MFDを用いたエリア流入制御手法の効果分析

MFDを用いたエリア流入制御手法の効果分析
愛媛大学大学院理工学研究科 生産環境工学専攻 交通工学・都市環境計画研究室
前原慎也 吉井稔雄 高山雄貴
1. 背景
4. 交通流シミュレーションSOUNDを用いた分析
 渋滞抑制を目的とした流入制御
高速道路における流入制御
現在,高速道路で渋滞が日常化しており,
対策が急務である.そこで,流入制御が
注目されている.流入制御は右写真の
ように高速道路の本線入口に設置され
た信号により行われる.
本研究は高速道路ならびに周辺道路の
渋滞抑制を目的とした流入制御の構築
を目標としている.
 シミュレーション設定
 対象路線:阪神高速道路
 OD交通量:5:00-12:00の交通量
 総発生交通量:268,928台
 制御概要
局所的な制御
巨視的な制御
高速道路入口
高速道路
ネットワーク
制御
制御
本線
巨視的な制御の実施で,より大きな制御効果を獲得できる.
2. 先行研究
 MFDを利用したエリア流入制御手法,米澤ら(2009)
Macroscopic Fundamental Diagram, Daganzo & Geroliminis (2007)
エリア内の交通流率Q[veh*km/h]
 制御対象交通状態
最適密度以上の交通密度を
持つ交通状態を対象として制御
を実施し,制御効果を分析する.
*最適密度はエリア内の
各リンクの臨界密度の総和
 制御効果の判定
高い流率が得られる
最適密度が存在
評価指標:総旅行時間
高速道路の総走行時間
+
仮説1を支持
密度を最適
密度に調節
高い流率
同制御の制御効果は常に発現するとは限らない.
→制御効果発現の条件(交通状態)は明らかにしたい!!
MFDを用いたエリア流入制御手法の
制御効果発現の交通状態の把握
本研究の目的
6. 仮説2の検証
エリア
流
出
 仮説2
エリア交通状態の時間推移の方向が
渋滞延伸時は制御効果あり,渋滞解消時は制御効果なし
エリア交通流率Q[veh*km/h]
渋滞解消方向
渋滞延伸方向
エリア交通密度K[veh/area]
渋滞解消方向
制御の必要ない交通まで制御,
かえって流動性に悪影響?
渋滞延伸方向
エリア内の密度増加の抑制で
渋滞の延伸を防ぐことができる?
エリア交通密度K[veh/area]
2,500
効果なし
(逆効果)
500
1,000
1,500
あるレベル
2,000
エリア交通密度K[veh/area]
2,500
ΔK
直前の
交通状態
制御対象
渋滞解消方向では制御効果が
得られず,渋滞延伸方向では
制御効果の発現が確認できる.
仮説2を支持
渋滞解消
密度増加
流率増加
密度減少
流率減少
渋滞延伸
エリア交通密度変化量[veh/area]
エ 15,000
リ
ア 10,000
交
通 5,000
効果あり
流
効果なし
率
0
変
化 -5,000
量
-10,000
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300
エリア交通密度変化量[veh/area]
[veh*km/h]
エリア内の交通状態が悪化しすぎると制御を実施しても,流入>流出
→交通密度を調節できず,高い交通流率を得ることができない.
2,000
効果なし
0
[veh*km/h]
流
入
1,500
効果あり
10,000
0
エ
リ
ア
交
通
流
率
変
化
量
エリア交通流率Q[veh*km/h]
ΔQ
エリア内の渋滞の
悪化でエリアからの
流出量が減少
1,000
制御開始時のエリア交通状態と制御結果
エリア交通密度K[veh/area]
高速道路本線からの
流入の制限は
現実的に困難,
流入量制限の限界
500
エリア交通状態の時間推移の方向を,制御対象交通状態と直前の
交通状態の変化量とし,その方向と制御効果の関係を分析した.
3. 制御効果に関する仮説
 仮説1
集計QK状態があるレベルを超えると制御効果が得られない
0
エ 70,000
リ 60,000
ア 50,000
交 40,000
通
流 30,000
率 20,000
Q[veh*km/h]
エリア内への
流入を制御
エリア交通密度があるレベル
(1,900[veh/area]) を超えて以降,
効果が得られないことを確認.
エリア内の交通密度K[veh/area]
【制御のフレームワーク】
最適密度
10,000
0
【制御効果の判定】
制御なしと比べて,総旅行時間が
減少した場合
効果あり
増加した場合
効果なし
全車の移動が
効果なし
未完了の場合
(逆効果)
5. 仮説1の検証
 エリア内の交通流率Q[veh*km/h]
エリア内の単位時間での総走行距離
 エリア内の交通密度K[veh/area]
エリア内に存在する総車両台数
制御対象
制御しない場合のMFD
本線入口での総待ち時間
道路ネットワーク
阪神高速道路ネットワーク
エ 70,000
リ 60,000
ア 50,000
交 40,000
通
流 30,000
率 20,000
Q[veh*km/h]
ネットワークを対象
単一の路線のみを対象
環状線
ネットワーク
 制御対象エリア:環状線ネットワーク
(環状線内の高速道路入口が制御対象)
 制御開始密度:制御対象の交通密度
 制御終了密度:最適密度(1,374[veh/area])
 制御流入交通量:0台
 本研究で着目する流入制御手法
制御
SOUNDとは,コンピュータ上で現実の高速道路・自動車の移動を
模擬できるシミュレーションである.本研究はSOUNDを用いて実際
の交通状況を再現し,エリア流入制御の制御効果の仮説を検証した.
エリア交通状態の推移方向と制御結果
7. 制御効果の発現に関して得られた知見
 制御効果の発現に関して得られた知見
 エリア交通状態があるレベルを超えると制御効果が得られない
 エリア交通状態の時間推移のベクトルが渋滞解消方向のとき,
制御効果が得られるが,渋滞延伸方向であるときは得られない
 今後の予定
 エリア交通流状態の時間変化を確率的に考慮した上での
制御実施判断手法の構築