“総胆管結石”の診断と内視鏡的治療

2011 年 10 月
平素は、患者様をご紹介いただき誠にありがとうございます。
『地域に親しまれる病院、消化器内科』をめざし、また、日ごろ広範囲にわたる診療にあたっておられる先生方のお
役に立てるようにと発行を始めた『消化器内科だより第2号』では、胆膵疾患担当の石丸
石丸医師
石丸医師により、“総胆管結石”
医師
の診断と内視鏡的治療の現状を報告いたします。今後ともさらなるご指導ご鞭撻を賜りますようどうぞよろしくお願い
申し上げます。
“総胆管結石”
総胆管結石”の診断と
診断と内視鏡的治療
消化器内科 石丸 正平
先生方におかれましては、「胆石症・胆石による急性胆
のう炎」の診療をされることは多々あることと思います。ま
た、類縁疾患である“総胆管結石”の患者様に遭遇する
機会も少なからずおありなのではないでしょうか。
「胆石症・急性胆のう炎」は、胆石の既往あるいは腹部
超音波検査で容易に診断できます。これに対し、腹部超
音波検査で診断可能な「総胆管結石症例」は極めて少な
い状況です。なぜなら、総胆管の解剖学的位置上、腹部
超音波検査では、総胆管のごく限られた範囲しか描出で
きないからです(図1)。
胆石・胆のう炎様の症状(心窩部~右季肋部痛・発
熱)、黄疸、胆道系酵素の上昇を伴う急性肝機能障害、
あるいは反復する肝機能障害を呈する患者様を診療さ
れた際には、“総胆管結石”の可能性を是非ともご考慮
ください。胆石症の既往があれば、胆のう結石の総胆
図1 胆道結石
「総胆管結石症と内視鏡による結石治療について」(ボストン・
サイエンティフィック ジャパン株式会社)より
断・緊急治療を要するケースがほとんどです。
総胆管結石の診断のためには、早急に腹部 CT ある
管への落石による“総胆管結石”併発の可能性が十分
いは MRCP を施行します。以前は入院の上、内視鏡的
にあります。また、上記典型的症状がある場合は、比較
逆行性膵胆管造影(ERCP)にて診断されていましたが、
的診断しやすいかもしれませんが、高齢者では、腹痛
現在は CT・MRI の精度と診断能の向上により、数 mm
などの自覚が乏しく、漠然とした心窩部不快感・食欲低
程度の総胆管結石も明瞭に描出されます。したがって、
下・軽度の微熱反復という程度の場合もありますので注
腹痛発作などが軽快していれば、外来で検査・診断が
意が必要です。
可能です。
胆石による急性胆のう炎は、胆のう周囲膿瘍への進
CT・MRCP で総胆管結石の診断がつけば、入院の
展等のリスクがあり、迅速な診断と治療の必要があるこ
上内視鏡的治療が試みるのが一般的です。総胆管結
とはいうまでもありません。
石の径が約 10mm以下で、数個程度であれば内視鏡
総胆管結石の場合も、総胆管下部への結石陥頓な
どにより化膿性胆管炎・急性膵炎・閉塞性黄疸・DIC 併
発と急速に進行することがあり、緊急入院、迅速な診
的治療で排石が可能です。
ERCP 下、内視鏡的乳頭切開術(EST)あるいは内視
鏡的乳頭拡張術(EPBD)により乳頭口を開大させた後、
砕石用のバスケットカテーテル、採石用のバスケットカ
径約 10mm 総胆管結石
テーテル、採石用バルーンカテーテルで総胆管内の
結石を十二指腸に排石します。以前は、出血・消化管
穿孔のリスクを考慮し、EST よりも EPBD を主体に施行し
径約 10mm 総胆管結石
ていましたが、昨今は EPBD による ERCP 後膵炎のリス
クの問題の方が重要視される傾向にあります。
当院においても、EPBD は、①乳頭機能の温存を考
慮すべき症例(主に若年者)、②数 mm 程度の結石の
自然脱落したステント
図 2 CT 画像
図 3 ERCP 透視画像
単発あるいは 2~3 個程度の症例、③出血傾向のリスク
症例に限定しています。結石が 1cm 以上・多数例では
EST を主体に処置を施行しています。
これらの内視鏡的治療で、約 90%以上の総胆管結
石が排石可能です。1 回の処置で砕石が終了すれば、
処置後約 1 週間程度で退院できます。
≪症例呈示≫
症例呈示≫
a 腫大し濃汁排出する乳頭
b チューブステント留置
62 歳、男性。心窩部疼痛を主訴に救急搬送。当院受
診約 1 か月前から、微熱・心窩部不快感を繰り返し、1
度は他院受診し肝機能異常を認めたがすぐに軽快し
たとのこと。当院初診時の血液検査で、肝機能障害と
炎症徴候を認めた。腹部 CT で、総胆管下端に径
10mm の結石の陥頓を認め(図2)、ERCP では、結石陥
頓による乳頭腫大・開口部より膿汁の排泄を認めた(図
4-a)。抗血小板剤内服中であったため、同日内視鏡
c EST 後の乳頭
d 砕石バスケットによる排石
図 4 内視鏡所見
的胆管ステント留置術施行(図4-b)。抗血小板剤中止
約 1 週間後に ERCP 再検し、総胆管に径1㎝の結石を
認めた(図3)。EST 施行し(図4-c)、砕石バスケットに
よる砕石+排石バルーンによる排石処置を施行(図4d)。 このように、微熱と心窩部不快感を繰り返し、肝機
能障害をきたすもすぐに軽快していた症例も、総胆管
結石が潜在しており、陥頓して緊急ドレナージという結
末でした。
「腹痛」、「
腹痛」、「黄疸
」、「黄疸」、「
黄疸」、「発熱
」、「発熱」
発熱」と典型的症状
躊躇することなく
することなく速
やかにご紹介
紹介を
⇒躊躇
することなく
速やかにご
紹介
を
血小板数低下は
重症化の
指標!!
血小板数低下
は重症化
の指標
!!
「症状が
症状が軽度で
軽度で、肝機能異常も
肝機能異常もすぐ軽快
すぐ軽快」
軽快」
しかし、
⇒しかし
、
総胆管結石が
総胆管結石が潜んでいる可能
んでいる可能性
可能性。
そこで終了
終了とせず
とせず、
一度ご
紹介を
そこで
終了
とせず
、一度
ご紹介
をいた
だければ幸
いでございます。
だければ
幸いでございます
。
あかね会 土谷総合病院 消化器内科
消化管:甲斐 広久、島本
胆膵 :石丸 正平
肝臓 :荒滝 桂子
大