平成 27 年 6 月 10 日 平成 27 年度 定期考査に当たって 都立総合芸術高等学校長 市川 治郎 チャイム 午前8時。突然鳴り響いたチャイムの音色に、驚くとともに聞き惚れてしまいました。たかが チャイムなのになぜ? 本校はいわゆる「ノーチャイム制」を導入しており、教職員も生徒も時間の自己管理をモット ーとしています。毎朝8時30分の登校時間になると、教室にはさっと生徒が集合しており、き ちんと出欠確認がなされているのです。でも定期考査の時だけは、全校一斉にチャイムを鳴らし て、試験時間を管理しているわけです。 4 月の着任当初、本校にはチャイムがないので本当に困りました。これまでの長い教員生活の中 で、私の生活はずっとチャイムとともに在りました。だから朝夕はもちろん、授業開始、終了、 昼休みのチャイムが聞こえてこないと、何か気合いが入らないというか、生活のけじめが失われ てしまったようで、とても寂しい気持ちでした。そこで、久しぶりに聞いたチャイムにおおげさ に感動したのです。 毎時間は無理でも、せめて朝夕ドーンッ!と一発ずつ、試合開始と終了合図のように、大太鼓 でも鳴らしてもらえないかなあ、というのが私の本音です。 さて言うまでもなく、私たちは過ぎてしまった時間を遡ることはできません。しまったと思っ ても遅刻は元に戻せません。 「タイムマシン」の夢はずいぶん昔から語られて来ましたが、今のと ころ実現しそうな気配もありません。 そのため、心配性の私の腕時計はいつも 5 分ぐらい進めてあって、もちろん私自身がそれを知 っているのですから、無意味な余裕時間と言われればその通りなのです。 しかし例えば、遠いところから通学している人に遅刻が少ないのは、この余裕時間の考え方や 持ち方にも理由があるのではないでしょうか。 「電車やバスが遅れるかもしれない」と思えば、き っとかなりの余裕をもって家を出ているはずです。 苦しくつらい試験勉強も、できればそのような余裕をもって計画的にできれば、さらに成果が 上がるのではないかと考えます。 美術、音楽、舞台表現を専門とする本校でも、基礎となる普通教科の学力はとても大切です。 高校生の今しか身に付けられない学力をしっかりと身に付けてください。そして、そのための勉 強時間を、毎日きちんと確保するようお願いします。 この定期考査期間中は、試験勉強に打ち込む生徒たちが、真剣な表情で問題集を読みながら歩 く姿を見かけます。それはまるで、昔話で聞いた二宮尊徳(金治郎。江戸時代後期の農政家。ま き束を背負って読書しながら歩く模範的な勤労少年像で有名。 )の姿そっくりです。でも歩きなが らの読書は、本当に危ないからやめてくださいね。 生徒の皆さんの、定期考査でのご健闘を祈ります。
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