Vol.31. No. 6. 1987 (435) 〔テ ク ニ カ ル ノ ー ト〕 高 圧 セ ル ロー ス ア セ テー 戸 田 年 総 *・芝 中尾 ト膜 等 電 点 電 気 泳 動 法 紀 代 子 **・長 裕 子 ** 真 ***・大 橋 望 彦 * ミ板 を介 して氷水 で冷却 され, 泳 動 中の 膜面温 度 は常 は じめ に に2℃以 下 に保 たれ る. なお, この アル ミブ ロ ックは, 等 電 点 電 気 泳 動 法 は, 蛋 白質 の 僅 か な荷 電 の 違 い を 試料 塗布 時や 洗浄 時 の操 作性 を考 え, 取 り外 しが で き と ら え て分 離 で き る卓 越 した 方 法 で あ る た め, 近 年 臨 る構 造 とした. 第2の 改良 点 は, 高電 圧 で泳動 を行 っ 床 検 査 の分 野 に お い て も利 用 さ れ 始 め て い る が, そ の 支 持 体 は ア ガ ロ ー ス1,2)やポ リア ク リル ア ミ ドゲ ル に 限 られ て い る. しか し, 検 査 室 で 電 気 泳 動 の 支 持 体 と して 圧 倒 的 に 多 く用 い られ て い る の は セ ル ロ ー ス ア セ テ ー ト膜 (セ ・ア 膜) で あ る. 取 り扱 い が 容 易 で あ る こ とか ら等 電 点 電 気 泳 動 に もセ ・ア 膜 を 利 用 した い が, 現 在 市 販 さ れ て い る汎 用 の 泳 動 槽 を用 い, 従 来 の 手 引 書 通 りに 行 って も鮮 明 な泳 動 像 は 得 られ ず, 実 用 的 で は な か った. そ こ で我 々 は, 2次 元 セ ・ア 膜 電 気 泳 動 法3)の開 発 を 行 っ た 経 験 を も と に 装 置 と操 作 法 の 再 検 討 を行 い, セ ・ア 膜 等 電 点 電 気 泳 動 法 に 至 適 な 専 用 装 置 と, 検 査 室 に 適 し た 標 準 操 作 法 を開 発 し た. 1. セ ・ア 膜 等 電 点 電 気 泳 動 槽 電 気 泳 動 装 置 一 式 の 外 観 をFig. 1-1に, 泳 動槽 の断 面 図 をFig. 1-2に 示 す. この 装 置 の 第一 の 特 微 は, セ ・ ア 膜 を 載 せ る 台 が 熱 伝 導 の 良 い ア ル ミブ ロ ッ ク に 変 更 され た 点 で あ る. そ の 結 果, 高電圧 で の泳動 に耐 える Fig. 1. Apparatus for high-voltage isoelectric on cellulose acetate membrane. よ う に な り, 分 離 時 間 の 短 縮 と分 離 性 能 の 向 上 が 同 時 に 実 現 され た. High-voltage **東 isoelectric focusing on Medical and Dental University ***東 京 医 科 歯 科 大 学 医 学 部 第1生 and Dental Correspondence of cellulose Hiroko Department 京 医 科 歯 科 大 学 医 学 部 付 属 病 院 検 査 部; Medical acetate 1987年9月12日, membrane. Cho**, Makoto of Biochemistry, Department Hospital 化 学; The First of Nakao*** Tokyo Clinical Department of and Mochihiko Metropolitan Biochemistry, Biochemistry, Ohashi*. Institute Faculty Faculty of of of Gerontology Medicine, Tokyo Medicine, Tokyo University address: Tosifusa Toda, Department Gerontology (受 付 1. Exterior view of a set of the apparatus. 2. Cross-sectional view of the electrophoresis vessel. この ア ル ミブ ロ ッ クは, 冷 却 槽 の ア ル Tosifusa Toda*, Kiyoko Shiba**, *東 京 都 老 人 総 合 研 究 所 生 化 学 部; focusing 受 理 1987年10月1日) -65- of Biochemistry, Tokyo Metropolitan Institute (436) 生物 物理 化学 て も膜 の湿潤 度 が一 定 に保 たれ るよ う, 冷 却 台の大 き ス ル ホ サ リチ ル 酸, さ を膜 の大 きさに まで縮小 し, 蓋の天 井 も低 くした (泳 タ ノー ル, 酢 酸, ト リ ク ロ ル 酢 酸 は 試 薬 特 級 を, エ グ リセ ロ ー ル は 試 薬 一 級 を使 用. 動 槽 内の空 間 を最 小 限 に した). また, アプ リケー ター 4. 試 薬の調 製 を用 いて の血清 塗布 が行 え るよ う, 市販 の アプ リケー 両 性 担 体 液: ター に合せ て支 持 台 を作 製 した. 2. その他 の装置 および器具 類 陽 極 液: 30% サ ン プ ル ア プ リケ ー ター は ヘ レ ナ 研 究 所 製 の8検 用, マ イ ク ロ ピペ ッ トは ドラ モ ン ド製 の10μl用 用. 電 源 は1500Vま 体 酸 を0.1mlの (ア ナ テ ッ ク の Model-3110な 1mlの 固 定, 染 色, 脱 色 に 用 い るバ ッ ト, 液 を セ ・ア 膜 お よ び 薬 品 類 等電点 電気 泳動 の セ ・ ア 膜 (セ パ ラ ッ ク スEF, %(W/V)) お よび 両 性 担 体 (セパ ラ イ ン, pH3.5-10, は 富 士 写 真 フ ィ ル ム 製 を使 用. リ リア ン トブ ル ーG250 (CBBG250) 20 A液 は, 蒸 溜 水100mlに 1. Methods brane. of high-voltage 対 しCBBG250を B液 い ず れ も室 温 とす る. (V/V) とB液 (V/V) を等 量 混 合 して 染 色 液 エ タ ノー ル, B液 は20 酢 酸 液. 用 時 に 両 液 を等 量 混 合 し て 脱 色 液 乾 燥 液: 蒸 溜 水100mlに isoelectric (A, (混合 液 の 保 存 は不 可) 脱 色 液: A液 は40% とす る. -66- 割 合 で 溶解 した も の. B液 は, エ タ ノー ル100mlに % リン 酸, エ チ レ ン ジア ミ ン, 対 してスル ホサ ル ト リ ク ロ ル 酢 酸10gの 0.12gの 割 合 で 溶 解 し た も の. は日 本 合 成 製 を使 用. 対 しス ル ホ サ ル チ ル 割 合 で 溶 解. 染 色 液: ポ リ ゴー セ ノー ルGH-17) Table 対 し濃 リン 対 しエ チ レ ン ジ ア ミ ン を0. で 保 存 可 能) 用 時, A液 60× ビ ニ ル ア ル コー ル (PVA, シ ョ糖, シ ョ糖 液10mlに 蛋 白 固 定 液: 蒸 溜 水100mlに クマ ジー ブ は シ グ マ 製, (W/V) 割 合 で 加 え た もの. チ ル 酸6.4gと ッ トが 必 要 で あ る. 110mm) (W/V) 割 合 で 加 え た も の. (エ チ レ ン ジア ミン 原 液 は 皮 酸 を20gの 吸 い 取 る た め の 濾 紙, 膜 な ど を取 り扱 う た め の ピ ン セ 3. セパ ラ イ ン と20% 膚 に 付 け な い よ う に 注 意) ど) を用 い る と段 階 的 昇 圧 を 自動 的 に行 う こ とが で き る. そ の他, (W/V) 陰 極 液: 蒸 溜 水10mlに を使 で 出 る定 電圧 電源 で あれ ば 良 い が, プ ロ グ ラ ム 式 電 源 20% シ ョ糖 液 を 等 量 混 合 して 両 性 担 体 液 とす る. focusing on cellulose 対 し てPVA0.15g, acetate mem- グ リセ Vol. 31. No. 6. 1987 ロー ル7.5ml, で溶解 酢 酸5ml, 窒 化 ナ ト リウ ム0.01gの 割合 (437) (2)こ の 膜 を, ア ル ミブ ロ ッ ク に 接 着 され た ガ ラ ス板 の 上 に, 気 泡 が 入 ら な い よ うに 注 意 して 載 せ る (Fig. 2 (室温 で 保 存 可 能). -1). 5. 操 作法 電 気 泳 動 の操 作 法 の 概 略 を Table を Table (3)濾 紙 を重 ね, 指 先 で 擦 っ て 余 分 の 両 性 担 体 液 を吸 1-1, 蛋 白染 色 法 1-2に 示 す. (4)濾 紙 を新 し く し, 直径1cm程 〔1〕セ ・ア 膜 の 平 衡 化 (1) 60×110mmの セ パ ラ ッ ク スEF膜 を両性 担 体 液 に 浮 か べ, 膜 面 下 か ら液 を均 一 に しみ 込 ませ た 後 に 液 中 に 沈 め て約1分 い取 る (Fig. 2-2). 間 静 置 す る. Fig. 2. Operations in high-voltage isoelectric on cellulose acetate membrane I. 度 の 試 験 管 を両 手 で 押 え 付 け な が ら数 回 こ ろ が せ て, 膜 面 の 両 性 担 体 を均 一 化 す る (Fig. 2-3). 〔2〕泳 動 槽 の 準 備 (1)セ ・ア 膜 を載 せ た ア ル ミブ ロ ッ ク を, 泳 動 槽 内 の focusing 1. Separax EF membrane equilibrated with carrier-ampholyte solution was placed on the top of the epoxy-resin coated aluminum block. 2. Excess carrier-ampholyte solution was removed by first gently rubbing over a dry filterpaper with fingers. 3. Then a test tube was rolled over another filterpaper to achieve the uniformity of solution content. -67- Fig. 3. Operations on cellulose in high-voltage isoelectric acetate membrane II. focusing 1. Electrode wicks wetted with anolyte and catholyte respectively were placed at the positions for electrode attaching on the membrane. 2. Ice and water were put in the cooling chamber. 3. After the pre-run, samples of human sera were applied using an applicator. (438) 生物 物理 化学 ア ル ミ板 に 載 せ る. (2)セパ ラ ッ クスEFに 58mmの (2)染色 液 に6分 添 附 され た 電 極 ウ イ ッ ク (5× ガ ラ ス 線 維 濾 紙) 各1本 ず つ を, 陽 極 液 お よ び 陰 極 液 に そ れ ぞ れ 浸 し, 乾 い た 濾 紙 上 に数 秒 間 載 せ 液 を揺 す る) (3)脱色 液 に 浸 して 振 と う し, バ ッ クが 白 くな る まで 脱 色 す る. (約5分 (4)蒸溜 水 で1分 て 余 分 の 液 を吸 い取 る. (3)この 電 極 ウ イ ッ ク を, セ ・ア 膜 の 両 端 が 重 な る位 置) (白金 電 極 程 度, 液 を新 し くす る) 間 す す ぎ, 濾紙 に 挟 ん で 余 分 の 液 を (5)この 膜 を ガ ラ ス 板 に 張 り付 け, 余 分 の 乾 燥 液 を テ イ ッ シ ュ ペ ー パ ー 等 で 十 分 に 吸 い取 っ た 後, 室 温 で 一 (4)蓋 を閉 じ, 電 源 コー ドを接 続 す る. 晩 (5)冷却 槽 に, 氷 と水 を入 れ る (Fig. 3-2). (ま た は37∼50℃の 乾 燥 器 で1時 間 以 上) 乾 燥 す る. (6)ガラ ス 板 か ら剥 が し, 写 真 保 存 用 の トレ フ ァ ン袋 〔3〕サ ン プ ル の 塗 布 と電 気 泳 動 (1) 500Vで30分 間 ご とに3回 吸 い 取 っ た 後, 乾 燥 液 に15分 間 浸 す. に 置 き, ピ ン セ ッ トで 軽 く押 え て 膜 に 密 着 させ る (Fig. 3-1). 間 浸 して, 蛋 白質 を 染 色 す る. (時 々 に入 れ て保 存 す る. 観 察 お よ び 写 真 撮 影 は, 透 過 光 に 間, 予 備 通 電 す る. て 行 う. (2)ア プ リケ ー タ ー 用 サ ン プ ル トレ イ の 各 溝 に, マ イ おわ りに ク ロ ピペ ッ トを用 い て5μlの 血 清 を入 れ る. (3)ア プ リケ ー タ ー をサ ン プ ル トレ イ の 上 で 数 回 上 下 させ, 先 端 の 金 属 部 分 に血 清 を 馴 染 ませ, 一 度 濾 紙 に 本法 (高圧 セ ・ア 膜 等 電 点 電 気 泳 動 法) で 血 清 の 分 離 を行 っ た 結 果, 分 離 能, 再 現 性 と もに 十 分 満 足 の い 空 塗 布 を行 っ て か ら, 再 び 同 じ操 作 を行 っ て, 塗 布 用 く泳 動 像 が 得 られ, 操 作 性 の 点 で も検 査 室 で の 使 用 に の サ ン プ ル を ア プ リケ ー タ ー に採 取 す る. ((1), (2)の操 適 し た 方 法 で あ る こ とが 確 か め られ た. 至 適 条 件 の 検 作 は 予 備 通 電 の 終 了 直 前 に行 う) 討 内容, (4)ア ル ミブ ロ ッ ク を 取 り出 し, 陰 極 側 に ア プ リケ ー ター 支 持 台 (泳動 槽 に 付 属) お よび 分 離 結 果 の 詳 細 に つ い て は 別 途 報 告 す る4,5). を は め る. 文 (5)支持 台 に ア プ リケ ー タ ー を 固 定 し, ノ ブ を数 秒 間 押 して, セ ・ア 膜 に 血 清 を移 す (Fig. 3-3). 1回 の 操 1) ア ル ミブ ロ ッ ク を 泳 動 槽 内 に 戻 し, 300Vで10分 間, 1500Vで45分 K, et al.: Clin. Chim. Acta, 137: 115, 1984. 作 で 約0.3μl塗 布 され る. 500Vで30分 Sano, 献 間, 間, 段 階 的 に 通 電 を行 2) 島 尾 和 男: 生 物 物 理 化 学, 31: 37, 1987. 3) Toda, う. 4) Toda, 〔4〕蛋 白 質 の 染 色 お よ び 膜 の 乾 燥 5) 芝 (1)泳動 終 了 後, た だ ち に セ ・ア 膜 を 取 り出 し, 固 定 液 に10分 間 浸 し て 蛋 白質 を 固 定 す る. -68- T. et al.: Anal. Biochem., 119: 167, 1982. T. et al.: Electrophoresis 紀 代 子, 他: 生 物 物 理 化 学 (in press) (投稿 中)
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