情報統合型物質・材料開発とは、従来の物質・材料科学とデータ科学とを

JST イノベーションハブ構築支援事業「情報統合型 物質・材料開発イニシアティブ」が採
択
NIMS を拠点にデータ科学をフル活用した材料開発を推進
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2015.06.11
このたび、JST(科学技術振興機構)「イノベーションハブ構築支援事業」に NIMS が拠点
実施機関として提案したイノベーションハブ「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ」
の採択が決定しました。
情報統合型物質・材料開発とは、従来の物質・材料科学とデータ科学とを融合させ
たまったく新しい材料開発手法です。膨大なデータ群の蓄積と、ビッグデータ解析の
一種である機械学習など、最先端の情報科学を駆使した解析を組み合わせ、新規物
質・材料を探査します。本拠点では、産学官の密接な連携によりいち早く革新的な磁
性材料や蓄電池材料などを開発し、社会実装することを目指しております。
当機構としては、既に昨年10月より機構内組織として「マテリアルズ・インフォ
マティクス・プラットフォーム」を設置し、本分野における体制を強化してきたとこ
ろですが、今回の採択を受けて、クロスアポイントメント制度等を活用しながら産学
官の人材糾合を図る等一層の体制充実を図り、我が国における情報統合型の物質・材
料研究のイノベーションハブとなるための取組を進めてまいります。
本事業は、寺倉清之氏をプロジェクトリーダー(PL)として、7月1日より正式に
開始される予定です。
<プロジェクトリーダー(PL)のコメント>
北陸先端大に在籍中の約6年前に、データ駆動型物
質・材料科学技術の研究を立ち上げようと、東京で3度
ばかり会合を開き、現在の統計数理研究所長の樋口教授、
京スパコン第2分野統括の常行教授にも参加してもらっ
た。また、約2年前から、JST - CRDS に協力して、我が
国における関連研究の立ち上げに努力してきたが、この
度、データ駆動型物質・材料研究のプロジェクトがスタ
ートすることに一先ず安堵する。一方、この課題につい
ては、物質・材料分野における一大潮流になる可能性が
あり、米国等でも関心が高く、既にいくつかの取組が始
まっている。我が国としても、物質・材料科学技術研究
のトップランナーとして、その強みを活かしつつ、懸命
の努力をしなければならないと決意している。
物質・材料研究においては、「物の理」を知る順方向の研究が強いことが特徴であり、
物質・材料研究におけるデータ駆動型研究は独自の動きと成果、実際の材料開発への実装
に繋がることが期待される。大量の情報が生み出される現状にあって、情報を賢く利用す
ることの意義は極めて大きく、データ駆動型研究が、物質・材料科学技術に新しい地平を
もたらすことになるだろう。有意な若い人たちの参画を強く期待する。
<潮田理事長のコメント>
物質・材料科学、計算科学、データ科学の融合、即ちデータ駆動型の物質・材料研究の
必要性は論を俟ちません。NIMSとしては、本分野を重点課題として捉え、既に組織内
に「マテリアルズ・インフォマティクスプラットフォーム」を立ち上げております。
今回の採択を契機として、より一層、この分野を巡る尋常でない展開のスピードやカバ
ーする範囲の広さや深さに対応するため、必要な産学官の広範な分野にわたる優秀な研究
者の結集を加速して参ります。
プロジェクトリーダーとなる寺倉氏の専門は計算科学ですが、氏は『計算科学は30年
前に生まれたが、当時、実験と理論に並ぶ第3の柱として計算科学を位置付けることにつ
いての賛同者は少なかった。それが長い年月を掛けて発展を遂げ、人材も多数育ち、物質・
材料研究に欠かせない第3の科学に成長した。』 と語っております。
30年後の今日、未踏の第4の科学と言われている「データ駆動型物質・材料研究」の
「芽」を育て「実」を結ばせるこの取組を、第3の科学で成功を収めた氏のリーダーシッ
プの下、産学官の研究者の参画の下、強力に推進していくことを期待しております。
<PL経歴>
1964年3月:東京大学工学部物理工学科卒業
1971年3月:理学博士学位取得(大阪大学)
1990年1月:東京大学物性研究所教授
1994年4月:産業技術融合領域研究所首席研究官、 アトムテクノロジー研究体副プロジェ
クトリーダー
2001年4月:産業技術総合研究所 計算科学研究部門長
2003年8月:北海道大学創成科学研究機構 教授
2007年2月:北陸先端科学技術大学院大学 特別招聘教授
2010年4月-2015年3月:東京工業大学 大学院理工学研究科 有機・高分子物質専攻 特
任教授
2012年3月:北陸先端科学技術大学院大学 退官
現在:物質・材料研究機構 フェロー、産業技術総合研究所 名誉リサーチャー、北陸先
端科学技術大学院大学 シニアプロフェッサー、東京大学 名誉教授