飯舘村の環境は、 いまどうなっているのか。

飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
2015年3月
セシウムとは
空気
土
住まい
いぐね
P2
P4
P16
P5
P14
山
樹木
P6
P13
P7
P13
川
イノシシ
P13
P8
P11
P10
植物
稲作
大豆・そば・さつまいも
ため池
放射線・放射性元素・放射能
放射性元素から放射線が飛び出す
わたしたちの身のまわりにあるいろいろな物質は、
「原子」という小さな粒の集まりです。
原子の種類を「元素」といいます。
たとえば「水素」
「カルシウム」
「鉄」などはどれも元素の名前です。
「セシウム」も元素です。
同じ元素は共通の性質を持っていますが、同じ元素でありながら重さが違う種類があります。
これを「同位体」といいます。
同位体の中には、自然にこわれて別の元素に変化するものがあります。
こわれるときに「放射線」をはき出します。
放射線は、高速で飛ぶ小さなつぶ、または通常の光より高いエネルギーを持つ光の一種です。
放射線をはき出した原子は、別の元素に変化します。
別の元素に変化した後に、
さらにこわれてまた別の元素になるものもありますが、
最後には、放射線を出さない元素になります。
放射性元素
放射線をはき出す
放射線を出さない元素
放射線はわたしたちのからだの中の細胞を傷つけます。
放射性元素は火を噴き出す怪獣のようなイメージ。
放射性元素が含まれている物質を放射性物質といいます。
放射性物質が放射線をはき出す力を「放射能」といいます。
放射能は「ベクレル」で表します。
放射性元素が1秒間に1つの放射線をはき出すとき、
「1ベクレルの放射能」と呼びます。
2
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
いま飯舘村にある放射性物質
東京電力福島第一原子力発電所の事故では、
放射性物質が原子力発電所の外にもれ出しました。
放射性物質は風で流されて飯舘村にも届き、雨や雪とともに地上に降りてきて、
田や畑、家、山林など、いろいろなところにふりそそぎました。
事故のときには、いろいろな放射性物質が飛んできましたが、
今も飯舘村の環境に大きな影響を与えているのは
放射性セシウム(セシウム 134とセシウム 137)です。
セシウム 134とセシウム 137 は、どちらも放射性セシウム(セシウムの放射性同位体)です。
本冊子では「セシウム」というのは放射性セシウムのことを表しています。
いろいろな種類の放射性元素
放射性物質の雲
セシウム
(放射線を出さないセシウム133)
写真は単体のセシウム。金色のやわら
かい金属で、28℃でとけて液体になり
ます。空気中で自然に燃え出すほど化
学反応する性質が強いので、通常は単
体のセシウムを見ることはできません
(写真はガラスのいれ物に閉じ込めて
ある)。
飯舘村にあるセシウムは、粘土や植物
などに付いた状態、水にとけた状態、化
学反応でできた物質の小さなつぶの状
態、などになっていると考えられます。
β
(ベータ)線とγ
(ガンマ)線という
2 種類の放射線を出す。
放射性セシウムは、ベータ線とガンマ線をはき出してバリウムに変化します。
ベータ線
物質を突き抜ける力が弱く、薄いアルミの板を通り抜
けることができない。
ベータ線・・・長くても数m
空気の中でも、長くても数メートルしか飛ばない。
ガンマ線
ガンマ線・・・200 ∼ 300 m
物質を通り抜ける力が強く、厚い鉛などを使わないと
さえぎることができない(18ページ)。
空気中を200 ∼ 300メートルも飛ぶ。
放射線には、この他にアルファ線、エックス線などの種類があります。
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
3
﹁セシウム﹂はどんな物質なのか
セシウムと粘土は切っても切り離せない
粘土は小さな鉱物の粒でできています。
水の中に粘土の粒が混ざっていると、
なかなか沈まずに濁り水になります。
セシウムは粘土に含まれる風化雲母(ふうかうんも)と出会うと、
風化雲母にしっかりと取り込まれて離れなくなります。
風化雲母に取り込まれたセシウムは水にも溶けだしません。
風化雲母にはカリウムが入っている
セシウムとカリウムは
よく似ている。
セシウムが来ると…
セシウムが取り込まれる!
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飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
飯舘村には風化雲母が多い
飯舘村は花崗岩の産地です。
飯舘村の土の中には花崗岩が風化してできた
風化雲母がたくさんあります。
飯舘村産の花崗岩(黒い部分が黒雲母)
風化黒雲母(層状になっている)
セシウムとカリウム
セシウムはカリウムとにた性質をもっています。
土の中のカリウムが足りないと、
植物はセシウムを吸い込みやすくなります。
土の中にカリウムがたくさんあると、植物はセシウムを吸収しにくい。
飯舘村の環境は、
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セシウムの移動
セシウムは地面の表面にたまっている
セシウムがとけている水が土の粒の隙間を通ってしみ込んでいくと、
セシウムが土の中の風化雲母につかまり、しみこんだ水にはセシウムが残りません。
セシウムは表面から深さ5 ㎝ほどの土の中にたまっています。
イノシシに掘り起こされてしまうと、
深いところのきれいな土とセシウムが混ざってしまいます。
放射性セシウム合計
0
20,000
40,000
0-2
2-4
(Bq/kg)
60,000
57,276
4,281
4-6 261
6-8 113
8-10 98
10-12 83
深さ
(cm)
土の深さごとのセシウムの濃さ
(村内の測定例)
水が土の中を通り抜ける間にセシウムが
風化雲母に取り込まれる
泥水のセシウムは土でろ過される
風化雲母に取り込まれたセシウムは粘土の粒と一緒にろ過され、
地下深くには浸透しません。
泥水
セシウムのついた粘土が土の粒に引っかかる。
泥水のろ過実験
上から泥水を入れると下に透明な水が落ちる
6
飯舘村の環境は、
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砂に粘土のつぶが
ひっかかって
できたフィルター
ろ過された
透明な水
いぐねでは落葉のセシウムが濃い
いぐねではスギ・ヒノキの葉や木の皮にセシウムがついています。
いぐねの地面にはそれらが落ちて積み重なっています。
葉や木の皮についたセシウムは、
葉や木の皮が腐ると水の中にとけ出したり、
根から再び植物の中にとりこまれたりします。
セシウム合計
0
100,000
200,000
(Bq/kg)
300,000
枯葉(上)
木の上から
切り落とした葉
枯葉(中)
網にたまった枯葉
(新しく落ちた枯葉)
枯葉(下)
地面に落ちている枯葉
(前から落ちていた枯葉)
村内のいぐねの測定例
けんだくたい
ようぞんたい
「懸濁態」と「溶存態」
懸濁態:セシウムが粒についている
粘土の粒についている: 水にとけない。植物に吸収されない
有機物の粒についている:はがれて水にとけだすことがある。
植物に吸収されることがある。
溶存態:セシウムが水にとけている
植物に吸収されやすい
植物などが腐って
できた小さな粒
粘土の粒
懸濁態
溶存態
小さな懸濁態は実験用フィルタを通過して溶存態に分類されてしまうこともあります
飯舘村の環境は、
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セシウムの移動
粘土粒子や落葉が
分解された粒子などとともに移動
セシウムは粘土の粒や腐った落葉の粒について移動していきます。
枯葉がだんだん分解
分解につれて離れる
枯葉にもセシウム
粘土とともに移動
粘土に取り込まれたり…
さらに分解された枯葉にくっついたまま
川から流れ出す土砂
雨がふると川の水がにごります。
にごり水の中には粘土の粒や腐った葉の粒があります。
これらの粒についたセシウムも、いっしょに川を流れていきます。
8
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セシウムはどれぐらい流れ出すのか
にごり水をあつめて、流れてくるセシウムの放射能を測り、川を流れる
水の量をかけると、流れ出すセシウムの量がわかります。
流域面積あたりのセシウム137 の流出量
粘土
(2013年6月から12 月まで)
真野川
真野川
比曽川
比曽川
0
300
600
900
1,200 1,500
(Bq/m2)
細砂
0%
粗砂
礫
50%
100%
川から流れ出るセシウムは、真野川よりも比曽川の方が多い。
2013 年 6 月から12 月までの約半年間に流れ出たセシウムの量は、
流域にあるセシウムの 0.1%。
セシウムの流れ方は、土や有機物に着いて流れる懸濁態がほとんどで、
水に溶けて流れる溶存態セシウムはとても少ない。
土の粒の大きさ別では、
粒の小さい粘土について移動するセシウムが全体の半分ぐらい。
飯舘村の北部を流れる「真野川」と南部を流れる「比曽川」で
調査した結果から、2つの川から流れ出すセシウムの量を
コンピュータで計算すると下の図のようになります。
真野川
比曽川
地形などの条件からセシウムが流れ出す量を計算したコンピュータ・シミュレーション
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稲のセシウム吸収を抑えるための基礎知識
1.粘土粒子に取り込まれたセシウムは稲に吸収されにくい
2.溶存態のセシウムは稲に吸収されやすい
3.腐った枯葉の粒などについているセシウムは稲に吸収されることがある
4.土のカリウムが十分であれば稲はセシウムを吸収しにくい
5.土のセシウム濃度が高いと稲のセシウムも増えやすくなる
土のセシウム濃度とカリウム濃度
カリウム
―
土のセシウム濃度が高いと玄米のセシウム濃度が高くなります。
カリウム肥料を与えると、
セシウムが稲に吸収されるのをおさえることができます。
(Bq/kg)
40
玄米の放射性セシウム濃度
セシウムと稲作
セシウムを吸収させない方法
35
カリウム肥料を与えない
30
25
20
15
10
カリウム肥料を与える
5
0
0
2,000
4,000
土の放射性セシウム濃度
6,000
(Bq/kg)
(Bq/kg)
40
玄米のセシウム濃度
35
30
土の交換性カリウム濃度が低いと
玄米のセシウム濃度が高くなりやすい
25
20
15
10
5
0
0.0
10.0
20.0
土の中の交換性カリウム(K2O)濃度
30.0
(mg/ 土 100g)
土の中の交換性カリウム(K2O)濃度が100gあたり25mg以上あると、
セシウムの吸収は抑えられます。
10
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
米の試験栽培結果
2012年から2014年の3 期に試験栽培した稲は、
いずれも玄米で100Bq/kg 以下でした。
カリウムを与えた区画と与えない区画を比較すると、与えた区画の方が、
玄米のセシウム濃度が低いことが確認できました。
100Bq/kg は放射性セシウムに関する一般食品の基準値です。
玄米の放射性セシウム濃度
(Bq/kg)
40
35
30
25
20
15
10
5
0
2012 年
*
*
A
A(K)
玄米の放射性セシウム濃度
(Bq/kg)
40
35
30
25
20
15
10
5
0
B
B(K)
C1 C1(K)
C2 C2(K)
D
D(K)
区画名(K がついた区画はカリウムを与えた)
2013 年
AB AB(K)
C1 C1(K)
(Bq/kg)
CD CD(K)
40
35
30
25
20
15
10
5
0
2014 年
AB AB(K)
CD CD(K)
区画名(K がついた区画はカリウムを与えた)
*のマークは、セシウム134が検出下限値未満であったことを表します。グラフは
検出下限値の値を代入して表してあります。
(2012 年と2013 年に試験栽培された稲は、セシウムの濃度に関係なく、すべて
廃棄されました。2014 年に試験栽培された稲は、JAそうまでの全量全袋検査で
すべて「検出せず」となりました)
玄米のセシウムは「ぬか」に集まっています。
精米すると、セシウムはぬかとともに落とされ、
セシウム濃度は半分以下になります。
玄米の放射性セシウム濃度
(Bq/kg)
白米
140
ぬか
2012 年
120
100
80
60
40
20
0
ND
ND
A
ND
A(K)
ND
B
B(K) C1 C1(K) C2 C2(K) D
D(K) IABC
区画名(K がついた区画はカリウムを与えた)
「ND」は検出下限値未満という意味で、セシウム134を検出できなかったことを
表します。
「ND」の棒グラフの長さは検出下限値を表しています。
飯舘村の環境は、
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11
セシウムと稲作
農業用水のセシウムには要注意
村内の27 か所のため池の水からは
平均で0.58Bq/lのセシウムが検出されました。
いくつかのため池では、水に含まれるセシウム濃度が
他のため池よりも高いことがわかりました(2014 年4月∼ 5月の調査)。
放射性セシウム濃度別のため池の数
10
8
6
他と比較して放射性セシウムの
濃度が高いため池がある
4
2
0
農業用水
―
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 3.8
(Bq/ℓ)
セシウム
ため池の底の土では、
水底から4cm以内の深さにセシウムがたまっています。
採取場所による放射性セシウム濃度の違い
❶
20,000
40,000
60,000
20,000
40,000(Bq/kg)
80,000
0∼2cm
2∼4cm
4∼6cm
6∼8cm
8∼10cm
10∼12cm
12∼14cm
❸
0∼2cm
2∼4cm
4∼6cm
6∼8cm
8∼10cm
10∼12cm
12∼14cm
❺
20,000(Bq/kg)
❶
0∼2cm
2∼4cm
4∼6cm
6∼8cm
8∼10cm
10∼12cm
12∼14cm
飯舘村の隣接地区のため池の測定例
12
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
❸
❺
(Bq/kg)
100,000
大豆の子実の移行係数は、品種によって1.9倍ほどの違いがありました
(2013年栽培)。
大豆の子実の移行係数
子実の移行係数
0.014
0.012
0.010
0.008
0.006
0.004
0.002
0
A
B
C
D
E
F
G
H
I
「移行係数」
土のセシウムの濃度と植物のセシウム濃度の比を「移行係数」といいます。
そばのセシウム
そばの実の移行係数は、品種によって1.7倍ほどの違いがありました
(2013年栽培)。
そばの実の移行係数
実の移行係数
稲以外の農作物
大豆のセシウム
0.018
0.016
0.014
0.012
0.010
0.008
0.006
0.004
0.002
0
A
B
C
D
E
F
G
H
I
さつまいものセシウム
葉と茎のセシウム濃度が高く、
いものセシウムは10Bq/kg 未満でした(2013年栽培)。
さつまいも部位別
(Bq/kg)
600
500
400
300
200
100
0
いも
茎
葉
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
13
セシウムと動植物
樹木の中のセシウム調査(2014 年 10 月∼ 12 月)
樹皮のセシウム濃度は10,000Bq/kg 以上でした。
木部からも100 ∼ 2,000Bq/kg のセシウムが検出されました。
セシウム濃度は、樹木の場所、木の種類などによって異なりました。
木部のセシウム濃度は、周辺が高いものと、中心が高いものがありました。
違いの理由はまだわかっていません。
カラマツ
0
(Bq/kg 乾燥重量)
1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 10000 11,000 12,000 13,000 14,000 15,000
0
(Bq/kg 乾燥重量)
1,000 2,000 3,000
樹皮北
辺材北
心材外北
心材内北
心材内南
心材外南
辺材南
樹皮南
スギ
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
ヒノキ
樹皮北
辺材北
心材外北
心材中心北
心材中心南
心材外南
辺材南
樹皮南
14
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
測定サンプル(カラマツ)の写真とイメージングプレート画像
イメージングプレート画像は、測定サンプルから出る放射
線で感光させた画像。樹皮の放射能が高いことがわかる。
0
(Bq/kg 乾燥重量)
1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000
イノシシのセシウム調査(2012 年と2013 年)
セシウムは特定の臓器だけに集中することなく、全身に分布しています。
筋肉のセシウムが最も濃度が高く、
10,000Bq/kg以上でした(2012 年の調査)。
捕獲したイノシシの平均セシウム濃度の比較
2012 年(5 頭)
0
2013 年(2 頭)
(Bq/kg)
2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
0
卵巣
脳
骨
胃の内容物
甲状腺
肝臓
胃の内容物
副腎
副腎
肺
卵巣と子宮
血液
血液
大腸
膵臓
甲状腺
精巣
膵臓
脳
脾臓
大腸
心臓
膀胱
小腸
肝臓
胃
肺
精巣
脾臓
膀胱
小腸(内容物有)
小腸
腎臓
舌
胃
筋肉(前肢)
心臓
筋肉(後肢)
舌
(Bq/kg)
2000 4000 6000 8000
大腸内容物
腎臓
筋肉(後肢)
筋肉(前肢)
イノシシは広い範囲を移動しています。
このデータは、イノシシが捕獲された場所を代表しているわけではありません。
捕獲した頭数が少ないので、このデータで2012 年と2013 年の比較をすることはできません。
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
15
セシウムと動植物
野草とコケのセシウム
野草の種類と生えている場所によってセシウムの濃度が異なります
(500Bq/kg ∼ 8,000Bq/kg程度)。
2012年と2013年を比較すると、種類と場所によりますが、
全体的な傾向として約半分程度に下がっています。
2012 年の野草のセシウム濃度
0
ムラサキツユクサ
ネジリ草
オモト
ユウガギク
タラの芽
ワラビ
クローバー
ヨモギ
アキノウナギツカミ
シドケ(1)
ツルニチニチソウ
トラノオ
ミョウガ
ヒメジオン
マツバギク
ツユクサ
イヌホオズキ
ホオズキ
シドケ(2)
コンフリ
スギナ
オオバコ
ヤブカンゾウ
2013 年の野草のセシウム濃度
(Bq/kg 乾燥重量)
2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
0
コゴミ
フキノトウ(1)
オモトの実
オモト
タラの芽
ウド
ヒマワリ
イチリンソウ
フキノトウ(2)
ヨメナ
フキノトウ(3)
ミョウガ
ヒメオドリコソウ
フヨウ(赤)
イヌホオズキ
ツルニチニチソウ
行者ニンニク
ヤブカンゾウ
タニソバ
(Bq/kg 乾燥重量)
2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
シドケ(1)とシドケ(2)、フキノトウ(1)とフキノトウ(2)とフキノトウ(3)は採取場所が異なります。
オモト
オモトの実
ムラサキツユクサ
コケのセシウム濃度は野草と比較して10倍から100 倍以上高い。
コケ1
0
16
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
40,000
(Bq/kg 乾燥重量)
80,000 120,000
コケ2
0
2012 年 11 月
2012 年 11 月
2013 年 6 月
2013 年 6 月
2014 年 6 月
2014 年 8 月
40,000
(Bq/kg 乾燥重量)
80,000 120,000
住居の線量
家の中と家のまわりの線量の傾向
家の中よりも外の方が線量が高い傾向があります。
家の中では高い場所の方が線量が高い傾向があります。
家の外では地面に近い場所の方が線量が高い傾向があります。
部屋の中心の放射線量
家から離れた地点の放射線量
(μSV/h)
2.5
(μSV/h)
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
0
1階
0
2階
床からの高さ
0m
1m
家から1m地点 家から2m地点 家から3m地点
地面からの高さ
2m
0m
1m
2m
除染の効果
住居除染の前後で測定して比較した結果、
線量が全体的に4割∼ 5 割程度下がります。
高い場所ほど線量が高い傾向は残ります。
2階南側
2階中央
床からの高さ
床からの高さ
2m
床からの高さ
2m
2m
1m
1m
1m
0m
0m
0
2階北側
0.5
1
1.5
(μSv/h)
0m
0
0.5
1
1.5
(μSv/h)
0
0.5
1
1.5
(μSv/h)
除染前
除染後
1階南側
1階中央
床からの高さ
1m
1m
0m
0
2m
床からの高さ
2m
床からの高さ
2m
1階北側
1m
0m
0.5
1
1.5
(μSv/h)
0m
0
0.5
1
1.5
(μSv/h)
0
0.5
1
1.5
(μSv/h)
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
17
しゃへい
放射線の遮蔽
放射線をさえぎる
放射線から人体を守る方法の一つは放射線をさえぎることです。
放射線をさえぎることを「遮蔽」
(しゃへい)といいます。
放射性セシウムがはき出す放射線のうち、ガンマ線は物質を通り抜ける
力が強く、なかなか遮蔽することができません。
ガンマ線をよく遮蔽するための条件は、
1.遮蔽するための壁が厚いこと
2.遮蔽する物質の密度(体積当たりの重さ)が大きいこと、です。
アルミニウム
鉛(密度が大きい)
暑さ約1cmで4分の1に
遮蔽を厚くする
厚さを2倍にすると半分に
ガンマ線は土や水でも遮蔽されます。
地中や水の底から飛び出すガンマ線は、
低い角度で飛び出すものほど遮蔽の効果で弱くなります。
家の中で、高い場所ほど線量が高い傾向があることの
理由のひとつではないかと考えられます。
高い角度で飛ぶ放射線は
すぐに土から飛び出す
低い角度で飛ぶ放射線は
土の中の距離が長い
18
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
セシウムは気体ではなく、
空気中を飛んでいる細かい「チリ」についています。
空気中のチリを集めて放射能を精密測定すると、
空気中を飛んでいるセシウムの放射能がわかります。
フィルター
空気中のチリ
空気
大気中のチリを集める装置
外の空気をフィルターでろ過して細かいチリを集める。
フィルターの放射能を精密測定する。
フィルター
(灰色の部分が集められたチリ)
放射能(空気1m3 あたりのベクレル)
空気
空気中に含まれるセシウム
飯館大気中の放射性セシウム濃度の変化
(Bq/m )
0.006
(セシウム134とセシウム137の和)
3
爆弾低気圧の影響か
役場での工事
佐須
0.005
役場
0.004
佐須での除染
0.003
広域での放射能飛散
0.002
0.001
0.000
1
3
5
7
9
11
1
3
5
7
9
11 1
3
5
7
9
11 1
3
佐須行政区と伊丹沢行政区(村役場前)の2か所で測定しています。
どちらか1か所が変化しているのは、狭い範囲の変化です(除染作業で舞い上がったチリなど)。
2か所両方で同じように変化している場合は、広い範囲の変化です(2013 年8 月の山は、原発事故現
場のがれき撤去作業でチリが舞い上がったときのものと考えられます)。
この測定結果から、飯舘村の空気を吸い込むことによる内部被ばくは、年間 0.001ミリシーベルト以
下と推定できます。
飯舘村の環境は、
いまどうなっているのか。
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(村内放射線モニタリング事業業務委託)
このパンフレットは、特定非営利活動法人ふくしま再生の会による調査で得られたデータと
知見をまとめたものです。調査・分析・制作にあたっては、多数のボランティア参加者と下記
の協力研究者の協力を得ました。
調査・企画・編集: 特定非営利活動法人 ふくしま再生の会
東京事務所:〒166-0001 東京都杉並区阿佐谷北1-3-6 2階
電話 03-6265-5850 FAX03-6265-5859
Email:[email protected]
保原事務所:福島県伊達市保原町3-8-1-605
監 修:
溝口 勝 (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
協 力:(いぐね)
辻 修 (帯広畜産大学教授)
(土壌)
西村 拓 (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
大澤 和敏 (宇都宮大学農学部准教授)
(ため池)
根本 圭介 (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
(大豆・そば)二瓶 直登 (東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)
(樹木)
益守 眞也 (東京大学大学院農学生命科学研究科講師)
(イノシシ) 田野井慶太朗(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)
内田 和幸 (東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)
土居 千代 (東京大学大学院農学生命科学研究科事務補佐)
(測定・分析)広瀬 農 (東京大学大学院農学生命科学研究科助教)
小林 奈通子(東京大学大学院農学生命科学研究科助教)
サークルまでい(東京大学)
(空気)
土井 妙子 (国立環境研究所客員研究員)
田中 敦 (国立環境研究所主任研究員)
高木 麻衣 (国立環境研究所研究員)
(イラスト) 廣住 豊一 (三重大学大学院生物資源学研究科教務職員)
(写真)
田中 陵二 (公益財団法人相模中央化学研究所)
(制作協力) JST科学技術コミュニケーション推進事業
「復興農学による官民学連携協働ネットワークの構築と展開」
徳本 家康 (佐賀大学農学部助教)
西脇 淳子 (茨城大学農学部助教)
坂井 勝 (三重大学大学院生物資源学研究科講師)
渡辺 晋生 (三重大学大学院生物資源学研究科准教授)」
加藤 千尋 (弘前大学農学生命科学部助教)
宮本 英揮 (佐賀大学農学部准教授)