電気電子計測 第8回 信号源からの信号の伝達 電流,電荷の測定 電磁気量以外の物理量を測定する場合も何らかのセンサを用いて、 電気信号に変換することが多い。 したがって、ここで述べる電磁気量の測定方法はそのまま、 センサ出力の測定に応用することができる。 まず、電磁気量の測定において注意しなければいけない基本事項につい て述べ、電流、電荷などの電磁気量の具体的な測定方法について述べる 三輪 測定器の入力インピーダンス ・電磁気量を測定すると、測定器を計測対象に接続した影響が 必ず生ずる。 ・この影響を考慮するには、信号源からの信号の伝達特性を定量的に知ることが重要 測定器の信号入力端子からみた、測定器自身のインピーダンスを 測定器の 入力インピーダンス という 理想電圧計 V 理想電流計 A 入力インピーダンス 無限大 電流が流れない( オープン ) 一般の電圧計は理想電圧計と 並列 な入力インピーダンス でモデル化 入力インピーダンス 0 入出力ポート間の電位差0 ( ショート ) 一般の電流計は理想電流計と 直列 な入力インピーダンス でモデル化 V A 電流計 電圧計 ≫ ≅ ≫ ≅ 測定系の入力インピーダンスへの影響 信号ケーブルの 浮遊容量 が測定器と並列に存在 信号伝送用シール ドケーブル V V 信号源 電圧計 信号源 電圧計 高周波信号ほど、ケーブルでのインピーダンスが低くなり、電圧計に伝わらない。 ローパスフィルタの働きをし、急峻な変化をする時間波形がなまった波形になる 電荷の測定(ケーブルによる影響) 実際は V V 0 より、 電圧の時間変化から を推定 電圧の時間変化が スイッチを入れ た瞬間、 に 電荷が移り見 かけの容量が の影響を受けてしまう 分圧、分流による測定範囲の拡大 一般に、測定器では測定できる最大レベルが限られている。 測定器の前に適当な回路を挿入して、測定範囲の 拡大 が可能 抵抗分圧器 測定対象に二つの抵抗を直列に繋げ、 その一方の抵抗両端の電圧を測定 ≫ 計測器側からみた、 分圧器の出力イン ピーダンス ≫ ≫ から に増加 計測器 信号源側からみた、 分圧器の入力イン ピーダンス ≅ V 計測範囲は / とする 分圧器 ≅ 倍に拡大 から 容易に計測範囲を変更できるものの、 インピーダンス特性が悪化し、ノイズの影響を受けやすくなる 抵抗の分圧をコンデンサに置き換えた容量分圧器や、 抵抗を並列に繋げて電流を分配する分流器もある。 に低下 信号源と測定器の絶縁 100Vの商用電力線から、抵抗分配器を用いて1Vを取出し、それを測定する場合を考える 0V 分配器を左のように接続し、 電圧を観測した場合、 分圧器の出力が1Vでも、 大地に対する電位は100Vと99Vで あり、 感電 の危険がある 分配器 柱状トランス 99V 100V 1V 高いコモンモード電圧に 小さいノーマルモード電圧が 重畳している場合は、 信号源と測定器の絶縁 が重要 V 100V 100V 1:1トランスを用いた絶縁 フォトカプラを用いた絶縁 1:1 出力 入力 交流のみ(直流成分を送れない) 周波数特性を持ってしまう 入力 出力 信号を発光 ダイオード により変換し、 フォトダイオード により検出する 高速かつ直流にも使用可能 電流の測定(指示計器) 指示計器は最も簡便な電流測定器 種類 周波数[Hz] 可動コイル形 DC 2 使用範囲[A] 特徴 10 ‐4 ∼ 10 4 高感度 10 ‐2 ∼ 104 安価,牽牛,配電盤用 可動鉄片形 10 1 ∼ 10 電流力形 DC ∼ 10 3 10 ‐1 ∼ 10 整流形 10 1 ∼ 10 4 10 ∼ 10 ‐4 4 交直差は小,消費電力大 4 高感度,波形誤差大 可動コイル型指示計器 永久磁石とモーターのような可動コイルに電流を流す 可動コイルと同軸にある指示針に回転力が発生 指示針に接続したバネと回転力が釣り合う 釣り合った指示針位置と電流が1対1に対応する 電流 ∝ 回転力 ∝ バネの引っ張り力 ∝ バネの変位 ∝ 指示針の位置 ・計測対象から 電流を受け取って 指示針を動かすエネルギーに変換 ・内部インピーダンスが0とみなせないため精度は高くない 電流の測定(電位差測定法) 既知の抵抗 に電流を流し、その 端子電圧を測定 する方法は、単純 ではあるが確実な電流測定法としてもっともよく用いられる 電圧測定には、指示計器、電位差計、ディジタルボルトメータが使われる 一方、抵抗値が未知の導体に流れている電流 を、電位差計により求める方法 電位差計の端子間には、導体であっても微小 な抵抗 が存在し、 誤差の原因 となる。 導体に外部から電流を流すための回路を接続し、 V 外部から電流 を流すと、電位差 は A 電源を逆につなぎ、外部からの電流が同じ大きさ で逆向きに流れるよう、 可変抵抗器 を調整すると したがって、 を消去すると ・逆接続を応用した測定法 ・導体の抵抗(抵抗率)が未知であっても、導体に 流れる電流を求めることができる 電流の測定(電子電流計) 演算増幅器(オペアンプ)を用いると、 入力インピーダンスが ほぼゼロの理想的な 電流計を実現することができる。 既知抵抗 ≅ 2 3 ‐ 1 出力 理想演算増幅器の端子2‐3間 電位差は 0 (バーチャルショート) 入力インピーダンスは 無限大 (電流が流れ込まない) + ・入力電流は端子2‐3間に流れ込めず、すべてが 抵抗 に流れる 実際には、演算増幅器にはバイアス電流 (マイクロA程度)が流れ込む バイアス電流よりも十分大きい入力電流を考えれば、無視できる。 ・電流は既知抵抗 を介して出力に流れる ・端子2より端子1の電位は低くなる ・端子3を接地すれば、端子2は ゼロ電位 ・端子1の電位 は 0 利得の十分大きい周波数範囲(数十kHz以下)で 理想電流計として用いることができる。 電流の測定(電流プローブ) ほとんどの電流計は計測対象の閉回路に挿入して( 導体を切断して接続 )使用する 導体を流れる電流をその導体を切断することなしに測定できる測定器 電流プローブ 電流によって、導体のまわりに発生する 磁界 を測定する。 ホール素子型 磁束 変流器型 磁束 磁心 磁心 ホール素子 導線 導線の周りにトロイダル磁心を置き、 その磁心に取り付けられたホール素 子により、導線の周りの磁界を検出。 直流電流の検出も可 導線 トロイダルに巻きつけた巻線により、 磁界を測定する。交流のみが計測可。 10mA~100Aの電流測定が可能 電流の測定(熱電型計器) 流れる電流を ジュール熱 に変換し、その熱を熱電対により 電圧 に変換して測定する 熱線 (白金、ニッケル) 導線 熱電対 (ニッケルクロム合金、 銅ニッケル合金) V 熱電型計器では、熱線と熱電対は一体となっており、 定電流測定用のものは真空封入されている 測定範囲は1mA~数A、直流から数十MHz までの広い周波数範囲で測定可能 熱電対は原理上、電流を一旦、電力(熱)に置き換えるため、得られる電圧値は 電流の実効値の2乗 に対応している 電荷の測定 導体に帯電した電荷量 を測定するには? その電荷を放電させ、流れる電流 を 時間積分 する 容量 のわかっているコンデンサにその電荷 を移し、 そのときの電圧 を測定 スイッチを入れることで、導体球に帯電した電荷量 を測定することを考える ・スイッチを入れると容量 導体球 ・ 既知 容量 浮遊 容量 V 既知 容量 により電荷が求められそうに思える。 ・導体球とアースには 浮遊容量 が存在 ・実際には、左下の等価回路になる 等価 回路 浮遊 容量 に電荷が移る ・電荷の一部は浮遊容量 に移ってしまう V ・見かけの容量が増加し、電圧が 低下する ・浮遊容量を測定するのは難しい ・電荷量を測定するには何らかの工夫が必要 電荷の測定(ファラデー・ゲージ) ファラデー・ゲージは、静電シールドの原理を用いて、試料―アース間の電気力線を 遮断し、浮遊容量 を実効的に ゼロ にする手法 外部導体容器 容器の構造 によって決ま る電気容量 内部導体容器 ‐ + ‐ ‐ +‐ ‐ + ‐ ‐ + ・試料は内側の容器に挿入する ・試料から出た電気力線は全て 内側 の 容器で終了する ‐ + ‐ ‐ ファラデー・ゲージは 2重の導体 容器 + ‐ V ・内導体容器内側には の電荷が帯電 ・内導体容器外側には の電荷が帯電 ‐ ・内外容器間は、その構造によって決まる コンデンサを構成している( 既知容量 ) ・外導体容器内側には 浮遊容量は存在するが、 電気力線が内導体で閉じ ており、外部に影響なし V の電荷が帯電 ・ をあらかじめ測定 ・内側の導体の電位 を測定 ・ のように求まる 電荷の測定(チャージアンプ) チャージアンプ センサの出力など、 時間とともに変化する電荷量 の測定に用いられる 演算増幅器応用回路の一種。 理想演算増幅器では端子2‐3間の電位差 ゼロ 既知容量 端子3を接地すれば、端子2の電位は ゼロ ‐ 2 3 ・スイッチを入れ、端子2を試料に接続 ・電荷が瞬時に移動し試料の電位がゼロ ・電荷は全て容量 に流れ込み充電される 1 + ・充電されたコンデンサの電位は 0 V 2 3 ‐ + 1 出力 ・電荷の入力による電流の積分により電荷 を測定することと等価である 現実のチャージアンプでは端子2からのバイ アス電流 が を充電し、 ドリフト誤差 とな るため、 と並列な抵抗 が必要となる。 この抵抗が周波数帯域の下限を決定する。0.1Hz~1MHzの周波数範囲で電荷測定が可能 電気電子計測 第9回 電圧の測定 電圧の測定は電気電子計測として、もっともよく用いられる計測となる。 基本的な電圧測定の手法として、電位差計、ディジタルボルトメータの原 理について述べ、オシロスコープの原理、利用上の注意、デジタルオシロ スコープの原理についても述べる。 三輪 電圧計の種類と特徴 周波数[Hz] 使用範囲[V] 可動コイル形 DC 10 ∼ 10 可動鉄片形 101 ∼ 102 10 ∼ 10 電流力形 DC ∼ 103 10 ∼ 105 整流形 101 ∼ 10 4 10 ∼ 10 整電形 DC ∼ 106 10 ∼ 10 電位差系 DC 特徴 ‐2 3 高感度 1 5 安価,牽牛,配電盤用 1 交直差は小,消費電力大 0 5 高感度,波形誤差大 2 5 単独で高電圧測定可 ‐2 0 零位法 ‐3 3 高入力インピーダンス ‐3 2 10 ∼ 10 指示計器型 精度に難あり 種類 電子電圧計 DVM DC ∼ 10 6 10 ∼ 10 アナログ・オシ ロスコープ DC ∼ 10 8 10 ∼ 10 高入力インピーダンス >1MΩ デジタル・オシ ロスコープ DC ∼ 10 10 10‐4 ∼ 103 高入力インピーダンス、高精度、 高感度、エイリアシングの影響 電位差計(ポテンショメータ) 直流電流の高精度測定法ゼロ位法による電圧測定器 A S G x 固定 可変抵抗器 G A 測定時 測定電圧 標準電圧 ガルバノ メータ 可変抵抗器 校正時 をそのままにし、測定電圧 を接続 (1)校正時には 標準電圧 を用いる (4) (2)可変抵抗器の位置を とする (5)ガルバノメータの振れが 0 になるよう 可変抵抗器 の位置を調整 (3)ガルバノメータ(高精度電流計) を調整 の振れが 0 になるよう このとき は不変なので、 (6)可変抵抗器の抵抗比は 寸法比と等価 寸法比と標準電圧の値のみによってきまり、測定電圧側からガルバノメータ側に 電流が流れないため、入力インピーダンスが 無限大 とみなせる ディジタル・ボルトメータ(DVM) 測定が簡便、読み取り誤差がなく高精度、高入力インピーダンス 近年、最もよく用いられる電圧測定器、様々な原理がある 2重積分型 DVM 測定電圧 ミラー積分器 A ゼロ検出 ‐ 基準電圧 B 0 0 時間 入力電圧 出力電圧 + クロックパルス 発生器 クロック パルス 制御回路 … ……. パルスカウンタ ・スイッチs1を時刻 でA側にし、測定電圧の積分開始。定電圧であれば 積分値は時間に比例 ・同時にパルスカウンタでクロックパルス数をカウントする ・クロックパルス数が になった時刻を とすると出力電圧は ・スイッチs1をB側にし、 逆極性 の基準電圧でコンデンサ内の電荷を放電 ・同時にクロックパルス数を出力電圧がゼロ になるまでカウント、その時刻を とする ・出力電圧は ・時刻 でのパルス数を とすると、 より、 0 ∴ 2重積分型ディジタル・ボルトメータ(特徴) 測定法について ・積分器の出力を検出器とした一種の ゼロ位法 ・温度の影響を受けやすい , , の値によらない ・測定値は パルス数比 と標準電圧のみで決まる。 ・入力インピーダンスは で決まるが、実際はその前段に高入力インピーダンスの 入力回路が入るため、10MΩ, 2pF 程度 精度について ・整数比で決まるため出力電圧は離散的な値( デジタル値 )となる。 ・整数を大きくすれば(計測時間の増加、カウンタパルスのパルス幅低下) 精度は いくらでも向上 できる。 ・ と を積分する積分器の特性が同じである限り、本計測器の絶対精度は 標準電圧 の精度に依存し、0.5%から0.0002%のものまである。 確度について ・この方式はある時間範囲でカウンタを数える(積分)するが、その際、コンデンサに 電荷を貯めていく(積分)ため、ノイズによる測定値の時間的な変動の 平均値 を 測定していることになる。よって、ランダム雑音や周期性の雑音は低減される 振動容量型電位計 静電気の帯電電圧、金属や半導体の接触電位差、 絶縁物の電気的特性の測定等 非接触な物体表面 電位の測定 ・表面電位が の物体を考える 振動電極 交流 出力 電圧 試料 ・その上方に電極を配置 ・その電極と試料表面の間で コンデンサ (容量 )を形成する 1 ・電極を微小に 振動 させる。電極と物体表面の間隔 は ≪1 ・電極-試料間の容量 は、電極面積を とすると 1 ≅ 1 1 ・試料表面の電位により、間隔 離れた電極に 電荷が誘導 される。 ・電極-試料間の容量 が時間的に変化することにより、電荷が時間的に変化 ・ 電荷の時間微分が電流 なので、交流電流が抵抗を通じて流れ、抵抗端に交流電圧発生 抵抗両端の交流電圧 · これは に比例 適当な校正を行うことにより、物体の表面電位を非接触で計測できる 電気光学効果を用いた方法 電界により、材料の複屈折率が変化する現象を電気光学効果という 1次の電気光学効果 ポッケルス効果 ・誘電体の等方性結晶において電場をかけると複屈折性を示す現象 ・電場の強さに比例して屈折率が変化する 2次の電気光学効果 カー効果 ・ある物質に電場が印加されたときに、その物質の屈折率が電場の強さの2乗 に比例した複屈折を示す現象 偏光板1 光源 電極 偏光板2 ・電気光学材料である結晶あるいはセラミック を 直交した 二つの偏光板1,2で挟む ・試料を電極で挟み、電圧を印加 電 界 ・電圧により電気光学材料は複屈折を示す ・直線偏光が 楕円偏光 に変化 ・偏光板2に透過光が表れる 電気光学材料 ・透過光の強度と電極への印加電圧を測定 絶縁物で構成され電気的な雑音の影響も受けない。 高電圧システム における計測に適 オシロスコープ 信号電圧を測定するにあたって、 波形観測 によりその電圧の性質を知ることは特に重要 オシロスコープはディスプレイ画面の横軸を 時間 に、縦軸を 信号電圧 にとした軌跡を描画することにより信号の時間波形を表示する測定器 アナログオシロスコープ 高速な変化をする 周期信号 を観測 するための装置 1ms 周期 1ms の信号波形のような早い時間 変化の様子は、波形が一瞬で過ぎ去って しまうため、そのままでは視認できない 周期信号では、同一の波形が(高速な)ある周期で繰り返されている 1周期毎のタイミングを合わせて( 同期 させて)毎回同じタイミングで繰り返し波形表示 時間変化する波形を 等価的に止めて 視認することが可能 オシロスコープ(波形表示) ・ブラウン管内で、陰極線の電子が電子銃により発射される ・電極間を通過する電子は、その電界の強さによって進む向きを変えられる ・電子が蛍光物質を塗布した蛍光面に衝突すると光が放出される。 ・光の持続時間は短いが、繰り返し衝突すれば、光り続けて見える 1ms 1ms 垂直方向に 計測信号 の電圧を印加 ・計測信号がスキャンされ波形が描画される ランプ波 水平方向 水平方向に計測信号と同期した ランプ波 を印加 垂直方向 ・電子を受けたディスプレイは一定時間光り 続ける ・秒間に1000回描画が繰り返されるので高 強度で視認できる ・ランプ波の傾きを変えれば横軸が拡大縮小 ブラウン管 ・タイミングを遅らせれば、波形が左右に移動 オシロスコープ(信号の同期) ランプ波の幅を広げると ランプ波のタイミングを早めると 波形が縮小する 波形が遅れて 表示 オシロスコープでは周期信号とランプ波とのタイミングが 完全に一致 して初め て、波形が静止して見える。ランプ波のタイミングが合っていないときは 波形が複雑に動く オシロスコープでは必ず信号との同期を取る( トリガーをかける )必要がある オシロスコープ(トリガリング) オシロスコープでトリガを掛けるには、以下の2種類がある (a)外部の同期信号でトリガを取る方法 計測したい周期信号に同期した 周期信号を外部で生成する。 ファンクションジェネレータ等の信号発振器から得られた周期信号 SYNC OUT端子等から同期信号を容易に取り出し可 発振器の周期波形は水晶発振回路から生成 1/f雑音の周波数ゆらぎが存在 同一周期の周期信号でも、 他の信号発生器 から発生させた場合同期は取れない。 (b) 計測したい信号自身でトリガを取る方法 計測信号に振幅の閾値を設け、信号 の立ち上がり(下り)で 閾値を交差 するタイミングで同期を開始する 閾値 閾値 1回のみヒット 同期OK 複数回ヒット 同期とれず 同期は1周期に1回のタイミング 振幅が安定した波形である必要 ディジタルオシロスコープ アナログオシロスコープでは単発の波形情報を捉えることが困難 ディジタルオシロスコープ 波形をAnalog‐to‐Digital(AD)変換回路でディジタル情報に変換し、 メモリ内 に記憶 ・ 単発 の波形情報を容易にとらえられる ・同期加算による ノイズ低減 ・デジタル信号処理により、フーリエ変換やフィルタリングが可能 ・現在はほとんどディジタルオシロスコープが使われている トリガ等の注意点に加え、サンプリング周波数 の選び方に特別な注意が必要。 4 3 2 アナログ信号の振幅を階段状に分割 量子化 振幅を何分割するか? 量子化ビット数 電圧 [V] 分割数 5 分割数 2 1 量子化範囲 0 1分割あたりの電圧値 時間 連続的な電圧値が整数値に変換 , / ディジタルオシロスコープ(離散化、標本化) 時間的に連続な整数値をある周期毎に取り出す 離散化、サンプリング サンプリング周期 5 4 サンプリング周波数 3 1 2 1 0 1Ts 2Ts 3Ts 4Ts 5Ts 6Ts 7Ts 8Ts 9Ts 10Ts 時間 連続的な時間の情報を を単位として、その整数倍で表す 時間 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 振幅 4 2 0 1 4 4 2 0 4 4 1 時間と振幅を整数化 ディジタル化 量子化 量子化ビット数が大きければ大きいほど 正確な情報を保つことができる 離散化 サンプリング周波数が高ければ高いほど サンプリング定理 計測信号の 帯域幅 が制限されている場合(その上限を とする) /2 (ナイキスト周波数)となる を選べば元の信号を再現できる( サンプリング定理 ) /2 のとき元の波形とは異なる波形。詳しくは電気電子工学実験IIIで確認 時間 0 周波数 /2 時間 /2 0 周波数 時間 0 /2 周波数 エイリアシング 0 時間 0 時間 周波数 周波数 エイリアシング 0 時間 周波数 デジタルオシロスコープでは画面に現れた波形が信号波形を正しく表している保証はない サンプリング周波数を誤って設定すれば容易に実際の信号と異なる波形が表れる このために、測定者は計測信号に含まれる 最大周波数成分 を知っていなければならない 電気電子計測 第10回 抵抗,インピーダンスの測定 抵抗、インピーダンスの測定は、電圧の測定と並んで、電気・電子 計測において最もよく行われる測定の一つである。 抵抗等のそのものの測定だけではなく抵抗線やひずみゲージ等の ように、抵抗から他の物理量に関連させて計測を行う場合も多いか らである。 三輪 電圧 - 電流法 電圧電流法はオームの法則 を利用したインピーダンス測定法 を一定として、 を測定するか、 を一定として、 を測定するか、もしくは両方測定 ただし、これまで示したように、電圧計、電流計には 入力インピーダンス が存在し、 電源には 電源インピーダンス が存在するため、これらへの配慮が必要となる 未知のインピーダンスを とし、電圧源、電流源をつないで、電流、電圧を測定 は電源抵抗が無視できる電圧源、 は電流計の内部抵抗 A 電流計 より 流れる電流 は が既知であるか、 ≫ であることが必要である は電源抵抗が無限大の電流源、 は電圧計の内部抵抗 電圧計 V 測定電圧Vは が既知であるか、 より ≫ であることが必要である >1MΩ、電源抵抗100MΩは容易に実現可 抵抗変化型のセンサの出力測定に適している。 電圧 - 電流法(四極法) 未知の抵抗 に電流を流して、抵抗値を測定する回路 電流の流入、流出端子に未知の 接触抵抗 が存在 これが測定誤差や雑音の原因となり計測上の問題となる V この問題を解決する方法が四極法 電流と電圧の測定端子を同一にせず、 電圧の測定端子を 内側 に設けているのが特徴 電流の流入端子 電流源の内部抵抗が接触抵抗に比べ 十分大き けれ ば、接触抵抗に関わらず一定の電流が流れる V 電圧の測定端子 電圧計の入力抵抗が接触抵抗に比べ 十分大き けれ ば、接触抵抗による電圧降下の影響は無視できる 四極法は低抵抗の測定や薄膜の抵抗測定などで有効に用いられる。 四極法の利点 2 // V 2 2 V 2 // 2 , , 2 2 2 2 2 接触抵抗が と直列 ≫ であれば問題ないが、 が小さいときは接触抵抗の 影響が無視できない 2 2 2 2 2 接触抵抗が と直列 電圧計 の入力インピーダンスはメガΩオーダなので、 接触抵抗がkΩオーダであったとしても接触抵抗の 影響は十分無視できる 電圧 - 電流法(ガードリング) 高抵抗率の物質の抵抗を電圧電流法で測定する場合、水分の吸着などに 起因する 表面電流 が無視できない場合がある。 ガードリングが有効 A 電流計 試料 表面層や水分などの 吸着による表面電流 電極 電極 試料 高抵抗率物質 ガードリングを用いた測定 同電位のため表面 電流は流れない A ガードリング 電極を取り囲むように、もう一つの電極 (ガードリング)を設け、それを内側の電極と 同電位 にすることにより、表面電流が流れ 込むのを防ぐ 中央の電極に流れる電流のみを測定する 絶縁体の抵抗率測定や、サンプル ホールド回路、積分回路で使われる 電圧 - 電流法(ベクトルインピーダンスメータ) 交流において、電圧、電流法を適用したものが、ベクトルインピーダンスメータ 未知のインピーダンス と 標準抵抗 を直列に接続 端子電圧を高 入力インピーダンス の電子電圧計で測定 の振幅と位相を計測する 回路に交流電流 を流し、そのときの と の端子電圧をそれぞれ と とすると を消去すると、 振幅 : 位相 : ∠ ∠ ∠ 簡単な取り扱いで、高精度のインピーダンス測定が可能 電位差計法 既知の抵抗との比較により、高精度で抵抗値を測定する方法 V V 未知の抵抗 と標準抵抗 一定の電流を流す を 直列 に接続し、 抵抗 と の端子電圧を電位差計で測定し、 その測定値を 、 とする 四極法 ベクトルインピーダンスメータの式と同様なので、 電流に無関係に、電位差の測定値の比として未知の抵抗を求めることができる 抵抗の接続と、電位差の測定では接触抵抗の影響を低減するため 四極法 を用いる。 熱起電力に対する対策として、電流を 正逆2方向 に流し、両者の平均を取ることもある 電位差測定において、電位差計に流れる電流を無視できることがポイント 4辺ブリッジ 既知インピーダンスとの比較により、インピーダンスを測定する方法の代表 インピーダンス C , , , を図のように接続 A,Bに電源、C,Dに検出器を接続する。 B A D , , , を調整し、 C,D間が等電位、すなわち 検出器の出力がゼロになったとき、以下が成立する D 両辺は複素量として一致する必要がある :電源電圧 :電源インピーダンス :検出器(電圧計、電流計) この状態をブリッジが 平衡した という したがって、 が未知で、 , , が既知の場合 / ゼロ検出を行うため、検出器の入力インピーダンスや、電源インピーダンス、 電源電圧には影響を受けないため、高精度な測定が可能 ホイートストンブリッジ ブリッジのインピーダンスが全て純抵抗であるブリッジを ホイートストンブリッジ という 平衡なとき、 未知抵抗 は を連続的な可変抵抗 B/Aを 1、10 、100のように切り替え 広範囲の抵抗値を測定することができる。 ホイートストンブリッジは ひずみゲージ 等の、 抵抗変化型のセンサ出力に頻繁に用いられる。 抵抗変化型センサの抵抗が ∆ のように物理量 によって変化するとする 電圧-電流法等による抵抗測定では、変化分∆ や雑音により、測定の分解能が制限されてしまう 一方、他の辺を全て とすれば、 開放端の電圧 は が に比べ 小さい と、測定誤差 1 ∆ · 2 2 ∆ ∆ 4 感度をあらかじめ高めた計測により、微小変化のみを直接高精度に計測できる 交流ブリッジ 各辺にインピーダンスを用いた交流ブリッジは、インピーダンス測定に用いられる 電源に交流を用いることから、ブリッジ各部の浮遊容量や浮遊インダクタンスが影 響してくる。そのため各所に適切な 静電シールド 等の対策をする必要がある 既知純抵抗が隣り合った例 D 平衡状態で未知抵抗 すなわち、未知インピーダンスの位相は可変イン ピーダンス の位相と 等しい 未知インピーダンスが誘導性のときインダクタ、容量性の ときコンデンサを可変インピーダンスに用いれば効果的 既知純抵抗が向い合った例 D 平衡状態で未知抵抗 ∠ ∠ 未知インピーダンスが誘導性のときコンデンサ、容量性の ときインダクタを可変インピーダンスに用いれば効果的 変成器ブリッジ ブリッジが平衡状態にあり、検出器に流 れる電流がゼロであるとすると、 トランス(変成器)を用いたブリッジ すなわち、 D A 変成器の巻き数を 、 とすれば、 , は同位相であるから と の関係は変成器の 巻き数比のみ で定まる。 巻き数比は温度、湿度などの環境に依存せず、経年劣化もない インピーダンス 、 から見た変成器のインピーダンスは十分小さく 平行状態ではA点の電位はゼロであるため 浮遊インピーダンス の影響を受けない 安定した測定が可能 アクティブブリッジ 演算増幅器などの能動素子を用いたブリッジをアクティブブリッジという アクティブブリッジによれば、簡便かつ、広い周波数範囲にわたり高精度のインピー ダンス測定が可能であり、多くのインピーダンスメータに用いられている。 利得が1及び‐1の演算増幅器を用いる x1 増幅器の出力インピーダンスは無視できる A x‐1 、 ブリッジが平衡状態にあるとき、検出器に 流れる電流は0 なので、 よって、 これから、 側から見た増幅器のインピーダンスと検出器のインピーダンスは十分に 小さいため、測定値が 雑音 や 浮遊インピーダンス の影響を受けにくい 未知容量 x1 浮遊容量 xG 容量性インピーダンス 既知容量側にG倍の可変ゲイン増幅回路を追加 A x‐1 既知固定容量 平衡状態の電流条件より 1 1 から により未知容量が測定できる Qメータ :インダクタンス と抵抗 の直列で表される未知インピーダンス 可変コンデンサ を に直列に接続し、 の値を変化 1/ 角周波数 で 直列共振 現象が観測される 周波数を変えながらコンデンサ電圧 を観測すれば、 その ピーク周波数 から共振角周波数 が得られ、 =10Ω, L=10μH,C=0.1~10nF 未知インダクタンス は また、共振周波数において 1/ このとき、コンデンサ両端に現れる電圧 は より、 一般に、 は共振の鋭さ( 値 )を表し、Q値は周波数、 インダクタンスに比例し、抵抗に半比例 したがって、 未知抵抗 は Im Re /
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