴ・バルデス(PPD:民主主義のための党)
エ 大統領府長官:ホルヘ・インスンサ(PPD) (※その後,6月7日に辞任,
後任は未定)
オ 内閣官房長官:マルセロ・ディアス(PS:社会党)
カ 社会開発大臣:マルコス・バラサ(PC:共産党)
キ 法務大臣:ハビエラ・ブランコ(無所属,前労働・社会保障大臣)
ク 労働・社会保障大臣:ヒメナ・リンコン(DC,前大統領府長官)
ケ 文化大臣:エルネスト・オット-ネ(無所属)
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(2)2015年大統領年次教書演説
21日,バチェレ大統領はバルパライソの議会において,昨年に続き2度目と
なる大統領年次教書演説を実施した。今般演説では,教育,労働,経済,保健
等の分野において,合計57の政策が発表されたが,多くの政策はこれまでに
も既に言及されているものであった。また,相次ぐ不正の発覚を受け,国民か
らの政治不信が高まる中,政府として信頼回復に取り組んでいく姿勢が強調さ
れた。なお演説中に最も多くの言及が行われた分野は教育であり,高等教育機
関に通う学生の一部に対する学費無償化等の政策が発表された一方,経済政策
や新憲法の制定,南部における先住民問題への対応といった分野に関しては,
具体的な政策や手法については言及されなかった。
3.外交
(1)ボリビアの「海への出口」問題:ICJにおける口頭弁論の実施
ア 4日-8日,国際司法裁判所においてチリとボリビアの「海への出口」問
題に関し,両国の弁護団による口頭弁論が実施され,ムニョス外相も傍聴した。
今般の口頭弁論は,昨年7月にチリ側が先決的抗弁書をICJに提出したこと
を受けて行われたもの。これを受け,ICJは本件に関する管轄権の有無につ
き判断することとなる(右判断は本年10月以降になる見込み)。
イ チリ側口頭弁論(4日及び7日)では,チリの外交政策として条約を尊重
する重要性が述べられると共に,ボゴタ条約第6条では,同条約が署名された
1948年以前に,紛争を解決するために有効な条約が存在する場合は,IC
Jの管轄権から除外されると規定されていることに言及した。弁論を傍聴した
「ム」外相は,「チリ側弁護団による口頭弁論は明瞭なものであり,ボリビア
側の主張を切り崩す(desmontar)ことができた。ICJが本件の管轄権を有さ
ないのは,疑う余地のないことである」と述べた。
(2)李・中国首相のチリ訪問
24-26日,李・中国首相がチリを訪問した。25日にはバチェレ大統領と
の首脳会談が行われ,共同宣言を発表すると共に,二重課税防止条約や,観光
査証申請料の相互免除,チリにおける人民元決済銀行(中国建設銀行)の設立,
通貨スワップ協定,中チリFTA再交渉に向けた合意等を含む複数の二国間合
意文書が署名された。「バ」大統領は,「チリが南米で初めて中国との外交関
係を樹立してからここまでの45年間のように,今後も長期的な視点で責任あ
る取り組みを行いながら,両国間の外交関係の基盤を強化していく」と発言し
た。
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(3)第7回チリ・アルゼンチン二国間大臣会合の開催
15日,チリにて第7回チリ・アルゼンチン二国間大臣会合が開催され,チリ
側からムニョス外相,ブルゴス内務大臣,ゴメス国防大臣らを含む13大臣,
アルゼンチン側からは9大臣が出席した。会合後には,バチェレ大統領出席の
もと,投資,鉱業,国境をまたがるトンネル及び鉄道の建設や道路開設,入国
手続きの簡素化といった分野での二国間合意文書が署名された。会合後「ム」外
相は,「(今回の会合をとおして)チリとアルゼンチンの非常に良好な関係が示
された」と述べ,特に国境付近での移動やコネクティビティの改善における成果
につきコメントした。
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