特定疾患療養管理料に関する実態調査結果

特定疾患療養管理料に関する実態調査結果
2015 年3月 17 日
京都府保険医協会・保険部会
A
特定疾患療養管理料の算定要件
医科診療報酬点数表(2008 年厚生労働省告示第 59 号、最終改定 2014 年3月5日)第
2章・第1部・医学管理等において、以下のように告示されています。
B000 特定疾患療養管理料
1 診療所の場合 225 点
2 許可病床数が 100 床未満の病院の場合 147 点
3 許可病床数が 100 床以上 200 床未満の病院の場合 87 点
注3 入院中の患者に対して行った管理又は退院した患者に対して退院の日から起算
して1月以内に行った管理の費用は、第1章第2部第1節に掲げる入院基本料に
含まれるものとする。
また、
「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」
(平成 26 年、
保医発 0305 第 3 号)別添1・第2章特掲診療料・第1部医学管理等において、以下のよ
うに通知されています。
B000 特定疾患療養管理料
(3) 第1回目の特定疾患療養管理料は、A000 初診料を算定した初診の日又は退院の日
からそれぞれ起算して1か月を経過した日以降に算定する。(後略)
以上の算定要件を根拠に、他の医療機関を退院した日から1か月以内に外来受診した再
診患者に対して、特定疾患療養管理料を算定したところ減点された、或いは、それが理由
で減点されたとしか思われない、という事例の相談が、多数寄せられています。
原則的に点数表は自院での取扱いを示しているため、京都府保険医協会は、上記の減点
は不当だと考えています。しかし、この取扱いは全国的なものとなっています。
一方、慢性疾患を有する患者の外来での管理は、その重要性を増すばかりです。医療・
介護サービス提供体制改革の是非はさておき、短期で退院する患者や、入退院を繰り返す
患者が今後ますます増加することが予想されます。
しかし、他の医療機関を退院した日から1か月以内に外来受診した再診の患者に特定疾
患療養管理料が算定できなければ、入院医療機関と外来を受け持つ医療機関の連携に支障
が生じることが懸念されます。
また、かねてから京都府保険医協会は、
「7種類以上の内服薬を投薬した場合の算定制限」
が、複数の慢性疾患を有し、病院を退院する患者、或いは入退院を繰り返す患者の外来で
の疾病管理、受診、服薬を阻害しているのではないかと考えてきました。
そこで、2014 年 12 月 15 日~2015 年1月9日、京都府保険医協会の会員であって内科
系の標榜科目がある診療所の管理者である方 1,230 人に対して、標記の実態調査を実施し
ました。回収数は 369 人、回収率は 30.0%でした。
-
1 -
B 回答者の標榜科目(単回答)
回答者(診療所)の主たる標榜科目は、80%が「内科」でした(図1)(分母は回収数
369)。
図1
標榜科目
1 内科
80%,294
2 神経内科
2%,8
3 心療内科
1%,4
4 呼吸器内科
2%,8
5 消化器内科
8%,31
6 循環器内科
7%,24
7 小児科
7%,24
8 精神・神経科
4%,15
0 無回答
3%,10
0%
20%
40%
60%
80%
100%
【編注】
本アンケート結果において、内科系とは、上記の選択肢にある専門科を指します。
また、質問は「一つだけ」選択することにしていたが、複数回答者がいたため、そのまま入力して
おり、合計 113%になっています。
C
特定疾患療養管理料算定患者の割合(単回答)
「特定疾患療養管理料を算定している患者は、継続して受診している患者の何%位か」
と質問したところ、
「50%以上 75%未満」が 31%、
「75%以上」が 30%、
「25%以上 50%
未満」が 21%でした(図2)。
図2
特定疾患療養管理料算定患者の割合
0
無回答
3%,9
1 いない
5%,20
2
5 75%以上
30%,109
3
25%以上
50%未満
21%,78
4
50%以上
75%未満
31%,116
-
2 -
25%未満
10%,37
D 他院退院後1か月以内の減点事例(単回答)
「他院を退院後、1か月を経過していないことを理由に、特定疾患療養管理料を減点さ
れた事例がありますか(それ以外に理由が考えられない事例を含む)」と質問したところ、
「ある」が 29%、「ない」が 56%でした(図3)。
図3
他院退院後1か月以内の減点事例
0
3 分か
らない
14%,53
無回答
1%,4
1 ある
29%,107
2 ない
56%,205
E
減点の基金・国保別
(1) 基金・国保の別(単回答)
他院退院後1か月以内の減点事例が「ある」と回答した方に、その患者は国保審査分か、
基金審査分かを質問したところ、
「国保分」が 63%、
「基金分」が3%、
「両方」が 33%で
した(図4-①)。
図4-①
0
減点の基金・国保別
無回答
2%,2
3 両方
33%,35
1 国保分
63%,67
2
基金分
3%,3
-
3 -
(2) 事前連絡の有無(単回答)
上記(1)の回答者に、審査支払機関からの事前連絡はありましたか、と質問したところ、
国保では、「あった」が 19%、「なかった」が 66%、「あった場合となかった場合がある」
が 12%でした(図4-②、分母は 102 人)。
また、基金では「あった」が 10%、「なかった」が 68%、「あった場合となかった場合
がある」が 11%でした(図4-③、分母は 38 人)。
図4-②
4
事前連絡の有無(国保)
0
分からない
2%,2
1 あった
19%,20
3 あった場合
となかった場合
がある
12%,12
2
図4-③
4
無回答
1%,1
なかった
66%,67
事前連絡の有無(基金)
0
分からない
8%,3
無回答
3%,1
1 あった
10%,4
3 あった場合
となかった場合
がある
11%,4
2
なかった
68%,26
-
4 -
F 退院後1か月以内の算定制限について(単回答)
全ての対象者に、
「特定疾患療養管理料の『退院の日から起算して1か月を経過した日以
降に算定する』取扱いについて、どう思いますか」と質問したところ、
「廃止すべきだ」が
50%、
「自院の入院に限るべきだ」が 31%、
「自院・他院関わらず、この取扱いのままで良
い」が 17%でした(図5)
。改善を求めている方が8割を超えることが分かりました。
図5
退院後1か月以内の算定制限について
0 無回答
3%,10
3
自院・他院
に関わらず
この取扱いの
ままで良い
17%,62
1
2 自院の入院
に限るべきだ
31%,113
廃止すべき
だ
50%,184
先の質問Dで「他院を退院後、1か月を経過していないことを理由に、特定疾患療養管
理料を減点された事例」が「ある」と回答した方に限ると、
「廃止すべきだ」が 55%、
「自
院の入院に限るべきだ」が 43%、
「自院・他院関わらず、この取扱いのままで良い」が2%
でした(図5-2)。98%の方が改善を求めています。
図5-2 退院後1か月以内の算定制限について
(減点を受けた方)
3 自院・他院
関わらず、この
取扱いのままで
良い
2%,2
2 自院の入院
に限るべきだ
43%,46
-
1
廃止すべき
だ
55%,59
5 -
G 廃止すべき、自院の入院に限るべきとした理由(複数回答)
特定疾患療養管理料の「退院後1か月以内の算定制限」を「廃止すべきだ」、「自院の入
院に限るべきだ」と回答された方に、その理由を質問したところ、
「外来での慢性疾患の管
理は当院が行っているから」が 86%、「病院・診療所の連携が損なわれるから」が 28%、
「慢性疾患を有する患者の外来受診を阻害するから」が 21%でした(図6。母数は 297)。
図6
廃止すべき、自院の入院に限るべき理由
1 外来での慢性疾患の管理は当院が
行っているから
2 慢性疾患を有する患者の外来受診を
阻害するから
3 病院・診療所の連携が損なわれるか
ら
4 入退院を繰り返す患者への診療意欲
を損なうから
86%,256
21%,61
28%,84
16%,49
5 医療機関の経営を圧迫するから
19%,56
6 その他
12%,35
0 無回答
2%,5
0%
20%
40%
60%
80%
100%
「その他」の意見としては、以下のものがありました。
①他医療機関の入院、退院を把握していない、情報提供を受けていない。
・他院の入院まで把握できません。
・当院からの紹介患者でない場合、退院日の連絡がないこともある。
・入院していたのを知らずに算定→減点。とはいかにも悪者扱いされている様。
・退院の報告がなければ、1か月過ぎたかどうか分からない。
・他医退院の日が分からないので困る。
・入院を知らなかった。例えば他の疾患で検査的入院。
・そもそも確認のしようがない(病院で算定したかどうか)。
・眼科など他科の疾患で入院していた場合。その事実を知らなかったケースあり。患者
が全て当方に教えてくれるとは限らない。知らずに請求することあり。
・本人の申告がなければ退院が分からない。
・本人が申告しない限り、入院していたかどうかが分からない。
・患者様の報告がない場合、他院で入院していたことすら、理解できていない場合もあ
りえます。
・慢性疾患以外の入院把握不能のことが多い。例えば高血圧で治療している患者が転倒
で整形に2~3日入院した場合、本人家族からも病院からも報告がなく、把握は不能。
・退院、入院等が不明な時もある。
・入退院の情報がなく、分からないことがあるから。
-
6 -
・他科入院は把握できない!
・他院に入院している事が分からない事もある(全く別の疾患の場合など)。
・いつ退院したか教えてくれるかどうか分からないから。
②整形外科、眼科等の内科的慢性疾患以外で入院している。
・特定疾患を取っている疾患以外の入院、また検査入院でも取れないのはおかしい。
・入院は内科ではなく、眼科白内障手術であった。
・整形外科など慢性疾患と関係のない入院の場合も減点された。
・他院の入院が必ずしも慢性疾患でない場合もあるから。
・他科の短期入院など、何も知らされていないことも多く、事実上管理不可。
・眼科、整形外科など、入院中に指導を受けていない。
・全く関係ない疾患での入院や、救急受診の際の念の為の1泊入院にも、適応される。
③その他
・そもそも初診もそうだが、「1か月以上」でないと算定不可の根拠が分からない。
・退院後の方がより注意深い管理が必要なのでは?
・紹介入院の退院ならば短期間(2~3か月のブランク)ならば継続診療として扱って
いる。(編注:初診として扱っていない、という意味と思われる)
・入院時に必ずしも全ての疾患を診ている訳ではないから。
・入院の理由は様々であり、算定要件が合理的とは考えられないから。
・種々のデメリットが見られる一方、メリットは医療費抑制のみ。
・特定疾患の指導を退院時にされた場合は算定不可と思うが、その場合は連絡すべき。
・同じ診療内容で退院後1か月以内と後で会計が違うのは患者さんが不審に思う。
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7 -
H 7種類以上の内服薬を投薬している患者(単回答)
全ての対象者に、
「特定疾患療養管理料を算定する患者について、7種類以上の内服薬を
投薬している患者はいますか」と質問したところ、「いる」が 72%、「いない」が 25%で
した(図7)。
図7
7種類以上の内服薬を投薬している患者
0 無回答
3%,10
2 いない
25%,92
1 いる
72%,267
I
薬剤料等が減額になっているか(単回答)
上記Hで、
「いる」と回答された方に、
「その患者は薬剤料、処方料、処方せん料が減額
になっていますか」と質問したところ、
「地域包括診療加算を届出していないので、全員減
額している」が 63%、
「同加算を届け出ているが、減額しない患者と減額する患者がいる」
が 18%、「同加算を届け出ているため減額しない」が 16%でした(図8①。分母は 267)。
図8①
0
薬剤料等が減額になっているか
1 地域包括診
療加算を届出、
減額しない
16%,44
無回答
3%,7
2 地域包括診
療加算を届出、
減額しない患者
と減額する患者
がいる
18%,49
3 届出してい
ないので、全員
減額している
63%,167
-
8 -
J 7種類以上となった理由(複数回答)
特定疾患療養管理料を算定する患者について、7種類以上の内服薬を投薬している患者
が「いる」と回答された方に、「7種類以上となった理由」を質問したところ、「加齢等に
より疾患が増え徐々に増えた」が 78%、「病院や他の専門医療機関から紹介されるたびに
増えていった」が 61%、
「入退院を繰り返すたびに増えていった」が 29%でした(図8②。
分母は 267)。
図8②
7種類以上となった理由
1 加齢等により疾患が増え徐々に増え
た
78%,208
2 入退院を繰り返すたびに増えていっ
た
29%,78
3 病院や他の専門医療機関から紹介さ
れるたびに増えていった
61%,163
4 初診の時から7種類以上の投薬が必
要だった
21%,55
5 その他
0 無回答
4%,12
0%,0
0%
20%
40%
60%
80%
100%
「その他」の意見としては、以下のものがありました。
・高血圧で3種類、糖尿病で3種類、その他胃腸薬、呼吸器疾患の薬、等、必要になれば
すぐ多剤になる。この場合、院内処方はしない。院内投薬の場合は、受診日ごとに薬剤
を変えて、1回7種にならないようにしている。
・糖尿病等で合併症があると多剤必要となる患者が多い。また、一剤を大量に投与するよ
り、作用の異なる薬剤を併用する方が良い場合が多い。泌尿器科、皮膚科等他科の薬も
かかりつけ医として処方しなければならない場合が多い。
・内科的な薬だけでなく、他科の薬(泌尿器、整形外科、皮膚科など)も総合的に診察し
ているため。
・当初は内科疾患のみだったが、他医への通院が困難になり他科疾患の薬の処方も必要と
なる。
・周辺に他科が少なく、内科のみを標榜する当院に当院に集中する。
・他科の処方を当院で一緒にと頼まれた。
・病院の処方が7種類以上が多い。プラス自院の処方あり。元の病院へ行って病院で処方
してもらいたいが、患者は行かない。当院は「薬屋」ではないことを説明している。
・必要なものは必要です。
・急に減らすと不安がる患者もいるから。
・必要な薬を投与しているのに、減算する理由がない。
-
9 -
K 7種類以上の減算をどう思うか(単回答)
全ての対象者に、「7種類以上の内服薬を投薬した場合の減算についてどう思いますか」
と質問したところ、「廃止すべきだ」が 82%、「このままで良い」が 12%でした(図9)。
図9
7種類以上の減算をどう思うか
0 無回答
5%,19
2
このままで
良い
12%,46
1
廃止すべき
だ
82%,304
先のHで特定疾患療養管理料を算定する患者について、7種類以上の内服薬を投薬して
いる患者が「いる」と回答された方に限ると、
「廃止すべきだ」が 92%、
「このままで良い」
が7%でした(図9-2。分母は 266)。9割超が廃止を求めています。
図9-2 7種類以上の減算をどう思うか
(7種類以上の内服薬を投薬している患者がいる方)
2
0
このままで
良い
7%,20
1
廃止すべき
だ
92%,246
-
10 -
無回答
0%,1
L
7種類以上の減算を廃止すべき理由(複数
3回答)
「7種類以上の内服薬を投薬した場合の減算についてどう思いますか」との質問に対し
て、「廃止すべきだ」と回答された方に、その理由を質問したところ、「慢性疾患を有する
患者の外来受診を阻害するから」が 61%、「7種類以上の内服薬を服用している退院後の
患者を紹介された時に困るから」が 55%、「病院や他専門医療機関との連携が損なわれる
から」が 35%でした(図 10)
。
図10 廃止すべき理由
1 慢性疾患を有する患者の外来受診を
阻害するから
61%,185
2 病院や他専門医療機関との連携が損
なわれるから
35%,106
3 7種類以上の内服薬を服用している
退院後の患者を紹介された時に困るから
55%,167
4 医療機関の経営を圧迫するから
31%,93
5 その他
0 無回答
18%,54
0%,1
0%
20%
40%
60%
80%
「その他」の意見としては、以下のものがありました。
①複数の疾患を診療し、患者の負担を軽減しているのに減額はおかしい。
・不要な薬ではなく、複雑な疾患、大病院で多くの科に通院されていたのをまとめた場
合等、逆に時間がかかる場合が多いのに減額は全く逆だと思う。例えば、病院で循環
器、消化器、糖尿病等の内科系の疾患をまとめて処方するだけでも7剤を超える。3
つの医院に通院してもらうより確実にコストも安いと思う。
・病院の複数科(例えば糖尿内科+心臓内科+・・・)受診者が、かかりつけ医の診療所で
投薬するようになった場合、当然、内服薬の数は増え、7種類以上になることもしば
しばある。本人が幾つもの科を回らないでいいよう、良心的に複数の病態を診療して
おり、医師としても重労働となりながら、何故、逆に診療費を減額せねばならないの
か。その人全体の診療費も安くなっている形なのに。不満です。
・患者が何か所も受診することになると負担が大きくなる。
・専門外の投薬を断ることになり、結果的に診療費、患者負担増になるから。
・7剤以上になった時点で、院内処方から院外処方に切り替えるが、近くに調剤薬局が
無く、患者に不便をかける。
・高血圧、糖尿、高脂血に加えて心不全、afなど低薬価の多剤が必要。
②複数の疾患を有する等、多剤投与が必要な患者がいる。
-
11 -
・薬が多いほど患者の管理には気をつけなければならないのに減算はおかしい。
・他科併診患者との整合性がとれない。
・高齢になり、他科受診が困難となり、当院で処方することになり、7種類を超してし
まう。薬の管理が大変になる上、減点され、全く道理の通らぬルールです。
・高齢者は単一疾患罹患のみではないため。
・くすりの選定に手数がかかるのに減額されるのは納得しかねるから。
・7種類以上投薬せざるをえない複雑な病態の患者の診療で減額されるのはおかしい。
・内服薬が多い患者の方が診察時間も長く管理に手間がかかるから
・慢性疾患では7種類以上の投薬しなければコントロールできないことが少なくありま
せん。
・どうしても、疾患により、7種類以上必要な場合があります。
③医学的根拠など、理由がない、理由が乏しい。
・患者の求めに応じて薬を処方するとペナルティーとなり、断ればペナルティーなし。
おかしいと思います。
・7種類に制限する医学的、科学的根拠がない。
・7種類以上となった過失が医師側にある理由でもないので理不尽である。
・7種類までに限定する医学的根拠なし。
・「7種」のライン引きの意味が不明である。
・7剤以上出すには理由があり、一律減算はおかしい。
・7種類の算定制限は前時代の遺物である。
・7種類に限定する理由がないから。
・全く理不尽なルールである。
・医学的に説明が困難な事が多いから。
・医学的理由で必要なケースはどうしてもあるから。
・減算する意味はないため。
・必要な処方で減額されることに納得できない。
・必要のある患者に必要のある薬剤を処方しており、処方数で減算することがナンセン
スである。
・必要な薬を必要な患者に投与して何が悪い。
・必要不可欠な薬剤の支払いがなされないことはおかしいと思うから。
・内服の必要があるから。患者にとって必要なのに、減算される道理がないから。
・必要があって処方している正当な投薬なのに減額されるのはおかしい。
④必要なのに減らしている場合がある。
・減算が気になり、必要と思われる処方ができない。
・医師の良心に背いても薬を減らさなければならないことがある。
・必要な投薬を差し控える可能性がある。
⑤その他
・投薬は医師が診療して治療の上で必要と判断して行うものであり、何らかの制限を受
けるのは正しくないと考えます。
・医師の裁量を認めるべき(薬価差益はないのだから)。
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12 -
・全く同じ製剤名のものでも単位(mg)が異なれば、2種類と判定される。
・病院診療ではあまりにも多剤併用が多い。また、新薬投与が多い。新発売薬に変更さ
れる症例も多い。無駄な投薬(処方)が多いのでは。一般診療所が責任を負うべき問
題ではない様に思いますが。
・処方せん薬局で出す場合と比べて不公平。
・地域医療に取り組む意義を感じない。減らす努力に疲れた。
・レセプトミスが増える。
・内科系診療所を狙い撃ちにするものである。
・処方せんを交付しているだけで7種類以上と未満で会計が違うのは患者が不審に思う。
・院内処方せざるをえない医療機関にとって大変困る。
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13 -
M 調査結果の概要(再確認)
(1)特定疾患療養管理料の「他院退院後1か月以内の算定制限」について
①
内科系診療所の保険医に対して「他院を退院後、1か月を経過していないことを理
由に、特定疾患療養管理料を減点された事例がありますか(それ以外に理由が考えら
れない事例を含む)」と質問したところ、29%が「ある」と回答しました。
② 上記①で「ある」と回答した方に、その患者は国保審査分か、基金審査分かを質問
したところ、「国保分」が 63%、
「基金分」が3%、「両方」が 33%でした。
③ 全ての対象者に、
「特定疾患療養管理料の『退院の日から起算して1か月を経過した
日以降に算定する』取扱いについて、どう思いますか」と質問したところ、
「廃止すべ
きだ」が 50%、
「自院の入院に限るべきだ」が 31%を占め、改善を求めている方が
8割を超えることが分かりました。
上記①で「特定疾患療養管理料を減点された事例」が「ある」と回答した方に限る
と、「廃止すべきだ」が 55%、「自院の入院に限るべきだ」が 43%となり、98%の
方が改善を求めています。
④ 特定疾患療養管理料の「退院後1か月以内の算定制限」を「廃止すべきだ」、「自院
の入院に限るべきだ」と回答された方に、その理由を質問したところ、
「外来での慢性
疾患の管理は当院が行っているから」が 86%、「病院・診療所の連携が損なわれるか
ら」が 28%、「慢性疾患を有する患者の外来受診を阻害するから」が 21%でした。
(2)「7種類以上の内服薬を投薬した場合の算定制限」について
① 全ての対象者に「特定疾患療養管理料を算定する患者について、7種類以上の内服
薬を投薬している患者はいますか」と質問したところ、
「いる」が 72%、
「いない」が
25%でした。
② 上記①で「いる」と回答された方に「その患者は薬剤料、処方料、処方せん料が減
額になっていますか」と質問したところ、「地域包括診療加算を届出していないので、
全員減額している」が 63%を占めました。
「同加算を届け出ているが、減額しない患
者と減額する患者がいる」が 18%、
「同加算を届け出ているため減額しない」が 16%
でした。
③ 上記①で「いる」と回答された方に「7種類以上となった理由」を質問したところ、
「加齢等により疾患が増え徐々に増えた」が 78%、「病院や他の専門医療機関から紹
介されるたびに増えていった」が 61%、
「入退院を繰り返すたびに増えていった」が
29%でした。
④ 全ての対象者に「7種類以上の内服薬を投薬した場合の減算についてどう思います
か」と質問したところ、82%が「廃止すべきだ」と回答しました。
上記①で、7種類以上の内服薬を投薬している患者が「いる」と回答された方に限
ると、92%が「廃止すべきだ」と回答しました。9割超が廃止を求めています。
⑤ 上記④で、「廃止すべきだ」と回答された方に、その理由を質問したところ、「慢性
疾患を有する患者の外来受診を阻害するから」が 61%、「7種類以上の内服薬を服用
している退院後の患者を紹介された時に困るから」が 55%、「病院や他専門医療機関
との連携が損なわれるから」が 35%でした。
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14 -
N まとめ
(1) 特定疾患療養管理料の退院後1か月以内の算定制限は廃止すべきです
「他院を退院後、1か月を経過していないことを理由に、特定疾患療養管理料を減点
された事例(それ以外に理由が考えられない事例を含む)」が「ある」方が全体の 29%
を占める結果になりました。
「特定疾患療養管理料は、生活習慣病等の厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とす
る患者について、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の
管理を行うことを評価したもの」だと通知されています。特定疾患療養管理料を算定す
る診療所の内科系医師は、通知の通り、かかりつけ医師として、慢性疾患の管理、検査・
投薬、生活指導を担っています。退院後1か月以内に外来受診した患者であるからとい
って、慢性疾患の療養を管理していないはずがありません。
また、自由回答にあるように、整形外科的疾患、眼科疾患等で専門的な医療機関に入
院している場合や、短期滞在手術等基本料を算定する入院、検査入院、レスパイト入院
等では、慢性疾患の療養の管理とは関係のない場合もあります。
「そもそも初診もそうだが、
『1か月以上』でないと算定不可の根拠が分からない」と
いう意見が出されていますが、医学的根拠がありません。また、
「退院後の方がより注意
深い管理が必要」という意見も、全くその通りではないでしょうか。
(2) 退院後1か月以内の算定制限は、かかりつけ医師の機能、病診連携を阻害している
特定疾患療養管理料の「退院後1か月以内の算定制限」を「廃止すべきだ」、「自院の
入院に限るべきだ」と回答された方に、その理由を質問したところ、
「外来での慢性疾患
の管理は当院が行っているから」が 86%、「病院・診療所の連携が損なわれるから」が
28%、
「慢性疾患を有する患者の外来受診を阻害するから」が 21%でした。
「入退院を繰
り返す患者への診療意欲を損なうから」という回答も 16%ありました。
2025 年を目途に、構築することが構想されている「地域包括ケアシステム」の中でも、
日常の医療を受け持つ「かかりつけ医」の役割は明記されています。
特定疾患療養管理料の「退院後1か月以内の算定制限」は、かかりつけ医師の機能、
病院・診療所の連携を阻害し、地域医療の確保に支障をきたします。
(3) 多剤投薬による慢性疾患の管理の必要性
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2014」によれば、降圧薬治療について、
「降
圧目標値を達成するためには2、3種類の薬剤を併用することが多いが、異なるクラス
の降圧薬の併用は同一薬の倍量投与よりも降圧効果が大きいことがメタアナリシスで示
されている。併用療法による血圧の厳格な管理が,心血管イベントのさらなる抑制につ
ながるという大規模臨床試験のエビデンスも集積されつつある」注①とされています。
また、国立国際医療研究センター病院「糖尿病標準診療マニュアル(一般診療所・ク
リニック向け)」によれば、血糖降下薬治療について、ステップ1では A ビグアナイド
薬、B スルホニル尿素(SU)薬-の第 1 選択薬単剤で開始し、ステップ2では A+B 又
は C α-グルコシダーゼ阻害薬、D DPP-4阻害薬-から1剤を追加する2剤併用療
法、ステップ3では A、B、C、D からさらに他1種類を追加する3剤併用療法注②を行
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うとされています。
さらに、複数の疾病を有する患者は、より多剤の併用が必要になってきます。
点数表が健康保険法の定める「療養の給付」の具体化である以上、7種類以上の内服
薬投薬を行った場合の算定制限は、ガイドライン等に基づく医療から患者を遠ざけ、生
命と健康を疎外する要因となり、逆に医療費の増加を招きます。
(4) 7種類以上の内服薬投薬を行った場合の算定制限も、病診連携を阻害している
「7種類以上となった理由」を質問したところ、61%の方が「病院や他の専門医療機
関から紹介されるたびに増えていった」、29%が「入退院を繰り返すたびに増えていっ
た」と回答しています。つまり、病院や専門医療機関からの情報提供により、新たに発
症した慢性疾患の治療を担った結果、内服薬が7種類以上となり、点数が減額されると
いうペナルティーを課せられます。
また、
「7種類以上の内服薬投薬を行った場合の算定制限を廃止すべきだ」と回答され
た方に、その理由を質問したところ、61%の方が「慢性疾患を有する患者の外来受診を
阻害するから」、55%の方が「7種類以上の内服薬を服用している退院後の患者を紹介
された時に困るから」、35%の方が「病院や他専門医療機関との連携が損なわれるから」
と回答しています。
自由回答で出された意見の通り、
「地域のかかりつけ医師」が、複数の慢性疾患を有す
る患者の療養を管理していることにより、患者の身体的負担、医療費の負担を軽減し、
結果的に医療費の軽減につながっています。
加えて、周辺に他科の専門医が開業していない医療過疎地域では、様々な病態の患者
を受け持たざるをえない場合もあります。
病院や専門医療機関と連携しながら、複数の疾病を有する患者を診療・治療すること
は、
「地域のかかりつけ医師」にとって当然のことです。しかし、7種類以上の内服薬投
薬を行った場合の算定制限は、患者の複合的な疾病の悪化を防ぎ、入院させずに外来で
治癒・治療することを目指して薬剤の管理を行っている「かかりつけ医師」の技術を評
価しないばかりか、逆に当然補償されるべき薬価や技術料から報酬を減額するという、
時代の要請に逆行した取扱いになっています。
(5) 薬価差は存在しない
2013 年 12 月6日の中医協総会に提出された「医薬品価格調査(薬価本調査)の速報値」
によると、内服薬の平均乖離率は約 8.8%に過ぎません。
特に、診療所では多くの種類を少量ずつ購入しているため、購入価格+消費税が公定薬
価とほぼ同じか、薬剤によっては赤字となっている場合もあり、全体として損をしないと
いう取引が精いっぱいです。
内服薬の種類数に着目した算定制限は、1992 年 4 月改定で導入されましたが、当時問
題とされていた薬価差は、以上の考察から存在しないと考えられます。そのため、今とな
っては薬価差の問題に端を発した内服薬の種類数に着目した算定制限は、既に施策として
意味を持たないものになっています。
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以上を踏まえて、京都府保険医協会は、2015 年3月 17 日付、塩崎恭久・厚生労働大臣
を始め関係各位に対して、
「特定疾患療養管理料の算定要件及び7種類以上の内服薬投薬を
行った場合の算定制限に関する要請書」を提出し、以下の改善を求めました。後日、遅滞
なく、首相、財務相、社会保障審議会・医療保険部会委員、中医協委員、衆参両院厚労委
員会、京都選出国会議員に送付して要請する予定です。
一.B000 特定疾患療養管理料は「退院した患者に対して退院の日から起算して 1 月以内
に行った管理の費用は、入院基本料に含まれる」とした告示、
「退院の日から起算して 1
か月を経過した日以降に算定する」とした通知を撤廃して下さい。
一.「1 処方につき 7 種類以上の内服薬の投薬を行った場合、F200 薬剤料を 100 分の 90
に相当する点数により算定する」取扱いを撤廃して下さい。また、7 種類以上の内服薬
の投薬を行った場合、13 点低い処方料、28 点低い処方せん料を算定する取扱いを廃止
し、F100 処方料を 42 点、F400 処方せん料を 68 点に統一して下さい。
本調査結果をお目通しいただいた上、2016 年度診療報酬改定において、上記の改善が行
われるよう、関係各位におかれてはご尽力いただけますよう、強く要請いたします。
(以上)
注①:『高血圧治療ガイドライン 2014』日本高血圧学会、2014 年4月 14 日、P.47~48
注②:「糖尿病標準診療マニュアル(一般診療所・クリニック向け)」国立国際医療研究センター病院、
2011 年 9 月 1 日(第 4 版)、P.14~15
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京都府保険医協会 とは
本会は京都府内で保険診療に従事する医師(保険医)2,415 人で組織する団体です。
社会保障の向上と国民医療の充実・発展を目指すことを目的に、1949(昭和 24)年に
設立しました。
「国民皆保険体制」の担い手たる保険医の団体として、「いつでも・どこでも・誰でも」
が保険証1枚で必要な医療を必要なだけ受けられるよう、市民と共に、保険診療の発展を
めざし、活動してきました。
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