カルボカチオンへの転位

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. カルボカチオンへの転位
ハロゲン化アルキルの脱ハロゲンイオンあるいはアルケンへのプロトン付加で生成した
アルキルカルボカチオンはより安定なカルボカチオンへ転位する傾向にあります(図 1.).
3720
H
CH3
H2C
CH
H
CH2
H1
CH3
+
H
C
H
CH C
+
HC
H
C C
2 +
CH3 3 H
CH3
HC
CH3
CH3
4 CH3
CH3
− X−
CH3
H2C
CH
CH3
H
C
CH3
X
図 1.カルボカチオンへの H やアルキル基の転位.上の例のようにカルボカチオンへは C
のほか H も移動する(1~4 の置換基が転位する可能性がある).転位反応を繰り返し最終的
にはもっとも安定なカチオン(多くの場合第三級カルボカチオン)となる(Saytsev 則を参
照).
ピナコール-
ピナコール-ピナコロン転位
OH
OH OH
CH3
C
C
H+
CH3
- H2O
CH3
C
+
C
CH3
CH3 CH3
CH3 CH3
OH2
pinacole
HO
CH3
CH3
H3C
- H+
CH3
O
CH3
C
C
CH3
CH3
pinacolone
CH3
図 1.ピナコール-ピナコロン転位の例1.
ピナコールは 1,2 ジオールの慣用名,ピナコロンは転位反応の生成物の慣用名です.脱離す
る OH 基と移動する CH とはアンチプリペラナーの配位関係にあることが必要要件です.
プロトン付加による-O H の脱離によるカルボカチオンの生成,カルボカチオンへのメ
チル基の移動,メチル基の移動に伴うカルボカチオンへの酸素原子の孤立電子対からの電
子の流入の3つの事象が同時に起こります.
3
+
2
次もピナコール-ピナコロン転位反応の例です
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CH3
OH
CH3
CH3
+
H+
OH
CH3
+
OH2
OH
O
OH
CH3
CH3
CH3
CH3
cis-diol
CH3
OH
OH
CH3
H+
+
OH
OH2
OH
+
CH3
CH3
CH3
CH3
- H+
O
CH3
CH3
trans-diol
図 2.ピナコール・ピナコロン転位の例 2.下の場合(trans 体)のように,移動する C 原
子はアンチプリペラナーであるため,大きな骨格の変化を伴う場合もある.
なお,転位するアルキル等の転位のしやすさは,カルボカチオンの安定性の順序,
C6H5 > R3C > R2CH > RCH2 > CH3>H
となります.
ジエノン-
ジエノン-フェノール転位,ジエノール-
フェノール転位,ジエノール-ベンゼン転位
ジエノン・フェノール転位:ジエノンを酸処理することでフェノール誘導体へ変化します.
R1
R1
R2
R2
R1
R2
R1
+
H+
OH+
O
ジエノン
R2
R2
+
H
+
-H
OH
R1
OH
OH
図 3.ジエノン-フェノール転位.
ジエノール-ベンゼン転位:ジエノールの酸処理でベンゼン誘導体となる反応をいいます.
R1
R2
R1
H
R1
- H2O
H
H+
H
OH
ジエノール
H
OH2+
図 4.ジエノン-ベンゼン転位.
R2
R2
R2
H
+
R1
- H+
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ファボルスキー転位
α-ハロケトン(ケトン基に直結する炭素にハロゲンがついた化合物)をアルカリで処理によ
る転位反応で,カルボン酸エステルを与える反応です.
O
O
Cl
−−
* C2 H5 O
- H+
H
O
Cl
*
−
* C2H5O
O OC2H5
−
CO2C2H5
−
O
H
*
*
CO2C2H5
*−
− Cl
このイオンは反応しない
H+
H+
図 4.ファボルスキー転位の例.
反応中間体としてシクロプロパノンを経ることは,ハロゲンと結合する炭素をラベルす
ることにより,カルボキシの α 位と β 位に同じ確率でラベルした炭素が現れることで示さ
れます.
3 員環生成の過程では,Cl の脱離に伴い生成したカルボカチオン部位にカボアニオンの
電子が移動し C-C 結合が形成されます.逆に,カルボアニオンの存在が Cl の脱離を容易に
するので,この反応は“カルボアニオン生成を伴う転位反応として分類する”という意見
もあります.
−
−