協会けんぽにおける 地域医療構想・医療計画への関与

協会けんぽにおける
地域医療構想・医療計画への関与
平成27年5月17日
協会けんぽの規模
 3600万人(国民の3.6人に1人)が加入者。
 健保組合を作ることができない中小企業・小規模企業が多く、事業所数の3/4以上が従業員9人以下。
協会けんぽは、サラリーマンの医療保険の最後の受け皿。
○ 保険者の位置づけ
○ 協会の事業所規模別構成(26年3月末)
従業員1000人以上 0.05%
組合の解散等
1,164事業所
加入者数約8万人*
85組合、
910万人
988事業所
加入者数約13万人*
協会から独立
*平成25年度
全国健康保険協会(26年3月末速報値)
3,566万人
自営業、
無職等
国民健康保険(24年3月末)
1,717市町村 3,520万人、
164国保組合 312万人
0~74歳
後期高齢者医療制度
1,410組合、2,924万人
(24年3月末)
現役世代が医療費を負担
サラリーマン
健康保険組合(26年4月1日)
共済組合
従業員100~999人 1.6%
従業員30~99人 5.3%
従業員 2人以下
42.6%
従業員10~29人
14.9%
適用事業所数
約168万
(25年3月末)
47広域連合
1,517万人
75歳
従業員 5~9人
18.6%
従業員 3・4人
17.1%
※ 事業所数の
3/4以上が
従業員9人以下
1
協会けんぽの保険財政の傾向
 近年、医療費(1人当たり保険給付費)の伸びが賃金(1人当たり標準報酬)の伸びを上回り、協会けんぽ
の保険財政は赤字構造。
医療費
1.25
・ 乳幼児の患者負担の軽減
(3歳未満→就学前)
1.20
・ 診療報酬改定
1.15
診療報酬改定
▲3.16%
診療報酬改定
▲1.0%
1.10
1.05
1.00 1.18 1.19 1.16 1.19 1.12 1.06 1.04 ▲0.82%
(被保険者1人当たり保険給付費)
1.08 診療報酬改定
+0.00%
・診療報酬改定
+0.19%
1.03 1.01 1.00
1.00
1.00 1.00 0.99 1.00 0.97 1.00 0.98 0.95
0.97 ・患者負担の3割化
・総報酬制導入
0.90
赤字構造
0.97 0.97 276,161円
賃金
(1人当たり標準報酬月額)
0.85
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
年度
(見込み)
(注)数値は平成15年度を1とした場合の指数で表示したもの。
2
協会けんぽ被保険者1人当たり標準報酬月額の推移
 リーマンショック以降、急激に落ち込んだ標準報酬月額は、25年度以降、ようやく横ばいから若干好転して
きているが、依然として、赤字財政構造は変わらない。
千円
289
27年1月実績(速報値)
279,897円
284
279
274
対前年度比0.3%
269
4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2
18
19
20
21
22
23
24
25
26
年度
3
協会けんぽの財政構造(25年度決算)
 協会けんぽ全体の収支は約9兆円だが、その4割超、約3.5兆円が高齢者医療への拠出金に充てられて
おり、平成25年度では前年度よりも 2,100億円増加。
支 出 8兆5,425億円
収 入 8兆7,291億円
雑収入等
220億円
(0.2%)
国庫補助
1.2 兆円
(14.0%)
保険料
7.5兆円
(85.8%)
(注)端数整理のため、計数が整合しない場合がある。
現金給付
0.5兆円
(5.8%)
健診・
保健指導
770億円
(0.9%)
高齢者医療
への拠出金
(介護を除く)
3.5兆円
(40.8%)
協会けんぽの支出
の4割超が高齢者
医療の負担に充て
られています。
協会
事務経費
380億円
(0.4%)
その他の
支出
400億円
(0.5%)
医療給付
4.4兆円
(51.6%)
医療費の
適正化
・ジェネリックの使用促進
・レセプト点検
・保健事業
・医療費情報の提供
4
協会けんぽの単年度収支差と準備金残高の推移
 19年度から単年度赤字に陥り、18年度に5,000億円あった準備金(累積 黒字・赤字)は21年度末で▲3,200億円
に悪化。
 この▲3,200億円の赤字は、22~24年度の3年間で解消する必要があり、単年度収支をプラスにして財政運営。
この赤字については結果的に2カ年で解消。
 こうした結果は、24年度まで3年連続の保険料率の大幅な引上げに加え、25年度は賃金が横ばいから上昇に
転じたこと、医療費が例年より伸びなかったこと等によるものであり、財政の赤字構造が好転したわけではない。
[億円]
15,000
14,935
14,088
13,000
財政特例措置期間
準備金残高
11,366
11,000
22年度料率設定時には、そ
の時点の準備金赤字見込み
の▲4,460億円を3年で解消
するため単年度収支1,502億
円のプラスを見込んだ
8,914
9,000
8,039
6,260
7,000
6,857
6,932
6,701
5,526
4,983
5,000
2,405
2,164
3,000
1,000
746
-1,000
-3,000
▲649
▲950
▲1,569
▲2,809 ▲2,783
-5,000
-7,000
704
34
▲935
5
(4年度)
・国庫補助率
16.4%→13.0%
保険料率8.4%
6
7
(6年度)
・食事療養費
制度の創設
8
3,695
3,690
1,419
1,539
1,117
10
(9年度)
・患者負担2割
11
12
13
1,502
1,866
▲174
▲638
▲1,390
▲2,290
▲3,179
▲4,893
▲6,169
(12年度)
・介護保険制度導入
(10年度)
診療報酬・薬価等
のマイナス改定
5,055
558
▲4,231
9
6,921
3,104
2,589
1,951
2,540
単年度収支差
▲3,163
▲4,193
4
23年度料率設定時には、そ
の時点の準備金赤字見込み
の▲1,116億円を2年で解消
するため単年度収支558億
円のプラスを見込んだ
14
15
16
17
18
(15年度)
・患者負担3割、総報酬制へ移行
(14年度、16年度、18年度、20年度)
診療報酬・薬価等のマイナス改定
19
20
21
(20年度)
・後期高齢者
医療制度導入
22
23
24
25 [年度]
(22年度)
・国庫補助率
13.0%→16.4%
老人保健制度の対象
年齢引上げ(14年10月~)
8.2%
8.5%
8.2%
(H4.4月~)
(H9.9月~)
(H15.4月~)
9.34%⇒9.50% ⇒10.00%
(注)1.平成5年度、6年度、8年度、9年度、13年度は国の一般会計より過去の国庫補助繰延分の返済があり、これを単年度収支に計上せず準備金残高に計上している。
2.平成21年度以前は国庫補助の精算金等があった場合には、これを単年度収支に計上せず準備金残高に計上している。
5
他の被用者保険との大きな保険料率格差
 平成15年度に総報酬制(賞与も保険料算定の基礎とする)に移行してから、保険料の基礎となる報酬水準を反映
し、保険料率に大きな格差。中小企業を多く抱える協会けんぽと健保組合との間で体力差が顕著に示されている。
→被用者保険間の財政力を調整する目的で協会けんぽに国庫補助が投入されているが、現行の国庫補助割合では、その調整機能を果たしていない。
→国庫補助率について、現行の16.4%から20%への引上げを国に要望しているが、実現していない。
保険料率の比較
保険料率の大きな格差が
生まれています
[%]
11.0
10.5
10.0
9.5
9.0
8.5
8.0
7.5
7.0
(%)
20
19
18
17
16
15
14
13
12
10.0%
8.9%
協会けんぽ
(平均)
8.2%
健保組合
(平均)
国共済
(平均)
※協会けんぽ、健保組合は平成26年度、国共済は平成25年度の保険料率。
20%への
引上げが
必要
国庫補助率の推移 16.4%(22~24年度の時限措置)を平均保険料率10%
を維持することができる26年度まで、2年延長
16.4%
16.4%
13.0%
元年
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
出典:健康保険組合の保険料率(調整保険料率含む)は、「組合決算概況報告」「23年度健保組合決算見込」、「24年度健康保険組合の予算早期集計」による。
協会けんぽの保険料率は、平成20・21・22・23・24年度は決算。国共済の保険料率は、厚生労働省保険局調査課「医療保険に関する基礎資料」等。
20
21
22
23
24
25
26
6
平成27年度の協会けんぽの都道府県単位保険料率
 平成27年度の健康保険料率及び介護保険料率は、4月分(5月納付分)*からの適用。
*任意継続被保険者の方は5月分(5月納付分)からの変更。
北海道
10.14%
石川県
9.99%
岡山県
10.09%
青森県
9.98%
福井県
9.93%
広島県
10.03%
岩手県
9.97%
山梨県
9.96%
山口県
10.10%
宮城県
9.96%
長野県
9.91%
徳島県
10.10%
秋田県
10.06%
岐阜県
9.98%
香川県
10.11%
山形県
9.97%
静岡県
9.92%
愛媛県
10.03%
福島県
9.92%
愛知県
9.97%
高知県
10.05%
茨城県
9.92%
三重県
9.94%
福岡県
10.09%
栃木県
9.95%
滋賀県
9.94%
佐賀県
10.21%
群馬県
9.92%
京都府
10.02%
長崎県
10.07%
埼玉県
9.93%
大阪府
10.04%
熊本県
10.09%
千葉県
9.97%
兵庫県
10.04%
大分県
10.03%
東京都
9.97%
奈良県
9.98%
宮崎県
9.98%
神奈川県
9.98%
和歌山県
9.97%
鹿児島県
新潟県
9.86%
鳥取県
9.96%
沖縄県
富山県
9.91%
島根県
10.06%
10.02%
9.96%
※ 全国平均では10.0%
7
(参考)都道府県支部別加入者1人当たり医療費の状況(全国平均との差・平成25年度)
 加入者1人当たり医療費の全国平均は、16.4万円。
 全国平均と比べて最も高い支部は北海道(18.3万円)であるのに対して、最も低い支部は長野(15万円)。
北海道の医療費を高くしている主因は「入院」であり、長野の医療費が低い主因は「入院外」である。
 支部ごとに医療費の特徴があり、例えば大阪は、「歯科」と柔道整復等の「その他」が医療費を高くしている。
20,000
その他
15,000
歯科
入院外(調剤を含む)
10,000
入院
合計
全国平均との差 (
円)
5,000
0
-5,000
-10,000
全国平均 163,817円
-15,000
北海道
佐賀
秋田
山口
香川
徳島
福岡
大分
長崎
熊本
高知
岡山
島根
大阪
広島
兵庫
宮城
奈良
青森
石川
鹿児島
神奈川
山形
愛媛
岩手
京都
福井
福島
宮崎
岐阜
和歌山
鳥取
東京
山梨
千葉
栃木
群馬
三重
滋賀
富山
埼玉
愛知
静岡
新潟
茨城
沖縄
長野
-20,000
注1.医療費は、社会保険診療報酬支払基金審査分(入院、入院外、歯科、調剤、入院時食事療養費・生活療養費、訪問看護療養費)、
療養費(柔道整復療養費等)、移送費に係るものであり、図中の「その他」は、入院、入院外、歯科、調剤以外の医療費を表す。
注2.加入者1人当たり医療費は、年齢調整前の額である。
8
医療費適正化に向けた保険者機能の発揮・強化の取組み
ジェネリック医薬品の使用促進
【協 会】 服用する薬をジェネリック医薬品に切り替えた場合の自己負担の軽減額を加入者に通知しています。
【加入者】 当協会からの通知を受け取った4人に1人がジェネリック医薬品に切り替えています。
切り替えによる医療費の軽減額は、5年半の間の累計で約340億円(推計)です。
レセプト点検・経費削減
【協
会】 医療機関からの保険請求を点検しています。効果額 約294億円(25年度実績)
事務経費の削減に取り組んでいます。
健診・保健指導
【協
会】 加入者の健康を守るため、健診や保健指導に取り組んでいます。
平成26年度に全支部で策定した「データヘルス計画」を、27年度から実施します。
【加入者・事業主】 病気の早期発見・早期治療、適度な運動、バランスのとれた食事などによる、健康の保持・増進を
促進しています。
扶養家族の再確認
【協 会】 加入者のご家族が扶養家族の要件を満たしているかどうかを毎年確認しています。
【加入者・事業主】 平成25年度は約32億円、平成26年度は約34億円の削減ができました。
健康保険の正しい利用の促進
【協 会】 審査の厳格化等により、不正受給の防止を図っています。
【加 入者】 軽い症状で休日・夜間に救急外来を訪れる「コンビニ受診」を避け、地域の救急電話相談を利用するよう
呼びかけています。
日常的な肩こり・筋肉疲労の柔道整復(接骨院)の施術、業務上の病気や怪我では、健康保険が使えない
ことをお伝えしています。平成25年度は約9万5千件の文書照会を実施し、約7億円適正化。
9
地方自治体等との連携・各支部の取組み
◆ 地方自治体の医療政策当局との間で保健事業の推進に関する包括的な協定
の締結を通じて、保健事業の共同実施や、市町村国保と医療情報の共同分
析、ジェネリック医薬品の普及促進等、医療費適正化に関する幅広い連携・協
働を推進(協会けんぽの意見発信の強化)。
◇ 包括的な協定等締結をした支部は、43支部 (H27年4月30日現在)
うち、都道府県と包括協定を締結した支部は、31支部
◇ 都道府県の審議会等への参画 (H27年3月現在)
 都道府県の医療計画に係る検討会への参加
16支部
 都道府県の医療費適正化計画に係る検討会への参加 24支部
◇ 医師会等の関係団体との協定等締結 15支部
 医師会 9支部 (沖縄、広島、秋田、栃木、茨城、宮城、大分、福岡、福島)
【広島】医療機関での資格喪失後受診防止
等を推進。また、事業所毎の疾病リスク
特性に応じた保健事業を推進
(データヘルス計画)
【宮城】医療機関での資格
喪失後受診の防止、返納金
債権発生の抑止を推進
【鳥取】特定保健指導の未受
入れ事業所等に情報ツール
を活用した勧奨を実施
【沖縄】医師会との間で健診
データを共有し、適切な
保健指導や受診勧奨等
の取組みを実施
【茨城】県との間で特定健診結
果等の分析や健康づくり対策
の推進について連携協力
※
都道府県または政令指定都市、
特別区との協定等締結
【大分】データヘルス計画に
基づいた階層化支援
サービスを実施
【熊本】保険者間の代理受
領を通じた返納金債権
回収の効率化
【東京】データヘルス計画実施
のための調査研究
上記以外の市町村との
協定等締結
【静岡】花粉症等の治療で先発薬
を使用する患者に対して、ジェ
ネリック医薬品の普及を推進
【山梨】健診データと医療費
データの関係等を分析し、県
保険者協議会等へ意見発信
※【栃木支部】H26.9.3 県の条例により設立
された「健康長寿とちぎづくり県民会議」に
10
幹事団体として参画
医療保険と医療供給の関係
保険関係
診療契約
医療供給体制
医療機関
加入者
(現在)
保険料
診療報酬
地域医療構想への
意見発信
保険者
(将来)
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自治体が策定する医療・介護に関連する計画
法令上医療保険者が関与
意見聴取
注)括弧内は次期計画の開始時期
○医療計画(平成30年度)
○地域医療構想
意見聴取
○医療介護総合確保法
都道府県計画 (平成27年度)
(平成27年度以降)
都道府県
保
地域医療構
想調整会議
険
※都道府県が策定する地域における医療及び介護の
総合的な確保のための事業の実施に関する計画
者
保険者
協議会
○医療費適正化計画
(平成27年度)
※医療費適正化のための取組み(ジェネリック、
健診)等に関する計画
○医療介護総合確保法
市町村計画 (平成27年度)
※市町村が策定する地域における医療及び介護の
総合的な確保のための事業の実施に関する計画
(平成27年度)
※老人福祉圏域(概ね二次医療圏と
同じ)の施設定員等を定める計画
○介護保険事業計画
(平成27年度)
※市町村毎の介護サービスの必要量
を定め、この必要量等を基に市町村
の介護保険料を設定
市町村
意見聴取
県が
参加
○介護保険事業支援計画
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