ワイヤレスインホイールモータを搭載した電気自動車の実車

ワイヤレスインホイールモータを搭載した電気自動車の実車評価
藤本 博志 1)
山本 岳 1)
佐藤 基 1,2)
郡司 大輔 1,3)
居村 岳広 1)
Driving Test Evaluation of Electric Vehicle with Wireless In-wheel Motor
Hiroshi Fujimoto
Gaku Yamamoto
Motoki Sato
Daisuke Gunji
Takehiro Imura
The authors have developed a new type of in-wheel motor, which receives electric power by wireless power transfer using
magnetic resonance coupling and control signals by wireless communication, in order to avoid the disconnection of power
and signal cables. We call this system Wireless In-Wheel Motor (W-IWM). In this system, it is also possible to directly
transmit power to the in-wheel motor wirelessly from coils under the ground for dynamic charging. This paper introduces
the overview and design methods of the W-IWM. We also evaluate the characteristics of the W-IWM when it is installed
on an electric vehicle and demonstrate its effectiveness by the driving test.
KEY WORDS: EV and HV systems, motor drive system, In-Wheel Motor, wireless power transfer (A3)
Motor
Wheel
Car chassis
1. はじめに
Car chassis
communication Coil
Motor
Wheel
現在,地球環境への配慮から環境負荷の少ない電気自動車が
注目を集めている。電気自動車は環境面のみならず制御面も優
Power cables
Power
Signal cables
Battery
Power converter
れており,モータを動力源とすることで内燃機関自動車と比較
して高いトルク応答性を確保できる (1) 。電気自動車の制御性能
を最大限に発揮できる駆動方法としてモータをホイール内に配
Power Source
Ground
Ground
Ground
Conventional IWM
置するインホイールモータ方式がある。車載モータ方式と比較
して,インホイールモータ方式は以下の優位性をもつ (2)∼(5) 。
Coil
Wireless IWM
(W-IWM)
Fig. 1 W-IWM の概念図
• ディファレンシャルおよびドライブシャフトが不要である
ため車両設計の自由度が高く,車体全体の軽量化を図るこ
Primary circuit
Primary coil
とも可能(文献 (4) では駆動系全体の質量を 36 %軽減)
• 上記と同様の理由からエネルギー損失が少ない
• 各輪の駆動力を独立に制御できることから車両安定性・運
動性が向上する
Secondary coil
しかしながら,一般にインホイールモータは以下に挙げる課
題を持つ。
• ばね下重量が増加し,乗り心地が悪化する
(a) FPEV4-Sawyer
W-IWM
(b) First trial unit
Fig. 2 実験車両と第一試作ユニット
• モータの動力線とレゾルバなどの信号線が繰り返し屈曲や
ス化を達成する。実際の車体ではサスペンションの動きにより
道路からの飛散物,ケーブルに付着した雪が原因の凍結な
送受電コイルの相対位置が変化する。そこで本研究ではコイル
どにより断線する恐れがある
の位置ずれに強い磁界共振結合方式を採用する (8) (9) 。さらに,
一点目の課題に対してはインホイールモータのアンチダイブ力
将来電気自動車への走行中給電が可能になった場合,地面に埋
を利用した制御により改善が可能である
めたコイルからモータへの直接給電も可能になる。
(3) (5)
。また,二点目
の課題に対して,従来は配線の耐久性を高める構造が検討され
てきた
(6) (7)
。しかし,有線での対策である以上,抜本的な解
決には至っていない。
そこで,この課題に対する抜本的な解決策として,著者らの
磁界共振結合によるワイヤレス電力伝送では,負荷の変動や
送受電コイルの相対変位に対して受電側の電圧,電流が変動す
ることが知られている (10) 。また,受電側に定電力負荷を接続
する場合は負荷電圧が不安定になることが知られている (11) 。
研究グループではインホイールモータとワイヤレスで電力を送
したがって,ワイヤレスインホイールモータを実現するために
受電する機構を提案し,実際に試作した。この機構をワイヤレ
は,送電側・受電側における電力変換回路の制御方式の確立が
スインホイールモータ (Wireless In-Wheel Motor: W-IWM)
必要である。
と呼ぶ。この機構では,ワイヤレス電力伝送を行うためのコイ
また,車両においてインホイールモータが配置される周辺に
ルと,制御情報用の無線通信機器を車体とホイールに設置する。
はサスペンションアーム等の金属部材が多数存在する。磁界共
これらにより,車体とインホイールモータ間の完全なワイヤレ
振結合方式では送受電コイル間の磁気的な結合を用いて電力を
*2015 年 5 月 21 日自動車技術会春季学術講演会において発表.
1) 東京大学 (277-8561 千葉県柏市柏の葉 5-1-5)
2) 東洋電機製造 (株) (236-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦 3-8
3) 日本精工 (株) (251-8501 神奈川県藤沢市鵠沼神明 1-5-50
伝送するため,これらの金属部材が電力伝送の効率に大きく影
響することが知られている。このような金属部材の影響を最小
化するための送受電コイルの配置や形状の工夫,コイルにおけ
Required
power
FF
Ͳ
VLΎ
duty ratio
н
Power
Lm
΃
or
Vbatt
E
Buck-boost
converter
R1
R2
L1
L2
C1
C2
On board
Primary
Resonator
inverter
(85 kHz)
(SiC)
PMSM
M
VL
In Wheel
Secondary
converter
(SiC)
Three phase
PWM inverter
Fig. 3 ワイヤレスインホイールモータの回路構成
Table 1 車両性能の目標値と第一試作目標
Final target First target
Number of in-wheel motor
4
2
Rated output power
48 kW
6.6 kW
Rated wheel torque
1300 Nm
475 Nm
Three phase
PWM inverter
PMSM
R2
L2
M
VL
C2
る磁性材料の活用が必要である。
本報では磁界共振結合方式によるワイヤレスインホイール
(a) Short mode
モータの開発について報告する。実験用電気自動車に搭載する
Three phase
PWM inverter
試作ユニットの構成と電力変換回路の制御方法について述べる。
さらに,試作ユニットを搭載した電気自動車による走行実験結
果について報告する。
2. ワイヤレスインホイールモータ
2.1.
PMSM
R2
L2
想定車両性能
VL
M
C2
W-IWM では Fig. 1 に示すようにインホイールモータの
動力線及び信号線をワイヤレス化する。W-IWM を採用する
(b) Rectification mode
車体として,Fig. 2(a) に示す当研究室で開発した電気自動車
Fig. 4 二次側回路の動作パターン
の FPEV4-Sawyer を想定する
。当車両は前後輪がそれぞ
パシタンスである。本稿においてはこのコイルとコンデンサを
れ交換可能なサブユニット構成を採用しており,様々な駆動ユ
まとめて共振器 (Resonator) と呼ぶ。なお,以降で一次側 (送
ニットを同一のプラットフォーム上で実験・比較できる。第一
電側) とは車体側を指し,二次側 (受電側) とはインホイール
試作でのサブユニットを Fig. 2(b) に示す。表 1 に示すよう
モータ側を指す。また,共振周波数 f0 (= ω0 /2π) に関しては,
に,W-IWM の性能としては四輪で 48 kW の出力を当面の最
電気自動車へのワイヤレス電力伝送において統一化の方向性が
終目標とするが,第一試作として後輪二輪で 6.6 kW の出力,
示されている 85 kHz とする (13) 。
(12)
すなわち一輪当たり 3.3 kW の連続定格出力を目標とし,制御
の検討や大電力伝送,コイル設計の技術を確立する。なお,サ
スペンションストロークに必要なインホイールモータと車体の
間のスペースを考え,送受電コイル間のギャップは 100 mm と
する。
2.2.
2.3.
技術課題
W-IWM を実現するうえで, 以下のような技術的課題が想定
される。
• 電力変換回路の考案
• 受電側に定電力負荷を接続する場合は負荷電圧が不安定に
磁界共振結合方式のワイヤレス電力伝送
なるため,一次側と二次側の高速な通信を仮定せずにこれ
W-IWM で採用する磁界共振結合方式のワイヤレス電力伝送
を安定化する制御
においては,一次側と二次側の送受電に用いる LC 回路の共振
• モータで回生を行うための双方向電力伝送の実現
周波数を一致させる。すなわち一次側インバータの動作角周波
• 高効率で電力伝送が可能なコイルの設計
数を ω0 として,
ω0 = √
1
1
= √
L1 C1
L2 C2
本稿では,これらの課題に対する解決法を紹介する。
(1)
となるようにコンデンサを挿入する。L1 ,L2 は一次側及び二
次側コイルのインダクタンス,C1 ,C2 は共振コンデンサのキャ
VL
3. 電力変換回路の構成とその制御方法
3.1.
回路構成
Vup
W-IWM の回路構成を Fig. 3 に示す。
ǻV
VL*
一次側の電力変換回路は双方向昇降圧チョッパとフルブリッ
ǻV
Vlow
ジ回路で構成されており,バッテリーの電圧をチョッパにより
適切な電圧に昇降圧した後,フルブリッジ回路をインバータと
して動作させて共振周波数と同じ周波数の高周波に変換する。
t
変換された電力は磁界共振結合によりワイヤレスで伝送される。
伝送された電力は二次側のフルブリッジ回路をコンバータと
して動作させることで直流に整流される。さらにモータ駆動用
ts
tr
(Short)
(Rectification)
Fig. 5 負荷電圧波形
の電圧型三相インバータにより永久磁石同期モータを駆動す
る。ワイヤレス電力伝送の先行研究では二次側をブリッジ整流
る
(14)
C1 L1-Lm R1
i1
回路と DC-DC コンバータで構成する回路が多く用いられてい
R2 L2-Lm C2
i2
。しかしながら W-IWM ではホイール内の限られた空間
に二次側回路を収める必要がある点,および回生時に二次側コ
v1
Lm
v2
RL
ンバータをインバータとして使用する点を考慮し上記の構成を
採用した。
3.2.
Fig. 6 ワイヤレス電力伝送部簡易等価回路
一次側伝送電力フィードフォワード制御
一次側では伝送電力のフィードフォワード制御を行なう。二
路の状態は Fig. 4(a) で示す Short mode となり,モータへの
次側の DC リンク電圧が一定に制御されている場合,モータ出
電力伝送が遮断され負荷電圧 VL は低下する。VL が Vlow まで
力に応じて二次側 DC リンク電流が変化する。すなわち,モー
低下した時点で下アームのスイッチング素子を OFF する。こ
タは出力に応じて変化する等価的な可変抵抗負荷とみなせる。
の時二次側回路の状態は Fig. 4(b) で示す Rectification mode
磁界共振結合ワイヤレス電力伝送では負荷抵抗に応じて伝送電
となり,伝送電力が負荷電力を上回っていれば負荷電圧 VL は
力が変化することが知られている (10) 。そこでモータトルクと
上昇する。
二次側モータ回転数から二次側に伝送すべき電力を算出し,そ
このような下アームスイッチの ON/OFF の繰り返しにより,
れを元に一次側インバータの出力電圧をフィードフォワード制
Fig. 5 に示すように,二次側のみで負荷電圧 VL を負荷電圧指
御する。二次側モータ回転数は,Bluetooth 通信により一次側
令値 VL∗ のまわりで一定に制御することが可能である。
へフィードバックしている。回転数の変化は Bluetooth 通信
遅延よりも十分遅いのでフィードバックには高速通信は不要で
ある。
3.3.
3.4.
電力回生動作
本ユニットの回路構成ではワイヤレス電力変換部が一次側・二
次側で対称形となっているため,電力回生が容易である。モー
ヒステリシスコンパレータによる二次側電圧制御
タから電力が回生され,二次側 DC リンク電圧 Vdc が閾値以上
W-IWM のように二次側に接続される負荷が定電力負荷であ
になった場合,二次側をインバータ動作させると同時に二次側
る場合,負荷電圧の挙動が不安定となることが解析的に求めら
から一次側に無線信号を送信して,一次側をダイオードブリッ
れている (11) 。そこでフィードバック制御を用いて負荷電圧 VL
ジ整流として動作させるよう制御を切り替える。これにより二
を安定化する必要がある。なお,一次側と二次側の高速な通信
次側から一次側への電力回生動作が実現される。
を仮定せずに二次側電圧を安定化させるために,フィードバッ
ク制御は二次側で完結させる。二次側のみで VL を一定に保つ
制御手法として, 二次側コンバータにヒステリシスコンパレー
タを用いる手法と, 同期整流を用いる手法が考えられるが,本
稿では前者の制御手法を採用する。
Fig. 4 のヒステリシスコンパレータによる負荷電圧制御を行
う場合,二次側コンバータの上アームのスイッチは常に OFF
し,下アームのスイッチング素子を ON/OFF する。ヒステリ
シスコンパレータの下側閾値電圧 Vlow および上側閾値電圧 Vup
を次式で定義する。
∗
4. 第一試作ユニットの製作
4.1.
送受電コイルの設計
(1) 設 計 法
本章では一次側の昇降圧チョッパと PWM インバータを交流
電源とみなす。また二次側回路の基本波力率が 1 であると仮定
すると,整流回路からモータまでの負荷全体をまとめて可変な
純抵抗とみなせることが知られている (10) 。従って純抵抗とみ
なした等価負荷全体を RL とおくと,W-IWM の等価回路は
Fig. 6 のように簡単化できる。共振角周波数を ω0 とすれば式
(4),(5) が成立する (10) 。
Vlow = VL − ∆V
(2)
Vup = VL ∗ + ∆V
(3)
Fig. 5 に負荷電圧 VL の概形を示す。VL が Vup に達した時
ω0 Lm RL
V2
=j
(4)
V1
R1 RL + R1 R2 + (ω0 Lm )2
2
(ω0 Lm ) RL
V2 I¯2
AP =
=
(RL + R2 ){R1 RL + R1 R2 + (ω0 Lm )2 }
V1 I¯1
点で下アームのスイッチング素子を ON する。この時二次側回
(5)
VL ∗ は負荷電圧指令値,∆V はヒステリシス幅である。
AV =
0.6
0.4
R1= 0.10Ω
R1= 0.50Ω
R1= 1.0Ω
R1= 2.0Ω
R1= 4.0Ω
0.2
0
0
1
0.8
0.6
0.4
R2= 0.10Ω
R2= 0.50Ω
R2= 1.0Ω
R2= 2.0Ω
R2= 4.0Ω
0.2
0
100
200
300
load resistance RL [Ω]
power efficiency Ap
1
power efficiency Ap
power efficiency Ap
1
0.8
400
(a) R1 変化時の伝送効率
0
0.8
0.6
0.4
Lm= 20µH
Lm= 30µH
Lm= 40µH
Lm= 50µH
Lm= 60µH
0.2
0
100
200
300
load resistance RL [Ω]
400
(b) R2 変化時の伝送効率
0
100
200
300
load resistance RL [Ω]
400
(c) Lm 変化時の伝送効率
Fig. 7 コイルパラメータ変動時の伝送効率
Table 4 製作した共振器の各パラメータ
R1
R2
Lm
Fig. 7 (a) 0.10∼4.0 Ω
1.0 Ω
40 µH
Fig. 7 (b)
1.0 Ω
0.10∼4.0 Ω
40 µH
Fig. 7 (c)
1.0 Ω
1.0 Ω
20∼60 µH
Parameter
Primary
Secondary
Coil resistance R1,2
0.411 Ω
0.382 Ω
260 µH
223 µH
Coil inductance L1,2
Capacitance C1,2
13.5 nF
15.7 nF
Size
218 x 350 mm 218 x 300 mm
Mutual inductance Lm
48.6 µH (gap: 100 mm)
Resonance frequency
85.0 kHz
AV ,AP はそれぞれコイル間の電圧比と伝送効率を表す。
218 mm
Table 3 コイル設計の目標値
Parameter of coil
Target
Primary coil resistance R1 under 1.0 Ω
Secondary coil resistanceR2
1.0 Ω
Mutual inductance Lm
over 40 µH
218 mm
Table 2 伝送効率式 (5) への代入値
ワイヤレス電力伝送の効率式(5)において,R1 ,R2 ,Lm
はコイルのパラメータであり,コイルの大きさや巻き数,相対
350 mm
位置などにより変化する。また式 (5) より,R1 ,R2 は小さく,
primary coil
Lm が大きいほど効率が良くなる。しかし一般に,コイルを大
Fig. 8 送受電コイルの概観とサイズ
きくすると Lm が大きくなるが R1 ,R2 も大きくなるという
トレードオフがある。従ってコイルの大きさはこのトレードオ
フを考慮して決定する。そこでコイルのパラメータ R1 ,R2 ,
300 mm
secondary coil
RL =
2
V21
P2
(6)
Lm がどの程度の値を取るべきかを見積もり,コイルの設計指
となる。ここで,Fig. ??(b)モードでは通常各スイッチング
針にする。
素子の還流ダイオードは導通しているので V21 は方形波である
(2) コイルパラメータの目標値
ため,二次側 DC リンク電圧 Vdc と V21 は,フーリエ級数展
本節では R1 ,R2 ,Lm の目標値を具体的に決定する。式 (5)
開により以下の関係が成り立つ。
において三つのパラメータの内,一つを変数とみなし,二つを
定数とみなす。変数とみなしたパラメータの各値において,RL
に対して効率を計算したグラフが Fig. 7 である。Fig. 7(a) で
は R1 ,Fig. 7(b) では R2 ,Fig. 7(c) では Lm を変数とみな
している。これにより任意の等価負荷抵抗値 RL において R1 ,
R2 ,Lm の変化がどれだけ効率に影響するかを独立に調べられ
る。なお FPEV4-Sawyer のサブフレームに収まるコイルを作
成したときにこの程度になると予期される値から R1 ,R2 は
0.1∼4.0 Ω,Lm は 20∼60 µH の範囲で変化させている。な
お Fig. 7 で使用したコイルパラメータを表 2 にまとめる。
Fig. 7(a), (c) より,R1 ,Lm の変化が伝送効率に大きく寄
与している。
ここで,W-IWM の一次側インバータは方形波インバータと
して動作させるため,一次側及び二次側共振器の電圧は方形波
となる。また各共振器の電流は正弦波であり,電力伝送に寄与
するのは基本波成分のみである。このとき等価負荷抵抗 RL は,
二次側共振器の電圧の基本波実効値を V21 ,受電電力を P2 と
すれば
V21
√
2 2
Vdc
=
π
(7)
Vdc は当研究で使う電圧型の三相インバータの定格入力電圧 350
V で一定である。したがって受電電力 P2 が定格出力 3.3 kW
となる時の等価負荷抵抗値 RL は式 (6), (7) より 30 Ω と計算
される。この抵抗値では大電力が必要とされるため,高効率を
達成したい。
そこで定格出力時での電力伝送効率の目標値を 90%と決め
る。これを達成する条件として,Fig. 7 よりコイルパラメータ
R1 を 1 Ω 未満,R2 を 1 Ω 程度,Lm を 40 µH 以上と定め,
コイルを作製する。設計の目標値を表 3 にまとめる。
4.2.
送受電コイルの作製
送受電コイルの材質・形状は以下の観点から決定した。
• ホイール周辺の金属が密集した狭い空間にコイルを配置す
るため,コイル形状は平面型とする
• 送受電コイル間の相互インダクタンスの増加や周辺金属で
の鉄損低減を狙い,両コイルの背面にフェライト板を配置
する
coil ferrite
W-IWM
secondary coil
resinous plate
Fig. 10 二次側(インホイールモータ側)
Fig. 9 送受電コイルの構成
secondary coil
• 耐熱性や表皮効果の低減を図るため,線材としてリッツ線
load motor
W-IWM
を使用する
製作したコイルの概観とサイズを Fig. 8 に,パラメータを
Table 4 に示す。
primary coil
実車に搭載する際に車体およびホイールに送受電コイルを固
reduction gear
定しなければならない。また,防水性や防塵性を考慮し,送受
secondary circuit
電コイルをカバーする必要がある。したがって Fig. 9 に示す
ようにコイルの線材とフェライトを樹脂の板で挟み,樹脂の箱
primary circuit
Fig. 11 ベンチ試験装置
の中に収納している。
4.3.
一次側(車体側)ユニット構成
䢢
100
Efficiency [%]
一次側では一次側回路ユニットと一次側コイルが車体サブフ
レーム内に配置される。一次側回路ユニットは昇降圧チョッパ
とフルブリッジ回路で構成される。昇降圧チョッパのスイッチ
ング素子には IGBT を用いている。一方,フルブリッジ回路
は共振周波数である 85 kHz でスイッチングするため,SiC-
95
90
ηinv
ηwpt
85
MOSFET を用いている。一次側の電力変換回路では,前述の
伝送電力制御を行なっており,操作量として下記の2つの自由
80䢢
0
度を有する。
1)昇降圧チョッパにより直流電圧を制御する
ηconv
20
40
60
80
Torque command [%]
100
Fig. 12 定格速度回転数(135 rpm)時の各変換器
効率
2)インバータの duty を制御する
したがって 2) の制御を採用する場合は昇降圧チョッパを用い
ないことも可能であるが,製作したユニットでは両制御方法の
3.13 kW 3.00 kW
3.28 kW
比較ができるよう昇降圧チョッパを搭載した。なお,後述の実
R1
L1
L2
の duty は 0.5 に固定とした。
C1
C2
Buck-boost
converter
される。一次側・二次側間の情報通信は Bluetooth による無線
Primary
inverter
95.4 %
PMSM
R2
験においては昇降圧チョッパで電圧振幅を制御し,インバータ
アクセル開度に応じたトルク指令値は一次側ユニットに入力
2.91 kW
Resonator
96.1 %
M
Secondary
converter
Three phase
PWM inverter
96.8 %
通信を用いており,一次側から二次側にはトルク指令値等,二
88.8 %
次側から一次側にはモータ回転数情報等が無線通信で送られる。
4.4.
二次側(インホイールモータ側)ユニット構成
Fig. 13 定格出力時の W-IWM の効率
二次側はフルブリッジ回路による整流回路,モータ駆動用三
5. 実
相インバータと永久磁石同期モータ,機械式ブレーキをすべて
ホイール内に搭載する機電一体構造である。二次側のフルブ
5.1.
験
ベンチによる効率評価
リッジ回路も一次側と同じく共振周波数 85kHz でスイッチン
実験に用いたベンチ試験装置の概観を Fig. 11 に示す。電源
グするため,SiC MOSFET を用いている。モータ駆動用イン
は三相 200 V の電源を正弦波コンバータで整流してバッテリ
バータには IGBT を用いており,そのスイッチング周波数は 6
を代用した。コイル間のギャップは実車に搭載した場合と同様
kHz である。
に 100 mm とした。
モータ出力はハブ軸受に内蔵された減速機(減速比 4.2)に
Fig. 12 にギア減速回転数 135 rpm においてトルク指令値を
より減速され,ホイールに出力される。製作した二次側装置を
変化させたときの各変換器の効率を示す。高出力時は各変換器
Fig. 10 に示す。
は 95 %以上の高効率を達成している。低出力時は一次側イン
20
60
15
40
10
20
5
0
0
5
10
15
20
Time [s]
25
30
35
0
Vehicle speed [km/h]
Torque command [%]
80
Secondary DC-link voltage [V]
25
torque
speed
Primary resonator voltage [V]
100
350
300
measured
reference
250
200
150
100
50
0
0
5
10
(a) 車体速およびトルク指令値
15 20 25
Time [s]
30
(b) 送電電圧
35
380
measured
reference
370
䢢
360
350
340
330
320䢢
0
5
10
15 20 25
Time [s]
30
35
(c) 二次側 DC リンク電圧
Fig. 14 実車走行試験結果
バータの効率 ηinv と送受電コイル間効率 ηwpt が低下している
今後の課題として,地上の送電コイルからワイヤレスインホ
が,10%定格時の 85%の効率は 50 W 程度の損失にしか相当
イールモータへのワイヤレス給電や,更なる高出力化が挙げら
しない。
れる。
また,最大出力時 (負荷の回転数 135 rpm, 100 %トルク指
謝
辞
令) の各変換器効率と回路各部の電力の測定結果を Fig. 13 に
最後に本研究の一部は文部科学省科学研究費補助金 (基盤研
示す。電源から二次側 DC リンクまでの総合効率において約
究 A 課題番号:26249061) によって行われたことを付記する。
90 %の高い効率が得られており,W-IWM は実車への適用に
また,積層セラミックコンデンサ (U2J 特性) を支給して頂いた
十分な性能を有することが示された。
株式会社村田製作所に対しここに記して深く感謝申し上げる。
5.2.
実車試験
W-IWM のユニットを実車に搭載し,簡易的な走行試験を
参考文献
(1)
行った。W-IWM のユニット単体の性能を評価するために,走
行試験は W-IWM 右後輪1輪のみを実車に搭載させて試験し
た。試験結果を Fig. 14 に示す。Fig. 14(a),(b),(c) は全て同
(2)
じ時系列の実験データである。Fig. 14(a) において,W-IWM
へのトルク指令値は,操作者が通信機器を用いて CAN により
W-IWM へ送信した。その際のトルク指令値は自動でランプ
関数を与えるのではなく,トルク指令値を手動で与えている。
Fig. 14(a) において,走りだしの時 (15 s) に,1 s ほどトルク
(3)
(4)
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指令値の入力が停滞しているのはそのためである。今回は初め
てのテスト走行であったのに加えて,テストした道路の長さが
約 40 m ほどと短かったため,実車の走行距離は制限され,約
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33 m 間のみを走行した。よって,走行速度は最大で時速約 12
km/h ほどである。Fig. 14(b) に,W-IWM の一次ユニット
がコイルに印加する電圧の指令値と測定値を示す。まずは無負
(9)
荷の状態で 100 Vrms を印加した。3.2 節で述べたように,要
求出力の上昇に伴って W-IWM の一次側ユニットが二次側へ
送電するコイル電圧の振幅を上げている。
(10)
Fig. 14(c) では,3.3 節で述べたように,W-IWM の負荷
が増えても二次側の DC リンク電圧が 350 V の一定値に保た
れていることがわかる。前述したように定電力負荷へのワイヤ
(11)
レス給電は非制御時は不安定であるが,開発した二次側フィー
ドバック制御により安定化が成功していることが確認できる。
(12)
なお,より広い学内試験場で,制作した2輪分の W-IWM を
利用し,時速約 25km/h での走行にも成功している。
(13)
6. おわりに
本稿では,インホイールモータの動力線等の断線防止のため
に,ワイヤレス電力伝送と無線通信を用いて電力・制御信号を
供給するワイヤレスインホイールモータを提案した。また,こ
の機構の概要及び設計手法について説明し,ベンチおよび実車
試験により有効性を確認した。
(14)
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