今後の課題 - 健康保険組合連合会

5 年 5 月作成
健保組合、健保連
2014
今後の課題
年度の活動と
国民皆保険制度を次世代につなぐ
医療保険制度改革に向けた取り組み
誰もが安心して医療を受けられる国民皆保険制度は、私たちの貴重な財産。この財産を守るため、
医療保険制度を超高齢社会に耐え得る仕組みに今、改革すべきです。全国の健保組合と健保連は、
一丸となって「あしたの健保プロジェクト」を展開し、改革に向けた主張の実現をめざしています。
Contents
Ⅰ.医療保険制度改革関連法案について
Ⅱ.今後の健保組合・健保連の活動について
Ⅲ.2014 年度の健保連の動き
Ⅳ.2015 年度 健保組合予算早期集計の概要
資料 健保組合の現況
皆様方には、平素より健保組合の事業運営に対する格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し
上げます。
世界に誇る日本の国民皆保険制度は、今、大きな岐路に立たされています。超高齢化の進展によっ
て高齢者医療費が急激に増える一方、医療保険の支え手である現役世代は減少し、その負担は増大
の一途をたどっています。高齢者医療費を支える現役世代の負担は、保険料収入の4割以上を占め
るという異常な状況にあり、すでに限界まで来ています。
そして、今年は全ての団塊世代が前期高齢者入りする年でもあり、異常な事態にますます拍車が
かかりかねません。高齢者医療費を、過度に現役世代に負担が偏った構造から、すべての国民で支
える仕組みへ再構築することが、今まさに必要です。健康保険の問題は「今そこにある危機」であ
ることを、行政、保険者、事業主のみならず、国民全体の共通認識としていかなければなりません。
しかしながら、今通常国会に提出された医療保険制度改革関連法案には、高齢者医療費の負担構
造の抜本的な改革案が盛り込まれていません。高齢者自身の負担のあり方そのものについて国民的
議論を行うとともに、2017 年 4 月に予定されている消費税率 10%への引き上げに合わせ、その財
源を高齢者医療制度に投入するなど、より踏み込んだ負担構造改革を断行し、国民皆保険制度を次
世代につないでいかなければなりません。
また、今年度は、健保組合にとって制度改革の年であると同時に、データヘルス計画が開始され
る年でもあります。データヘルスは、
全国約 3,000 万人の健保組合加入者の健康を守ることを目的に、
健保組合が推し進めている保健事業をさらに効率的・効果的に実施する試みであり、その成果は健
康寿命の延伸や医療費の適正化につながると期待されます。これまで最も効率的・効果的に健康づ
くりを行える保険者であることを自負してきた健保組合の真価が問われることにもなります。
本パンフレットは、2014 年度の健保組合・健保連の活動を総括するとともに、今後の制度改革に
向けた健保組合・健保連の考え方等をまとめたものです。事業主の皆様におかれましては、ご理解・
ご賛同賜りますとともに、健保組合・健保連に対する一層のご支援を賜りたく、心よりお願い申し
上げます。
2015 年5月
健康保険組合連合会
会長 大塚 陸毅
Ⅰ
医療保険制度改革関連法案について
「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」
(以
下、
「医療保険制度改革関連法案」という)が 2015 年 3 月に閣議決定され、通常国会で審
議が行われています(2015 年 5 月 15 日現在)
。 1
医療保険制度改革関連法案の主な内容
❶ 後期高齢者支援金の総報酬割の導入
・負担能力に応じた見直しを実施
・総報酬割を段階的に拡大
1/2 総報酬割(2015 年度)、2/3 総報酬割(2016 年度)、全面総報酬割(2017 年度)
❷ 国民健康保険の安定化
・国保への財政支援の拡充と都道府県単位の財政運営
❸ 負担の公平化等
・入院時食事療養費の段階的引き上げ
・紹介状なしで大病院を受診する場合の定額負担の導入
・保険料の算定にかかる標準報酬(月額・賞与)の上限ならびに保険料率
の上限の引き上げ
❹ その他
・協会けんぽの給付費への国庫補助率の見直し
・患者申出療養の創設
4
2
医療保険制度改革関連法案の問題点
(1)後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入
■健 保組合と共済組合の負担は合わせて約 2,400 億円増加します。健保組合全体では約
1,500 億円増加し、これに伴い事業主の負担も増加します。
■一方、国の協会けんぽに対する国庫補助は約 2,400 億円減少します。この減少分のうち、
約 1,700 億円が国民健康保険の財政支援に転用されます。
■この構図は、国保に対する国の財政責任を被用者保険の保険料負担に押し付ける「肩代わ
り」であり、まったく容認できるものではありません。
健保組合
共済組合
国
国庫補助減
2,400
億円
協会けんぽ
±0
900
億円
負担増
1,500
億円
負担増
協会けんぽへの
国庫補助減少分
「2,400億円」を、
健保組合、共済組合
が肩代わりする
構図です!
*厚生労働省の資料をもとに健保連が作成
(2)医療費適正化策
■毎年 1 兆円規模で伸び続ける医療費の適正化策を講じなければ国民皆保険を堅持すること
はできません。
■しかし、今回の医療保険制度改革関連法案に盛り込まれた医療費適正化策で保険財政に影
響がある項目は、入院時食事療養費の段階的引き上げのみであり、不十分な内容です。
健保連の評価
■今回の医療保険制度改革関連法案は、国保の財政対策を中心とした当面の弥
縫策であり、持続可能な制度の構築を志向したものとはなっていません。
■最大の課題は、超高齢化・人口減少が進むなかで増加し続ける高齢者医療費
の抜本的な負担構造改革です。
■国民皆保険を次世代につないでいくためには、すべての世代で負担を分かち
合い、真に持続可能で納得できる公平な制度の構築が必要です。
5
Ⅱ
今後の健保組合・健保連の活動について
国民医療費の約6割が 65 歳以上の高齢者にかかる医療費です。今後も高齢者医療費がこれ
まで以上に伸び続け、現役世代の負担がさらに増加することは確実です。
このため、健保組合・健保連は国民皆保険制度の堅持に向けて、さらなる改革の実現を政府
に求めていきます。
(1)高齢者医療費の負担構造改革の実現
高齢者医療費は、
▽現役世代の支援▽高齢者の保険料▽公費(税金)─によって賄われています。
現役世代のこれら支援にかかる保険料負担はすでに限界です。2017 年 4 月の消費税率
10%への引き上げ時に、その税財源を高齢者医療制度に投入するなど、より踏み込んだ負担
構造改革を断行するよう主張していきます。
◆健保組合の被保険者 1 人当たりの年間保険料は、8 年間で約 9.5 万円(25%)増加しています。
◆高齢者医療費への拠出金は、8 年間で約 9,700 億円(42%)増加しており、保険料収入に占め
る拠出金の割合は 43.7%、8 年間で 5.3 ポイント上昇しています。
保険料に占める拠出金の割合
被保険者 1 人当たりの年間保険料の推移
(万円)
49
9.5万円(25%)
47.9 万円
8年間で増加
47
(2015 年度予算早期集計)
43.7%
46.7 万円
46.2 万円
現役世代から納めている保険料
から高齢者医療制度の支援に使
われている拠出金
45
44.0 万円
43
保険
保険料収入
給付費等
7.5兆円
4.2兆円
41.7 万円
41
39
拠出金
3.3兆円
39.2 万円
38.4 万円
38.6 万円
37.6 万円
37
0
2007
08
09
10
11
12
13
14
15
(注)2007 ~ 12 年度までは決算、13 年度は決算見込、14 年度は予算、15 年度は
予算早期集計の数値
(注)上記保険料額には、事業主負担分を含んでいます。図表は健保連で作成
6
(注)2015 年度健保組合予算早期集計の数値
(注)保 険給付費等には、保険給付費、保健事業費、事務
費などを含む
(2)医療費適正化の推進
今後の医療費適正化に向けた施策は、医
現役世代と高齢者(65 歳以上)の
医療費の見通し
療保険制度改革関連法案附則の検討規定
に明記されています。
この附則に沿って早急に検討を開始し、
実効ある医療費適正化施策の実現を求め
ていきます。
(兆円)
50
40
30
49.3兆円
65歳以上
■医療に要する費用の適正化
■医療保険の保険給付の範囲
■加入者等の負担能力に応じた
費用負担のあり方 など
44.5兆円 39.8兆円
35.1兆円
19.2兆円
(55%)
(参考:附則の主な検討項目)
現役世代
23.9兆円
(60%)
28.2兆円
32.0兆円
(65%)
(63%)
20
10
0
15.9兆円
15.9兆円
16.3兆円
17.3兆円
2010年度
2015年度
2020年度
2025年度
(45%)
(40%)
(37%)
(35%)
出典:厚生労働省「医療費等の将来見通し及び財政影響試算」のポ
イント(2010 年 10 月 25 日・第 11 回高齢者医療制度改革
会議)をもとに健保連で推計し作成
(3)短時間労働者の適用拡大への対応
適用拡大は、2016 年 10 月から施行されま
す。被用者保険全体の適用拡大対象者数は約
25 万人で、このうち健保組合へは約 20 万
人が加入すると見込まれています。
適用拡大で大きな財政影響を受ける健保組合
に対し、十分な支援措置が講じられるよう政
府に求めていきます。
■適用拡大の要件
①週所定労働時間 20 時間以上、かつ
②月額賃金 8.8 万円以上、かつ
③勤務期間1年以上(見込み)
■対象企業 従業員 501 人以上
*施 行後、3年以内にさらなる適用拡大に
ついて検討し、その結果に基づき、必要
な措置を講じることとされています
7
Ⅲ
1
2014 年度の健保連の動き
データヘルス事業推進に向けた対応
○データヘルス計画の背景とねらい
● 政府は 2013 年 6 月に閣議決定した「日本再興戦略」のなかで、国民の「健康寿命の延伸」
に向けた取り組みとして、健保組合などの保険者にデータヘルス計画の策定と同計画に基づ
く事業の実施等を求めました。
● データヘルスとは、データに基づく科学的なアプローチにより保健事業の実効性を高め、
PDCA サイクルに沿って 2015 年度から3年計画で実施するものです。
● データヘルス計画の実施に当たっては、特定健診・レセプトデータの活用とともに、事業主
との協働(コラボヘルス)が重要となります。
図 データヘルス計画の「PDCA サイクル」
Plan(計画)
データ分析に基づく事業の立案
健康課題、事業目的の明確化
Do(実施)
事業の実施
(例)
加入者に対する全般的・個別的な情報提供
目標設定
特定健診・特定保健指導等の健診・保健指導
費用対効果を考慮した事業選択
重症化予防
PDCA
サイクル
Act(改善)
次サイクルに向けて修正
Check(評価)
データ分析に基づく効果測定・評価
健保連の取り組み
■健保連は、データヘルス計画説明会の開催や「データヘルス計画作成の手引
き」の提供など、
健保組合のデータヘルス計画づくりをサポートしてきました。
■ 2015 年度から実施されるデータヘルス事業は、保険者機能の発揮、向上
にかかわる重要な取り組みであり、健保連では必要なデータの提供など健
保組合が円滑に事業実施できるよう、全面的に支援していきます。
8
2
健保組合・健保連の要求実現のための活動
● 2014 年度は、今後の国民皆保険制度の堅持に向けた “ 正念場 ” の年と位置づけ、さまざま
な活動を強力に展開しました。
健保連の取り組み
■強力な要請活動
・健保組合、健保連、都道府県連合会が協力して国会議員への積極的な要請
活動を実施しました。また、経団連、日本商工会議所など被用者保険関係
5 団体とも連携し要望書を提出するなど、従来にない活動を展開しました。
■健保組合・健保連の主張要求を広くアピールする取り組み
・11 月の健保組合全国大会には、約 4,000 人の健保組合関係者が参集し、
大会決議を全会一致で採択しました。
・健保組合全国大会で、各健保組合の決議を厚生労働大臣に手交しました。
・
「あしたの健保プロジェクト」を立ち上げ、さまざまな広報活動を展開し
ました。
3
医療提供体制改革と保険者の役割
○地域における医療提供体制の見直しについて
● 「医療介護総合確保推進法」が 2014 年 6 月に成立しました。同法は、地域における医療や
介護の提供体制を超高齢社会に対応した体制に再構築するものです。
● 都道府県が医療提供体制を見直すための計画を策定する際は、健保組合など保険者の意見を
聴かなければならないと規定されており、今後保険者の役割が重要となります。
健保連の取り組み
■人口構造の変化に対応した医療提供体制の再構築は、国民皆保険の堅持に向
けた重要な課題です。
健保連では、健保組合代表や都道府県連合会と連携し、各地域での活動を積
極的に支援していきます。
9
Ⅳ
2015 年度 健保組合予算早期集計の概要
■ 健保組合全体の経常収支差引額は▲ 1,429 億円で、約 7 割の組合が赤字です。
■ 高齢者医療への拠出金(支援金・納付金等)は 3 兆 2893 億円で、2013 年度分の拠出金
の精算による返還金や退職者給付拠出金の半減などにより、前年度に比べ 254 億円減少
しました。
■ 保険料収入が増え、拠出金の額が微減したものの、保険料収入に占める拠出金の割合は
43.68%と、依然として保険料収入の4割以上が高齢者医療の支援に充てられています。
■ 平均保険料率は 9.021%で、はじめて 9%を超えました。また、平均保険料率 10%以上
の組合は、285 組合と 30 組合増加しました。
■ 赤字を出さない収支均衡とするために必要な「実質保険料率」は 9.499%となっています。
2015 年度予算
早期集計(推計)①
組合数
2014 年度予算②
増減数
①ー②
前年度伸び率(%)
1,403
1,410
7 組合減
▲ 0.50
被保険者数(人)
15,734,543
15,631,547
102,996 人増
0.66
被扶養者数(人)
13,471,407
13,620,834
149,427 人減
▲ 1.10
368,491
365,436
3,055 円増
0.84
1,069,449
1,035,382
34,067 円増
3,29
9.021
8.862
0.159 増
1.79
76,488
74,221
2,267
3.05
保険料
75,313
73,054
2,259
3.09
その他
1,175
1,167
8
0.69
77,917
77,905
12
0.02
保険給付費
39,285
39,095
190
0.49
支援金・納付金等
32,893
33,147
▲ 254
▲ 0.77
その他
5,739
5,663
76
1.34
▲ 1,429
▲ 3,683
2,254
ー
平均標準報酬月額(円)
平均標準賞与額(円)
平均保険料率(%)
経常収入総額(億円)
経常支出総額(億円)
経常収支差引額(億円)
(注)予算早期集計は 2015 年度予算の報告があった 1,384 組合の数値を基に、2015 年 4 月 1 日現在に存在する 1,403 組合で推計。
10
健保組合の現況(資料編)
健保組合の基本情報の推移(決算)
2009 年度
組合数
2010 年度
2011 年度
2012 年度
2013 年度
1,473
1,458
1,443
1,431
1,419
被保険者数(千人)
15,850
15,646
15,624
15,644
15,648
被扶養者数(千人)
14,228
14,035
13,953
13,816
13,675
0.91
0.90
0.90
0.89
0.88
40.91
41.14
41.33
41.51
41.68
平均標準報酬月額(円)
362,575
360,930
362,490
363,644
365,794
平均標準賞与額(円)
996,434
1,031,683
1,059,795
1,042,896
1,062,275
7.450
7.672
7.987
8.343
8.674
8.20
9.34
9.50
10.00
10.00
扶養率
被保険者の平均年齢(歳)
平均保険料率(%)
(参考)協会けんぽ全国平均保険料率(%)
健保組合数、被保険者数の推移
(組合)1,822組合
1,800
(万人)
1,650
被保険者数
1,604万人
1,600万人
1,600
1,600
1,419組合
1400
1,550
1,200
1,000
1,500
JR、NTT、JTが
健保組合を設立
800
派遣健保の設立や、
女性被保険者数の
増加により上昇
600
健保組合数
400
1,450
1,400
200
0
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
1,350
13
(年度)
平均標準報酬月額、平均標準賞与額、法定給付費および支援金・納付金等の推移(被保険者 1 人当たり額)
150.0
支援金・納付金等
142.1
法定給付費
140.0
144.0
142.0
賞与額
136.0
平均標準報酬月額
報酬月額
平均標準賞与額
130.0
124.9
120.8
120.0
116.5
116.3
114.7
111.7
110.0
100.0
104.4
101.3
100.0
97.6
90.0
98.0
98.0
84.8
2007
2008
2009
支援金
98.3
98.9
98.8
99.6
97.5
87.8
80.0
114.1
108.9
99.9
100.0
113.3
法定給付
120.6
2010
90.2
2011
88.7
2012
91.0
90.4
88.1
2013
2014
2015
(年度)
(注)2007 ~ 2012 年度までは決算、2013 年度は決算見込、2014 年度は予算、2015 年度は予算早期集計の数値
(注)数値はいずれも 2007 年度を「100」とした伸び率の推移
11
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〒107-8558 東京都港区南青山 1 丁目 24 番 4 号
2015 年 5 月作成