2020年以降の削減目標の 国際枠組みにおける位置づけ

2020年以降の削減目標の
国際枠組みにおける位置づけ
田村堅太郎
(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)
関西研究センター/気候変動とエネルギー領域
駐日英国大使館・地球環境戦略研究機関(IGES)共催セミナー
「2020年以降の新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」
2015年5月14日
そもそもINDCとは?
貢献草案(INDC: Intended nationally determined contributions)
– 枠組条約の目的達成に向けた「貢献(contributions)」
 長期的視点に基づき迅速かつ大胆な行動が必要 ⇒
しっかりとした法的基盤が必要
– 「各国自らが決定する」形式
 各国固有の国情を踏まえたもの ⇒ 多様性を反映でき
る柔軟性が必要
– 「intended 」の意味するところは「草案」
 各国が申し出る形式で十分な削減幅を確保できるか、
多様な内容の理解度・比較可能性についての懸念
⇒ 継続的な国際的な相互検証・協議プロセスを想定
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そもそもINDCとは?
• あくまで長期的な目標に向けた一つの通過点
• 継続的な作業プロセス・サイクルの必要性
【参考】気候変動に関する米中共同声明 (2014/11/11) – 2℃目標に留意しつつ、(両国の2020年以降の削減目標が)低炭
素経済への移行に向けた長期的な努力の一部であることを認識
し、2020年以降の行動を発表
Today, the Presidents of the United States and China announced their respective post‐2020 actions on climate change, recognizing that these actions are part of the longer range effort to transition to low‐carbon economies, mindful of the global temperature goal of 2℃. – 両国は、野心度引き上げに向け、引き続き作業を継続
Both sides intend to continue to work to increase ambition over time.
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INDCについて決まっていること(抜粋)
•
提出時期
 COP21に十分先立って(準備のできる国は2015年3月までに)
提出
•
透明性、明確化、理解向上のための事前情報(任意提出)
 定量化可能な情報(参照値(基準年等)、実施期間、対象範
囲・カバー率、排出量・吸収源の推定・計上をするための前提
や手法など)
 自国のINDCが、公正で野心的なものになっているか、また、枠
組条約の目的にどのように貢献するかの説明
•
事前プロセス
 提出されたINDCをウェッブ上に公開
 2015年10月1日までに提出されたINDCの効果を総計した統合
報告書を11月1日までに準備
•
後退禁止
 INDCは、現在の取り組みを上回る前進的ものであること
ダイナミックで継続的な事後プロセスの構築はこれから
• 提出されたINDCをどのように2015年合意に位置づけるのか?
• 2020年以降の具体的なプロセスは?
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事後プロセスに関する各国提案 (COP20前のもの)
目的
対象
実施
期間
レビュー
頻度
第一回
レビュー
野心度引き上げプロセス
2020‐23
•透明性向上
•後退禁止条項
•各国貢献の修正を義務化
ブラジル
野心度引き上げに向け 緩和と
た各国貢献の修正
支援
5年
南アフリ
カ
•貢献全体の十分性の
評価
•機会、支援要請、修
正の必要を特定
緩和と
支援
5年
+5年
5年毎
2025
•透明性向上
•後退禁止条項
•修正条項
マーシャ
ル諸島
野心度引き上げ
―
5年
5年毎
2025
•透明性向上
•後退禁止条項
AILCA
•各国個別目標及びグ
ローバル目標の進捗
状況の評価
―
5年
5年毎
2025
•透明性向上
•後退禁止条項
EU
•野心度引き上げ
•次回約束の野心向上
緩和
10年
5年毎
2025
•透明性向上
•後退禁止条項
日本
国別貢献の実施状況
の評価
緩和
10年
差異化
―
•透明性向上
米国
各国の実施状況の評
価
緩和
5年
2年毎
―
•透明性向上
5年毎
5
5
各国提案の主な共通点と相違点
• 共通点
– 透明性確保・向上(による信頼醸成、相互主義
(reciprocity))
– INDC提出・見直しの再交渉・再批准手続きの回避
• 相違点
– 野心度引き上げのアプローチ
• (報告制度強化による)透明性の強化を通した野心度向上
• 各国貢献度の評価を通した野心度向上
• (I)NDC提出・見直しの義務化と後退禁止条項との組み合わせ
– 対象
• 緩和のみ
• 緩和と支援
– NDCの位置づけ・法的性格
• そもそも統一した事後プロセスに反対の国も
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○法的拘束力あり
×修正手続き煩雑。COP21時点で準備さ
れている必要。法的差異化で意見対立
修正手続き
の簡略化案
(マーシャル
諸島)
国別スケジュール(例:WTO GATS)
○法的拘束力あり。2015年以降に法的
文書に組み込み可能。
≒ 南アフリカ提
案(?)
×法的差異化の観点から意見対立
COP決定
法的文書の外に
位置づけ
位置づけ・法的性格についてのオプション
法的文書の内に
位置づけ
附属書(例:京都議定書)
○柔軟性
×コンセンサス方式での採択。法的拘
束力なし
INF文書(例:コペンハーゲン合意)
○柔軟性
×法的拘束力なし
(I)NDCの提
出・実施を義
務化案(AOSIS,
ブラジル) 7
提案1:継続的な改善サイクルの構築
INDC
堅牢性と柔軟性をど
う両立させるか?
提出
事前
事後・中
間検証
検証
サイクル
構築
実施
正式化
• INDCの定期的提出及
びその実施を義務化
• NDCは登録簿(INF文
書)に記載
異なる実施期間を
どう調整するか?
(NDC化)
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提案1:継続的な改善サイクルの構築
2015
2025
2020
実施
5年サイクル
の国
(例、米国)
2025‐30
向けINDC
実施
• 2020‐25
事後評価
• 2030‐35
向けINDC
実施
10年サイクル
の国
(例、EU)
全ての国
(除LDC、
SIDS)
2025予測
2035
2030
• 2020‐30
中間評価
• 2030‐40
向けINDC
実施
• 2025‐30
事後評価
• 2035‐40
向けINDC
実施
• 2020‐30 事後評価
• 2035‐40 INDC見直し
隔年報告
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提案2:研究コンソーシアム
• 研究機関、単独あるいは共同によるINDC評価
• 評価対象国の専門家・研究機関を巻き込む形
でのコンソーシアムの結成
– 各国事象を反映し、よりニュアンスのある評価
– 信頼性の向上に貢献
• 期待されるインプット
– ボトムアップ・アプローチ(技術積み上げ式)
 削減ポテンシャルの特定
 技術ベンチマーク
 数値目標・行動の背景説明
– トップダウン・アプローチ(衡平性指標等に基づく
努力配分)
 2℃目標の観点からみた衡平性、適切性の評価
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