3 2 障害を越えての移動、 それは冒険の原点。 お 解題=権田萬治 解説=嵐山光三郎 漂泊と流浪 【長編】 たちばな そ と 江戸川乱歩「白髪鬼」 井上靖「敦煌」 【短編】 アーラン・アーラン 橘 外 男「マトモッソ渓 谷 」 小栗虫太郎「火礁海」 【掌編】 夢野久作「瓶詰の地獄」 暗闇からの手裏剣、 太陽を斬る長刀。 解説=夢枕獏 解題=縄田一男 忍者と剣客 【長編】 山田風太郎「甲賀忍法帖」 柴田錬三郎「赤い影法師」 【短編】 綱淵謙錠「讐 (しゅう」 ) 津本陽「隼人の太刀風」 滝口康彦「異聞浪人記」 五味康祐「柳生連也斎」 は や と 江國香織「草之丞の話」 小川未明「眠い町」 森鷗外「寒山拾得」 清水義範「猿取佐助」 解題=大森望 輝いていたSFのあの時代を、 もう一度。 【長編】 小松左京「エスパイ」 半村良「黄金伝説」 【掌編・ショートショート】 解説=夢枕獏 超常能力者 逢坂剛「決闘」 中島敦「山月記」 性善に殉じるか、 性悪で生き抜くか。 解題=池上冬樹 解説=逢坂剛 背徳の仔ら 【長編】 黒岩重吾「裸の背徳者」 」 大藪春彦「野獣死すべし(付・復讐篇) し こ ざ か い ふ ぼ く 赤川次郎「アパートの貴婦人」 皆川博子「夜のリフレーン」 小酒井不木「痴人の復讐」 川端康成「地」 眉村卓「ピーや」 阿刀田高「触媒人間」 北杜夫「月世界征服」 星新一 「超能力」 【短編】 はん さい 【掌編】 【短編】 とう 久生十蘭「昆虫図」 い 平井和正「エスパーお蘭」 筒井康隆「水蜜桃」 宮部みゆき「燔祭」 恩田陸「大きな引き出し」 け み とうげ ほ と け かずら 江戸川乱歩「 踊る一寸法師」 松本清張「鬼畜」 西村京太郎「南神威島」 野坂昭如「 骨餓身峠死人葛」 筒井康隆「問題外科」 立原正秋「白い罌粟」 [編集室から] 「SFの時代」は遠くなった。しかし、当時の興奮は忘れられる べきではない。とはいえ網羅するのは無理である。ここに収録した作品群は、 SFのテーマのひとつ「エスパー」とその変遷である。異形であるから、逃 げる。隠れる。闘う。彼らそれぞれの人間たちとの対応を味わっていただき たい。連作の一編を無理に収録した短編もあるが、それもこの際、いいこと にさせていただきたい。傑作は、永遠なのだから。 ほね が [編集室から]黒岩重吾と大藪春彦を並べることは、無謀である。しかし、元 来こういう叢書を編むこと自体が無謀なのであって、誰が選んでもこうなる、 というのでは面白くないではないか。短編はすさまじい背徳者たちが並んだ。 もとより、 小説とは道徳の教科書ではない。ピカレスク (悪漢) 小説というジャ ンルもあるように、奇人悪人変人が主人公であってもいっこうにかまわない。 問題は、その奇人悪人変人が魅力的かつ印象的であるかどうかである。 みなみ か む 10 【掌編】 小泉八雲「かけひき」 じゅう ざ 吉川英治「鬼」 司馬遼太郎「奇妙な剣客」 火野葦平「手」 井 伏 鱒 二「ジョン万 次 郎 漂流記」 野上弥生子「海神丸」 押川春浪「 月世界競争探検」 香山滋「緑の蜘蛛」 海野十三「軍用鮫」 [編集室から] 当初、 「忍者」と「剣客」の2巻に分かれていたが、1巻にま とめざるをえなかった。となると、編集委員の方々も気合いが入る。どの作 品も落としたくない。しかし半分にせねばならない。豊穣な日本の忍者・剣 豪小説から1500枚を選ぶ、という暴挙を敢行してこの 編が残った。佳 作傑作名作が他にもたくさんあることは、承知のうえである。幸い、はずさ ざるをえなかった作品の一部を他の巻に散らせることはできた。 の [編集室から]劈頭の巻である。ここに収録する長編2編でこの叢書に収録さ れる作品の幅を提示することになる。編集委員は悩んだ。結局、 大衆小説の枢・ 江戸川乱歩の本作が選ばれた。財宝。復讐。大海原。 「冒険」物語のあらゆる 要素が入っている。その対極は井上靖である。砂漠。騎馬の民。宝石の首飾り。 さらに短掌編では文豪と言われる作家の作品と「空想科学小説」の作品をか み合わせた。奇をてらったわけではない。必然、だったような気がする。 う ん 第2巻 第4巻 4 5 第 1巻 第3巻 極限を越えてこそ、 人は変容する。 解題=香山二三郎 解説=夢枕獏 極限の彼方 【長編】 田中光二「大いなる逃亡」 新田次郎「八甲田山死の彷徨」 「逃亡者」の正義、 「追跡者」の立場。 解説=大沢在昌 解題=新保博久 追跡者の宴 【長編】 五木寛之「裸の町」 生島治郎「男たちのブルース」 こ う じょう こ う 星新一 「復讐」 ていた祖母の話」 夢枕獏「二階で縫いものをし 城昌幸「花結び」 小泉八雲「むじな」 吉行淳之介「追跡者」 した話」 稲 垣 足 穂「 お 月 様 と け んか 【掌編・ショートショート】 【短編】 し ん じゅう う ら み の へ ん ぽ ん 【掌編・ショートショート】 【短編】 り 氷川瓏「乳母車」 む 平井和正「世界の滅びる夜」 星新一 「ねらわれた星」 五木寛之「無理心中恨返本」 高城高「汚い波紋」 都筑道夫「まだ日が高す ぎる」 中薗英助「 外人部隊を追え」 山本周五郎「ひとごろし」 筒井康隆「走る取的」 とり てき 村山槐多「悪魔の舌」 手塚治虫「妖蕈譚」 武田泰淳「流人島にて」 石原慎太郎「処刑の部屋」 白石一郎「元禄武士道」 小松左京「ゴルディアスの 結び目」 [編集室から]生島治郎作品は愛弟子だった大沢在昌委員の鶴の一声でこの長 編となった。もう一編の長編は五木寛之のハードボイルドから「裸の町」が 選ばれた。すると「追跡」がこの巻のキーワードとなる。短掌編 編は、剛 速球と変化球を織り交ぜることができた。中薗英助は埋もれて忘れられてし まっていい作家ではない。また、あの吉行淳之介が掌編の名手であったこと をご存知か? 実はそうなのだ。 メ ト ロ 星新一 「夢の未来へ」 て つ ときあなの 矢野徹「ぼくの名は……」 砂時計」 原 田 宗 典「 時 間 が 逆 行 す る 吉行淳之介「扉のむこう」 【掌編・ショートショート】 み ち ゆ き 半村良「およね平吉時穴 道行」 解説=清水義範 解題=大森望 タイムスリップ。あなたはどこへ行くか。 歪んだ時間 【短編】 芥川龍之介「魔術」 北杜夫「買物」 安部公房「鉛の卵」 式貴士「カンタン刑」 小松左京「哲学者の小径」 筒井康隆「万延元年のラ グビー」 清水義範「 また逢う日まで」 11 [編集室から]ふたたびSF、そしてファンタジーの巻である。今度は「時間 テーマ」でまとめてみた。タイムマシン、 タイムスリップ、 コールドスリープ。 これが「時間」を歪める三種の神器であろうが、タイムスリップのみが現在 の読者にも受け入れられているようだ。掌短編の中には「なぜこの作品が時 間テーマなのであろうか?」と思われるであろう作品も含まれている。我慢 して読んでいただきたい。最後まで読めばわかります。 フィロソファーズ・レーン 浅田次郎「地下鉄に乗って」 山田正紀「竜の眠る浜辺」 【長編】 第8巻 よう じん たん 第6巻 [編集室から] 「極限」とは何か。人によって状況によって、さまざまな極限が あろう。牙を剝く嵐の峻山での雪中行軍。なぜ追われ続けるのかわからぬ恐 怖。武士の矜持を示す食卓。地球の予期せぬ危機。編集者の怒り。逃げられ ぬ私刑の刻。閉鎖空間での追跡者との遭遇。ここに収録された 編は人が経 験できる「極限」のごく一部にしかすぎない。まだ名作があるはずなのに、 追いきれなかったのが残念である。 友情か、 対立か。動物と人間の交流。 解説=逢坂剛 解題=吉野仁 牙が閃く時 【長編】 西村寿行「滅びの笛」 [編集室から]動物小説の巻である。一貫して「動物」にこだわり続けた作家 は戸川幸夫と椋鳩十の二人くらいか。ここにパニック小説にくくられていた 「滅びの笛」を投入させていただいた。西村寿行は常に変わり続けた作家で あり、どの作品を選ぶか最も悩んだ作家の一人である。編集委員の方々に解 説の希望巻をつのったところ、全員がこの巻を挙げてこられたことを是非申 し添えておきたい。 くじら が み 宮沢賢治「猫の事務所」 井上ひさし「冷し馬」 岡本綺堂「虎」 中 島 ら も「クロウリング・ 椋鳩十「片耳の大シカ」 キング・スネイク」 新田次郎「おとし穴」 【掌編・ショートショート】 戸川幸夫「咬ませ犬」 広津和郎「狸」 宇能鴻一郎「鯨神」 嵐山光三郎「岡野の蛙」 豊田有 恒「 火 星で最 後の 北杜夫「推奨株」 川田弥一郎「青い軌跡」 ……」 「不満」 藤原審爾「狼よ、 はなやか 星新一 に翔べ」 【短編】 12 6 7 第5巻 第7巻 国家という暴力。個人という抵抗。 解題=北上次郎 解説=北方謙三 個人と国家 【長編】 生きることは冒険、 ならば旅することは。 解説=大沢在昌 解題=池上冬樹 危険な旅路 【長編】 船戸与一 「夜のオデッセイア」 矢作俊彦「リンゴォ ・キッドの休日」 【短編】 伴野朗「三十三時間」 胡桃沢耕史「ぼくの小さな祖国」 【掌編】 五木寛之「カーセックスの怪」 かんべむさし「弾丸」 【掌編・ショートショート】 【短編】 渡辺温「兵隊の死」 石川淳「金鶏」 森詠「わが祈りを聞け」 片 岡 義 男「ミス・リグビー の幸福」 谷克二「サバンナ」 逢 坂 剛「 幻 影ブルネーテ に消ゆ」 も ず 解題=西上心太 警察組織の闇の深奥と、 腐敗の連鎖。 【長編】 逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」 大沢在昌「毒猿 新宿鮫Ⅱ」 【短編】 宮部みゆき「八月の雪」 横山秀夫「黒い線」 【掌編】 谷川俊太郎「探偵電子計算機」 結城昌治「おまわりなんか知 るもんかい」 阿刀田高「時間外労働」 景山民夫「ご町内諜報戦」 嵐山光三郎「上様」 解説=真保裕一 法の代行者 星新一 「もたらされた文明」 阿刀田高「笑顔でギャンブルを」 半村良「酒」 眉村卓「帰途」 河野典生「かわいい娘」 坪田譲治「森の中の塔」 川端康成「顔」 野坂昭如「捕虜と女の子」 結城昌治「司令官逃避」 城山三郎「草原の敵」 筒井康隆「関節話法」 西木正明「ケープタウンか ら来た手紙」 大沢在昌「ダックのルール」 [編集室から] 「道中もの」というテーマがある。日本の小説では「東海道中膝 栗毛」あたりが最初だろうか。要するに、主人公が移動しながら冒険を続け ていく、というものである。膨大な数のこの種の傑作があるわけで、全部読 んでこの 編を選びました、という噓は言いません。ところで、泰斗・都筑 道夫が「ほんとうにハードボイルド小説を書ける作家は石川淳ひとり」と書 いているのをご存知か。これは、逢坂剛委員の鋭い指摘である。 吉行淳之介「 鮭ぞうすい製造法」 [編集室から]この巻には、 困った。 どうしても 「戦争」 に関わらないと、 このテー マの作品選定は苦しい。ところが弊社には、 「戦争と文学」という 周年記 念企画があり、予測されたとおり、野坂昭如「火垂るの墓」と結城昌治「従 軍免脱」の2作品が、 「戦争と文学」とかぶってしまった。誰が選んでも傑作 は傑作、ということであろうか。編集委員の方々と相談して作品を変更した。 他の巻では武田泰淳「ひかりごけ」がかぶった。憮然たる想いである。 解説=今野敏 解題=池上冬樹 標的を見つけた漢が、 再び奔り出す。 じ ま か ず いち 復活する男 い い 【長編】 【掌編・ショートショート】 飯嶋和一 「汝ふたたび故郷へ帰れず」 北方謙三「檻」 【短編】 星新一 「使者」 城昌幸「スタイリスト」 眉村卓「拾得物」 景山民夫「ボトムライン」 大沢在昌「二杯目のジンフィズ」 14 お ん 第 10 巻 第 12 巻 [編集室から]この巻は警察小説が中心である。とはいえ、なにも法律を代行 するのが警察官だけでいいはずもない。裁判官、検事、岡っ引き、弁護士、 死刑執行人、といろいろな職種の主人公を並べるつもりであったが、力およ ばず、やはり警察官が多くなってしまった。警官ものに傑作が多いのだから、 これは仕方がないのである。 世紀の作家だと思っていた横山作品に 世紀 のものがあったのは、僥倖というしかない。 20 隆慶一郎「ぼうふらの剣」 白石一郎「秘剣」 浅田次郎「門前金融」 乃南アサ「彫刻する人」 藤原伊織「雪が降る」 東野圭吾「誘拐天国」 [編集室から]ハメット、チャンドラーがハードボイルドの嚆矢とされている。 が、ヘミングウェイの文体こそが始まりである、という説もある。ここに収 録させていただいた2長編は、ともにすべての無駄を削ぎ落とした、ヘミン グウェイの文体を想起させるものである。また、「男の復活」 物語とはビルドゥ ングスロマン(成長物語)の変型のひとつであり、そのテーマに沿った傑作 群を集められたことは幸甚である。 21 85 8 9 第9巻 第 11 巻 着陸か、 墜落か。それが、 問題だ。 解題=吉野仁 解説=逢坂剛 飛翔への夢 【長編】 いな み いつ ら 原田宗典「鳥の王の羽」 田中光二「ゴースト・フライト」 阿刀田高「地震対策」 芥川龍之介「仙人」 【掌編】 稲見一良「麦畑のミッション」 椎名誠「ねずみ」 清水義範「翼よ、 あれは何 の灯だ」 東野圭吾「超たぬき理論」 佐々木譲「ベルリン飛行指令」 【短編】 水 谷 準「お・それ・みお ︱︱ 私の太陽よ、 大空の彼方に︱︱」 新田次郎「鳥人伝」 戸川幸夫「爪王」 豊田穣「われ特攻に参加 せず」 野 坂 昭 如「 凧になったお 母さん」 城山三郎「死の誘導機」 筒井康隆「五郎八航空」 ほ ん ど あきら 本渡章「飛ぶ男」 [編集室から]人はむかしむかし、鳥だったのかもしれない。というのは、た ぶん間違いだろう。しかし、飛ぶ夢は人間なら誰でも見たことがあるはずだ。 イカロスからライト兄弟までの夢だったのである。が、なにも飛ぶのは飛行 機ばかりではない。凧も飛べば鷹も飛ぶ。気球も飛ぶ。人間もタヌキも飛ぶ かもしれない。しかし最大の興味は、いちど飛翔したものがどこにどういう ふうに着地するか、あるいはしないか、である。 冒険「物語」は、 海からやって来た。 ー 解題=池上冬樹 解説=高野秀行 波浪の咆哮 【長編】 ク 椎名誠「水域」 景山民夫「遠い海から来たCOO」 ともかく、 強くなりたかった男たち。 解説=北方謙三 解題=吉田伸子 格闘者の血 【長編】 景山民夫「元禄異種格闘技戦」 原田宗典「レフェリーの勝利」 夢枕獏「どもごっつぁんどぇす」 大坪砂男「憎まれ者」 【掌編】 夢枕獏「餓狼伝Ⅰ」 今野敏「惣角流浪」 中島らも「超老伝 カポエラをする人」 【短編】 新宮正春「少林寺殺法」 北方謙三「殺さない程度」 椎名誠「生還」 船戸与一 「からっ風の街」 [編集室から]男の子は強くなりたかった。チャンピォン・ベルトか金色のメ ダルか黒い帯か。ともかく強い自分を夢見ていた。しかし、成長とは、自分 の可能性が、実はただの不可能性であったことを確かめる長い旅路だったの かもしれない。ベルトやメダルがどんどん遠くなり、かつて強くなりたいと 願っていたことを、時々、思い出すだけになっていくかもしれない。これは、 そういうかつての「男の子」すべてに捧げる巻である。 解説=馳星周 解題=新保博久 過去から現在。その矢印の先に明日がある。 過去の囁き 【長編】 志水辰夫「行きずりの街」 花村萬月「なで肩の狐」 【短編】 三島由紀夫「伝説」 生島治郎「暗い海暗い声」 原田宗典「岬にいた少女」 桐野夏生「蜘蛛の巣」 北方謙三「カウンター」 結城昌治「骨の音」 小松左京「沼」 皆川博子「風」 【掌編】 【掌編】 【短編】 川端康成「竜宮の乙姫」 清水義範「永遠のジャック &ベティ」 高橋克彦「遠い記憶」 髙村薫「愁訴の花」 藤 田 宜 永「 剣 士たちのパ リ祭」 真保裕一 「暗室」 夏目漱石「第七夜」 小 川 未 明「 赤いろう そ く と人魚」 蘭郁二郎「地図にない島」 笹沢左保「赦免花は散った」 北杜夫「遙かな国 遠い国」 田中 光 二「二人だけの珊 瑚礁」 中島らも「セルフィネの血」 熊谷達也「潜りさま」 [編集室から]少年小説の主人公にはさしたる過去がない。しかし、あらゆる 物語の主人公には語るべき過去がある。記憶喪失者にだって立派な過去があ り、単に本人が忘れているだけである。過去。それは、物語をつむいでいく うえで最重要の要素である「主人公の性格造型」にかかわる問題である。そ して、過去が囁き始めると物語が躍動していくのだ。その鮮やかな成功例を 長短掌 編、提示できたことは、本集にとっての幸運である。 しゃ めん ばな [編集室から]海の巻である。そもそも「冒険」物語は大航海時代のイギリス に始まった。 「冒険」イコール「大海」だった時代があったのである。鎖国と 呼ばれた時代があったせいか、日本にはこの種の小説の伝統がない。なけれ ば詭弁を弄しても作ってしまおう。編集委員諸氏もそう言っておられる。海 が舞台の椎名SF長編と景山恐竜長編を核にすえた。やはり、「冒険」に「海」 がないと、画龍に点睛を欠くのである。 12 10 11 第 14 巻 第 16 巻 第 13 巻 第 15 巻 もう一人の私。彼は、 敵か、 味方か。 解題=西上心太 解説=山田正紀 私がふたり 【長編】 東野圭吾「分身」 解説=北方謙三 任俠も義理も、 遠い過去のことなのか。 し も ざ わ か ん 大沢在昌「気つけ薬」 清水義範「極道温泉」 驚く」 夢枕獏「あんまさまおおいに かんべむさし「ドス」 【掌編】 解題=香山二三郎 暗黒の街角 【長編】 馳星周「不夜城」 【短編】 より ちか 【掌編・ショートショート】 ま 子母沢寛「座頭市物語」 解題=吉田伸子 間に合うか。時間こそが最大の敵。 【長編】 解説=志水辰夫 疾走する刻 [編集室から]ヤクザ小説の巻である。 「いいヤクザ」 「フツーのヤクザ」 「悪い ヤクザ」 をほどよく配列しよう、 というのが当初の発想だった。が、 甘くなかっ た。 「いいヤクザ」の小説はいくらでもあるのに、 「悪いヤクザ」の名編は少 ない。愚考するにヤクザ小説でリアリスムを貫徹しても感動を呼ぶ小説にな らぬのだろう。とはいえ馳星周長編には「いい人」はいない。この長編で[3 巻]以来の「背徳」の沼の感覚にひたっていただきたい。 あり 【短編】 とき 都筑道夫「空港ロビー」 筒井康隆「環状線」 星新一 「常識」 稲垣足穂「自分によく似た人」 とき ワ ン イ ン カ ン フ 赤川次郎「不良品、 交換しま す!」 原田宗典「デジャヴの村」 高橋克彦「電話」 [編集室から]東野圭吾「分身」の雑誌掲載時のタイトルは「ドッペルゲンガー 症候群」であった。ならばドッペルゲンガー小説をずらりと並べればいいの だろうが、それでは、読む側がつらいではないですか。さいわい天啓の如く、 船戸与一委員の怪作中編が浮上した。いや、降りてきた。この作品は、 「ドッ ペルゲンガー」ではないが、みごとに「私がふたり」なのである。ネタバレ なんて言わないで欲しい。 年も前に書かれた作品なのだから。 漂着者だけが孤絶しているわけではない。 解題=吉野仁 解説=大沢在昌 孤絶せし者 【長編】 宮部みゆき「スナーク狩り」 福井晴敏「川の深さは」 【短編】 【掌編】 海音寺潮五郎「男一代の記」 佐々木譲「鉄騎兵、 跳んだ」 北杜夫「贅沢」 眉村卓「走る」 [編集室から]ついに、最後の巻である。長編 編については、ゆるやかなク ロニクルを形成させたつもりだ。福井長編は2000年8月刊であり、かろ うじて 世紀に間に合った。それにしても、馬に乗って疾走する作品がない のはなぜか。ロケットが宇宙空間を駆ける作品もない。ないはずはないのだ が、時すでに遅し。あ、疾走といえば「走れメロス」を忘れていたぞ。邪悪 に敏感なメロスは、暴虐無謀なるこの「冒険の森へ」に激怒しているはずだ。 北方謙三「高速道路」 船戸与一 「深夜ドライブ」 中島らも「自転車行」 景山民夫「ポルシェが来た」 筒井康隆「画家たちの喧嘩」 星新一 「霧の星で」 宮部みゆき「車坂」 ター」 中島らも「ラブ・イン・エレベー 【掌編・ショートショート】 真保裕一 「ホワイトアウト」 【短編】 椎名誠「漂着者」 坂東眞砂子「盛夏の毒」 浅田次郎「永遠の緑」 篠田節子「幻の穀物危機」 桐野夏生「ジオラマ」 [編集室から] 「海の冒険」で一巻を立てたのだから、当然「山の冒険」でも一 巻、と思っていた。しかし、新田次郎、井上靖はすでに投入してしまったし、 夢枕獏委員の「神々の山嶺」は長大過ぎて、 残念ながら初めから対象外であっ た。しかし、 「冒険」第二世代の傑作「ホワイトアウト」はぜひ収録したかっ た。で、「山」はやめてきわめて唐突に「孤絶」がテーマになった。なにも「ロ ビンソン・クルーソー」の状況だけが「孤絶」ではないのである。 20 ガ 船戸与一 「メビウスの時の刻」 山田風太郎「万人坑」 三島由紀夫「花火」 阿刀田高「甲虫の遁走曲」 小池真理子「足」 夢枕獏「山奥の奇妙なやつ」 乙一 「カザリとヨーコ」 長谷川伸「関の弥太ッぺ」 有馬頼義「貴三郎一代」 河 野 典 生「ゴウイング・マ イ・ウェイ」 安部譲二「プロフェッショナ ル・トゥール」 花村萬月「笑う山崎」 石田衣良「エキサイタブル ボーイ」 浅田次郎「ラブ・レター」 ー 第 18 巻 第 20巻 30 (文中、敬称略とさせていただきました) 12 13 36 第 17 巻 第 19 巻 14
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