一般演題ポスター 慢性腎不全(基礎)ポスター P

一般演題ポスター 慢性腎不全(基礎)ポスター
6月19日 11:00〜12:15
ポスター会場 (パシフィコ横浜会議センター 3階 301+302,311~314)
司会
長田 太助 司会 (自治医科大学内科学講座腎臓内科学部門)
P-408 ミトコンドリア機能異常は多発性嚢胞腎の嚢胞形成に関与する
演者
石本 遊 (東京大学腎臓内分泌内科)
南学 正臣 (東京大学腎臓内分泌内科)
吉原 大輔 (藤田保健衛生大学疾患モデル教育研究センター)
釘田 雅則 (藤田保健衛生大学疾患モデル教育研究センター)
長尾 静子 (藤田保健衛生大学疾患モデル教育研究センター)
【背景】常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と固形癌の病態生理学的類似性が近年報告されて
いる.固形癌では,ミトコンドリア(mt)機能異常が細胞増殖などの病態形成に深く関与してい
ることが知られているため,ADPKDにおいても同様にmt機能異常が嚢胞形成に関与するという
作業仮設を立て検証した.【方法】嚢胞腎モデル動物(Cyラット)と,ADPKD患者由来嚢胞上
皮細胞を用い,それぞれの正常群と比較しmt関連マーカーを解析した.更に,mt特異的抗酸化
薬MitoQによる嚢胞上皮の細胞増殖抑制効果を検証した.【結果】mtDNAコピー数,mt生合成
主要制御因子PGC-1α発現量は,Cyラット腎と嚢胞上皮細胞の両者で正常に比し有意に低下し,
それに伴いmt由来活性酸素種(mtROS)が有意に増加することを明らかにした.また嚢胞上皮
細胞ではmt断片化やmt膜電位の低下,癌細胞増殖に関連したmtDNA点変異の存在が確認された
.更に,MitoQは嚢胞上皮細胞内mtROS量を軽減させ,細胞増殖を抑制したことから,mt機能
異常が嚢胞形成の一因であることを新たに明らかにした.【考察】ADPKDの嚢胞上皮細胞ではm
t機能異常を呈し,それが嚢胞形成に深く関与しており,mt恒常性維持がADPKDの新たな治療戦
略となることが示唆された.
P-409 うっ血による腎障害機序の検討
演者
大崎 雄介 (東北大学大学院医学系研究科腎高血圧内分泌学分野)
森 建文 (東北大学大学院医学系研究科腎高血圧内分泌学分野)
美間 健二 (東北大学医学部)
王 安邑 (東北大学大学院医学系研究科腎高血圧内分泌学分野)
高橋 知香 (東北大学大学院医学系研究科統合腎不全医療寄附講座)
伊藤 貞嘉 (東北大学大学院医学系研究科腎高血圧内分泌学分野)
【目的】心機能低下と腎機能低下は互いに影響し合い,心腎症候群(CRS)と呼ばれる悪循環を
形成する.本研究では心機能低下による腎障害機序として腎間質静水圧(RIHP)の影響について
検討した.
【方法】SDラット左腎静脈をシルバークリップ(0.17mm)により狭窄させ,左腎うっ血モデル
動物を作成した.1)左腎狭窄群,2)左腎狭窄+左腎皮膜除去群,3)左腎狭窄+0.1%フロセマ
イド飼料群,4)左腎狭窄+0.05%トルバプタン飼料群を設けて9日間の飼育を行い,ラット腎組
織障害を免疫染色法ならびにRT-PCR法により評価した.
【結果】腎静脈狭窄を行った左腎は右腎と比較してTGF-β, ファイブロネクチン(FN), α-SMA,
オステオポンチン(OPN), MCP1発現の有意な上昇を認めた.左腎(狭窄腎)の皮膜除去によ
るRIHP低下はTGF-βならびにFN
mRNA発現を有意に低下させた.フロセマイドならびにトルバプタン投与は腎皮質FN
mRNA発現を有意に低下させた.
【結論】本研究より,うっ血は腎臓間質線維化,尿細管障害,炎症反応を上昇させて腎障害に寄
与し,少なくとも腎間質線維化の機序の一部にはRIHPが関与する可能性が示唆された.
P-410 高ホモシステイン血症を呈した慢性腎不全モデルラットの血管弛緩
機能障害
演者
長谷川 弘 (東京薬科大学薬学部)
Lei Li (中国中医科学院西苑病院基礎医学研究所)
稲葉 二朗 (東京薬科大学薬学部)
吉岡 亘 (東京慈恵会医科大学環境保健医学講座)
JianXun Liu (中国中医科学院西苑病院基礎医学研究所)
市田 公美 (東京薬科大学薬学部)
【目的】腎機能が著明に低下すると,動脈硬化の危険因子であるホモシステイン(Hcy)の血漿
濃度が上昇する.本研究では,慢性腎不全モデルである5/6腎摘除(Nx)ラットに高メチオニン
(Met)食を負荷し,腎不全と高Hcy血症が合併したときの血管に及ぼす影響を検討した.【方
法】Nx及び偽手術(Sh)ラットを,2%Met強化食(+Met)または普通食(+Ctl)で8週間飼育
した.週1回,血圧を測定した.採血後,胸部大動脈を摘出し,マグヌス法を用い血管収縮弛緩
反応性を評価した.【結果・考察】Nx+Ctl群の血漿Hcy濃度はSh+Ctl群に比べてわずかに高値
を示したのにすぎないのに対して,Nx+Met群及びSh+Met群の血漿Hcy濃度は著明に上昇した
.Nx+Met群,Sh+Met群及びNx+Ctl群は,それぞれ負荷開始後3,4,5週で有意な血圧上昇を
示した.アセチルコリンに対し用量依存的な弛緩反応を示したが,その反応性はSh+Met群,Nx
+Ctl群,Nx+Met群の順に低下した.5/6腎摘除によってニトロプルシドナトリウムによる内皮
非依存的弛緩反応は減弱したが,最大弛緩反応には4群間で差異はなかった.以上のことから,5
/6腎摘除によって内皮依存的な血管弛緩反応性が減弱すること,高Hcy血症がそれを増悪させる
ことが明らかになった.
P-411 腎不全モデルと高尿酸モデルにおける腎と腸の尿酸トランスポータ
ーの発現変化~ABCG2の刺激因子について
演者
奈倉 倫人 (帝京大学病院)
久保 英二 (帝京大学病院)
渡邉 秀美代 (帝京大学病院)
田村 好古 (帝京大学病院)
街 稔 (帝京大学病院)
清水 淑子 (堀ノ内病院)
内田 俊也 (帝京大学病院)
【目的】5/6腎摘慢性腎不全モデルラット(Nx)とオキソニン酸経口投与による高尿酸モデルラ
ット(Ox)において腎臓の尿酸トランスポーター(URAT1,GLUT9,ABCG2,NPT4)と回腸
のABCG2の発現変化について検討した.【方法】6週齢雄性Wistarラットで対照群,Nx群,Ox
群の3群を作成した.術後0,4,8週時に採血および24時間蓄尿を行い,8週時に屠殺し腎皮質と
回腸を採取した.尿酸トランスポーターの発現変化はreal time PCRと免疫組織染色とで検討し
た.【結果】血清尿酸はOx群で,血清CrはNx群で有意な上昇を認めた.腎の尿酸トランスポー
ターはNx群で有意に減少した.一方,回腸のABCG2のmRNA発現はOx群で有意に増加した.【
結論】慢性腎不全では代償機構として回腸でABCG2の過剰発現が起こり,腸管からの尿酸排泄が
増加する可能性が示唆された.刺激因子はウレミックトキシンではなく尿酸の上昇自体と推測さ
れる.腎の尿酸トランスポーターは尿酸代謝に重要な役割を持たないと思われる.
P-412 一側腎尿管結紮(UUO)におけるNrf2-Keap1系の役割
演者
十川 裕史 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
長洲 一 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
内田 篤志 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
板野 精之 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
佐藤 稔 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
佐々木 環 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
柏原 直樹 (川崎医科大学附属病院腎臓・高血圧内科)
【背景】Nrf2は種々の抗酸化遺伝子発現に関与する.この為Nrf2活性化が腎疾患の進展に抑制的
に働くことが期待される.一方で,lupusモデルマウスにNrf2欠損マウス(Nrf2KO)を交配さ
せると腎障害が軽減されることが報告されている.このようにNrf2活性化の腎臓疾患における意
義は未だ解明されていない.Nrf2活性化の役割を検討するため野生型マウス(WT)とNrf2KOを
使用した.【方法】1)WT,Nrf2KOに一側腎尿管結紮(UUO)を作成し腎組織障害を検討.2)
ドナーとしてNrf2KO,WTそれぞれの骨髄細胞をWTへ移植.Nrf2-WTおよびWTWTそれぞれにUUO作成し組織を検討.3)In vitro系で初代培養骨髄由来マクロファージ(BMDM
)を使用し検討.WT,Nrf2KO由来BMDMを使用しインフラマソーム活性化刺激を行った.【結果
】Nrf2KO群はWT群と比較して炎症及び線維化は抑制された.Nrf2-WTはWT-WTに比較しUU
Oにおける炎症及び線維化が抑制された.Nrf2KO由来BMDMにおいてインフラマソーム活性化
(Capase1,IL1β)が抑制された.【結論】Nrf2活性化はインフラマソーム活性化を介し腎疾
患進展に寄与する.
P-413 フルクトース過剰摂取に伴う腎間質障害とエネルギー代謝障害との
関連に関する基礎的検討
演者
原 宏明 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
高柳 佳織 (石川記念会川越駅前クリニック)
加藤 仁 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
田山 陽資 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
岩下 山連 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
岡崎 晋平 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
三谷 知之 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
小暮 裕太 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
佐野 達郎 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
長谷川 元 (埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
【目的】フルクトースは生活様式や嗜好の変化に伴い消費が拡大し,我が国に於いても幅広い食
品に含まれるが,腎線維化を惹起することが知られている.またフルクトースは細胞内に吸収さ
れると一方向的に分解が進みATPを消費する.細胞内ATPレベルにより反応が双方向的となるグ
ルコースとはこの点が大きく異なる.フルクトースの過剰負荷はATPの枯渇を招き,虚血と同様
のエネルギー障害が腎線維化の進展に関与している事が推定されているが,詳細は不明である.
本研究ではフルクトース摂取における腎のATP枯渇の病態を解明する事を目的とする.【方法】
SDラットを用い,正常食群(n=5),60%グルコース食群(n=5),60%フルクトース食群(n
=5)に分け,3週,6週に飼育期間を分けてそれぞれ検討した.【結果】3週,6週いずれも正常
食群,グルコース群,フルクトース群で総カロリー量,サンプリング時の体重に有意な差は無か
ったが,6週フルクトース食群では,正常食群,グルコース食群に比して腎重量あたりのATPレ
ベルの有意な低下を認めた.【結論】フルクトース群では総カロリー量に依存しない腎ATPレベ
ルの低下を認めた.
P-414 アデニン負荷腎障害ラットにおける脳腎連関障害に関する検討
演者
渡邉 公雄 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
朱 万君 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
菅野 真理 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
木村 浩 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
田中 健一 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
林 義満 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
旭 浩一 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
寺脇 博之 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
中山 昌明 (福島県立医科大学腎臓高血圧内科)
【背景・目的】最近の疫学研究により腎機能低下は認知機能障害の独立した危険因子であること
が示された.本研究では尿毒症モデルラット(アデニン負荷CKDモデル)を対象として認知機能
試験における行動パターンの解析により,この病態を明らかにすることを目的とした.【方法】
動物は8週齢オスのSprague Dawleyラットを用いた.Control群:n=2,アデニン投与群:n=3
の2群に振り分け,6週間にわたってアデニンを経口で負荷(0.5%アデニン含有飼料)し,水迷
路試験(Morris water maze
test)により空間認知機能を評価した.【結果】腎機能は,Control群でBUN 20.6 mg/dL,Cre
0.29 mg/dL,アデニン投与群でBUN 232.8 mg/dL,Cre 2.79 mg/dLと明らかな腎機能障害を
認めた.また,行動試験(水迷路試験)における遊泳距離と所要時間はそれぞれ,Control群 vs
アデニン投与群:3.1±2.0 vs 4.3±0.1 m,5.8±0.2 vs 10.8±5.9 secとアデニン投与群で遊泳距
離,所要時間共に高値の傾向であった.【結論】尿毒症状態は空間認知機能に障害を及ぼす可能
性が示唆された.
P-415 腎指向型BMP7の創製と腎保護効果
演者
渡邊 博志 (熊本大学薬剤学分野)
戸田 翔太 (熊本大学薬剤学分野)
異島 優 (熊本大学薬剤学分野)
小田切 優樹 (崇城大学)
丸山 徹 (熊本大学薬剤学分野)
【目的】本研究では,尿細管修復作用を有するBMP7の臨床応用における課題である血中滞留性
と腎移行性の改善を目的として,腎指向性を有する環状ペプチド(特開2013)とアルブミン(H
SA)とのハイブリッド体(ペプチド-HSA-BMP7)を作製し,UUOラットに対する腎保護効果を
検討した.【方法】ペプチド-HSA-BMP7はPichia酵母発現系を用いて作製した.UUOラットに
対してペプチド-HSA-BMP7を週2回尾静脈内投与し,UUO処置7日後に各種評価を行った.【結
果】BMP7の担体となるペプチド-HSAの体内動態について,99mTc及び125I標識体を用いてSPECT
並びにγカウンターにより解析した結果,ペプチド-HSAはHSAに比べて高い腎移行性を示した.
UUOラットを用いて,ペプチド-HSA-BMP7の腎線維化抑制効果を検討したところ,ペプチドを
有さないHSA-BMP7に比べ,ペプチド-HSA-BMP7は腎におけるα-SMA,TGF-β1に加えヒドロ
キシプロリンを有意に抑制し,腎間質線維化を抑制した.【結論】腎指向型ペプチド-HSA-BMP
7は,BMP7の腎集積性と活性の持続性を高めた新規腎疾患治療薬としての開発が期待される.
P-416 エリスロポエチン製剤治療は慢性腎不全モデルにおける赤血球の質
的変化を是正する
演者
相澤 憲 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
川崎 亮平 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
田代 義仁 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
近藤 久実子 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
安野 秀之 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
平田 道則 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
下中 靖 (中外製薬(株)プロダクトリサーチ部)
【目的】慢性腎不全(CKD)では貧血のみならず,変形能低下など赤血球自体が質的変化を起こ
している可能性がある.エリスロポエチン製剤は腎性貧血治療に有効だが赤血球の質に対する影
響は明らかでない.【方法】雄性F344ラットの左腎摘出と抗Thy1.1抗体投与(iv)によりCKD
モデルを作成した.病態惹起4週からエポエチンベータペゴル(C.E.R.A., 0.6 μg/kg, iv)を2週
に1回投与し18週まで経時的にヘモグロビン(Hb)と赤血球変形能を評価した.【結果】CKDモ
デル群ではHb値の低下と経時的な赤血球変形能値の低下が観察された.CKDモデル群と比較して
,両値はC.E.R.A.投与群で有意な高値を示した.ShamへのC.E.R.A.投与では赤血球変形能値に変
化はなかった.【結論】CKDモデルで低下した赤血球変形能はC.E.R.A.投与で増加した.この赤
血球変形能の改善には造血以外の要因が関与している可能性がある.
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