労務管理のリスクマネジメント ~平成27年4月1日改正パートタイム労働

労務管理のリスクマネジメント
平成27年4月1日改正パートタイム労働法が施行されます
平成27年4月1日から、パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるよう
にするため、パートタイム労働法や施行規則、パートタイム労働指針が変わります。
1.実務上特に大切な改正ポイントは次の通りです。
(1)パートタイム労働者の公正な待遇の確保
・正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
<法第9条>
有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組みが正
社員と同じ場合には、正社員との差別的取扱いが禁止されます。
例えば、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者が、職務内容も人材活用の仕組み
も正社員と同じであるにもかかわらず、正社員には支給されている各種手当の支給対象とな
っていない場合には、改正後は、正社員と同様の支給対象となることが考えられます。
・パートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、職務の内容、人材活用の
仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
<法第8条>新設
「短時間労働者の均等待遇」といった考え方を念頭に、雇用管理の改善を図っていくこと
となります。
(2)パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
パートタイム労働者を雇い入れたときは、雇用管理の改善措置の内容について、事業主が
説明しなければならない。
・パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備の義務の新設
<法第16条>
事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整
備しなければなりません。
例えば、相談担当者を決めて対応させる、事業主自身が相談担当者となり対応する等。
・相談窓口の周知 <施行規則第2条>
パートタイム労働者を雇入れたときに、事業主が文書の交付などにより明示しなければな
らない事項に「相談窓口」が追加されます(相談担当者の氏名、役職、部署など)。
これにより、文書などによる雇入れ時の明示事項は、契約期間、仕事の場所、内容(労基
法15条による)と昇給、賞与、退職手当、相談窓口(パートタイム労働法)となります。
(3)パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
雇用管理の改善措置の規定に違反している事業主が、厚生労働大臣の勧告の従わない場合は
厚生労働大臣は事業主名を公表することができる。 <法第18条第2項>
※パートタイム労働者とは
パート、アルバイト、嘱託、準社員など呼称に関わらず、「1週間の所定労働時間が正社
員(同一の事業所に雇用される通常の労働者)の1週間の所定労働時間と比べて短い労働
者のことをいいます。フルタイムで働く人は、パートと呼ばれていたり給与が時給制であ
ったとしても、パートタイム労働法の対象とはなりません。
2.パートタイム労働者の雇用契約書の整備が必要です
改正パートタイム労働法では、新たに「相談窓口」を文書の交付などにより明示することが、義務
付けられます。
就業規則などで画一的に労働条件を設定することが難しいパートタイム労働者の雇用管理において
は重要な書類となりますので、雇用契約書の整備もさることながらその運用についても見直しが必
要です。
正社員とパートタイム労働者の雇用契約書を分けていないような場合は、正社員と労働条件が異な
る、賞与、退職金、雇用期間、特別(慶弔)休暇など、正社員の労働条件と比して低くなるものは
明確にしておくことが特に重要です。
3.契約更新に関しての注意点
有期契約をしている場合でも、契約更新が形式的なものとなっている等複数回繰り返すことにより
期間の定めのない契約とみなされることがあります。
実態に即した内容を定め、更新手続きについては期間満了前に行うなど、運用面についても整備し
ていくことが大切です。
また労働契約法による、無期契約への転換制度もあり、併せて押さえておきたいところです。
☆詳しくは厚生労働省のHPでご確認ください。
厚生労働省 ↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1o.html
パートタイム労働者用
労働条件通知書(例)
○○年 ○○月 ○○日
○○○○○○○○殿
事業場名称 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
所在地 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
使用者職氏名 ○○○○○○○○○○○○○○○○○ 印
1
雇用期間等
(1)期間の定めなし( ○○年 ○○月 ○○日 ~ 期間の定めなし)
(2)期間の定めあり( ○○年 ○○月 ○○日 ~ ○○年 ○○月 ○○日)
①契約の更新の有無
[自動的に更新・更新する場合がある・更新なし]
②契約の更新は次により判断する
・契約期間満了時の業務量 ・勤務成績、態度 ・能力
・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況
・その他(○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○)
2 試用期間 [ 有( 〇か月) ・ 無 ]
就業の場所
従事すべき
業務の内容
始業、終業の
時刻、休憩時
間、所定労働
外労働の有無
に関する事項
休 日
及び
勤務日
休 暇
賃 金
退職に関
する事項
1 始業・終業の時刻等
始業( ○○時 ○○分) 終業( ○○時 ○○分)
2 休憩時間( ○○ )分
3 所定時間外労働の有無 [ 有 (1か月 ○○時間程度) ・ 無 ]
4 休日労働 [ 有 (1か月 ○○日程度) ・ 無 ]
1 休日 :毎週 ○曜日、国民の祝日、その他(○○○○○○○○○○)
2 勤務日 : 月 火 水 木 金 土 日 (勤務日に○)
1 年次有給休暇 6か月勤務した場合 → 労働基準法の定めの通り
2 その他の休暇 ( 有 ・ 無 )
1 基本賃金 時間給( ○○○○円)
2 手当 ○○手当 ○○○○○円(月額)
通勤手当 ○○○○○円(日額 ・ 月額)
3 賃金の締切日 毎月 ○○日
4 賃金の支払日 毎月 ○○日
5 賃金の支払方法 銀行振込
6 昇給 ( 有 毎年 ○○月 ・ 無 )
7 賞与 ( 有 毎年 ○○月 ○○月 ・ 無 )
8 退職金 [ 有 (勤務 ○○年以上 ・ 無 ]
9 労使協定に基づく賃金支払時の控除 [ 有 (○○○○) ・ 無 ]
1 定年制 [ 有( ○○歳) ・ 無 ]
2 継続雇用制度 [ 有( ○○歳まで) ・ 無 ]
3 自己都合退職の手続 (退職する ○○日以上前に届け出ること)
4 解雇の事由及び手続
・詳細は、就業規則第○○条~第○○条、第○○条~第○○条
1 社会保険の加入状況 ( 厚生年金 ・ 健康保険)
2 雇用保険の適用 ( 有 ・ 無 )
その他
3 雇用管理の改善等に関する事項に関わる相談窓口
部署名 ○○○○○○○○○○ 担当者職氏名 ○○○○○○○○○○○ 連絡先 ○○○○○○○○○○
4 具体的に適用される就業規則名 (○○○○○○○○○○)
本通知書及び就業規則に定めのないものについては、労働諸法令の定めによる
ものとし、疑義が生じた場合については、協議するものとする。
※以下は、「契約期間」について「期間の定めありとした場合についての説明です。
労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開始
するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日までに労
働者から申込をすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めの
ない労働契約に転換されます。
上記労働条件に基づき誠実に勤務します。
平成 ○○年 ○○月 ○○日
従業員氏名
印
住 所
連 絡 先
* この通知書は一般の様式であり、実際に使用される場合は実情に合わせて、適宜
修正・加筆すること。その場においても、労働基準法、パートタイム労働法他労
働諸法令に抵触しないようにご留意ください。