年度経営計画 平成27年度 1 (1)業務環境 1) 岐阜県の景気動向 平成26年度国内の景気動向は、アベノミクスによる日銀の大規模な金融緩和を背景に円安が進み、輸 出関連の大手企業を中心に業績を向上させているほか、株価の上昇や雇用・所得環境の改善など、緩や かな回復基調が続いています。 一方で円安は、内需型企業において製品・商品の仕入価格の上昇というマイナス要因のみならず、製 造業全体においては原材料・エネルギーコストなどの製造コストを押し上げ、中小企業・小規模事業者の 企業収益を圧迫しています。 これらのことから、岐阜県内の景気動向においても、円安の進行により輸入原材料価格の上昇などを販 売価格に転嫁できていない中小企業・小規模事業者は依然として厳しい状況が続いています。 今後、消費税率引き上げに伴う個人消費の回復の遅れ、海外の経済情勢や国際金融市場の動きなど、 景気を下押しするリスクが懸念されます。 2 2) 中小企業を取り巻く環境 県内中小企業の経営環境は、円安や原油安により一部の業種において業績の回復がみられますが、 業種・規模によるバラつきもみられ、引き続き厳しい状況が続いています。 製造業では、自動車などの輸送用機械関連を中心に受注や生産は好調を維持しており、大型の設備投 資の動きもみられますが、製造コストの増加を価格に転嫁できていない中小企業・小規模事業者において は企業収益を圧迫しています。 商業・サービス業では、特に小売業や卸売業においては個人消費の回復の遅れなどから厳しい経営環 境が継続しています。 観光業においては、国内個人客や円安による外国人の団体ツアー客などが好調で、緩やかに業績が回 復しつつあります。 建設業では、公共工事は国、県及び市町村からの発注が増加しましたが、住宅建築は消費税率引き上 げ後の反動減がみられました。 雇用情勢においては、緩やかな経済回復基調により雇用を増やす企業が出始め、有効求人倍率は全 国平均を上回り、業界によっては人の確保が困難となっています。 企業の資金需要は、先行きの不透明感から総じて新規の借入は低調です。 企業倒産は、中小企業金融円滑化法終了後2年を経過するも、金融機関の融資姿勢や返済条件変更 の対応に大きな変化がみられないことなどから低水準に推移していますが、今後業績改善が進まない企 業の倒産の増加が懸念されます。 3 (2)業務運営方針 平成27年度の業務運営方針は、県内中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境を考慮し、国、県及び市 町村の制度融資を活用した資金調達の円滑化を支援するとともに、金融機関及び中小企業支援機関との連 携を図りながら実情に応じた適切な期中支援をこれまで以上に取り組み、県内中小企業の発展と地域経済の 活性化に寄与していくため、下記のとおりとします。 ①保証利用の推進 中小企業・小規模事業者の健全な発展が地域経済活性化に欠かせないとの認識により引き続き資金 繰り支援に努めるとともに、とりわけ経済・社会構造の変化を受けやすい小規模事業者に対しては、商工 団体等の支援機関との連携を強化し積極的な資金繰り支援に取り組みます。 また、創業者に対しては、創業が円滑にできるよう経営相談会や専門家派遣等の創業支援に取り組む とともに、新規保証利用先企業に対しては、金融機関や商工団体等と連携して信用保証制度の積極的な 推進に取り組みます。 ②経営サポートに主眼を置いた支援態勢の充実 返済条件緩和先に対しては、金融機関や中小企業支援機関との連携を一層強化し、国が進める経営 支援施策を活用するとともに、当協会独自の外部専門家派遣の実施等により着実な経営改善へ導くなど 積極的な経営サポートに取り組みます。 4 ③回収の推進 回収業務の見直しを継続して実施し、回収の効率化と最大化を図ります。 ④信頼される組織づくりと人材の育成 コンプライアンス態勢の充実を図るとともに、職員の資質向上を図るなど、誰からも信頼される協会職員 となるための人材育成に努めます。 5 (3)重点課題 【保証部門】 ①利用者ニーズに応じた保証推進による保証利用の拡大 保証申込みの際に、中小企業者の実情に応じて、ニーズに合った資金調達方法や保証制度の提案に努 めます。特に業況が改善している返済条件緩和先には、「経営力強化保証」等を活用するなど、借換えによ る金融取引の正常化を推進します。 また、金融機関には、各種キャンペーンの実施や保証業務説明会等の開催による保証推進のほか、営 業店等への訪問活動を通じてきめ細かく利用促進を働きかけるなど、保証利用の拡大に努めます。 さらに、商工会議所・商工会には、「提携型全国小口」、「県小口Z」等の小規模事業者向け保証制度の 推進を図り、商工団体経由保証の利用増加に努めます。 ②創業支援、事業継承等への積極的な対応 県の保証料補助拡大により、平成27年度の県創業支援保証における利用者負担が大幅に軽減される ことから、同保証の有利性をPRして創業保証の利用増加に努めます。 また、自治体や商工団体等が実施する創業セミナー等に積極的に参加するなど、創業者に直接関わる 機会を拡げるとともに、創業保証後のフォローアップ方法を見直すなど、効果的な支援に努めます。このた め、本店に設置する企業支援室企業支援課に創業支援業務を集約して、態勢強化を図ります。 さらに、事業存続、雇用維持を目指し、事業継承を計画する中小企業者への金融支援を金融機関等と 6 連携して積極的に取組みます。 ③経営改善に向けた支援事業の拡充 中小企業診断士による「経営診断サービス」及び「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」の 費用補助事業を引き続き実施するとともに、平成27年度から新たな取り組みとして外部専門家の派遣に よる「経営改善計画サポート事業」を創設し、これらの事業により保証先企業の経営改善促進に努めま す。 また、県内各地で出前の経営相談会を開催し、地域の商工団体等の経営支援機関と連携して、経営課 題を抱える中小企業者の金融・経営相談に対応します。 ④保証審査態勢の充実 平成26年10月に改正した協調融資保証制度「協調α保証」を引き続き推進するなど、金融機関プロパ ーとの協調融資により適切なリスク分担を図ります。 また、不正な保証利用防止に継続的に取組むなど、適正な保証の推進に努めるほか、早期代位弁済に 至った事例について、事故原因等の情報共有に留まらず、保証時に遡って検証し審査に活かす取組みを 実施するなど、保証審査の質的充実を図ります。 7 【期中管理部門】 ①条件変更先への期中支援の取組み強化 返済条件緩和先に対しては、引き続き取扱い金融機関と協調して、中小企業者の実情に応じた弾力的 な条件変更を実施し、資金繰り支援に努めます。 特に、借入金に占める保証付融資の割合が高い返済条件緩和先に対しては、平成27年度から対象企 業を拡大したうえで、協会職員が中小企業者を訪問し、事業の現状や見込みを聴き取り、返済の正常化を 促します。 また、元金返済据置が長期化する先に対しては、事業の改善見込みを注視のうえ金融機関と連携して 管理強化を図るなど、期中支援の取組み強化に努めます。 ②金融機関、中小企業支援機関と連携した支援態勢の拡充 中小企業支援ネットワーク「岐阜企業力強化連携会議(全力応援!ぎふネットワーク)」、「岐阜県経営支 援機関担当者連絡会(サポネットぎふ)」の事務局として、定期的な会議運営を図り、支援機関間の情報共 有に努めます。 また、個別中小企業者への金融支援・経営支援を効果的に行うため、必要に応じて「全力応援!ぎふサ ポート会議(以下「サポート会議」という。)」を開催するほか、「岐阜県よろず支援拠点」、「地域プラットフォ ーム」等の専門家派遣を活用するなど、金融機関、中小企業支援機関と連携して地域一体での中小企業 者支援に積極的に取組みます。 8 ③事業再生支援態勢の拡充 抜本的な事業再生事案には、中小企業再生支援協議会、再生支援ファンド等と密接に連携のうえ適切 な再生手法を検討するとともに、金融機関や関係支援機関等と協力して、再建を図る中小企業者の支援に 取組みます。 また、同支援協議会スキームによる暫定リスケ案件が増加していることから、メイン金融機関との情報共 有を密接に行うなど、再生計画に沿った条件変更等による支援を継続します。 ④調整部門の充実、強化 事故報告書の提出を受けた場合は、中小企業者、金融機関及び保証協会で構成するサポート会議にお いて事業の見込みを検討する中で三者が情報を共有し、納得感のある方針決定をします。この結果、代位 弁済に至る場合は、返済の意識付けを行うなど求償権回収の促進を図ります。 また、保証付き貸付金に延滞が生じた場合は、金融機関からの事故報告書提出を待つことなくサポート 会議の開催を提案するなど延滞解消に向けた積極的支援を行います。 さらに、平成27年度から本店の条件変更の担当部署を管理部調整課に集約して、正常債権化、期中管 理の強化を図ります。 なお、適正な期中管理を推進するため、従来の金融機関を対象とした合同説明会に加え、金融機関営 業店単位の少人数説明会も開催していきます。 9 【回収部門】 ①回収の効率化と向上策の実施 全ての求償権について、半期に一度、管理職が担当者にヒアリングを行い、回収方針に従った対応がな されているかどうかを確認するとともに、これからの回収策を検討、実施します。 また、督促強化期間を設けるなど、定期回収の底上げによる無担保求償権の回収促進を図ります。 回収方法については、自動督促システムと担当者による電話、訪問及び法的措置等の手法を組み合わ せることにより、効率的かつ効果的な回収に努めます。 また、郵便物等の送達不能先いわゆる居所不明者の調査を速やかに行うとともに、外部専門家を活用し た相続調査を実施します。 さらに、保証債務免除の公明性と公平性を確保するため、従来のガイドラインや経営者保証に関するガ イドラインをもとに新たな目安を策定します。 ②サービサーの活用による回収促進 保証協会の業務との同質化を図るため、サービサー管理職との情報交換を緊密に行うとともに、ヒアリン グによる実情把握や助言に努めます。 また、コンプライアンス等の社員教育に注力するよう促すとともに、保証協会との連帯意識を醸成するた め保証協会職員との交流を促進します。 10 ③管理事務停止・求償権整理の推進 調査の結果、回収見込みのない求償権は、適時適切に管理事務停止及び求償権整理手続きを行い、 人材等限られた経営資源を効率的に活用します。 11 【その他間接部門】 ①コンプライアンス態勢の充実、強化 ・役職員全員がコンプライアンスマニュアルならびにコンプライアンス・プログラムの実践に努めるとともに、 実施状況を定期的に検証し、フォローアップの徹底を図ります。 ・「個人データ等顧客情報管理台帳」、「個人データ外部持出管理簿」等の管理強化により、顧客保護等管 理態勢の徹底を図ります。 ・コンプライアンス関連諸規程及びマニュアルの継続的な見直し、整備に努めるとともに、実践を確実なもの とするため、役職員に対して規程の周知を徹底し、コンプライアンス態勢の充実・強化を図ります。 ・反社会的勢力との関係を遮断するため、一元的な管理態勢を構築し、組織として一丸となって対応すると ともに、平素から警察、公益財団法人岐阜県暴力追放推進センター、顧問弁護士及び金融機関と緊密に 連携します。 ②危機管理体制の強化 ・休日又は夜間の災害発生を想定したBCP(事業継続計画)に基づく訓練を実施することにより問題点を抽 出し、非常時に実効性のある体制づくりを目指します。 ・COMMON システム運用協議会及び株式会社保証協会システムセンターと連携して、定期的かつ継続的な システム検証を実施し、システム関連障害の発生を防止し安定運用を図ります。 ・平成28年5月実施予定である保証料業務統一化に向けて、影響範囲を的確に把握し効率的な運営態勢 を検討することにより、リスクの低減を図ります。 12 ③信頼される保証協会職員となるための人づくり ・各種研修への積極的参加、内部研修の充実及び資格取得の奨励等により職員のスキルアップに努め、経 営支援や再生支援における能力の向上等、中小企業者の視点で誠意と熱意を持って行動ができる職員の 育成を図るとともに、有資格者や女性職員の能力を積極的に活用します。 ④広報、広聴活動等の充実、強化 ・テレビ・ラジオなどマスメディアを使った広報活動を継続的に実施し、信用保証協会の認知度及び保証利 用度の向上を図ります。 ・ホームページを利用して最新情報を発信し、積極的に情報公開を行うとともに、継続的に利便性の向上を 図ります。 ・中小企業者団体や商工会議所・商工会等中小企業支援機関との意見交換を積極的に行い、信用保証協 会に求められるニーズを把握し、 要望内容を業務に反映できるよう努めます。 ・信用保証制度や協会業務の適切な運用を図るため、関係機関向けに「信用保証ハンドブック」・「保証の手 引き」等を配布し周知に努めます。また、金融機関担当者に協会業務をより深く理解していただくため保証 業務説明会の内容を充実させ、継続実施します。 ・地域の大学と連携した金融教育を通じて、信用補完制度の周知とともに創業支援、中小企業支援に取組 みます。 13 (4)保証承諾の見通し 平成27年度の保証承諾等の主要業務数値(見通し)は、以下のとおりです。 (単位:百万円、%) 対前年度 金 額 計画比 保証承諾 104,000 92.0 保証債務残高 380,600 91.6 保証債務平均残高 392,200 91.6 代位弁済 8,200 74.5 実際回収 1,800 90.0 求償権残高 2,388 77.8 14
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