CKD-MBD - リオナ.jp 鳥居薬品 医療関係者向け情報

memo
CKD-MBD/
鉄代謝の概念変化と
世界の潮流
第60回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム2
27年6月27日(土)14:00∼16:30
日時
平成
会場
パシフィコ横浜
第1会場(メインホール)
〒220-0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1
TEL 045-221-2155
司会
講演
1
講演
2
講演
3
平方 秀樹
福岡赤十字病院 副院長 先生
昭和大学 医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授 秋澤 忠男
変わり行くCKD-MBDの概念
∼世界の潮流変化より∼
深川 雅史
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授 4
先生
鉄代謝の概念変化 ∼分子レベルでの理解から実践へ∼
友杉 直久
金沢医科大学 名誉教授 先生
いつまでも、
鉄=毒だという認識でいいんですか?
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 寄附講座准教授 講演
先生
濱野 高行
先生
包括的なリン管理の実際
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 横山 啓太郎
先生
各講演終了後に30分間のパネルディスカッションを予定しております
共催:第60回日本透析医学会学術集会・総会 鳥居薬品株式会社/日本たばこ産業株式会社
第 60 回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム2
CKD-MBD/鉄代謝の概念変化と世界の 潮流
1 変わり行くCKD-MBDの概念 ∼世界の潮流変化より∼
3 いつまでも、鉄=毒だという認識でいいんですか?
講演
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授 深川
骨の病気である腎性骨異栄養症
(ROD)
から、全身疾患としての「慢性腎臓病に伴う骨•ミネラル代
謝異常」
( CKD-MBD)
への転換が起こったのは2006年のKDIGOによる提唱を始まりとする。それ
以降、
さまざまなミネラル代謝にかかわる臨床マーカーがCKD患者の生命予後との関連で解析されるよ
うになり、CKD-MBDの概念は、当初含んでいた検査値の異常、骨の異常、石灰化だけでなく、
さらに心
血管系を中心に広がりつつある。
当時は、
ミネラル代謝そのもの以外の予後のデータは全く存在しなかったFGF23が、最近では、生命
予後、心血管イベント、
ならびに腎機能の予後の最も強いマーカーのひとつとして認識されている。
さらに
機序として、心臓に対する直接作用やナトリウム再吸収の促進などの機序がわかるにつれて、
ミネラル
代謝と循環器系の関係が、血管石灰化以外の接点を得ることになった。
比較的進歩の遅かった骨そのものの病変についても、進歩の種は蒔かれて来た。
まず、FGF23を分
泌する骨細胞の機能と異常に注目が集まっている。
また、骨折の原因としての骨質の変化も注目されて
来たが、最近ではリスクの予測には役立たないとされていた骨密度の価値も、技術の進歩と見直されつ
つある。
治療法の最大の進歩は、calcimimeticsとカルシウム非含有リン吸着薬であろう。明らかに外科的副
甲状腺摘除術の数は減り、
カルシウム負荷の軽減によって、血管石灰化の予防が期待されている。
CKD-MBDの治療も、
surrogate markerの改善だけではなく、
生命予後などのハードエンドポイントが求
められるようになって久しいが、
RCTがなかなかできない分野だけに、
これからの臨床研究の方法の進歩が
望まれている。来るガイドラインの改訂に、
日本からのデータがどれだけ貢献できるのかが楽しみである。
2 鉄代謝の概念変化
講演
講演
雅史
経 歴
1983年 東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院(分院内科、第3内科)
研修医、東京厚生年金病院内科研修医、公立昭
和病院腎臓内科医長事務代理
東京大学附属病院分院内科医員
(尾形悦郎教授)
を経て
1990年 東京大学医学部附属病院第一内科(黒川清教
授)
助手
1992年 米国バンダービルト大学リサーチフェロー
(細胞生物
学、循環器学)
1995年 宮内庁侍従職、侍医
1997年 東京逓信病院循環器科
(腎臓内科)
医師
2000年 神戸大学医学部附属病院助教授、代謝機能疾患
治療部部長
2004年 神戸大学医学部附属病院腎臓内科診療科長を併任
2007年 神戸大学大学院医学研究科内科学講座腎臓内
科学分野長、准教授
名称変更に伴い、腎・血液浄化センター長
2009年 東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科
専任教授
神戸大学大学院医学部客員教授
学会活動
日本腎臓学会 理事/評議員/専門医制度委員会副委員長
/国際委員会委員、
日本透析医学会 評議員/国際学術委
員会委員/欧文誌編集委員会委員、
日本アフェレシス学会
評議員、
日本臨床分子医学会 評議員、
日本骨粗鬆症学会 評
議員、
日本骨代謝学会 評議員、米国腎臓学会:Fellow of the
American Society of Nephrology( FASN)2015年
Kidney Week プログラム委員、
欧州腎臓学会:Distinguished
Fellow of the European Renal Association、国際腎臓学
会:Educational Ambassador/WCN2015 プログラム委
員、K-DIGO:CKD-MBD ガイドライン作業部会委員
(20062009)
、
DOPPS 4 Task Force Team Member、J-MBDopps
グループ長、医薬品医療機器総合機構 専門委員
(2012- )
鉄代謝は、
前世紀末のhemochromatosis gene
(HFE)
の発見以来、
Divalent Metal Transporter1
(DMT1)、ferroportin( Fpn)、hepcidin、transferrin receptor1/2(TfR1/2)、hephaestin、
hemojuvelin、iron responsive element /iron regulatory proteinなど分子レベルでの体系的な理解
が進み、個体/細胞/肝細胞レベルで鉄濃度を感知する、非常に厳密な鉄代謝制御機構が明らかに
なってきた。
その本質は、排泄系を持たず少ない鉄を回転再利用してATP産生に寄与することに加え、鉄を過剰
に体内に取り込まずに血中鉄濃度の恒常性を保つことである。
その為には、
3つの鉄供給ルートが同調
しながら機能することが求められる。①食事中の鉄を吸収した腸粘膜細胞②鉄を貯蔵する肝細胞③老
化赤血球を呑食したマクロファージ等、
各々の細胞の膜に分布する鉄エクスポーターであるFpnを介した
バランスのとれた鉄供給である。血中鉄濃度はTfR2が感知して、hepcidin発現量を制御し、
その分泌
量に応じてFpnの細胞膜分布密度が調整され鉄が供給され血清鉄濃度の恒常性が維持される。つま
り、
このTfR2-hepcidin-Fpn系は、血清鉄濃度を一定に保つためのフィードバック機構であり、鉄は主と
して血清鉄-ヘモグロビン鉄-マクロファージ貯蔵鉄-血清鉄と0.8-1.0mg/hの率で回転利用されている。
このように、TfR2-hepcidin-Fpn系で緻密に制御されている鉄代謝系に、40-50mgもの静注用鉄
剤が非生理的に突然投与されれば、鉄代謝制御系が攪乱されることは容易に想像が付く。一方、生理
的な鉄吸収ルートである腸管系に、多量の鉄が負荷された場合の鉄代謝制御系への影響については
十分に解明されていないが、一過性の負荷に対しては、DMT-1が反応し腸上皮細胞への取り込みが
抑制され、慢性の負荷に対してはhepcidinが反応しFpnを制御して血中への供給が制限されると考えら
れている。
しかしながら、近年使用され始めたクエン酸第二鉄の経口摂取結果から、従来経験されないレ
ベルの効率の良い造血効果が明らかになっている。2-3日ごとに脱落と再生を繰り返す腸上皮細胞の
特性と膜表面のFpn分布密度、更にトランスフェリンとの結合の優位性等、新たに考慮すべき問題が浮
き彫りにされてきており、本シンポジウムで検討したい。
先生
経 歴
平成10年 3月 大阪大学医学部医学科卒業
平成10年 6月 大阪大学医学部附属病院内科研修医
平成11年 6月 旧大阪府立病院
(現大阪府立急性期・総合
医療センター)
内科研修医
平成12年 6月 関西労災病院内科レジデント
平成13年 4月 大阪大学大学院医学系研究科入学
平成17年 4月 同修了
平成17年 4月 大阪大学医学部附属病院血液浄化部医員
平成19年 4月 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓
内科助教
平成20年10月 ペンシルバニア大学臨床疫学・生物統計学
フェロー
平成24年 4月 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合
医療学 寄附講座助教
平成27年 4月 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合
医療学 寄附講座准教授
所属学会
日本内科学会、
日本腎臓学会、
日本透析医学会、
日本骨粗鬆症
学会、
日本骨代謝学会、国際腎臓学会、
アメリカ腎臓学会、欧
州腎臓透析移植学会
平成19年∼日本透析医学会統計調査委員
平成20・21年度、平成26・27年度日本腎臓学会卒前・卒後
教育委員
平成22年∼日本腎臓学会ISN/JSN 連携強化委員
(現グ
ローバル連携強化委員)
平成24年∼”
Journal of Bone and Mineral Metabolism”
Editorial Board
平成25年∼日本腎臓学会AFCKDI 委員会委員
平成26年∼日本透析医学会腎性貧血ガイドライン評価委員
会副委員長
専 門 医
日本内科学会総合内科専門医、
日本腎臓学会腎臓専門医
4 包括的なリン管理の実際
直久
先生
学 歴
昭和50年 3月 金沢大学医学部卒業
研究・職歴
金沢大学医学部研修医「第一内科学」
金沢大学医療技術短期大学部助教授
「衛生技術学科」
英国王立大学院大学
(RPMS)
昭和61年 4月
∼昭和62年10月 ハンマースミス病院留学、内科腎臓部門
研究員
金沢医科大学助教授「腎臓内科学」
平成 9年12月
金沢医科大学助教授
「総合医学研究所」
平成18年 5月
エムシープロット・バイオテクノロジー
平成18年 8月∼ (株)
代表取締役
金沢医科大学 教授
平成18年10月
「総合医学研究所先端医療研究領域加
齢制御研究分野/腎臓内科併任」
平成19年 4月∼ 石川県臓器移植推進財団 理事
平成27年 4月∼ 金沢医科大学総合医学研究所 プロジェ
クト研究センター 寄附講座
天然変性蛋白質創薬科学研究部 教授
平成27年 5月∼ 金沢医科大学 名誉教授
昭和50年 4月
昭和58年10月
欧米の心不全におけるRCTでは、RED-HFにおいて高いHbを実現するためのESAは血栓症を増や
し予後改善はなかった。一方でFAIR-HFやCONFIRM-HFなどで、100<フェリチン<300でTSAT<20
のいわゆる機能性鉄欠乏を含めても、鉄投与のQOL改善効果、NYHA改善効果、腎機能改善効果が
RCTで証明された。
さらに、心不全悪化による入院まで減らし、
そのハザード比0.39は驚異的で類を見な
い。ACP心不全ガイドラインは中等度の貧血にはESAを禁じ、欧州心不全ガイドラインでは鉄剤の有用
性が肯定された。
よってKDIGOの
“iron first”
は心不全の多いCKDで合理性がある。一方、
日本は古く
から鉄による酸化ストレスが強調され、鉄=毒とも取れる意見が百狐する事態である。
因果関係が不明な観察研究では、
血清フェリチンが極度に高い患者で予後が悪いという報告はある。
しかし、
すでにESAが鉄より重視されるpractice patternの行き渡った日本で、
よりフェリチンが低くなる
には、ESAがよく効きかつ炎症がないなどの条件が揃う必要があり、
そのためにフェリチン低値が良好な
予後と関連している可能性が高い。確かに肝炎、感染症極期においては鉄の投与は推奨できない。
し
かし鉄には貧血是正やESA抵抗性の改善以外の2つの長所、
すなわちFGF23低下効果と血小板凝
集抑制効果がある。鉄欠乏は血小板活性化に繋がり、右左シャント症例で脳梗塞のリスクとなる。我々
はフェリチンが100未満だとintact FGF23が高く、血小板数が多いことを腎不全末期で見だした。
前者は心不全に、後者は動脈硬化性イベントに繋がる可能性がある。ESAの血栓症リスクの上昇には
血小板の質的量的変容
(P-selectin上昇による粘着能や凝集能上昇効果)
が関わっている。実際、鉄
はP-selectin発現を抑制し、鉄併用投与はESA開始初期の血小板数上昇も抑制する。統計調査から
は、血小板数30万以上は脳梗塞・心筋梗塞の発症と関連し、米国からは、血小板数30万以上でHbと
死亡との関連はU字となるが、30万以下では高いHbと死亡との関連はないことが報告された。鉄に対
する頑迷な偏見を持ち続けては、近年のRCTの結果を解釈できない。ESAを安全にかつ適量永続的に
使う上で、鉄欠乏のリスクを再考する必要があると考える。
高行
講演
∼分子レベルでの理解から実践へ∼
金沢医科大学 名誉教授 友杉
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 寄附講座准教授 濱野
先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 横山
慢性腎臓病にともなう骨ミネラル代謝異常における高リン
(P)
血症の治療薬としてクエン酸第二鉄が
使用可能となった。血清FGF23値の低下、
経口からの鉄補充による貧血改善、
またアシドーシス是正など、
従来のP吸着薬と大きく異なるクエン酸第二鉄へ期待が寄せられている。
血清FGF23値は透析患者の生命予後、
あるいは心肥大の予知因子である。
クエン酸第二鉄による
FGF23低下は40%程度であった。既報の臨床研究と照らし合わせると、
その臨床的意義は今後明らか
にされるべき課題であると思われる。
また、
鉄補充による貧血改善に関しては、
本薬剤使用時に血清フェリチン値をモニターする必要がある。
第III相試験の結果では、
本薬剤による血清フェリチン値上昇要因は、
その投与量であったが、
今回、
他の
血清フェリチン値上昇要因についても解析したのでご紹介したい。
いずれにしてもクエン酸第二鉄は単に血清P値を低下させるだけでなく、MBDと貧血を学問的に結び
つける新しいtoolの一つであることは明らかなことである。
啓太郎
先生
学歴・職歴
1985年 3月 東京慈恵会医科大学医学部卒業
1985年 5月 国立病院医療センターにて内科研修
1987年 5月 東京慈恵会医科大学医学部助手
(第二内科
講座)
1991年 4月 虎の門病院 腎センター医員
1998年10月 東京慈恵会医科大学医学部助手
(第二内科
講座)
2002年 1月 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 講師
2011年10月 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授
専門分野
臨床腎臓病学、水・電解質、急性腎不全、骨ミネラル代謝、腹
膜透析
主な学会活動歴
日本腎臓学会学術評議委員、
日本透析医学会評議委員、
日
本透析医学会二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン
作成委員、
日本透析医学会CKD/MBD診断と治療ガイドライ
ン作成委員会 副委員長、
日本内科学会「診療行為に関連し
た死亡の調査分析モデル事業」評価委員
(臨床立会い医)、
東京PD研究会代表幹事
第 60 回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム2
CKD-MBD/鉄代謝の概念変化と世界の 潮流
1 変わり行くCKD-MBDの概念 ∼世界の潮流変化より∼
3 いつまでも、鉄=毒だという認識でいいんですか?
講演
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授 深川
骨の病気である腎性骨異栄養症
(ROD)
から、全身疾患としての「慢性腎臓病に伴う骨•ミネラル代
謝異常」
( CKD-MBD)
への転換が起こったのは2006年のKDIGOによる提唱を始まりとする。それ
以降、
さまざまなミネラル代謝にかかわる臨床マーカーがCKD患者の生命予後との関連で解析されるよ
うになり、CKD-MBDの概念は、当初含んでいた検査値の異常、骨の異常、石灰化だけでなく、
さらに心
血管系を中心に広がりつつある。
当時は、
ミネラル代謝そのもの以外の予後のデータは全く存在しなかったFGF23が、最近では、生命
予後、心血管イベント、
ならびに腎機能の予後の最も強いマーカーのひとつとして認識されている。
さらに
機序として、心臓に対する直接作用やナトリウム再吸収の促進などの機序がわかるにつれて、
ミネラル
代謝と循環器系の関係が、血管石灰化以外の接点を得ることになった。
比較的進歩の遅かった骨そのものの病変についても、進歩の種は蒔かれて来た。
まず、FGF23を分
泌する骨細胞の機能と異常に注目が集まっている。
また、骨折の原因としての骨質の変化も注目されて
来たが、最近ではリスクの予測には役立たないとされていた骨密度の価値も、技術の進歩と見直されつ
つある。
治療法の最大の進歩は、calcimimeticsとカルシウム非含有リン吸着薬であろう。明らかに外科的副
甲状腺摘除術の数は減り、
カルシウム負荷の軽減によって、血管石灰化の予防が期待されている。
CKD-MBDの治療も、
surrogate markerの改善だけではなく、
生命予後などのハードエンドポイントが求
められるようになって久しいが、
RCTがなかなかできない分野だけに、
これからの臨床研究の方法の進歩が
望まれている。来るガイドラインの改訂に、
日本からのデータがどれだけ貢献できるのかが楽しみである。
2 鉄代謝の概念変化
講演
講演
雅史
経 歴
1983年 東京大学医学部医学科卒業
東京大学医学部附属病院(分院内科、第3内科)
研修医、東京厚生年金病院内科研修医、公立昭
和病院腎臓内科医長事務代理
東京大学附属病院分院内科医員
(尾形悦郎教授)
を経て
1990年 東京大学医学部附属病院第一内科(黒川清教
授)
助手
1992年 米国バンダービルト大学リサーチフェロー
(細胞生物
学、循環器学)
1995年 宮内庁侍従職、侍医
1997年 東京逓信病院循環器科
(腎臓内科)
医師
2000年 神戸大学医学部附属病院助教授、代謝機能疾患
治療部部長
2004年 神戸大学医学部附属病院腎臓内科診療科長を併任
2007年 神戸大学大学院医学研究科内科学講座腎臓内
科学分野長、准教授
名称変更に伴い、腎・血液浄化センター長
2009年 東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科
専任教授
神戸大学大学院医学部客員教授
学会活動
日本腎臓学会 理事/評議員/専門医制度委員会副委員長
/国際委員会委員、
日本透析医学会 評議員/国際学術委
員会委員/欧文誌編集委員会委員、
日本アフェレシス学会
評議員、
日本臨床分子医学会 評議員、
日本骨粗鬆症学会 評
議員、
日本骨代謝学会 評議員、米国腎臓学会:Fellow of the
American Society of Nephrology( FASN)2015年
Kidney Week プログラム委員、
欧州腎臓学会:Distinguished
Fellow of the European Renal Association、国際腎臓学
会:Educational Ambassador/WCN2015 プログラム委
員、K-DIGO:CKD-MBD ガイドライン作業部会委員
(20062009)
、
DOPPS 4 Task Force Team Member、J-MBDopps
グループ長、医薬品医療機器総合機構 専門委員
(2012- )
鉄代謝は、
前世紀末のhemochromatosis gene
(HFE)
の発見以来、
Divalent Metal Transporter1
(DMT1)、ferroportin( Fpn)、hepcidin、transferrin receptor1/2(TfR1/2)、hephaestin、
hemojuvelin、iron responsive element /iron regulatory proteinなど分子レベルでの体系的な理解
が進み、個体/細胞/肝細胞レベルで鉄濃度を感知する、非常に厳密な鉄代謝制御機構が明らかに
なってきた。
その本質は、排泄系を持たず少ない鉄を回転再利用してATP産生に寄与することに加え、鉄を過剰
に体内に取り込まずに血中鉄濃度の恒常性を保つことである。
その為には、
3つの鉄供給ルートが同調
しながら機能することが求められる。①食事中の鉄を吸収した腸粘膜細胞②鉄を貯蔵する肝細胞③老
化赤血球を呑食したマクロファージ等、
各々の細胞の膜に分布する鉄エクスポーターであるFpnを介した
バランスのとれた鉄供給である。血中鉄濃度はTfR2が感知して、hepcidin発現量を制御し、
その分泌
量に応じてFpnの細胞膜分布密度が調整され鉄が供給され血清鉄濃度の恒常性が維持される。つま
り、
このTfR2-hepcidin-Fpn系は、血清鉄濃度を一定に保つためのフィードバック機構であり、鉄は主と
して血清鉄-ヘモグロビン鉄-マクロファージ貯蔵鉄-血清鉄と0.8-1.0mg/hの率で回転利用されている。
このように、TfR2-hepcidin-Fpn系で緻密に制御されている鉄代謝系に、40-50mgもの静注用鉄
剤が非生理的に突然投与されれば、鉄代謝制御系が攪乱されることは容易に想像が付く。一方、生理
的な鉄吸収ルートである腸管系に、多量の鉄が負荷された場合の鉄代謝制御系への影響については
十分に解明されていないが、一過性の負荷に対しては、DMT-1が反応し腸上皮細胞への取り込みが
抑制され、慢性の負荷に対してはhepcidinが反応しFpnを制御して血中への供給が制限されると考えら
れている。
しかしながら、近年使用され始めたクエン酸第二鉄の経口摂取結果から、従来経験されないレ
ベルの効率の良い造血効果が明らかになっている。2-3日ごとに脱落と再生を繰り返す腸上皮細胞の
特性と膜表面のFpn分布密度、更にトランスフェリンとの結合の優位性等、新たに考慮すべき問題が浮
き彫りにされてきており、本シンポジウムで検討したい。
先生
経 歴
平成10年 3月 大阪大学医学部医学科卒業
平成10年 6月 大阪大学医学部附属病院内科研修医
平成11年 6月 旧大阪府立病院
(現大阪府立急性期・総合
医療センター)
内科研修医
平成12年 6月 関西労災病院内科レジデント
平成13年 4月 大阪大学大学院医学系研究科入学
平成17年 4月 同修了
平成17年 4月 大阪大学医学部附属病院血液浄化部医員
平成19年 4月 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓
内科助教
平成20年10月 ペンシルバニア大学臨床疫学・生物統計学
フェロー
平成24年 4月 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合
医療学 寄附講座助教
平成27年 4月 大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合
医療学 寄附講座准教授
所属学会
日本内科学会、
日本腎臓学会、
日本透析医学会、
日本骨粗鬆症
学会、
日本骨代謝学会、国際腎臓学会、
アメリカ腎臓学会、欧
州腎臓透析移植学会
平成19年∼日本透析医学会統計調査委員
平成20・21年度、平成26・27年度日本腎臓学会卒前・卒後
教育委員
平成22年∼日本腎臓学会ISN/JSN 連携強化委員
(現グ
ローバル連携強化委員)
平成24年∼”
Journal of Bone and Mineral Metabolism”
Editorial Board
平成25年∼日本腎臓学会AFCKDI 委員会委員
平成26年∼日本透析医学会腎性貧血ガイドライン評価委員
会副委員長
専 門 医
日本内科学会総合内科専門医、
日本腎臓学会腎臓専門医
4 包括的なリン管理の実際
直久
先生
学 歴
昭和50年 3月 金沢大学医学部卒業
研究・職歴
金沢大学医学部研修医「第一内科学」
金沢大学医療技術短期大学部助教授
「衛生技術学科」
英国王立大学院大学
(RPMS)
昭和61年 4月
∼昭和62年10月 ハンマースミス病院留学、内科腎臓部門
研究員
金沢医科大学助教授「腎臓内科学」
平成 9年12月
金沢医科大学助教授
「総合医学研究所」
平成18年 5月
エムシープロット・バイオテクノロジー
平成18年 8月∼ (株)
代表取締役
金沢医科大学 教授
平成18年10月
「総合医学研究所先端医療研究領域加
齢制御研究分野/腎臓内科併任」
平成19年 4月∼ 石川県臓器移植推進財団 理事
平成27年 4月∼ 金沢医科大学総合医学研究所 プロジェ
クト研究センター 寄附講座
天然変性蛋白質創薬科学研究部 教授
平成27年 5月∼ 金沢医科大学 名誉教授
昭和50年 4月
昭和58年10月
欧米の心不全におけるRCTでは、RED-HFにおいて高いHbを実現するためのESAは血栓症を増や
し予後改善はなかった。一方でFAIR-HFやCONFIRM-HFなどで、100<フェリチン<300でTSAT<20
のいわゆる機能性鉄欠乏を含めても、鉄投与のQOL改善効果、NYHA改善効果、腎機能改善効果が
RCTで証明された。
さらに、心不全悪化による入院まで減らし、
そのハザード比0.39は驚異的で類を見な
い。ACP心不全ガイドラインは中等度の貧血にはESAを禁じ、欧州心不全ガイドラインでは鉄剤の有用
性が肯定された。
よってKDIGOの
“iron first”
は心不全の多いCKDで合理性がある。一方、
日本は古く
から鉄による酸化ストレスが強調され、鉄=毒とも取れる意見が百狐する事態である。
因果関係が不明な観察研究では、
血清フェリチンが極度に高い患者で予後が悪いという報告はある。
しかし、
すでにESAが鉄より重視されるpractice patternの行き渡った日本で、
よりフェリチンが低くなる
には、ESAがよく効きかつ炎症がないなどの条件が揃う必要があり、
そのためにフェリチン低値が良好な
予後と関連している可能性が高い。確かに肝炎、感染症極期においては鉄の投与は推奨できない。
し
かし鉄には貧血是正やESA抵抗性の改善以外の2つの長所、
すなわちFGF23低下効果と血小板凝
集抑制効果がある。鉄欠乏は血小板活性化に繋がり、右左シャント症例で脳梗塞のリスクとなる。我々
はフェリチンが100未満だとintact FGF23が高く、血小板数が多いことを腎不全末期で見だした。
前者は心不全に、後者は動脈硬化性イベントに繋がる可能性がある。ESAの血栓症リスクの上昇には
血小板の質的量的変容
(P-selectin上昇による粘着能や凝集能上昇効果)
が関わっている。実際、鉄
はP-selectin発現を抑制し、鉄併用投与はESA開始初期の血小板数上昇も抑制する。統計調査から
は、血小板数30万以上は脳梗塞・心筋梗塞の発症と関連し、米国からは、血小板数30万以上でHbと
死亡との関連はU字となるが、30万以下では高いHbと死亡との関連はないことが報告された。鉄に対
する頑迷な偏見を持ち続けては、近年のRCTの結果を解釈できない。ESAを安全にかつ適量永続的に
使う上で、鉄欠乏のリスクを再考する必要があると考える。
高行
講演
∼分子レベルでの理解から実践へ∼
金沢医科大学 名誉教授 友杉
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 寄附講座准教授 濱野
先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 横山
慢性腎臓病にともなう骨ミネラル代謝異常における高リン
(P)
血症の治療薬としてクエン酸第二鉄が
使用可能となった。血清FGF23値の低下、
経口からの鉄補充による貧血改善、
またアシドーシス是正など、
従来のP吸着薬と大きく異なるクエン酸第二鉄へ期待が寄せられている。
血清FGF23値は透析患者の生命予後、
あるいは心肥大の予知因子である。
クエン酸第二鉄による
FGF23低下は40%程度であった。既報の臨床研究と照らし合わせると、
その臨床的意義は今後明らか
にされるべき課題であると思われる。
また、
鉄補充による貧血改善に関しては、
本薬剤使用時に血清フェリチン値をモニターする必要がある。
第III相試験の結果では、
本薬剤による血清フェリチン値上昇要因は、
その投与量であったが、
今回、
他の
血清フェリチン値上昇要因についても解析したのでご紹介したい。
いずれにしてもクエン酸第二鉄は単に血清P値を低下させるだけでなく、MBDと貧血を学問的に結び
つける新しいtoolの一つであることは明らかなことである。
啓太郎
先生
学歴・職歴
1985年 3月 東京慈恵会医科大学医学部卒業
1985年 5月 国立病院医療センターにて内科研修
1987年 5月 東京慈恵会医科大学医学部助手
(第二内科
講座)
1991年 4月 虎の門病院 腎センター医員
1998年10月 東京慈恵会医科大学医学部助手
(第二内科
講座)
2002年 1月 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 講師
2011年10月 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授
専門分野
臨床腎臓病学、水・電解質、急性腎不全、骨ミネラル代謝、腹
膜透析
主な学会活動歴
日本腎臓学会学術評議委員、
日本透析医学会評議委員、
日
本透析医学会二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン
作成委員、
日本透析医学会CKD/MBD診断と治療ガイドライ
ン作成委員会 副委員長、
日本内科学会「診療行為に関連し
た死亡の調査分析モデル事業」評価委員
(臨床立会い医)、
東京PD研究会代表幹事
memo
CKD-MBD/
鉄代謝の概念変化と
世界の潮流
第60回日本透析医学会学術集会・総会 企業共催シンポジウム2
27年6月27日(土)14:00∼16:30
日時
平成
会場
パシフィコ横浜
第1会場(メインホール)
〒220-0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1
TEL 045-221-2155
司会
講演
1
講演
2
講演
3
平方 秀樹
福岡赤十字病院 副院長 先生
昭和大学 医学部内科学講座 腎臓内科学部門 客員教授 秋澤 忠男
変わり行くCKD-MBDの概念
∼世界の潮流変化より∼
深川 雅史
東海大学医学部内科学系 腎内分泌代謝内科 教授 4
先生
鉄代謝の概念変化 ∼分子レベルでの理解から実践へ∼
友杉 直久
金沢医科大学 名誉教授 先生
いつまでも、
鉄=毒だという認識でいいんですか?
大阪大学大学院医学系研究科 腎疾患統合医療学 寄附講座准教授 講演
先生
濱野 高行
先生
包括的なリン管理の実際
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 横山 啓太郎
先生
各講演終了後に30分間のパネルディスカッションを予定しております
共催:第60回日本透析医学会学術集会・総会 鳥居薬品株式会社/日本たばこ産業株式会社