褥瘡発生率改善・治癒率向上に向けた当院での取り組み 長 内 理 愛 1、 佐 藤 香 吏 1、 古 川 敏 夫 (ST)1、 佐 藤 哲 子 (Nrs)1、 原 田 久 美 子 1、 千 葉 直 1、 原 幹 周 1、 林 瑞 穂 (OT)1、 木 田 愛 子 (OT)1、 後 藤 明 教 1 国保黒石病院 1 キーワード;褥瘡・ポジショニング・チームアプローチ 【はじめに】 当院では昨年 1 0月に地域包括ケア病棟が導入され、 そ れに伴う病棟再編により、各病棟が混合病棟となった。 当院での褥瘡推定発生率は 2 . 5 %程度であり、全国平均 の1 . 3 1 %と比較すると 1 %程度高い傾向で推移していた ことがわかっているが、この病棟再編に伴い、さらに褥 瘡発生率が増加した。 そこで当院では、病棟再編前に開始していた褥瘡発生 率改善、治癒率向上を目指した取り組みを、さらに強化 することとした。これらの病棟再編前後での取り組みに ついて、以下に報告する。 【当院での取り組み】 ( 1 )褥瘡委員会での病棟ラウンドの充実 当院でも褥瘡委員会は発足していたが、病棟ラウンド は定期的には行われていなかった。当院看護師が平成 2 3 年に皮膚・排泄ケア認定看護師( 以下 W O C N ) となったこと により、必要に応じてラウンドが行われるようになった が、発生した褥瘡に対しての医師の処置が主体であり、 それ以前のケアや体位の問題について触れられることは ほとんどない状態であった。 平成 2 6年 6月から W O C N1名が褥瘡対策室の専従とな り、診療報酬のハイリスク患者ケア加算が改訂されたこ とで、8月からはカンファレンスも定期的に開催するよ うになった。また、多職種が参加したチームとしてのラ ウンドを行って、各患者の栄養状態の把握、適切な薬剤 の使用やケアの指導など内容の充実を図り、理学療法士 によるポジショニングの助言もできるようになった。 ( 2 )各病棟でのポジショニング勉強会 病棟再編に伴い、病棟看護師の対応も変わる必要があ ったが、実際は病棟によってケアやポジショニングに対 する意識・手技が統一されていなかった。これは、看護 の基本としての体位交換は基礎知識としてあるものの、 適切なポジショニングの知識が浸透していないことが原 因として考えられた。 そこで、実際に褥瘡が発生した患者の中で、上下肢の 拘縮により特にポジショニングが困難と思われる方を、 新編成となった病棟ごとに 2名程度選出、同意を得て、 実際にポジショニングしながら指導をする勉強会を開催 した。全 6病棟で計 1 0回の開催で、除圧や背抜きなど基 本的な知識の概要が理解されていないことが判明し、委 員会側でも各病棟の問題点を把握できた。 【結果】 理学療法士がラウンドに参加する前の平均褥瘡発生率 は2 . 7 %だったが、 参加後の 9月には 1 . 2 %まで改善され た。 1 0月の病棟再編により一時的に 4 . 8 %に上昇したが、 それ以降の発生率は減少傾向となり、病棟再編前後での 平均はいずれも 2 . 5 %となった。また、W O C Nによると、 理学療法士の指導により引きずりやずれがなくなり、院 内でポケットの形成がなくなったことがわかった。 治癒率は平均 4 6 . 1 %から 9月には 7 8 . 6 %となったが、 病棟再編後に 1 8 . 2 %にまで低下し、その後の平均は約 4 0 %で推移している。 平成2 6年度の治癒率は年間で4 4 % となったが、死亡者を除くと約 1 0 %程度高くなることが 判明した。なお、日本褥瘡学会による褥瘡経過評価法 D E S I G N Rにおいて深さが d 0 ( 治癒) となったものは、 平成 2 6年度を通算すると、持ち込みを含めた全 2 2 0件のうち 1 0 6件であった。 【まとめと課題】 各病棟には、褥瘡に関して報告する義務があるが、そ れだけでは褥瘡の程度、適切なケア方法、経過を把握す ることが難しい。褥瘡が悪化すると感染リスクの増加、 在院日数の延長にもつながるため、各患者の褥瘡の現状 を的確に把握することは、 離床の促し、 廃用予防となり、 結果として医療の質の向上につながると考えられる。 平成 2 6年度を通算し、 平均での褥瘡発生率は変化がな かったが、ラウンドによる介入により、発生した褥瘡を これまで以上に的確に発見・評価できるようになってい る。治癒率が死亡者を除外すると向上するのは、全身状 態が悪いと褥瘡が形成されやすく、発生率増加、治癒率 低下に寄与しているためだと考えられる。今回、当院で はそのような状態の悪い方を多数ケアしているという現 状を把握することができた。 病棟再編前後で、平均の褥瘡発生率が変化していない ことは、適切な指導と病棟看護師の協力によるものと考 えられる。病棟再編後の治癒率は望ましい数値ではない が、今後も定期的なラウンドの継続、適宜ポジショニン グ指導や勉強会を行い、病棟スタッフの知識が充実する よう支援しながら取り組みを続けていく必要がある。
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