平成26年12月 佐藤善恵 税理士 役員退職金は、税法上特別な扱いを受けます。また、一般的に用いられる「役員」や「退職金」の言葉とは無関係に、役員退職金として扱われ る場合がありますから、注意が必要です。 1 法人税における「役員退職金」の位置づけ Point ❶ 役員退職金は、過大な部分については損金算入できません! 法人税法は、役員退職金を、退職により支払われる臨時的な給与と捉えており、利益調整の防止等の観点から、役員退職金のうち過大な部分に ついて、損金算入を認めていません。 法人税法が捉える「役員への給与」 給 与 賞 与 退職金 一定のものは損金算入が認められていない Point ❷ 退職手当・一時恩給・死亡退職金・退職年金等 及び現物の支給等、支出の名義を問わず、退職 により支給される一切のものが含まれます。 使用人であっても、役員とみなされる場合があります! 損金算入に制限がある「役員への給与」ですが、法人税法は「役員」の範囲を「実質的に経営に従事している者」という点から、概念的に捉え ている点に留意が必要です。したがって、使用人であっても、同族会社において一定の持株割合があって法人の経営に実質的に従事している者な どは、役員と同様に扱われます(みなし役員)。 なお、執行役員は、「みなし役員」に該当しない限り、役員として扱われません。 法人税法上「役員」と扱われる範囲 取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、 監事、清算人 Point ❸ みなし役員 ○相談役、顧問等で地位や職務等からみて、他 の役員と同様に法人の経営に従事している者 ○同族会社の使用人で法人の経営に従事して一 定の持株割合がある者 現実の退職でなくても、「退職金」とみなされる場合があります! 実際の退職でなくとも、役員の分掌変更等で、実質的に退職したのと同様の事情が認められる者に支給される金銭等は、「退職金」とみなされ ることがあります。なお、「退職金」として扱われるか否かは、源泉徴収税額に大きく影響します。 「退職金」 現実の退職による退職金 2 役員退職金の損金算入の時期 原 則 例 外 株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の 属する事業年度。損金経理は必要ありません。 退職金の支給日の属する事業年度。損金経理が必要です。 *1 退職金の額が具体的に確定する事業年度よりも前の事業年度に、取締役会で退職金の 額を内定しても、その時点で損金算入することはできません。 * 役員の分掌変更等で、その後の給与額が 激減するなどした場合の退職金 3 過大な役員退職金の判断基準 次の 点及びその他諸般の事情を総合勘案して、判定します。 ❶ その法人の業務に従事した期間 ❷ 退職の事情 ❸ その法人と同種事業を営む法人で事業規模が類似するもの の役員退職金の支給の状況 退職年金の場合には、その年金を支給すべき各事業年度に損金算入します。 さ とう よし え 佐藤 善恵(税理士) 著者紹介 平成14年税理士登録。近畿税理士会税務・法律審理室審理員、同調査研究部専門 委員を経て、平成22年 月から平成26年 月まで大阪国税不服審判所国税審判官。 京都大学経営管理大学院経営学修士(専門職)、米国公認会計士協会正会員、 CFP ®、http://www.max.hi-ho.ne.jp/sato-cpta/ ▶著書 「社長のギモンに答える法人税相談室」 相談室」 (平成21年刊) 21年刊) 「税務訴訟と要件事実論」(共著)他 著)他
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