平成 26 年度島根県保険者協議会医療費分析事業の結果について

平成 26 年度医療費分析事業報告書(概要版)
平成 26 年度島根県保険者協議会医療費分析事業の結果について
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分析目的
医療保険制度の枠組みを越えた医療費分析を行うことにより、島根県下全域の状
況を表す指標とする。
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分析方法
平成 25 年 5 月診療分における疾病統計情報を用い、疾病分類別、年齢階層別(10
歳刻み)に比較、分析を行うとともに、前年同月との経年比較を行った。
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分析対象
・島根県内の国民健康保険保険者(以下「国保」とする。)
(19 市町村及び島根県医師国民健康保険組合)
・全国健康保険協会島根支部(以下「協会けんぽ」とする。)
・島根県後期高齢者医療広域連合(以下「後期高齢者」とする。)
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分析結果の概要
・分析対象とした保険者の加入者総数は 547,498 人であり、同時期における島根県
人口の 77.8%に相当する。
・分析対象とした保険者の平成 25 年 5 月診療分におけるレセプト総件数は、502,628
件。内訳は、国保 152,017 件(総件数の 30.2%)、協会けんぽ 161,881 件(同 32.2%)、
後期高齢者 188,730 件(同 37.5%)であった。前年同月と比較すると、国保、協
会けんぽが減少したのに対し、後期高齢者は増加。合計では 317 件の減となった。
・分析対象とした保険者の平成 25 年 5 月診療分における医療費総額は、182 億 1 千
万円強。内訳は、国保 53 億 5 千万円強(総額の 29.4%)、協会けんぽ 35 億 8 千万
円強(同 19.7%)、後期高齢者 92 億 7 千万円強(同 50.9%)であった。前年同月
と比較すると、各制度ともに増加しており、合計で 3 億 9 千万円強の増となった。
・疾病分類別にレセプト件数をみると、若年層では「呼吸器系の疾患」が多く、年
齢が上がるほど「内分泌、栄養及び代謝疾患」「循環器系の疾患」「筋骨格、結合
組織の疾患」が多くなる傾向にある。
・疾病分類別に医療費をみると、若年層では「呼吸器系の疾患」が高く、年齢が上
がるほど「循環器系の疾患」が高い。
また、40~70 歳代では「新生物」
「循環器系の疾患」、20~50 歳代では「精神・行
動の障害」が高い傾向にある。
○1 人当たり医療費
(国保:32,471 円
協会けんぽ:13,869 円
後期高齢者:74,550 円)
10 歳代以降、加齢とともに医療費は増加傾向にある。同一世代間でも保険者によ
って医療費に差がみられ、特に国保と協会けんぽでは 40 歳代から 50 歳代において
その差が顕著である(図 1)。
図 1 年齢階層別 1 人当たり医療費
150,243
~
~
○生活習慣病にかかる 1 人当たり医療費
(国保:10,107 円 協会けんぽ:3,179 円
後期高齢者:26,814 円)
生活習慣病にかかる 1 人当たり医療費は、加齢とともに増加傾向にある(図 2)。
疾病別にみると、国保と協会けんぽでは悪性新生物、後期高齢者では高血圧が最
も高い(表 1)。
図 2 年齢階層別 生活習慣病にかかる 1 人当たり医療費
表 1 生活習慣病にかかる 1 人当たり医療費
(円)
(円)
悪性新生物
糖尿病
高血圧性疾患
虚血性心疾患
脳血管疾患
生活習慣病計
国保
協会けんぽ
後期高齢者
国保
協会けんぽ
後期高齢者
国保
協会けんぽ
後期高齢者
国保
協会けんぽ
後期高齢者
国保
協会けんぽ
後期高齢者
国保
協会けんぽ
後期高齢者
全年齢
4,095
1,347
6,929
1,552
487
3,123
2,496
808
8,545
590
190
2,221
1,375
347
5,996
10,107
3,179
26,814
○精神疾患(統合失調症、うつ病等)にかかる 1 人当たり医療費
(国保:3,929 円 協会けんぽ:702 円)
前年度の分析で保険者間の差が明らかとなった精神疾患にかかる 1 人当たり医療
費を入院、入院外別にみると、入院外医療費では国保が協会けんぽの 2.9 倍である
のに対し、入院医療費においては 10.9 倍にも及んでいる。
中でも最もその差が大きいのは入院医療費の 50 歳代で、国保(5,370 円)が協会
けんぽ(272 円)の 19.7 倍と大きく上回っている(図 3)。
図 3 年齢階層別 精神疾患にかかる 1 人当たり医療費(入院・入院外)
(入院 国保:2,601 円
協会けんぽ:239 円) (入院外 国保:1,328 円
協会けんぽ:463 円)
○まとめ
1 人当たり医療費は同一世代間でも保険者により大きな差がみられ、特に精神疾
患の入院ではその差が顕著である。
精神疾患に罹患した結果、企業で働くことが困難になり、退職し国保に加入して
いる者も多いと思われるため、医療保険制度の枠組みを越えた連携・対策が求めら
れる。
今後も継続した分析を行うことにより、島根県下全域の特徴を明らかにし、より
効果的な保健事業の推進を図りたい。