ロボットの動かし方に着目した信頼性設計手法の開発(PDF

デンソーテクニカルレビュー Vol.9 No.1 2004
特集 ロボットの動かし方に着目した信頼性設計手法の開発*
A Method of Reliability Design by Planning a Robot’s Operation
安井俊徳
山田篤史
原 純一
小島正年
Toshinori YASUI
Atsushi YAMADA
Junichi HARA
Masatoshi KOJIMA
a田祥三
Shozo TAKATA
Reliability improvement activities are implemented to improve quality and productivity of a manufacturing system.
In this paper, we focus on operation planning, which is one of the reliability factors to be considered at the stage of
machine design.
Operations are usually designed to utilize a machine to it’s full potential. Operation planning is a decisive factor for
the load of the machine. Therefore, if we plan the operation not only for maximum productivity but also for the
appropriate load considering its durability, we can use the machine for a longer term without changing its structural
design.
From this point of view, we simulate the life of industrial robots under different operation plans by modeling the
gear wear of their joints, and select the best operation in terms of both their speed and life. Finally, we have applied
such robots to the actual assembly line and proved their high reliability.
Key words : Reliability design, Operation planning, Robot, Gear wear, Simulation,
1.緒言
ることができた.以下に報告する.
設備の信頼性向上活動は,自動化の持つ高品質・高
2.ロボットの信頼性向上の新たな取り組み
生産性という強みを最大限に発揮させるために,設備
2.1
をそのライフサイクルの間,安定稼働させることを狙
いとする.中でも,自動車部品のように数年間以上に,
ロボットの信頼性向上の課題
当社では,フレキシブルで製品の切り替わりにも強
総計数百万個以上を生産するような場合には,設備の
い自動化ラインを目指し,1万台以上のロボットが導
長期的な信頼性が求められる.そのためには,診断技
入されている.ロボットは,劣化により故障が発生し
術などを用いた運用段階における信頼性向上だけでな
たり動作精度が低下したりするとオーバーホールによ
く,故障しにくい設備設計や保全しやすい設計など設
り再生されるが,導入台数の増加とともに増えている
計段階における信頼性向上が非常に重要である.我々
オーバーホール関連の保全費が問題となってきてい
はその一つとして作業設計に着目した.
る.そこで,ロボットの信頼性向上として,このオー
作業設計とは,設備に目的の作業を行わせるための
バーホールまでの期間の延長に取り組むこととした.
動かし方を決める設計であるが,その動かし方が設備
Fig. 1はオーバーホールの原因を調査したものであ
の劣化の進行度合いを大きく左右することがあり,設
り,最も多いのは歯車摩耗である.また,モータブラ
計段階の信頼性向上にとって重要な要素の一つであ
シ摩耗とエンコーダ異常に関しては,対策としてDC
1)2)
る.
もっと積極的な見方をすれば,作業設計による
サーボモータからACサーボモータへの切り替えを進
工夫は,設備自身に変更を加えず動かし方を改善する
めており,今後減少する見込みである.したがって,
だけで,効率良く信頼性を向上できる手法であるとい
オーバーホールまでの期間を延長するための課題は,
える.今回,産業用ロボットの作業設計を対象に,関
歯車摩耗の対策であると判断した.
節の歯車にかかる負荷を低減し信頼性を向上する信頼
性設計手法を開発した.具体的には,工程の内容に応
2.2
じて歯車の摩耗の少ないロボットの動かし方を決める
歯車摩耗は歯車にかかる負荷によって決まるが,そ
作業設計支援システムを開発し,自動車用エアコンの
の歯車にかかる負荷がロボットの動かし方によって異
組立ラインに適用してロボットの長期信頼性を向上す
なることは容易に推察できる.たとえば,速く動かし
ロボットの作業設計による着眼
*(財)日本科学技術連盟の了解を得て,「第32回信頼性・保全性シンポジウム報文集」より転載
−86−
特 集
Ball bearing
deterioration
10 %
0thers 5 %
があった.そこで,まずロボットの歯車の潤滑状態に
ついて考察することにした.
潤滑状態では,歯車の歯面には潤滑油膜が形成され
Gear wear
39 %
Encoder
trouble
20 %
るが,歯車のように歯面間の圧力が高圧な場合は潤滑
油膜が薄くなり,歯面粗さとの比に応じてFig. 2に示
すような歯面の金属が直接接触している部分が存在す
Due to the DC
servo motor
る.このとき,歯面にかかる圧力は金属が直接接触し
ている部分にかかる圧力と潤滑油膜が支える圧力とに
Wear of
motor brush
26 %
Data of 1998
分担される.この現象は EHL(elasto-hydrodynamic
5)
lubrication:弾性流体潤滑)理論 によりモデル化さ
Fig. 1 Factors of robot overhauls
れている.したがって,この分担割合を求め,歯面の
ているロボットの方が,遅く動かしているロボットよ
金属接触部分の圧力を計算することで摩耗量を算出す
り,歯車の負荷が大きいことは経験的に分かっている.
ることができる.
これまでロボットの動かし方を決める作業設計で
は,ロボットの動きを所定時間内に収めることや他の
The surface of gear tooth
構造物との干渉を回避することなどを重点に考慮して
Contact point
きた.しかし,この作業設計を工夫することで,歯車
Lubricating oil film
The surface of gear tooth
の摩耗を低減しオーバーホールまでの期間を延長でき
ると考えられる.そこで,今回はこの作業設計を信頼
Fig. 2 Lubrication of contact surface of gear tooth
性向上の面から活用し,歯車の摩耗を低減する研究に
着手した.
3.歯車摩耗の定量化
3.1
しかし,EHL理論は一定の速度と負荷で回転する歯
車の場合には容易に適用できるが,ロボットの歯車の
3)
場合は,回転速度や負荷が激しく変化しつづけ,それ
歯車摩耗の定量化の必要性
にともなって金属が直接接触する部分にかかる圧力と
工程として,ロボットの一連の作業は,位置,姿勢,
速度,加速度という要素で設定される動作の組み合わ
潤滑油膜が支える圧力の分担割合も刻々と変わること
から,単純にEHL理論を適用することは難しい.
せで作られている.歯車の摩耗量はこの各動作の内容
そこで,ロボットの動作を時間的に細分化し,歯面
に依存するが,一つの作業のなかにも速い動作や遅い
の摩耗を微視的に捉えることで,EHL理論を適用する
動作,歯車にかかる負担の大きい姿勢や小さい姿勢な
ことを考えた.つまり,一瞬一瞬で歯面の圧力と相対
ど様々あり,当然,動作によって生じる摩耗量も異な
滑り距離を計算し,そのときに成り立つ潤滑状態から
る.したがって,作業設計において効率的に摩耗量を
歯面の金属接触部分の圧力を求め,摩耗量を計算する.
低減するには,各動作の摩耗量とその合計を定量的に
こうして微視的に計算した摩耗量をロボットの動作全
把握しながら,工程として ロボットの一連の動かし
体について積算することで,ロボットがある動作をす
方を決められるようにする必要がある.そこで,まず,
るときに発生する歯車の摩耗量を算出する方法であ
個々の動作と歯車摩耗の関係を定量的に求めることと
る.そこで,この考え方に基づく具体的な歯車の摩耗
した.
モデルを構築した.
3.2
潤滑状態における歯車の摩耗メカニズムの考察
3.3
摩耗は一般的に,接触面にかかる圧力とそのすべり
歯車摩耗モデル
前節の考え方に基づき,ロボットの歯車の摩耗量を
計算するステップをFig. 3に示す.
距離の積によって計算できる. ロボットの歯車摩耗
の定量化についての研究は,これまで中村らによるロ
( i )ロボットの動きから関節への負荷を算出する.
4)
ボットの寿命推定システム が報告されている.しか
( ii )関節にかかる負荷からその関節の歯車の歯面
し,潤滑状態の影響が考慮されていないために,高精
にかかる負荷を算出する.
度な作業をするロボットには適用できないという問題
(iii)歯面にかかる負荷からEHL理論に基づき歯面
−87−
デンソーテクニカルレビュー Vol.9 No.1 2004
→
a j :第j関節の角加速度ベクトル
の金属接触部分の圧力を求める.
( ii )歯面負荷
(iv)歯面の金属接触部分の圧力と相対滑り速度か
関節にかかる力とモーメントは,歯車の歯面
ら摩耗量を計算する.
ロボットの動作の開始時から終了時までを細分化
に圧力と相対滑り速度という負荷を与えてい
し,この手順で繰返し計算して,歯車の摩耗量を求め
る.歯面の圧力Pjは,歯面のかみ合い部分にお
る.ロボットの第j関節の歯車の摩耗量の求め方を以
ける歯幅あたりの荷重であり,関節にかかるモ
下の( i )∼(iv)で説明する.
ーメントM j の歯車の軸回転成分 Mz jと歯車の
→
ピッチ円半径Rp j,有効歯幅B j,かみ合い歯数
Pressure
and velocity
of gear tooth
Force and moment (i)
applied on robot joint
Ze j,減速比Rg jから求められる.また,相対滑
(ii)
り速度V jは,関節の回転角速度ωjと歯車のピッ
Motor
チ円半径Rp j,減速比Rg jを乗じたものである.
この計算を式(3)
,(4)に示す.
Contact pressure on (iii)
the surface of gear
Gear
The surface of gear
P j = Mz j(Rp j B j Ze j)
(3)
V j =ωj Rp j Rgj
(4)
(iii)歯面の金属接触部分の圧力
Lubricating oil
歯車の歯面には潤滑油膜が形成されており,
Gear wear
Pressure
(iv)
歯面にかかる圧力P jは,歯面粗さのために金属
が直接接触している部分にかかる圧力Pm jと潤
Relative
sliding speed
滑油膜が支える圧力Pl jとに分担される.これ
を式(5)に表す.また,圧力Pm jを求める式
を式(6)に,圧力Pl jを求める式を式(7)に
Fig. 3 Procedure of calculating gear wear
表す.ここで,未知数は圧力Pm j,圧力Pl j,油
( i )関節負荷
膜比Δの3つであるので,圧力Pm j は式(5),
ロボットは目的の動作をするために,各関節の
(6),(7)の連立方程式から求められる.
P j = Pm j + Pl j
角度を変更するが,その際,関節には負荷として
1.5
Pm j = 0.80ηL c E'β α G c (Δ)
力とモーメントが発生する.第j関節にかかる
→
→
動 Fg j と手先側の第j+1関節の力 Fr j +1 との和か
(7)
らなり,式(1)で求められる.第j関節にかか
ただし,η :粗面の突起密度
→
るモーメントM j も同様に,式(2)で求められる.
→
→
→
Fj = Fg j + Fr j +1
→
→
(1)
→
→
→
M j = Mg j + Mr j +1
→
→
(2)
→
→
→
→
→
→
u :両歯面の平均速度
σ :歯面粗さの自乗平均
Mg j = [ ]
J j a j +ωj × [ ]
J j ωj + rg j × Fg j
→
E' :等価縦弾性係数
μo :潤滑油の粘度
Fr j +1 = C j F j +1
→
L c :両歯面の接触幅
α :圧力粘度係数
→
Fg j = m ( g j + a )
j
j
→
(6)
Pl j = [2.65α0.54(μo u)0.7 E' −0.03R0.43σ−1]7.7Δ−7.7
力 Fj は,直結されている第jリンクの自重と運
→
(5)
0.5
→
Mr j +1 = C j M j +1 + l j × Fr j +1
β :粗面の平均半径
ただし, m j :第jリンクの質量
G c :弾性変形部分の面積
R :等価曲率半径
C j :第jリンクの姿勢を表す行列
→
(iv)歯車の摩耗量
l j :第jリンクの位置を表すベクトル
rg j :第jリンクの重心ベクトル
摩耗量W jは,潤滑状態に応じた歯面の金属接
[J j] :第jリンクの慣性テンソル
触部分の圧力と相対滑り速度に比例しており,
→
式(8)のように計算する.ここで,Pm jは式
→
a j :第j関節の加速度ベクトル
(6)
,V j は式(4)で計算した値を使用する.
→
g j :第j関節の重力加速度ベクトル
ωj :第j関節の角速度ベクトル
→
W j = K j∫Pm j V j dt
−88−
(8)
特 集
ただし,
また,歯車に与える負荷と予測摩耗量の関係をまと
K j:摩耗係数
めたものをFig. 6に示す.Fig. 6から以下のことが分か
3.4
る.
歯車摩耗モデルの検証
・負荷(Fig. 6 A点)までは,常に充分な厚さの潤
前節で構築した歯車の摩耗モデルと,実際のロボッ
滑油膜が形成され,摩耗はほとんど発生しない.
トにおける摩耗との整合性を検証した.
・その負荷を越えるとロボットの使用限界の負荷
実験装置はロボットの関節を一つ抽出した構造とし
(Fig. 6 B点)まで,摩耗量は急激に増大する.
た.
Fig. 4に実験装置の構造と外観を示す.実験装置は
2.0
Backlash caused by
1cycle motion[10-7rad]
検証対象の歯車とそれを駆動するモータ,歯車に負荷
を与えるためのリンクと錘により構成される.実際の
ロボットの動きでは,関節は起動と停止を短時間に何
度も繰り返すので,リンクを台形速度パターンで反復
運動させることとした.また,リンク先端の錘の質量
を変更することで,歯車に与える負荷を調整できる.
Reciprocating motion
Motor gear
A
B
1.0
0.5
0.0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
Load (inertial moment) [kgm2 ]
φ800
φ1000
Link
1.5
Fig. 6 Backlash and load on link (theoretical)
そこで,モデルでの予測結果を検証するため,A点
Weight
付近,B点付近,その中間点の条件で負荷を与え,摩
Motor
Gear
耗量を実測することとした.
Link Weight
リンクの反復運動を10万サイクルさせるごとに,レ
Fig. 4 Test device for the gear wear
ーザー変位計で歯車のバックラッシを計測して,1サ
イクル分の摩耗量に換算した結果をFig. 7に示す.A
今回考案した摩耗モデルを使用し,この実験装置で
点付近である 錘6kgと7kgの間において,摩耗量の増
リンクが1往復する際に発生する摩耗量を計算する
大が計測され,考案した摩耗モデルでの予測値とよく
と,Fig. 5のようになる.加減速時に潤滑油膜の厚さ
一致した.また,B点付近および中間点においても予
が薄くなり,摩耗が発生することが予測される.
測値は実験値とよく一致した.以上の結果より,今回
weight
4
の摩耗量を精度よく推定できることを検証した.
: 6kg
10kg
: 0
1
Time[s]
2
2.0
-4
Backlash caused by
1cycle motion[10-7rad]
Lubricating oil Pressure
Angular velocity
Thickness ratio Pj [Nm/mm2] ωj [rad/s]
⊿
考案した摩耗モデルが,実際のロボットにおける歯車
10kg
100
Time[s]
6kg
0
1
2
-100
10
5
6kg
10kg
Gear wear
per second
W j [10-8rad/s]
0
10
5
0
1
Time[s]
1.5
Actual value
Theoretical value
10kg
1.0
8kg
7kg
0.5
6kg
0.0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
Load (inertial moment) [kgm2 ]
2
10kg
Fig. 7 A verification of gear wear model
6kg
1
Time[s]
2
Fig. 5 Theoretical value of the test case
−89−
3.5
デンソーテクニカルレビュー Vol.9 No.1 2004
4.開発したシステム
5.適用効果
3章で構築した摩耗モデルを組み込んだロボット作
開発したシステムを自動車用エアコン組立ラインの
6)
業設計支援システムを開発した. システムの構成を
ロボット11台の作業設計で使用した.Fig. 10に設備
Fig. 8に示す.このシステムはロボットの動作を制御
の外観図を,Fig. 11に作業設計の改善によるオーバ
するコントローラにパソコンを直結した構成となって
ーホールまでの期間の延長効果を示す.ラインの生産
いる.設計者はこのパソコンを使って,コントローラ
量は月産4万台であり,歯車の仕様から許容できる摩
から作業内容である動作プログラムを取り込み,歯車
耗量は である.これに基づき,オーバーホールまで
の摩耗量で評価しながら,それを修正する.また,修
の期間を算出すると,改善前は平均4.8年だったが,
正した動作プログラムはコントローラに戻すことで,
改善後は平均7.9年と予測される.オーバーホールま
すぐに実機に反映できる.
での期間が11台の平均で約1.6倍延長できており,こ
れによりオーバーホール関連の保全費は約40%低減で
Reliability design PC
Robot controller
きる見込みである.さらに,ラインは実際4,5年ごと
Robot
Robot
program
download
の製品の切り替わりに合わせて再編成されることが多
いため,オーバーホールによる生産阻害はほとんど起
Control
Robot
Simulate gear wear/
program
Change robot program upload
こらないという効果も大きい.現在,ラインの立ち上
げから3年経過しているが,これまで1台もオーバーホ
ールせずに順調に稼働している.
Fig. 8 Reliability design support system
Fig. 9は,このシステムで,6軸ロボットがある作
業をしたときの予測摩耗量を示したものである.各関
節に動作別の摩耗量とその合計がグラフで表示される
ため,その面積の大きさで設計者は摩耗量が多い動作
を見つけることができる.そして,設計者は,摩耗量
の多い動作を修正していく.
例えば,次章の事例の一つでは,ロボットの動作の
位置を見直し,速度を下げることで,摩耗量が多かっ
た第1関節の歯車の摩耗量を約1/2に低減した.
Motion
1.5
4
3
2
1
12
11
10
Fig. 10 The robot in the assembly line
9
8
7
1.0
0.5
0
J1
J2
J3
J4
J5
J6
Robot joint number
6
5
4
3
2
1
0
0
6
5
4
3
2
1
0
0
Before improvement
2
4
6
8
10
14
12
6
5
Number
of robots
2.0
Number
of robots
Backlash caused by gear wear
[10-4rad]
2.5
After improvement
2
4
6
8
10
12
Time between overhaul (year)
Fig. 9 Estimated gear wear of each joint of the robot
Fig. 11 The effect of assembly robots
−90−
14
特 集
6.結言
<参考文献>
設計段階における信頼性向上活動の一つとして,作
1)a田祥三:ライフサイクルメンテナンス,精密
業設計の工夫による信頼性向上に着目し,産業用ロボ
工学会誌,65,3(1999)349-355
ットを対象に歯車の摩耗量低減を目的とした信頼性設
2)A. Yamada, M. Kurihara, S. Takata, H. Asama, T.
計手法の開発に取り組んだ.
Kohda : Life-cycle Simulation Applied to the
ロボットの作業設計において摩耗量を低減するため
Operation Planning of Robot Manipulator, Pro-
には,ロボットの動作と歯車摩耗の関係を定量化する
ceedings of Life Cycle Design ’
98(1998)
,265-274
ことが不可欠であるため,潤滑状態を考慮した摩耗モ
3)山田篤史,a田祥三:設備ライフサイクルシミ
デルを構築した.そして,この摩耗モデルを組み込ん
ュレーションに基づく産業用ロボットの関節歯
だ作業設計支援システムを開発し,実際のラインに適
車の摩耗予測システム,精密工学会誌
用してロボットの長期的な信頼性を向上した.
4)中村尚範,酒井浩久,三浦洋憲,坂本好隆:劣
作業設計による工夫は,高耐久材料の採用など 設
化モデルに基づくロボットの寿命推定システム
備自身の変更は行わず,動かし方を改善するだけで,
の構築,精密工学会誌,63,11(1997)1620-
効率良く設備の信頼性を向上できる手法である.この
1624
考え方は旋盤やマシニングセンタなど,動かし方を設
5)Dowson, D.,Higginson, G. R. : Elasto- Hydrodynamic
計する汎用性の高い生産設備に広く適用できると考え
Lubrication, Pergamon Press (1966)
られる.また,ロボットでは,作業設計でわかった短
6)山本亮祐,山田篤史,a田祥三,安井俊徳,榊
寿命部品のみの強度を変更するセミオーダー化など,
原聡:ライフサイクルシミュレーションに基づ
作業設計と本体のメカ設計とを組み合わせることによ
くロボットの作業設計支援システム,1999年度
り,さらに効果的な信頼性向上が期待できる.
精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集,548
<著 者>
安井 俊徳
山田 篤史
(やすい としのり)
(やまだ あつし)
生産技術部
生産技術部 工学博士
生産システムの開発に従事
積層排気センサ素子加工ラインの工
程設計に従事
原 純一
小島 正年
(はら じゅんいち)
(こじま まさとし)
冷暖房製造2部
(株)デンソーウェーブ FA事業部
カーエアコン工場の設備保全業務に従事
a田 祥三
(たかた しょうぞう)
早稲田大学理工学部経営システム
工学科教授 工学博士
生産システム工学,メンテナンス工学,
ライフサイクル工学などの研究に従事
−91−
ロボットの開発,設計に従事