「里まち文化ステーション」 ~国見まるごとショーケース~

第6章
里まち文化ステーションの基本構想
テーマ・コンセプト
国見町の道の駅を核とした交流の場のテーマは次のとおりです。
テーマ
「里まち文化ステーション」
~国見まるごとショーケース~
■
■
■
町の宝ものと暮らしの知恵を
手わざを始めとした、里まち文化を
女性の力を活かして
『 発見 』
『 発展 』
『 発信 』
また、基本コンセプトは、次の5項目です。
1「くにみブランド」の構築と発信。人を呼び込む拠点
人が主役。農産物と加工品と知恵
3 女性力
4 雇用とコミュニティ・ビジネスの展開。「知恵」と「手わざ」の伝承
5 子どもたちとともに作っていく。そして引き継ぐ
2
1
「くにみブランド」の構築と発信。人を呼び込む拠点
人、食、生活文化、歴史、お祭り…。
国見町の魅力を「まるごと」交流の場に集め、ネーミング、パッケージング等のすべ
てに統一感を持たせた「くにみブランド」として発信し、町へ人を呼び込み、交流人口
の拡大を図ります。
また、他の道の駅、観光・物産協会等とのコラボレーションを図り、相互販売網を構
築します。
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★国見町の魅力
米
阿津賀志山防塁
阿武隈川
くだもの
桃源郷
粘土質土壌
米粉パン
国見の民話
農業の匠
古墳、遺跡群
しっとりした空気感
春日神社太々神楽
女性パワー
ピーチワイン
鹿島神社例大祭
2
義経
川内の野菜
国見焼
奥山邸
さば味噌煮
人
国見バーガー
桜のうた
義経コロッケ
豆腐
納豆 etc.
人が主役。農産物と加工品と知恵
国見町で生産される「米」、「くだもの」、「野菜」は、里まち文化ステーションの運営
の核となるものです。
そして、これらを生み出すのは、「人」です。人が主役となるゆえんです。
同じ志を持つ人々が集い、知恵を出し合い、出荷組合を組織し、品質管理を徹底し、
新鮮で安心な「くにみブランド」として提供します。
「米」、
「くだもの」については、店頭販売と併せ、インターネットでの販売も視野に
入れます。
また、出荷団体が耕作放棄地を活用し、組織的に、四季折々の「野菜」の少量多品種
生産の技術を確立することにも取り組むこととします。
また、試作段階の農産物加工品(6次化商品)の掘り起しを進めるとともに、ブラッ
シュアップを図ります。
加えて、伐採期を迎えている町産の木材を活用した木工製品や雑貨についても、関係
団体と連携し、商品化を図ることとします。
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女性力
里まち文化ステーションの運営に欠かせないのは女性たちです。
女性たちは2つの役割を担います。一つは商品・農産物を生産する者としての役割、
そしてもう一つは消費者としての役割です。
農家の女性は、子育てや家事をこなしながら、家族と同じ農作業に従事してきました。
しかし、農業収入のほとんどは家計の口座に振り込まれます。
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一方、地域ブランドを創造し、成功している道の駅等のほとんどは、地域の農家の女
性が支えています。農産物の生産・出荷、加工品の開発・製品化・製造・販売等に女性
が果たす役割は大です。日ごとの売り上げが自分の口座に振り込まれると、女性は自分
を実感できるようになります。
道の駅は、女性を元気にする
と同時に男性も元気にします。
そしてそれが地域を変えます。
また、女性に消費者としての
役割を期待するのは、家庭の中
で女性が消費決定の主導権を
持っているからです。
多くの既婚男性は、妻のネ
ットワークや提案によって行
動を共にし、日常の消費決定の主導権は女性にある場合が多いからです。
さらに、交流の場の物販関連施設では、ターゲットの一つに、今、最も購買力を持つ
団塊の世代を選定すべきです。
中でも、60 歳代前半の都市部に住む男女は大きなマーケットです。彼らはパソコンを
使いこなし、たくさんの情報をもとに、ネットでの商品購入も臆せずに行う、大きな行
動力を持っています。
そして、原発事故後の「ふくしまの農産物」に対する考え方も、20~30 歳代の子育て
世代とは明らかに異なります。
「おいしいのであれば、福島産であっても気にせず、購入
する」という消費者層でもあります。
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雇用とコミュニティ・ビジネスの展開
里まち文化ステーションは、新たな雇用の場を創出すべきです。
生産者として働くこと、農産物の加工品を製造すること、販売すること、子どもたち
の相手をすること、来訪者を案内すること…。
交流の場の商品販売、特に農産物の販売においては、
「市場」や「商店」のように客と
の対話・対面販売を基本とすべきです。単に商品を並べ、販売するのであれば、スーパ
ーマーケットとの差別化は図られません。生産者が農産物や加工品たちに込めた「思い」
を伝えることが「国見らしさ」を付加する一方、消費者は「商品の情報」がほしいので
す。対面で教えてもらえる情報を元に購入するからです。
旬の品々の調理の仕方、食べ方、良い農産物の見分け方等を伝えながら販売する、客
に町の良さを伝えながら販売する…。これを担うのは女性たちです。
また、テナント方式をとることが多い食堂や喫茶・軽食コーナーについても、自営方
式を採用し、メニュー決定、調理、接客等のすべてを国見の女性が、核となって担う方
策を検討すべきです。
加えて、元気な高齢者の雇用の機会も創出することも重要です。高齢者が持つ「知恵」
と「手わざ」は、この地で暮らしてきた先人たちからの贈り物です。そして、私たちが
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これを受け継ぎ、これから 100 年後の子どもたちに伝える役目を担います。
5
子どもたちとともにつくる。そして引き継ぐ
放射能の心配をしながら暮らすことは、
子どもたちと親たちの大きな悩みごとです。
除染を着実に進めながらも、今、戸外で
元気に遊べる環境整備を進めることは、私
たちの責務です。
都市型公園がない国見町にあって、子ど
もたちが安心して遊べる安全な場所を交流
の場に設けることは、重要なことです。子
どもたちと一緒に親子が楽しい時間を過ご
せる場所…。子どもを連れた母親同士で話ができる場所…。そのような場所を設定すべ
きです。
子どもたちは、私たちの未来です。他の地域で暮らす子どもたちと同じことが気兼ね
なくできる場所を設け、私たちの思いや願い、この地に伝わる生活文化を伝え、次の世
代に引き継いでもらう素地づくりの場になればと思います。
子どもも町民の一人であり、子どもを町民として尊重し、子どもを育てたくなるまち
づくりにつなげていきます。
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里まち文化ステーションの基本機能
コンセプトに基づく施設の基本機能は、次のとおりです。
里まち文化ステーション
「道の駅」機能
○休憩
「交流」機能
○食
ゾーン
のゾーン
○情報発信
ゾーン
地元食材を活用する食堂(レストラン)、
○地域振興
ゾーン
喫茶・軽食機能
○地域連携
ゾーン
○避難所・シェルター
○物販
ゾーン
ゾーン
農産物・農産物加工品、名産品、
オリジナル雑貨販売機能
○農業体験
ゾーン
○子ども・親の
ゾーン
遊びと学びの場(屋内、屋外)
、
児童館的機能
○コミュニティ・ビジネス
ゾーン
農産物6次化施設・工房機能
○健康増進
ゾーン
藤田病院との連携、軽運動施設機能
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○集会・会議室
ゾーン
○屋外イベント
ゾーン
ゾーニングと機能の内容
多くの道の駅には、
「何となく」飲食、産直、トイレ、イベント等のスペースが設けられ、
訪れた人たちは「ぼんやり」した印象で施設を後にすることがあります。
里まち文化ステーションの機能すべてにコンセプトを反映することが、「くにみブランド」
の創設につながります。
特にターゲットとした女性に配慮すべきことは、次の9項目です。
1建築・外観・ランドスケープ
女性が行きたくなる、口コミしたくなる、リピートしたくなる演出。建物と周辺環境
の演出。農業を主軸にしたムード、イメージを大切にする
2食のゾーン
女性が飲食シーンに求める五感訴求型の演出
空間、メニュー、食器、従業員制服など、見えるものすべてに女性視点を活かす
3 物販ゾーン
「国見ならでは」の付加価値商品づくり。農産物、加工品、商店の名産などの良さを
時代のニーズに沿って演出を。可能な範囲でチャレンジ・ショップの設置も
4 農業体験ゾーン
豊富な農産物を購入するだけではなく、生産工程を体験できる演出。ランドスケープ
を活かし、町内外の子どもから高齢者までを対象にした施設配置、演出
5 子ども・親のゾーン
屋外・屋内それぞれに設けるべき。屋内施設は、児童館的な機能も付加。他の親子と
の語らいや親子の休息の場としての機能も
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6 コミュニティ・ビジネスゾーン
若い世代ばかりではなく、高齢者の「知恵」と「手わざ」を存分に発揮できる場を提
供。消費者へ「情報」が届く仕組みを。また、仕事で地域の課題も解決
7 健康増進ゾーン
藤田総合病院と連携し、予防医療体制の充実を図るコーナーの設置。予防教室や交流
の場を拠点にしたスポーツイベント等の開催も可能となる施設構成に
8 集会・会議室ゾーン
さまざまな団体が活用できる集会施設の設置。災害発生時には、シェルター施設とし
ても活用可能に
9 屋外イベントゾーン
女性、子どもを中心とした参加型のイベントや物産展、環境・美・健康・スポーツな
ど娯楽イベントに対応。雨天時開催にも配慮を。
10 休憩ゾーン(おもてなしトイレ)
「清潔・安心・機能」+α(付加価値「国見らしさ」
。時代のニーズ、感性、心地よさ)
ハイセンスな内装、桃源郷の演出、暖房、着替えスペース、身障者への配慮、口コミ
への訴求力
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全体計画
里まち文化ステーションのテーマとコンセプトを実現するための、全体に関わる項目につ
いては、次のとおりとします。
■施設配置
1 「道の駅機能」と「交流機能」を併せた施設構成とします。
2 建物は、分散させることなく、1つに集約します。
3 幅広い年齢層、地域の人々が集える屋外イベントスペースを設けます。
4 国道4号から一目でわかる施設とし、建物自体がサインや看板になるような、これま
での道の駅を超えた、新鮮で「主張するデザイン」とします。
5 施設の配置や設計の基本を「女性視点」に置き、施設全体に行き渡らせます。
6 自然や地形、風景、既存の周辺環境に配慮した、人にも自然にも「やさしい」施設配
置とします。
7 施設のいたるところで、国見町の基幹産業である「農業」を感じることができる施設
配置とします。
8 果樹ガーデン、野菜ガーデン、水耕栽培施設など、新しい農業を体感するスペースを
設けます。
9 施設の一部に果樹、野菜、草花木々の展示と喫茶・飲食がコラボレーションしたエン
ターテインメント施設の設置も考慮します。
■動線
1 物販施設、レストラン、加工施設、休憩施設、屋内外子ども広場、農業体験施設は、
すべて連係し、どこからも出入りできる動線とします。
2 農業体験施設の果樹ガーデンは、どのゾーンからも見えるようにします。
3 子どもから高齢者、外国の利用者をも対象とするため、ユニバーサルデザインを導入
することはもちろん、すべての人が利用しやすい配慮をします。
4 国道4号の2か所に横断歩道橋を設置し、商店街からも歩いて施設に入ることができ
るものとします。また、この歩道橋は、施設のサイン、看板も兼ねるものとします。
■建物
1 木造、一部2階建てとします。
2 国見産の木材をふんだんに使用し、明るく、温かい、省エネルギーに配慮した建物と
します。
3 施設全体に「農業」を感じさせるものの、
「女性視点」と「センスの良さ」を備えたデ
ザインとします。
4 太陽光、風力、バイオマス等の再生可能エネルギー設備導入の可能性が高い建物とし
ます。
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■その他
1 無料無線LANシステムを備えます。
2 ペットを連れた利用者へも配慮した施設を検討します。
トイレ
清潔、快適、安心が基本。ここにも女性の感性、満足度を取り入れます。トイレのイメー
ジや満足度は里まち文化ステーションの集客を左右します。
■配置、満足度
1 施設の各ゾーンに対して、利用しやすい配置とし、十分な設備とします。
2 明るく清潔で、自然光を取り入れ、開放的な雰囲気を持つトイレとします。
3 男性用、女性用、障がい者用それぞれにベビーベッド備え、親子へ配慮します。
4 障がい者用トイレは、オストメイト対応とします。
5
女性用のトイレは華やかさを持たせ、着替えが可能なパウダールームを併設し、リラ
ックス、リフレッシュできる機能を持たせます。
6 電灯は全てセンサー機能を備え、蛇口はセンサー付きとします。
7 24時間使用することができる有料のシャワールームの設置を検討します。
駐車場
女性や高齢者ドライバーに配慮します。また、多くの人が快適に利用できるような駐車場
の配置、動線とします。
■規模
1 大型車、大型バスを含め十分な規模の駐車場を確保します。
2 国道4号と県道から容易に入れるような配慮をします。
3 ランドスケープ、施設からの景観を阻害しない配置にします。
■その他
1 障がいを持つドライバーへの配慮をします。
2 施設内で買った商品を車に積み込みやすいように、ゆとりのある配置とする。
3 駐車場の一角にオートキャンプ場(有料)
、レンタルバイク(有料)施設の設置を検討
します。
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物販、加工販売
国見の良さを伝え、国見のセールスを行うために、良質な地元農産物を中心とした販売ゾ
ーンを設けます。
■特産品供給施設
1 地元産の新鮮な果樹、野菜や国見らしい加工品を供給します。
2
農産物や加工品の安全、安心をアピールするため、生産者の情報を積極的に発信しま
す。
■配置
1
施設のメイン。農産物直売所、加工品販売及びレストランは、連結、連携した施設と
します。
農業体験施設
施設全体が、
「農」を感じられる構成とします。
■特産品供給施設
1
施設内には、桃等の果樹及び野菜の栽培施設を設け、水耕栽培、土壌(地植)栽培か
ら、果樹の受粉、摘果収穫作業、野菜の栽培、手入れ、収穫を、品種ごとに、季節ごと
に体験できる施設とします。
2 体験現場は、各施設から見ることができるようにします。
3
施設内は太陽の光を受け入れながら、温度、湿度等をコンピュータ管理し、施設を訪
れた全ての人の目を引く。
■農産物・加工品販売
1
商品の加工方法や材料を見せることで、安心な空間を確保し、食の安全性をアピール
します。
※
加工場の手元は見えないが、食材料、ユニフォームを着て取り組んでいる姿が見
える。
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レストラン・農業体験
■レストラン
1 他の施設、機能との連携により、集客力を確保します。
2
心地良く食事が取れるように果樹、野菜の栽培ガーデンの景色が見え、風景を活かせ
る場所に配置します。
■農業体験施設
1
施設内には、果樹及び野菜の栽培施設があり、水耕栽培、土壌(地植)栽培から、果
樹の受粉、摘果収穫作業、野菜の栽培、手入れ、収穫を、品種ごとに、季節ごとに体験
ができる。その体験現場は、各施設から見ることができるようになっている。
2 施設は太陽光を受けて、温度、湿度等はコンピュータで管理されています。
3
野菜は常に最良の状態のガーデンに相応しい形になっていて、道の駅を訪れた全ての
人の目にとまるような工夫をします。
子ども施設
■配置
1 屋内と屋外の2つを設けます。
2
屋外の施設、農業体験施設とバーベキュー施設を合わせて子供の広場の区画として計
画します。
■屋内・屋外施設、児童館機能
1 国見産の木をふんだんに使い、木の香り漂う落ち着いた内装とします。
2
ロッククライミング、トランポリン、縄上り施設、ロープづくりのブランコなどで遊
ぶことができる施設とします。
3 国見産の木を使用した積み木、木を使った工作室を備えます。
4
屋内、屋外の野菜栽培施設では、種植えから収穫までの体験ができ、野外のバーベキ
ュー施設では、収穫した野菜がその場で食べることができ、国見産の農産物を直に食事
することができる施設とします。
5
屋外施設には、固定型の遊具は少なくし、白、ピンクのクローバーに覆われ、季節の
花も咲き、シロツメクサの花飾り、四葉のクローバー探し等、遊ぶことのできるような
「広場」
、
「原っぱ」を提供します。
6 農業以外に、土に触れる体験ができる「場」にします。
7
屋内施設には、児童館機能を持つ施設も併設します。工作、読み聞かせなどが可能な
施設です。
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イベントスペース、会議室等
さまざまなイベント開催が可能なイベントスペースを設置します。
物を売る、物を買うばかりではなく、人の交流を目指します。
■配置・機能
1 国道からアピールでき、特産品供給施設との連携を図ります。
2 雨、雪の影響を考慮した施設とします。
3 町民等が利用できるコミュニティ施設(会議室等)が設置されている。
4 展示会、ミニコンサートなどが開催できるコンベンション施設との連携を図ります。
5
体験農園と連携しての収穫した野菜等を調理できる施設があり、地域住民、施設利用
者、大人と子供のための体験実習機能も備えます。
情報発信施設
活気ある情報コーナーとするため、特産品供給、屋内栽培ガーデンなどと連携、一体化し
た施設とします。
防災機能
1
施設には防災機能施設を付加し、国道4号の利用者、地域住民の一部もカバーできる
機能を持たせます。
2 施設は、防災の緊急物資格納機能を持ちます。
3 駐車場の一部はヘリポートに変わります。
4 公立藤田総合病院との連携もできており、定期で連携しての防災訓練が行われている。
5
緊急用物資の集積場としての機能も持っており、防災に関する施設として計画されて
いる。
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