Vol.55(2014年12月発行)

川崎病院ニュース
www.
/
ほほえみ
2 014 年1 2 月 発 行
発行責任者 病院長 中村 正
編集責任者 浦野 聖史
〒652−0042 神戸市兵庫区東山町3丁目3番1号
TEL (
: 078)
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Vol.55
消化器内科では総胆管結石の内視鏡的治療に
力を入れています
消化器内科 部長 野村 祐介
胆石は日常の診療の中で非常によく目にする疾患です。胆
石のうち胆嚢(たんのう)内にできた胆石を胆嚢結石、総胆管
内にできた胆石を総胆管結石といいます。総胆管結石が胆管
につまると腹痛や黄疸を起こします。さらに、高い確率で細
菌感染を起し胆管炎となります。胆管炎は容易に敗血症に至
る重篤な疾患であり、致死的になることも珍しくありません。
また、総胆管結石は急性膵炎の原因にもなります。総胆管結
石は放置すると命に関わる疾患であり、診断されれば早期の
治療が必要です。
総胆管結石の治療としては、内視鏡的治療、経皮的治療、
外科的手術がありますが、近年は内視鏡治療の技術や医療
機器の進歩に伴い、より患者さんの負担が少ない治療法であ
る内視鏡的治療が第一選択肢となっています。内視鏡を用い
た総胆管結石の除去は、まず内視鏡下に胆管の出口である十
二指腸乳頭部からカテーテルを胆管内に入れて胆管を造影す
ることで総胆管結石の数や大きさ、胆管の状態を確認します。
この検査を内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)といいま
す。ERCPに引き続いて、胆管の出口を広げて結石をとり出し
やすくしておいて、バスケットカテーテルなどの結石回収用の
医療機器を用いて結石を截石(除去)します。胆管の出口を広
げる方法には、電気メスで切開する乳頭括約筋切開術(EST)
と乳頭バルーン拡張術(EPBD)があり、患者さんの状態に応
①3個の総胆管結石を認めた
②バスケットカテーテルで截石
③截石完了
じて使い分けています。また、ESTやEPBDでは除去できな
い巨大な結石に対しては、近年さらに大きいバルーンでの乳
頭部の拡張が行われるようになっており、この 手 術は大口径
バル ーン拡 張 術(EPLB D)と呼ばれています。当院では近
隣の病院に先駆けてEPLBDをいち早く導入しており治療成績
を向上させています。
治療実績
①胆管にカテーテルを挿管
②乳頭括約筋切開術(EST) ③バスケットカテーテルで截石
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
51 件
55 件
65 件
74 件
96 件
127 件
150 件
152 件
216 件
267 件
総胆管結石治療数
ERCP 件数
総胆管結石は胆管炎や膵炎を伴う場合には緊急処置を要する疾患です。当院では、重症の胆管炎に対して夜間や休日
でも緊急内視鏡治療を行う体制を整えています。ここ数年、総胆管結石治療数、ERCP件数ともに増加の一途を辿ってお
り、症例数は兵庫県下トップクラスとなっています。さらに治療成績を向上させるように内視鏡機器の充実と技術の研鑽に
努めています。
「胆石がときどき痛むけど、手術は怖くて・・・」という方がいらっしゃれば、かかりつけの先生にご相談頂く
か、当院消化器内科をお訪ねください。
理事長のカラム「ファッツ・ニュー」What’
ss New
What’
New in
in KAWASAKI
KAWASAKI ??
「病床機能分化」・・・・・川崎病院はこれからも急性期の医療を続けます。
「2025年問題」をご存知ですか?テレビや雑誌、新聞で頻繁に報道
されていますから、大概の方はご存知でしょう。
「2025年
(平成37年)
」
は昭和22年から24年にかけて生まれたいわゆる「団塊の世代」の方々
がみんな75歳以上の「後期高齢者」になる年です。以後しばらく高齢
者人口のピークが続きます。
「2025年問題」とは一口に言うと「高齢者の増加により医療や介護
の費用が急増する一方で、若い働ける人々の数が減少し、現状のまま
ではこの費用をまかなえなくなる」ということです。すなわち、現在
の体制では医療・介護の費用が増加し日本の社会保障・福祉は破綻
すること必定です。そこで政府は「2025年にむけて医療・介護の一
体改革」に着手しました。今年4月の消費税の増税もこの改革の一環
で、医療においても大きな変化が起きようとしています。
今年の4月、厚労省はこれに沿った診療報酬の改定をおこないまし
た。この厚労省の方針とは①在宅医療の推進、②病床の機能分化です。
①の在宅医療の推進とは、高齢で病気になってもなるべく病院や施設
に入所することなく、自宅で家族や派遣される介護職員に看病しても
らおう、病気の治療も通院か医師の往診に頼ろうとするものです。
過去の多くの調査ではお年寄り自身もできるだけ自宅にとどまりたい
という希望が大変に多いことがわかっていますから、これが実現すれ
ばお年寄りにとって喜ばしいことです。しかし、お年寄りには不安が
あります。一つは家族の負担に対する遠慮と病気が重くなった時にす
ぐに医師に診てもらえるのか、治療は充分にしてもらえるのかという
ことです。介護については「地域包括ケアー」という新しい考え方で地
域での老人の介護についていろいろと工夫されようとしています。在
宅で急に病気が重くなったときには、
「地域包括ケアー」の一環として、
病院への入院がスムースにできるように工夫されるように準備が進行
しています。
上記の第二の「病床機能分化」はこの「地域包括ケアー」と密接な関
係にあります。在宅で病状が悪化したお年寄りをすぐに病院に入院し
てもらい、病気がよくなったら、自宅に帰ってもらう訳ですが、お年
寄りは病気がよくなっても、少し寝ているだけで筋力が弱り日常生活
が送りづらくなります。このようなお年寄りのリハビリテーションも
重要です。今回の「病床機能分化」では在宅で急変した患者さんを入
院してすぐに充分な治療ができる「急性期病床」、病気はよくなったけ
れども自宅での生活がまだ困難な患者さんにリハビリテーションを主
に行う「回復期病床」、さらにリハビリテーションをしてもなかなか自
宅に帰ることができない患者さんのための「慢性期病床」を設置するこ
とです。もちろん、急変した非常に重症で、手厚い治療が必要な患者
さんには「超急性期病床」も設けられます。厚労省からは11月中にすべ
ての病院にこの4つの病床のいずれかを選択して届けるようにとのお
達しが出ました。この方針は重症の患者さんには充分な看護職員を配
置し、軽症の患者さんにはあまり人手をかけないでおこうという意図
があります。合理的な医療従事者の配置といういい面もありますが、
回復期や慢性期でもお年寄りの療養には人手がいるものですから、
これでいいのか心配ではあります。
川崎病院はどう対応していくのでしょうか。今まで川崎病院は救急
医療を含めて急に悪くなった患者さんの治療を十分に行う急性期の病
気の医療をおこなってきましたし、実際に多くの急性疾患の患者さん
が入院しておられ、この機能は地域の患者さんからも非常に期待され
ていると自負しております。今回の「病床機能」の届け出についても、
ICCU病棟は「超急性期病床」として、その他の病床は「急性期病床」と
して届け出ました。川崎病院は今後も地域の急性の疾患を中心に診療
してまいります。重症の患者さんには「ICCU」で救命的な治療を行い
ます。在宅で病状の悪化した命の危険のない患者さんには「急性期病
床」に入院していただき治療いたします。今後も救急医療に尽力し、
在宅医療に協力しながら、地域の急性の患者さんの治療に邁進いた
します。今後も今まで通りに川崎病院を頼っていただき、それにこた
えるように努力いたします。
禁煙外来ってどんなことをしているの?
2006年度からニコチン依存症が治療の対象となる疾病とされ「ニコチン依
存症管理料」が新設されると同時に保険診療が開始されました。それを受け当
院でも禁煙外来を行っています。
禁煙したほうがよいのはわかっているけど…実は喫煙者の半数近くの方は、
本当は禁煙したいと思っているそうです。でも、なかなか実行できないのは
「喫煙」はココロの依存状態に加えて「ニコチン依存症」という身体的依存、病
気にかかっているからです。だからこそ病院で治療を行います。病院での禁煙
治療はニコチンパッチという貼り薬もしくはチャンピックスという飲み薬を使用
します。それぞれを使用することで成功率が前者で2倍、後者で3倍ほどに上
がるといわれています。ニコチン依存症テストで5点以上+喫煙指数(1日の喫
煙本数×喫煙年数)が200以上+“直ちに禁煙する気がある”方は保険がききま
すので是非禁煙外来を受診してください。
禁煙治療は12週間でその間に5回外来に来ていただきます。受診したらまず
看護師と面談し、禁煙状況を確認したり、禁煙のつらさやそのつらさをどのよ
うに乗り越えているのか伺っています。私たちは支援者としてつらい気持ちや
がんばっていることを共有したいと思っています。そして一酸化炭素濃度の測
定を行います。手の平ほどの機械に息を吹きかけるだけの簡単な検査です。
禁煙の効果は短期的には確認しにくいのですが、一酸化炭素濃度は禁煙すれ
ばすぐに、しかも数字で客観的にその効果を確認することができるので多くの
方が毎回楽しみにされています。禁煙に成功し最後まで外来に来られた方には
卒煙証書をお渡ししています。
費用は3割負担の方で約2万円(12週間)かかりますが、その後のタバコ代を
考えると決して高くないと思います。
本当は失敗しては困るのですが、まずは肩肘張らず、失敗したら恥ずかしい
から…と思わず、禁煙にチャレンジしてみたいという方はどうぞお気軽に受診
して下さい。上記の保険治療に当てはまらない方も自費治療が可能です。とり
あえず今は禁煙しないけれどCO測定や禁煙治療について話を聞いてみたいと
いうことでも構いません。内科受付までお気軽にお声をかけてください。
禁煙外来担当看護師
辻野 美樹
ニコチン依存症テスト
質問内容
はい(1点) いいえ(0点)
自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしま
問1
うことがありましたか?
問2
禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがあ
りましたか?
問3
禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくて
ほしくてたまらなくなることがありましたか?
問4
禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかが
ありましたか?
(イライラ、神経質、落ちつかない、集中
しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、
手のふるえ、食欲または体重増加)
問5 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い
始めることがありましたか?
問6
重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっ
ているのに吸うことがありましたか?
問7 タバコのために自分に健康問題が起きているとわかって
いても、吸うことがありましたか?
タバコのために自分に精神的問題(※)
が起きているとわ
問8
かっていても、吸うことがありましたか?
自分はタバコに依存していると感じることがありました
か?
タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが
問10
何度かありましたか?
問9
※禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)
ではなく、喫煙
することによって神経質になったり、不安や抗うつなどの症状が出現している状態。
禁煙外来の案内
診 療 日:毎週木曜日の午後診
受付時間:13時∼ 15時
(当日、予約がない方も受診できます。)
担 当:中村院長(第1、3、5週)
久保医師(第2、4週)
看護フェア(今年は秋開催です)
9月4日(木)に看護フェアを行いました。毎年5月の看護の日に合わせて行って
おりましたが、今年は9月に開催しました。
健康相談や骨密度測定、体組成測定などが行われ、会場となった東館2階か
らは多くの患者さんや看護師の楽しそうな声が聞こえてきました。
今年は時期を変更しての開催でしたが、多くの患者さんに参加頂き、看護フェ
アは盛況のうちに終えることができました。ご参加下さいましたみなさま、本
当にありがとうございました。
夢野地区地域福祉センターで健康講座を行いました
11月7日(金)夢野地区地域福祉センターで行われた健康講座で、川崎病院の2
人の看護師がお話させて頂きました。
最初にがん化学療法看護認定看護師の風本綾看護師から「もしも私や家族が
『がん』と言われたら...」と題して、がんの正しい情報の収集方法や、医療者と
コミュニケーションをとる際に心がけたい点を説明させて頂きました。
続いて、皮膚・排泄ケア認定看護師の足立友美看護師から便失禁の症状や予
防方法を説明させて頂きました。
川崎病院ではこのような健康講座を積極的に行って参りますので、お近くで
開催する際には是非ご参加ください。
祝! 3 km 部 門 第18回日本糖尿病協会主催兵庫県
優 勝!!
ウォークラリー大会に参加して
糖尿病チーム
療養指導士 管理栄養士
大西 由起
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10月19日(日)しあわせの村で開催されたウォーキングイベントに患者さん11名、
医療スタッフ8名(医師4名 コアスタッフ4名)合計19名で参加してきました。こ
のイベントは糖尿病患者さんと医療スタッフが一致団結して3km 、5kmのチー
ムに分かれて歩きます。途中、糖尿病に関するクイズが出題されてその回答率
を競ったり、輪投げやダーツ等で得点を加算したり、最後にはゴールまでにかかっ
た時間で更に加点が得られます。また、昼食時には皆で持参したお弁当を食べて、
食事前後に血糖値の測定を行い、運動と血糖値の関連を体感することもできま
す。
お揃いのTシャツで参加しました
昨年は、雨天のため中止でしたが、今年こそは・・という参加者の熱い思い
が伝わったのか、晴天でお揃いのチームTシャツを着て上位目指して頑張ってき
ました。参加者数は250名で、結果は
・・・
なんと3km部門 1位(17チーム中) 5km部門 7位(13チーム中)というすば
らしい結果を残すことができました。
各々のチームで歩きながら皆さんが自然とコミュニケーションをとり、作戦を
はじめとする会話がとびかっている姿を見て、今後、より楽しく、より積極的に、
日々の治療に取り組んでもらえるよう、情報提供等のサポートをしていきたいと
優勝した3kmチーム
改めて強く思いました。
午後からはミニイベントとして、管理栄養士より「食事の組み合わせ方」、運動療法士より「血糖管理のための週
150分の運動」、医師より糖尿病病診連携ネット「DM net」についてのミニ講演があり、皆さん真剣にメモをとってい
ました。
6時間という長時間のイベントでしたが、最後にはハツラツとした笑顔で「また来年も参加しよう」という言葉が聞こ
えてくるなど、アットホームな雰囲気の中で楽しく過ごすことができました。参加された方お疲れ様でした。また、
興味のある方は是非来年参加をお待ちしています。
便失禁患者さんに朗報です!!
∼便失禁治療専用治療機器(InterStimⅡ)の導入について∼
川崎病院肛門外科では便失禁治療機器“InterStimⅡ仙骨神経刺
激システム”
(日本メドトロニック社製)を兵庫県下ではじめて導入い
たしました。
便失禁とは肛門をしめる括約筋の筋力が低下し、便漏れやガス漏
れをおこす疾患で、出産経験のある高齢の女性に多く見られます。
便失禁は、患者さんの苦痛も多く、非常に治療が困難な病気です。
この便失禁の治療は生活習慣の改善や肛門括約筋のトレーニング、
薬物療法などの保存的治療が主に行われ、これらの保存的治療で
InterStimⅡ仙骨神経刺激システム
症状に改善がみられない場合は手術などの外科的治療が検討され
てきました。仙骨神経刺激療法(SNM)の導入により保存療法で改善がみられない患者さんにも治療の選択
肢が広がることが期待されます。SNMは試験刺激により治療効果を確認し、効果が認められた場合に臀部
に神経刺激装置を植え込み継続的な神経刺激を行います。
SNMにより、これまで治療効果を得られなかった患者さんにも、症状に合わせたきめの細やかな治療が
可能になります。便失禁に悩まされている方がいらっしゃれば、是非、川崎病院肛門外科を受診してみてく
ださい。(川崎病院肛門外科の診察には予約が必要です。詳しくは外科外来までお尋ねください。)
川崎病院医療理念
「良質な医療を提供し、信頼される病院に」
新入 職 医 師 のご 紹 介
基本方針
1.地域の人々の疾病の治療と健康の維持に、他の医療機関と連携し貢献します。
2.患者様の権利と尊厳を尊重し、病状と治療方針を充分に説明し理解していた
だくよう努めます。患者様の個人情報は決して第三者に漏らすことはありま
せん。
3.患者様が心地よく治療に専念できるよう患者サービスに努力します。
4.医療にたずさわる人間としての使命感を持ち、より高い知識と技術の習得に
努力し、安全で高度な医療を提供します。
5.働きがいのある職場環境を形成します。
患者様の権利
1.良質で適切な治療を受ける権利
2.医療上の情報の説明を受ける権利
3.セカンドオピニオンを受ける権利
4.人格を尊重され治療を自己決定する権利
5.プライバシーを尊重される権利
6.尊厳を擁護される権利
すべての患者様が等しく、上記の権利を行使できるよう、患者様には病院の規則を
守り、他の患者様や職員、その他の人々に迷惑をかけない責務があります。
形成外科 医員
秋山 幹雄(あきやま みきお)
専門分野:形成外科一般
趣 味:音楽鑑賞
一言メッセージ
11月より川崎病院の形成外科
で勤務させて頂いております。患
者さんのお役に立てるよう頑張り
ますので、どうぞ宜しくお願い致
します。