末梢小型非小細胞肺がんに対する縮小手術の有用性を検証する研究

研究課題:末梢小型非小細胞肺がんに対する縮小手術の有用性を検証する研究
課題番号:H22-がん臨床-一般-024
研究代表者:順天堂大学医学部呼吸器外科 教授
鈴木 健司
1. 本年度の研究成果
本研究は二つの臨床試験からなる。
JCOG0802
第三相試験(非劣性)
1100 例 3 年
5年
JCOG0804
第二相試験
6年
無再発生存期間
330 例
10 年
全生存期間
いずれも多施設共同前向き試験であり、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)と WJOG(NPO
法人西日本がん研究機構)のグループ間共同研究(intergroup study)として行う。研
究代表者は試験全体の進捗状況を把握し、研究分担者からの症例集積を奨励する。対象
は以下の症例である。1)胸部単純写真と造影胸部 CT(conventional)のいずれかも
しくは両方で肺癌が疑われる(術前組織学的診断、細胞学的診断の有無は問わない)。
2)胸部 CT にて主病巣の最大径 2cm 以下かつ臨床病期 N0 と診断。3)JCOG0802 では
胸部薄切 CT 上での画像的浸潤癌(充実性成分の径>腫瘍径の 25%)
、JCOG0804 では画
像的非浸潤癌(充実性成分の径≦腫瘍径の 25%)
。4)病巣の中心部が肺野末梢(肺野
外套 3 分の1)に存在。5)薄切 CT 画像にて主病巣径の少なくとも 1 方向の計測が可
能。6)20 歳以上 80 歳未満である。7)肺葉切除可能であると判断される。8)試験
参加について充分な説明後、患者本人の自由意志により文書で同意が得られている。
JCOG0802 では各群 515 例。標準治療である肺葉切除の 5 年生存率を過去のデータから
90%と見込み、縮小切除のそれが肺葉切除より劣らないことを証明するため非劣性の許
容域を 5%と設定した。α=0.05(片側)、β=0.20 とし、登録期間 3 年、観察期間を登
録終了後 5 年とした場合、1群 515 例が必要となる。若干の不適格症例や追跡不能例を
見込んで全体で 1100 例と設定した。そのうち 2010 年 10 月現在で 152 例が登録された。
JCOG0804 では閾値 5 年無再発生存割合を 95%、期待 5 年無再発生存割合を 98%、α片側
0.05、検出力を 90%以上とし、二項分布に基づく正確(exact)な信頼区間を求めると
した時の必要適格例数は 311 例となる。不可避的に発生するであろう術中に判明する不
適格例等を 5%程度見込み、予定登録数を 330 例とした。そのうち 2010 年 10 月の時点
で 232 例が登録されており、JCOG0804 では大幅な予定登録数以上の症例が登録されて
いる。
3.研究成果の意義及び今後の発展性
JCOG 肺がん外科グループ 32 施設に加えて、WJOG53 施設とのグループ間共同研究
(intergroup study)とする。先行する JCOG0201 では 18 ヶ月で 490 名の 2cm 以下の肺
腺癌が登録された。同じペースで両試験への登録が得られれば合計 1430 例の登録は 3
年間で集積可能であるが、JCOG0802 はランダム化試験であり JCOG0201 よりも同意取得
は困難であると予想される。JCOG0804 では対象を腺癌に限定していないため対象患者
が増える要素もあるが、JCOG 単独では短期間での患者集積達成は困難と考え、WJOG と
の intergroup study として実施することとした。2cm 以下の肺癌患者は登録予定全施
設で年間約 1700 名ある。同意取得割合を 20-30%とすると、年間約 400 名の患者登録が
見込まれ、両試験とも登録期間は約 3 年を要すると見込んでいる。今後ますますの症例
を登録していく予定である。
4.倫理面への配慮
参加患者の安全性確保については、適格条件やプロトコール治療の中止変更規準を厳し
く設けており、試験参加による不利益は最小化される。また、「臨床研究に関する倫理
指針」およびヘルシンキ宣言などの国際的倫理原則に従い以下を遵守する。
1)研究実施計画書の IRB 承認が得られた施設のみから患者登録を行う。
2)すべての患者について登録前に充分な説明と理解に基づく自発的同意を本人より文
書で得る。
3)データの取り扱い上、患者氏名等直接個人が識別できる情報を用いず、かつデータ
ベースのセキュリティを確保し、個人情報(プライバシー)保護を厳守する。
研究の第三者的監視:JCOG(Japan Clinical Oncology Group)は厚生労働省がん研究
助成金指定研究 6 班(20 指-1~6)を中心に、同計画研究班および厚生労働科学研究費
がん臨床研究事業研究班、合計 33 研究班の任意の集合体であり、JCOG に所属する研究
班は共同で、Peer review と外部委員審査を併用した第三者的監視機構としての各種委
員会を組織し、科学性と倫理性の確保に努めている。本研究も、JCOG のプロトコール
審査委員会、効果・安全性評価委員会、監査委員会、放射線治療委員会などによる第三
者的監視を受けることを通じて、科学性と倫理性の確保に努める。
5.発表論文
1. Suzuki K, Koike T, Asakawa T, et al. A prospective radiological study of
thin-section computed tomography to predict pathological non-invasiveness in
peripheral clinical IA lung cancer (JCOG0201). J Thorac Oncol (in press).
2. Zhou Q, Suzuki K, Anami Y, et al. Clinicopathologic features in resected
subcentimeter lung cancer--status of lymph node metastases. Interact
Cardiovasc Thorac Surg 2010; 10(1):53-7.
3. Nakayama H, Okumura S, Daisaki H, Kato Y, Uehara H, Adachi S, Yoshimura M,
Okada M. Value of integrated positron emission tomography revised using a
phantom to evaluate malignancy grade of lung adenocarcinoma: a multicenter
study. Cancer 111, 3170-7, 2010.
4. Shigematsu H, Yoshida K, Sanada Y, Osada S, Takahashi T, Wada Y, Konishi K,
Okada M, Fukushima M. Rapamycin enhances chemotherapy-induced cytotoxicity
by inhibiting the expressions of TS and ERK in gastric cancer cells. Int J
Cancer 126, 2716-25, 2010.
5. Kawachi R, Watanabe S, Asamura H. Clinicopathological Characteristics of
Screen-Detected Lung Cancers. J Thorac Oncol., 4:615-619,2009.
6. Watanabe S, Suzuki K, Asamura H. Superior and basal segment lung cancers in
the lower lobe have different lymph node metastatic pathways and prognosis.
Ann Thorac Surg., 85:1026-31,2008.
7. Yoshino M, Suzuki M, Tian L, Moriya Y, Hoshino H, Okamoto T, Yoshida S, Shibuya
K, Yoshino I. Promoter hypermethylation of the p16 and Wif-1 genes as an
independent prognostic marker in stage lA non-small cell lung cancers. Int
J Oncol.2009;35(5):1201-1209
8. Yoshida S, Yoshino I.
Surgical treatment for lung cancer in the elderly
Nippon Ronen Igakkai Zasshi. 2009;46(4):317-319
9. Shimoyama T, Yoshiya K, Yamato Y, Koike T, Honmma K. Long-term survival after
removal of a malignant peripheral sheath tumor originating in the anterior
mediastinum. General Thoracic and Cardiovascular Surgery 2009; 57:310-4.
10. Yukitoshi Satoh, Rira Hoshi, Takeshi Horai, Sakae Okumura, Ken Nakagawa,
Yuichi Ishikawa, Satoshi Miyata Association of Cytologic Micropapillary
Clusters in Cytology Samples with Lymphatic Spread in Clinical Stage I Lung
Adenocarcinomas. Lung Cancer, 64:277-281,2009
11. H. Saji, K. Furukawa, H. Tsutsui, M. Tsuboi, S. Ichinose, J. Usuda, T. Ohira,
N. Ikeda, Outcomes of airway stenting for advanced lung cancer with central
airway obstruction. Interact Cardiovasc Thorac Surg 11 (2010) 425-428.
12. H. Saji, M. Tsuboi, J. Matsubayashi, K. Miyajima, Y. Shimada, K. Imai, Y. Kato,
J. Usuda, N. Kajiwara, O. Uchida, T. Ohira, T. Hirano, K. Mukai, H. Kato, N.
Ikeda, Clinical response of large cell neuroendocrine carcinoma of the lung
to perioperative adjuvant chemotherapy. Anticancer Drugs 21 (2010) 89-93.
6.研究組織
① 研 究 者 ②分 担 す る
研 究 項 目
名
鈴木
③最 終 卒 業 校 ・
④所属 研究機関
⑤ 所 属研
卒業年次・学位
及び現在の専門
究
及び専攻科目
機 関に
(研究実施場所)
お
局所早期非小細胞肺 防衛医科大学・平成 2 順天堂大学医学部付属
教授
健司
がんの標準的治療・術 年卒・医学博士・呼吸 順天堂医院・呼吸器外科
式の確立
器外科
研究グループ代表・研
究事務局・研究総括
岡田
渡邉
吉野
小池
守人 末梢小型非小細胞肺 神戸大学大学院医学研 広島大学・呼吸器外科
がんに対する縮小切 究科・平成 7 年卒・医
除の第三相試験・WJOG 学博士・胸部外科
研究代表
末梢小型非小細胞肺 金沢大学医学部大学 国立がんセンタ-中央
俊一
がんの縮小手術の妥 院・平成 7 年卒・
病院・呼吸器外科
当性研究・研究分担者 医学博士・呼吸器外科
学,
末梢小型非小細胞肺
九州大学大学院医学研
千葉大学大学院、医学研
一郎
がんの縮小手術の妥 究科・平成 4 年卒・医 究院・胸部外科学
当性研究・WJOG 側研 学博士・胸部外科学
究代表
輝明 末梢小型非小細胞肺 新潟大学医学部・昭和 新潟県立がんセンター
がんの縮小手術の妥 48 年卒・医学博士・外 新潟病院・呼吸器外科
当性研究・研究分担者 科
教授
肺科医長
教授
臨床部長
末梢小型非小細胞肺 筑波大学医学専門学 癌研究会有明病院・呼吸 呼吸器外
がんの縮小手術の妥 群・昭和 58 年・呼吸器 器外科
科部長
当性研究・研究分担者 外科学
奥村
栄
近藤
晴彦 末梢小型非小細胞肺 東京大学医学部医学 静岡県立静岡がんセン
がんの縮小手術の妥 科・昭和 56 年卒・医学 ター・呼吸器外科
当性研究・研究分担者 博士・呼吸器外科
呼吸器外
科部長
東山
聖彦
末梢小型非小細胞肺 大阪大学医学部・昭和 大阪府立成人病センタ
がんの縮小手術の妥 55 年卒・医学博士・呼 ー・呼吸器外科
当性研究・研究分担者 吸器外科
主任部長
中山
吉田
坪井
佐治
中嶋
吉村
治彦 末梢小型非小細胞肺 群馬大学医学部大学・ 神奈川県立がんセンタ
がんの縮小手術の妥 昭和 57 年卒、医学博 ー・呼吸器外科
当性研究
士・呼吸器外科
研究分担者
純司 末梢小型非小細胞肺 東京大学医学部・昭和 国立がんセンター東病
がんの縮小手術の妥 59 年卒・医学博士・胸 院・外来部呼吸器科
当性研究
部外科学
研究分担者
正博 末梢小型非小細胞肺 東京医科大学医学部・ 神奈川県立がんセンタ
がんに対する縮小切 昭和 62 年卒・医学博 ー・呼吸器外科
除の第三相試験・JCOG 士・外科
研究事務
末梢小型非小細胞肺
東京医科大学大学院・ 東京医科大学外科学第
久
がんに対する縮小切 平成 7 年卒・医学博 一講座・呼吸器外科
除の第三相試験・JCOG 士・呼吸器外科
研究事務
隆 末梢小型非小細胞肺 東京医科大学・平成 6 大阪市立総合医療セン
がんに対する縮小切 年卒・医学博士・呼吸 ター・呼吸器外科
除の第三相試験・WJOG 器外科
研究事務
雅裕 末梢小型非小細胞肺 神戸大学医学部・昭和 兵庫県立がんセンタ
がんに対する縮小切 56 年卒・医学博士・呼 ー・呼吸器外科
除の第三相試験・研究 吸器外科
分担者
部長
医長
医長
講師
副部長
部長