バラストレギュレータ

● 技術力を磨く ●
バラストレギュレータ
1 バラストレギュレータとは
バラストレギュレータ(以下「BR」という)とは、MTTの後追い作業を行う保守用車です。
国鉄時代は、MTTの後追い作業のうち道床整理はMTTに牽引されたバラストスイーパーで行っていま
した。また、道床かき上げ・かき込みはスコップを用いて人力作業で行い、道床転圧はコンパクター等の
簡易な機械で行っていました。
これらの作業を1台の機械で行うために、平成2年度(1990年度)にPlasser & Theurer社製のKVP2000型のBRが東京地域本社(現 JR東日本東京支社•横浜支社)に導入されました。
2 JR東日本管内のBR導入の実績
これまでJR東日本管内に導入された主なBRを紹介します。
機種によって構造や操作方法が少しずつ異なります。
○
平成2年度(1990年度)
KVP-2000 型
○
平成4年度(1992年度)
○
平成8年度(1996年度)
*上段が導入時期、下段が機種
○
平成7年度(1995年度)
○
平成25年度(2013年度)
KSP-2001 型
KSP-2002E 型
KSP-2000 型
KSP-2002 型
BRの機種名のアルファベット「K・V・S・P」は、ドイツ語でそれぞれ、K:kontinuierlich(連続作業)、
V:verdicht schotterver teil(コンパクティングバラスト散布)、S:stabilisator(安定装置)P:planier
maschine(道床整理機)を意味します。例えばKVP-2000型であれば、K(連続作業)、V(コンパクティ
ングバラスト散布)、P(道床整理機)の機能を備えたBRであることを示しています。
現在、当社では、KSP-2001型を1台、KSP-2002型を3台、KSP-2002E型を1台所有し、これを用いて
MTTの後追い作業を行っています。
3 BRの構造と各装置
BRの構造は機種により若干異なりますが、最新型のKSP-2002E型は以下の図のようになっています。
前
方
③フロントプラウ
⑦ファインスイーパー
⑥回転ブラシ
⑤メインスイーパー
①作業室
④スタビライザー
②サイドプラウ
各装置の働きや特徴を、順に説明します。
①作業室
作業室には、作業装置を動かすためのスイッチやダイヤル、レバーなどが数多く設置されています。
作業中はこれらを操作して BR を動かします。最新型の KSP-2002E 型ではタッチパネルとなっており、
スイッチ類は 7 割程度なくなりました。
最新型
KSP-2002型の操作パネル
KSP-2002E型の操作パネル(タッチパネル)
②サイドプラウ
サイドプラウ
KSP-2001型(当初)の
操作レバー
KSP-2002E型の
操作レバー
BR 本体の前部左右にある排土板がサイドプラウです。サイドプラウで砕石をかきあげて道床肩の形
成を行います。
操作レバーは作業室の中にあります。KSP-2001 型の当初の型では、左右それぞれ 5 本のレバーで動
かす構造ですが、KSP-2001 型の後期や KSP-2002 型になると片側2本のレバーで操作するようになり、
最新型の KSP-2002E 型は片側1本のレバーとなっています。
③フロントプラウ
フロントプラウ
フロントプラウ内部のブラシ
BR 本体の前部のサイドプラウでかきあげた砕石を集めて軌間内に掃き出す装置がフロントプラウです。
フロントプラウでは、内部のブラシを回転させることで、かき集めた砕石を軌間内に掃き出します。
(KSP-2002 型には装備されていません。)
④スタビライザー
スタビライザー
スタビライザーの構造
スタビライザーとは、偏芯過重により水平振動を発生させ、MTT 施工後に初期沈下させる装置です。
スタビライザーの内部には上下にキノコ型の重りがついていて、同一の回転数で逆方向に回転しま
す。これによって上下方向の力が打ち消し合い、水平方向の振動だけが残ります。
(下図参照)その振
動を利用して初期沈下させます。
⑤メインスイーパー
メインスイーパー
スイーパーブラシ
クロスコンベアー
スイーパープラウ
メインスイーパーには、スイーパーブラシ、クロスコンベアー、スイーパープラウの 3 つの装置が
備えられています。
スイーパーブラシで MTT 施工後に散らばった砕石を前方に掃き出します。掃き出された砕石はクロ
スコンベアーの上に乗り、左右の道床肩に運び出されます。KSP-2001 型及び KSP-2002E 型では、左
右どちらかを選んで、一方のみに砕石を運び出すことができます。また、KSP-2002 型では右、左、左
右両方、または、ホッパーゲートのいずれかを選んで運び出すことができます。
また、スイーパープラウは、大量の砕石がクロスコンベアーで運ばれた場合に、建築限界に支障す
る砕石を建築限界外に押し出す役割を果たします。
⑥回転ブラシ
最新型
KSP-2001型及びKSP2002E型の回転ブラシ
KSP-2002E型の回転ブラシ
回転ブラシは、スイーパーブラシで掃き出しきれなかったレール底部と締結装置付近の砕石を掃き
出す装置です。
従来は 19 ページ(下)写真(左)のように長さ 20cm 程度の油圧ホースを回転させることで砕石を掃き
出していましたが、最新の KSP-2002E 型では、回転する部位がブラシタイプになりました。
⑦ファインスイーパー(KSP-2002E型に新たに装備された)
ファインスイーパー
ファインスイーパー(後方から)
ファインスイーパーとは、ブラシを回転させてマクラギ上部に乗った粉塵等を掃除する装置です。
スイーパーブラシに比べ、粉塵等に対応できるようブラシの毛足が細くなっています。
⑧ホッパー(KSP-2002型に搭載された道床散布装置)
ホッパーゲート
ホッパーの内部
ホッパーシュート
ホッパーは、砕石を軌間内に掃き出すフロントプラウが搭載されていない KSP-2002 型のみに搭載
されている、積載している砕石を軌間の内側と外側に散布する装置です。
車体の脇が開いて内部に砕石を積める構造となっており、最大で7m3 の砕石を積載することができ
ます。積載した砕石はホッパーシュートによって軌間内外に散布されます。
また、施工現場の砕石量が多い場合は、クロスコンベアーからホッパー内に砕石を運んで積んでおき、
散布に用いることができます。
4 今後の BR 導入予定
平成 27 年度(2015 年度)の 3 月から、千葉支店成田工事所の機械グループで現在使用されている
BR(KSP-2001 型)を廃車にし、新型 BR の KSP-2002E 型が導入される予定です。
今後、当社で使用する BR を老朽により取換える際は、すべて KSP-2002E 型とする予定です。