2015 年 6 月 12 日 偏光板・部材フィルム世界市場に関する調査結果 2015 【調査要綱】 矢野経済研究所では、次の調査要綱にて偏光板及びその部材フィルムの世界市場の調査を実施した。 1.調査期間:2015 年 1 月~4 月 2.調査対象:偏光板メーカー、位相差フィルムメーカー、PVA 保護フィルムメーカー、表面処理フィルムメーカー 3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用 <偏光板とは> 偏光板とは、特定方向に偏光又は偏波した光だけに限って通過させる板であり、本調査における偏光板とは LCD(Liquid Crystal Display ; 液 晶 デ ィ ス プ レ イ ) に 使 用 さ れ る 偏 光 フ ィ ル ム を さ す 。 TFT(Thin Film Transistor)-LCD 向けや TN(Twisted Nematic)-LCD 向け、STN(Super Twisted Nematic)-LCD 向けの偏光板を 対象とした。 <偏光板の部材フィルムとは> 本調査における偏光板の部材フィルムとは、位相差フィルム、PVA(Polyvinyl Alcohol)保護フィルム、AG (Anti-Glare)・CHC(Clear Hard Coat)などの表面処理フィルム等の部材をさす。 【調査結果サマリー】 2014 年度の偏光板世界市場は前年度比 112.7%の 47,605 万㎡の見込み 2013 年度の偏光板世界市場(メーカー出荷数量ベース)は 42,240 万㎡となり、2014 年度は前年度比 112.7%の 47,605 万㎡の見込みである。LCD タイプ別では、TN-LCD 向けやSTN-LCD 向けは途上国 で根強い需要があるものの、TFT-LCD 向けが全体の 98%を占める。 2014 年度の TFT-LCD 向け偏光板世界市場は前年度比 113.1%の 46,600 万㎡の見込み 2014 年度における TFT-LCD 向け偏光板の世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は前年度比 113.1%の 46,600 万㎡の見込みである。市場成長の主役は主力サイズが 45″(インチ)以上の UHD (Ultra High Definition)TV であったが、同用途向け偏光板は歩留まりが悪く、実際の LCD パネル生産 量以上の需要増につながったと考える。TFT-LCD 向け偏光板世界市場のうち TV 用の占める割合は 7 割程度で、TV 用途の出荷量の変動により偏光板市場は大きく左右される。 偏光板メーカーの中国での生産能力増強ラッシュが相次ぐ 中国で生産ラインの新設・増設を予定しているほとんどの偏光板メーカーは 2016 年内にはラインを稼 働させる予定で、ユーザーである LCD パネルメーカーの大型新規ラインの稼働時期に合わせたもので ある。中国における偏光板メーカーの生産能力増強には、中国の LCD パネルメーカーだけでなく、中国 に生産拠点をシフトさせている韓国・台湾 LCD パネルメーカーの生産拡大も視野に入れている。 ◆ 資料体裁 資料名:「2015 年版 偏光板及び部材フィルム市場 Annual Report」 発刊日:2015 年 4 月 30 日 体 裁:A4 判 213 頁 定 価:150,000 円(税別) 株式会社 矢野経済研究所 所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝 設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/ 本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/) ㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected] 本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。 本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。 Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd. 2015 年 6 月 12 日 【調査結果の概要】 1. 市場概況 1-1.偏光板世界市場概況 2013 年度の偏光板世界市場(メーカー出荷数量ベース)は 42,240 万㎡となり、2014 年度は前年度比 112.7%の 47,605 万㎡の見込みである。(図表 1 参照) LCD タイプ別では、TN-LCD 向けや STN-LCD 向けは途上国で根強い需要があるものの、TFT-LCD 向けが全体の 98%を占める。 2013 年度は中国における偏光板に対する輸入関税導入の動きに伴い、中国向けの駆け込み需要に より市場が拡大した。2014 年度においてはその反動による需要減が懸念されたが、前年度を大きく上回 る二桁成長となる見込みである。急拡大の背景には、主力用途である TV 用でボリュームゾーンであった 32″(インチ)からさらなる大型サイズへのシフトがある。 1-2.TFT-LCD 向け偏光板世界市場概況 2014 年度における TFT-LCD 向け偏光板の世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は前年度比 113.1%の 46,600 万㎡の見込みである。市場成長の主役は主力サイズが 45″以上の UHD(Ultra High Definition)TV であったが、同用途向け偏光板は歩留まりが悪く、実際の LCD パネル生産量以上の需 要増につながったと考える。TFT-LCD 向け偏光板世界市場のうち TV 用の占める割合は 7 割程度で、 TV 用途の出荷量の変動により偏光板市場は大きく左右される。 2014 年度の TFT-LCD をモード別にみると、TN が約 30%、VA が約 45%、IPS が約 25%の見通しで ある。MNT(パソコン用モニター等)用途が多い TN モードは MNT 市場の縮小と、TN から VA や IPS へ とシフトしていく動きで、比率は年々低下していく。TV 用は VA モードと IPS モードに区分されるが、韓国 SDC(Samsung Display Co.,Ltd.)を中心として VA 陣営が圧倒的な数量を確保していたが、韓国 LGD (LG Display Co.,Ltd.)を始め中国 BOE(Zhejiang BOE Display Technology Co.,Ltd.)などの IPS 陣営の 成長が著しく、IPS モードの比率はさらに向上していくとみられる。 1-3.TFT-LCD 向け偏光板世界市場予測 2015 年度における TFT-LCD 向け偏光板の世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は前年度比 107.5%の 50,100 万㎡と予測する。同年度においても TV 用の成長が下支えになっているが、LCD パネ ルメーカー側で偏光板の在庫を抱えているところがあるとみられ、2015 年度下期からはパネルメーカー の生産調整が行われると考える。また、パネルメーカーのガラス基板の変更などにより、生産プロセスで の UHD TV 用途向け偏光板の歩留まりも改善しており、前年度の成長率に比べ勢いはやや鈍化すると 予測する。 TV の売れ行きは TV の買い替え時期や、ワールドカップ、オリンピックといった要因にも大きく影響さ れるが、2015 年度にはこうした大きなイベントもない。セットメーカー・LCD パネルメーカー共に UHD TV の販売拡大を推進しているものの、現在はコンテンツの不足に加え、パソコンや中小型モバイル機器の 普及により TV に対するニーズが減少しており、2015 年度以降の TV 販売台数に関しては楽観視できな い状況である。 一方で、韓国大手 LCD パネルメーカーである SDC、LGD、台湾陣営の AUO(AU Optronics Corp.)、 Innolux(Innolux Corp.)では、UHD TV 用途向け LCD パネルの増産の動きが目立つ。LCD パネルのガ ラス基板の大型化に伴い、パネルメーカーとしても大型 TV 用途向け LCD パネルの製造・販売の拡大を 推進していることも影響している。また、急成長している中国大手 LCD パネルメーカーである CSOT (China Star Optoelectronics Technology Co.,Ltd.)や BOE が生産する TV 用途向けパネルも大型化し、 従来の主力サイズである 32″離れが進んでいるものの、45″以上の展開が本格化するのは両社の新 規生産ラインが立ち上がる 2016 年度以降となる見通しである。 2. 注目すべき動向 2-1.偏光板メーカーの中国での生産能力増強ラッシュが相次ぐ LG 化学では拡大する中国市場での LCD 偏光板需要を取り込むべく、中国・南京拠点で生産ライン 増設に踏み切った。増設の第 3 ラインは 2,300mm の超広幅ラインで 2016 年第 1 四半期に量産稼働と なる予定である。そのほか、台湾 CMMT(Chimei Materials Technology Corp.)や中国 SAPO(Shenzhen Sapo Photoelectrric co.,Ltd.)、中国 SunnyPol(Shenzhen Sunnypol Optoelectronics Co.,Ltd.)の増設に加 え、合併により SDC とグループ企業となったサムスン SDI は中国での工場新設を決定している。同社の 中国拠点は中国江蘇省・無錫市で、早ければ 2016 年第 3 四半期より偏光板の量産がスタートする予定 である。 中国で生産ラインの新設・増設を予定しているほとんどの偏光板メーカーは 2016 年の年内にはライン Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd. 2015 年 6 月 12 日 を稼働させる予定で、ユーザーである LCD パネルメーカーの CSOT や BOE の大型新規ラインの稼働時 期に合わせたものである。ただ、中国における偏光板メーカーの生産能力増強には、中国の LCD パネ ルメーカーだけでなく、中国に生産拠点をシフトさせている韓国・台湾の LCD パネルメーカーの生産拡 大も視野に入れているとみられ、2016 年以降は中国で増設を実施した偏光板メーカーが地産地消の強 みをみせていくと考える。 2-2.PVA 保護フィルム(位相差+保護側用)での PMMA 系フィルムの採用比率は 6.1%の見込み 2014 年度において、位相差フィルムと PVA 保護側用フィルムを合算した PVA 保護フィルム全体の材 料 別 構 成 比 を み る と 、 TAC ( Tri-Acetyl-Cellulose ) 系 フ ィ ル ム が 84.0 % 、 PMMA ( Polymethyl methacrylate)系は 6.1%、COP(Cyclo Olefin Polymer)系は 7.6%、PET(Polyethylene Terephthalate)系 は 2.0%、その他 0.2%となる見込みである。 位相差フィルムとしては、COP 系や PMMA 系フィルムを使用することで、TAC 系に比べて低吸湿かつ 高温高湿下での寸法安定性が大いに改善されたことで採用が拡大している。一方で、PVA 保護側用フ ィルムでの PMMA フィルムの採用にはまだ技術的な課題が残っており、ややトーンダウンしているとみら れる。また、位相差側と PVA 保護側いずれにも PMMA 系フィルムを採用する「PMMA4 枚使い」は技術 的な難易度が高く、歩留まり率の低下の原因となることも指摘されている。 図表 1. LCD タイプ別 偏光板世界市場規模推移予測 (単位:万㎡) 60,000 TFT STN TN 56,390 51,055 50,000 47,605 42,240 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2013年度 2013年度 TN STN TFT 合計 前年度比 460 580 41,200 42,240 ― 構成比 1.1% 1.4% 97.5% 100.0% 2014年度見込み 2015年度予測 2014年度見込み 2016年度予測 2015年度予測 構成比 440 0.9% 565 1.2% 46,600 97.9% 47,605 100.0% 112.7% 構成比 425 0.8% 530 1.0% 50,100 98.1% 51,055 100.0% 107.2% (単位:万㎡,%) 2016年度予測 構成比 385 0.7% 500 0.9% 55,505 98.4% 56,390 100.0% 110.4% 矢野経済研究所推計 注 1:メーカー出荷数量ベース 注 2:2014 年度は見込み値、2015 年度以降は予測値 注 3:歩留まりなどにより、LCD パネルの世界生産量(実需要)とは差異がある。 注 4:TFT-LCD 向けには、TN や IPS、VA などのモードに加え、PM-VA 用、AMOLED 用、3D ディスプレイ用(FPR フィ ルム)等の偏光板を含む。 Copyright © 2015 Yano Research Institute Ltd.
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