輸入粗飼料の情勢

平成27年
5月
8日
輸 入 粗 飼 料 の 情 勢
全 酪 連 購 買 部
購 買 推 進 課
北米コンテナ船情勢
北米西岸港湾労組(ILWU)/ 使用者団体(PMA)間の新協約妥結に向けての交渉は米国
時間の2月20日に仮合意がなされた後、3月30日から4月3日の ILWU 幹部執行委
員会の協議を経て承認を得ました。最終決定は全組合員による批准投票をもって5月
下旬に下される予定となっています。
港湾作業の平常化に伴い、本船スケジュールは回復してきていますが、各ターミナ
ル内に搬出入される貨物量が急増しターミナル内のスペースが不足しており荷揚げや
実入り、空コンテナの搬入が一部制限されています。
また、ターミナルの内外におけるトラッカー、シャーシ、空コンテナの不足や貨車
の不足は依然として続いており、今後も状況を注意深く追っていく必要があります。
4月には、港湾状況の回復と同時に積み地では海上運賃の交渉が行われました。各
船会社、運賃一括値上げ(GRI)にて$50~$200の値上げを行いましたが、5月以降
のさらなる値上げの発表は今のところ出ていません。
カリフォルニア州の干ばつ
下の図は4月28日時点の米国西部11州の干ばつの様子です。カリフォルニア州
の中部からネバダ州の一部に渡って、短期的にも長期的にも深刻な影響を及ぼす歴史
的な干ばつを示す濃い赤色が広がっています。これらの地域では作付品目や刈取りの
回数等が非常に制限される見込みです。またカリフォルニア州の主要な貯水池におい
ても貯水容量に対し半分程度かそれ以下のところが多くなってきています。これらの
地域の水不足は水源であるシエラネバダ山脈の冬期の降雪不足が主要因となっていま
す。スーダングラスやクレイングラスの主産地であるインペリアルバレーの灌漑水は
コロラド川から引いており、その水源は豊富な積雪量のあるロッキー山脈系であるた
め、水の供給力については大きな問題はありません。
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ビートパルプ
1. 米国産新穀状況
産地では新穀の作付けが開始されています。米国は全般的に例年に比べ温暖な気候
となっており、ビートの新穀作付けは湿気の強い天候が続くミシガン地区を除き、例
年よりも約2週間早くスタートしました。作付面積は昨年と比べてやや減少との予想
ですが、種子の品種改良が進み、単収が増加傾向にあるため生産量は前年並みと予想
されています。
しかしながら、輸出向けの主産地ミネソタ/ノースダコタでは、昨年 9 月からこの 2
月までの降水量が 1800 年以降 2 番目に少ないものとなっており、カリフォルニア州程
ではないものの、かなりの干ばつとなっております。土壌水分が著しく低い状態での
作付けが今後の生育にどのような影響を及ぼすのか非常に懸念されています。
2. 世界のビート状況
世界的に砂糖価格の低迷が続いています。ブラジルの通貨、レアル安を背景に世
最大の砂糖生産国であるブラジルが大量の砂糖を供給しているため、市場の在庫が過
剰となっており、価格はまだしばらくの間低迷することが予想されています。
このような状況を受け、欧州では砂糖の生産意欲が減退しており、欧州産の新穀ビー
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トの作付面積は大きく減少する見通しとなっております。
ビートパルプの需要面について、中国では未だ輸入品目として許可がおりていませ
んが、米国など複数の国に対し輸入許可に向けた手続きを行っており、数年の間に中
国がビートパルプの輸入を開始する可能性が高い状況となっています。巨大な飼料需
要を抱える中国が輸入市場に参入した場合、ビートパルプの市場に大きな影響を与え
ることは容易に想像できます。今後の動きには大いに注目する必要があります。
アルファルファ
カリフォルニア州
カリフォルニア州の最南部エルセントロでは現在 2 番刈の終盤になっており、3 番刈
が開始されるところです。1 番刈は例年より遅めのスタートでしたが、スケジュールも
徐々に回復して来ているようです。品質的には輸出向けのものが生産されてきており、
成分はプレミアムからNO1クラスの生産が増えているようです。
新穀のスタート価格については、米国乳価の下落により、昨年の旧穀スタート時よ
り安価で推移しています。一方で、穀物相場は低迷しており、国内酪農家は乾草を購
入しやすい環境になってくる可能性もあります。さらには、エルセントロは種子の生
産地でもあるため、NON-GMOの作付けが多くを占めており、完全NON-GM
Oの輸入しか許可していない中国の引き合いが強く、相場はやや強含みの傾向を見せ
ています。また、干ばつによって放牧草が取れていないため、低級品アルファルファ
への肉牛向けの引き合いが強まっています。乳価とは逆に肉価格は好調なこともあり、
相場を下支えしていくと予想されています。
当地域からの中国向けの新穀の出荷は始まっています。中国においても乳価はやや
低迷しており、輸入乾牧草の需要は弱まるとの予想もありましたが、いわゆるプレミ
アムレベルの高い CP の上級品の引き合いも増えています。一部サプライヤーでは5月
中は中国向けの出荷予定が多く、急なオーダーの追加が受けられない状況になってい
るようです。
カリフォルニア州北部サクラメントバレーでも現在 2 番刈が始まっています。品質
は全般的に良好なようですが、干ばつと少ない降雨によって単収も減っているとのこ
とです。相場は昨年よりは安いものの、他地域に比べると高いレベルで推移しそうで
す。
ワシントン州
コロンビアベースン全体での新穀の作付面積は横ばいの見込みです。
コロンビアベースンの南部では、早い圃場では今週から刈取りが開始されています。
現在のところ国内のサイレージ向けが主のようですが、例年より 10 日~2 週間ほど早
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いスタートとなっています。今後 10 日の気温は 20~25℃(70~80F)の予想で断続的
な降雨もなさそうですので、スムーズな収穫が期待されます。
コロンビアベースンの中部および北部でも、一番早い圃場では天候が順調であれば、
5 月 1 週に刈取りを開始すると言われていますが、今後の天候や予報を睨みながらの進
捗になると思われます。
旧穀の在庫は、引き合いが強まっている中国向けの輸出が好調であるため、産地の
在庫は余裕がなくなってきているようです。
アルファルファ1番草圃場(2015年4月30日撮影 ワシントン州 Basin City 近郊)
オレゴン州
オレゴン州もカリフォルニア州と同様で干ばつの傾向は変わりません。地下水を利
用している生産農家は、より深く掘削する必要があり、貯水池の水を利用している生
産農家は貯水量によって使用制限が掛かる可能性があるという問題を抱えております。
このように灌漑水の問題はありますが、現状1番刈は順調に生育しているようです。
1番刈の開始時期は例年並みで、クラマスフォールズでは 5 月最終週、クリスマスバ
レーでは6月2週前後と予想されています。
ネバダ州
干ばつの影響からイェリントン、スミスバレーでは地下水の使用制限が出ておりま
す。両地区は酪農家が多いカリフォルニア州から近く、以前からアルファルファの買
付け競争が激しい地域でしたが、今年も昨年に引き続き、使用できる水は換金性の高
い野菜に取られる可能性も高いと言われています。同州の内陸部では今のところ、取
水制限がないため、天候次第ではこれらの地域からの供給が増えてくるかもしれませ
ん。
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ユ タ 州 /ア リ ゾ ナ 州 /ニ ュ ー メ キ シ コ 州
ユタ州では今のところ灌漑水の使用制限はありません。4月中はまだ気温が低い日
が多かったようですが、5月上旬以降から気温も上がってくるようで、同州中部では 5
月下旬には 1 番刈が開始すると見込まれています。
アリゾナ州では 1 番刈が相当量米国内に流通されています。価格も生産農家が考え
ていたよりも高値で動いているようです。
ニューメキシコ州北部では冷涼な気候で推移していたため若干スケジュールが遅れ
ており、1 番刈の刈取り 5 月下旬の見込みとなっております。
他国向け状況
中東向けの輸出については、海上運賃が上昇基調であり、現在日本向けに比べ 3 倍近
くとなっています。特に UAE(アラブ首長国連邦)のコンテナ貨物は圧倒的に輸入が多
く、UAE で発生した空コンテナを他国に回漕しなければならないため、各船社はコンテ
ナ繰りに苦慮しており、サービスの休止も発生しているようです。そのため UAE をは
じめとする北米発中東向けの数量はまだ持ち直していないようです。
また韓国は旧穀には興味なく、新穀を待っている状況とのことで、各地域で 1 番刈
が本格化してきた際には買付け競争が始まる可能性もあります。
旧穀の在庫や他国向けの需要は各サプライヤーで状況が異なるため、アルファルフ
ァの相場を含め、未だ見通しがはっきりしない部分が多いのが現状です。
チモシー
<米国産>
コロンビアベースンの今年度作付面積は 70,000-75,000 エーカーと昨年と比べ微増
が予想されています。天候は順調で、このまま温暖な気温が続けば、コロンビアベー
スン南部の早い圃場では 5 月下旬から刈取りが開始される見込みです。
一方、キティタスバレーでは 27,000 エーカー前後の作付け見込みで、こちらも若干
の増加の予想となっていますが、前号で記載した通り水不足の懸念があります。4 月
20 日現在、このエリアの灌漑水の供給は例年に比べ 54%しかなく、2 番刈を断念して
他作物への転作、もしくは何も作付せず、来年に備える生産農家も増えそうです。特
に転作作物の小麦は大手メーカーがこの地域で生産された分を全量契約していること
からリスクの少ない換金作物として認知されており、1番刈以降は小麦の生産量が増
えるかもしれません。
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東ワシントン~アイダホの非灌漑地域(ドライランドエリア)も種子の売れ行きが
好調なことから作付け増、生産量の増が期待されています。
旧穀の在庫は、サプライヤーによっては特に低級品から中級品が残っていると言わ
れており新穀の時期に向け旧穀価格の調整が行われる可能性もあり注意が必要です。
<カナダ産>
ドライランドである中部クレモナエリアでは降雪量不足による土壌水分の不足が懸
念され始めています。水分不足によりフィールドに入りやすいため播種のスケジュー
ルは早まっているものの、生育時期の水分不足が問題になるかもしれません。
今後、順調に生育したとして南部レスブリッジでは 7 月上~中旬、中部クレモナで
は 7 月中旬~8 月上旬あたりの刈取り開始見込みです。
価格については時期尚早ではありますが、カナダドルと US ドルは歴史的に見ると原
油価格と連動しており、仮に原油価格が低調に推移した場合、今後カナダドルが安く
なる可能性が強くなっています。そのため、ここ数年価格競争力があまりなかったカ
ナダチモシーの需要が高まる可能性があります。
スーダングラス
4月15日付け発表の作付面積によると、デュラム小麦は前年同月比222%の56,252
エーカーと前年に比べて大きな伸びを見せています。一方、スーダングラスの作付面積は前
年同月比61%の20,561エーカーとなっており、この時期としては過去5年間で最低の水準
となっています。しかしながら、デュラム小麦の播種は既に終了しており、スーダンの播種は
現在も進行中ですので悲観的になる必要はありません。過去においても、今年と同様にスー
ダンの作付面積が低い年はありましたが、スーダン全体の供給力を考えると、日本向けに不
足した年はありません。また、インペリアルバレーだけでなく、インペリアルバレー周辺の他
地域、カリフォルニア州中央・北部やアリゾナ州でもスーダンが生産されていることもあり、全
体の供給量が大幅に不足することは考えにくい状況です。
ただし、インペリアルバレーにおいて早播きのスーダンが減っていることは事実で、早播き
由来のプレミアム品の供給力はタイトになる可能性はあります。
また、スーダンの輸出市場はほぼ日本向けで占められており、円安の影響によってプレミ
アム品への需要は次第に弱まっている傾向にあるため、今後の相場形成は日本側からの産
地へのアプローチ次第という局面になりそうです。インペリアルバレーの作付面積の動向だ
けを見ずに冷静に対応する必要があります。
加えて、一連の港湾問題から、十分出荷できず例年以上に繰り越し在庫を持っているサ
プライヤーもあり、新穀の生産量にこれらを含めた2015年夏から2016年産までの全体の
供給量については大きく負となる要素は少ないと考えられます。
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クレイングラス(クレインは全酪連の登録商標です)
4月15日付の作付面積の報告によると、クレイングラスは昨年同月比95%の16,111
エーカーとなっています。昨年と比べやや減少していますが、供給力に問題はありません。
既に1番刈はほぼ終了しており、良い緑目のソフトなものが収穫されております。収穫開始
当初から暖かい気温が続いており、例年に比べてやや成育も前倒しで行われており、5月上
旬には2番刈が開始される見込みで、このまま良好な天候が続けば、2番刈の品質も期待で
きます。
産地価格は日本および韓国からの引き合いを受け、僅かに上昇し始めています。日本円
は米ドル対比で厳しい状況が続いておりますが、韓国ウォンは値上がりを見せています。4
月29日には今年の最高値1ドル=1,070ウォンを付けました。クレインの輸出マーケットは
日本と韓国が殆どを占めており、一般的に日本は品質、韓国は価格を重視していると言わ
れていますが、このままウォン高が続けば、日本が求めるような品質にも需要が集まる可能
性は考えられます。
バミューダヘイ
バミューダの作付面積は前年比微増しています。背景の一つに中国からの種子の需要が
増加している点が挙げられていますが、種子価格自体はさほど強めに推移しているわけで
はなく、今後のヘイの生産量については予想が難しい展開になっています。
ストロー類(フェスキュー・ライグラス)
旧穀の在庫状況について、フェスクとアニュアルライストローは未契約在庫がほと
んどない状態ですが、ペレニアルライグラスストローは未だ未契約在庫を抱えている
生産農家も残っているようです。産地価格は依然としてアニュアル種が安いため、ペ
レニアル種よりも多く韓国や日本向けに輸出されています。
フェスクに関しては、韓国で在庫がほとんどないため積極的に買い付けを継続して
おり価格は高止まりしています。
米国農務省(USDA)発表の最新の作付面積予想は以下の通りです。
2014 作付面積
2015 予想
ペレニアル種
132,000 エーカー
125,000 エーカー
アニュアル種
107,000 エーカー
109,000 エーカー
フェスク
150,000 エーカー
152,000 エーカー
ストローの産地であるオレゴン州ウィラメットバレーにおける水不足は、他地域と
同様の状況ですが、ストローは非灌漑での栽培のため生産への影響は今後の降雨次第
と言えます。
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豪州産オーツヘイ
現段階の在庫状況は、総じて低級品が非常に少なく、中級品から上級品も徐々に薄くなっ
てきていると言えます。当初、低級品を買付していた中国がその在庫が少なくなるについて、
中級品へ需要をシフトさせています。各社、年明けからの豪ドル安により、需要増および在
庫減の環境下ながら価格は軟調傾向で推移していましたが、出荷は順調であり、サプライヤ
ーやグレードによっては新穀までに在庫が不足する可能性が出て来ており、今後の価格は
強含みで展開すると予想されます。
現時点での各州の2015年産の作付見通しは下記の通りです。
東豪州
作付面積は2014年産と同程度の見込みで、5月下旬ころから播種が行われる予定です。
降雨は観測されていますが、今後もより多くの断続的な降雨が必要です。
南豪州
播種は間もなく開始される見込みです。新穀の作付面積は2014年比で10%程度減少す
ると言われています。レンズマメ等の他の作物価格が好調であることが要因の一つとされて
います。4月には概ね50mm前後の降雨が観測されており土壌水分も比較的良好な状況と
言われています。
西豪州
ウイートや菜種の相場が堅調なこと、過去数年のオーツヘイの作柄が思わしくなかったこと
から新穀の作付面積は20%程度減少する見込みです。播種は5月中旬ころから開始される
ようです。
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豪州全域
4月の降雨量
以
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上