2014~2015年度政策制度要求と提言 はじめに 東日本大震災は、日本経済・社会に大きな爪痕を残しました。特に、被災 3 県では、大 震災により多くの人命が失われ、雇用・環境にも大きな影響をもたらしました。 国は、これまで被災地の復興に向け、数々の震災復興関連の特例法を制定し、補正予算 の編成や復興庁を設置するなど様々な体制を整えてきました。 しかし、今なお生活基盤と雇用の確保ができず、仮設住宅での被災者や県外の避難者の 不自由な生活、進まないがれきの処理など、復興への道のりは大変厳しい状況にあります。 私たちは、今も被災地に寄り添い、復興・再生に向けた取り組みを進めている中で発生 した 2 月 14 日~15 日の豪雪は、山梨県内に大きな被害をもたらしました。 この豪雪は、尊い生命、財産を奪い、また、農作物被害の総額は約250億円と言われ る被害(5 月発表)を受ける結果となりました。 また、安否確認のできない地域が発生したことなど、これまでに経験のないこととはい え、対応の遅れは否めない部分もありましたが、自衛隊はもとより、近隣の除雪機械等の 援助を受け、回復することができました。今回の豪雪を教訓として、災害に強い山梨県と なっていかなければなりません。 山梨県では「暮らしやすさ日本一の県づくり」をめざし、県政運営の基本方針である「第 二期チャレンジ山梨行動計画」に基づき、その達成に向け取り組みが行われています。 本年度、連合山梨は、①経済・雇用・労働政策7項目、②福祉・男女平等・暮らし政策 16項目、教育・環境政策3項目、そして、山梨・静岡・神奈川の統一政策1項目の27 項目を提言致します。 私たち連合山梨が取り組む「ゆとり・豊かさ・公正な社会」の実現にご理解をいただき、 実効ある施策を講じていただきますようお願い申し上げます。 1.経済・雇用・労働政策 提言1-1 県内労働者が安心して暮らせる環境の整備 日本経済は、いわゆる「アベノミクス」により景気が回復していると言われています。 しかし地方の経済は依然として厳しく、中小企業が中心の本県は全国的にも厳しい状況に あります。有効求人倍率は、本年 8 月が 0.90 倍となっており、全国平均を 0.20 ポイント 下回っています。 失業率は景気に大きく左右され、影響を大きく受けるのが非正規で働いている労働者で す。雇用は、「期限に定めのない直接雇用」であることが基本です。 山梨労働局並びに県内経営者団体との連携を強化し、地域の実態に即した雇用・労働対 策を一層支援し、県内企業が雇用増を伴う真の業績回復につながる取り組みの推進を求め ます。 提言1-2 失業から就労へつなぐための支援 山梨県の失業率は、改善傾向にあるものの、失業者が再就職をするには、依然として厳 しい状況が続いています。このような状況を改善するためには、山梨県の教育訓練機関と 公共職業安定所が一体となって職業紹介と職業訓練に取り組み、離職者等の早期支援が重 要です。 また、健康上の理由、経済環境の変化などの理由で離職を余儀なくされた人が、雇用・ 労働に円滑に復帰できるような支援体制を求めます。 1 提言1‐3 産業政策課題の対応 県内の企業情勢は、競争力(生き残り)をかけた企業努力にも関わらず、倒産・県外へ の流出などがあとを絶ちません。要因の一つには、大震災以降の電気料金のあり方もあり、 企業への負担がさらに増していることも挙げられます。 このままの状況が続けば、県内企業は競争力を失い、山梨県内の空洞化がさらに加速す るなど、山梨の将来を脅かす事態となり、更なる企業撤退なども危惧されます。 山梨県として、エネルギー政策と産業政策課題について具体的解決策を見出すよう求め ます。 提言1-4 希望する者全員が 65 歳まで働き続けられる社会の実現 改正高年齢者雇用安定法がスタートしました。定年退職後希望者全員が継続雇用され、 雇用と年金の接続が確実に図られるよう、企業への支援を含む実効ある対策を求めます。 また、無年金・無収入期間が生じる可能性も指摘されていることから、各自治体との連 携により様々な対応策を講じていただくよう求めます。 提言1‐5 障がい者雇用率の遵守 昨年 11 月に山梨労働局が発表した山梨県の障がい者法定雇用率は、民間、地方公共団体 ともに法定雇用率を下回っています。 障がい者雇用に向けては、官民ともに有効な対策が打ち出されていない状況が見られ、 それぞれの取り組みの共有化をはかることも重要です。 山梨県主導による障がい者法定雇用率の遵守に向けた取り組みを求めます。 提言1-6 ものづくり技術の強化・継承 若者の理工系離れが進む中、次代のものづくり産業を支える人材の確保・育成が急務で す。企業や高等学校、大学との連携したインタ-ンシップの積極的な実施により、ものづ くりへの関心を高めるような取り組みを求めます。 提言1-7 地域産業の活性化と耕作放棄地の再生活用 高齢化・後継者不足による農村の過疎化、農地の荒廃等が進み、耕作放棄地の増加に歯 止めが掛けられない状況です。 耕作放棄地の中には優良農地も多く存在しており、農業生産の維持発展と農村景観の保 全を図るためには、耕作放棄地を再生・活用するなどの地域の自主的な取り組みに対する 支援や、農地集積と新規就農・経営継承を促し、農業の体質強化を図る必要があります。 山梨県では、耕作放棄地を減少させる取り組みとして、法人や大規模経営をめざす経営 体、農業に参入する企業等に対する支援制度がありますが、それらの制度のPR、農地の 確保・集積、販路拡大など更なる対策を行い、持続可能な力強い地域農業が実現するよう 求めます。 2 2.福祉・男女平等・暮らし政策 提言2-1 公共サービス条例の制定 地域社会においては、医療、福祉、教育、まちづくりなどの「公共サービス」が、必要 な時、必要な人に確実に行き届くことを目的とした基盤整備と「公共サービス」の質の向 上をさせることで、豊かな地域づくりが実現できると思います。 公共サービス基本法を具体化・進展させ、安心して暮らすことのできる社会の実現のた め、公共サービス条例の制定を求めます。 提言2-2 公契約条例の制定 自治体の正職員が減少し、嘱託社員、臨時社員が増加するなかで、アウトソーシングに より民間労働者が公共サービスを担う状況となっています。行政の契約にあたっては、発 注先である多くの地元事業者が行き過ぎた価格競争に陥らず、適正な賃金水準と労働条件 の確保を発注者と受注者が責任を持って行うことを定めることが重要です。 これらの状況を改善するために、千葉県(野田市)、神奈川県(川崎市、相模原市、厚 木市)、東京都(多摩市、渋谷区、国分寺市)などの各自治体では、安心して暮らすこと のできる社会の実現のため、公契約条例の制定を行なっています。 本県においても、早期に条例を制定し、労働者が安心して仕事ができ、安心して暮らせ る社会の実現を求めます。 提言2-3 少子化対策について 山梨県の合計特殊出生率は、全国平均を上回っているものの、出生児数は減少しており、 依然として少子化傾向が続いています。 少子化に歯止めをかけるためには、女性が安心して、結婚・出産できる環境を築くとと もに、子どもたちが健やかに生まれ育つ社会を作ることが必要です。 山梨県が策定した次世代育成支援行動計画「やまなし子育て支援プラン後期計画」に基 づき、市町村や企業等と連携しながら、地域における子育て支援サービスの充実を図るな ど、安心して子育てができる環境づくりの更なる取り組みを求めます。 提言2-4 子育て支援の推進 「子ども・子育て関連3法」が成立し、各市町村に「子ども・子育て会議」の設置が示 され、社会全体で支える仕組みを築こうとしています。 今後は、各市町村の役割がさらに重要となることから、県が統一した方針を打ち出し、 進めていくことが重要です。 山梨県の特性を的確に捉え、重点的に実施すべき子育て支援事業を選定し、集中的な取 り組みを実施されるよう求めます。 提言2-5 マタハラ・パタハラの防止と、学習会等の実施 妊娠した女性社員に対して妊娠出産が業務上支障をきたすとして退社を促すなど嫌がら せ行為をするマタニティハラスメントや、男性の育児休業を妨げる行為であるパタニティ ハラスメントが増加しています。少子高齢化が進む中で、育児への積極的な取り組みを妨 げる行為で大きな問題です。 山梨県主導による企業の各部署の指導者研修等の実施を求めます。 3 提言2-6 山梨県主導による女性管理職の登用 国の取り組みでは、2020年までに30%の女性管理職の登用を目標に掲げています が、民間調査会社の資料では、8割の企業が女性の管理職比率が10%に達していない状 況にあります。 山梨県が先頭となって女性管理職の登用率を高め、県内自治体・民間企業にも浸透して いくような取り組みを求めます。 提言2-7 公共交通の利用促進・利便性向上 山梨県は、車社会であり公共交通機関が少ない状況にあります。地域によっては独自 にデマンド交通、コミュニティバスの運行などを行っている自治体もありますが、利用 率の低下などから採算が合わず、運行を廃止する自治体もあります。 しかし、本県は少子高齢化における地域公共交通の役割は重要であり、生活の足とな る公共交通の活性化と利便性の向上に積極的に取り組む事が重要です。 山梨県は市町村との連携で、地域の実態に合ったより良い公共交通の運行について検 討を行い、これらの事業の更なる充実と整備、自治体への支援体制の強化を求めます。 提言2-8 防災計画の早急・適性な見直しによるライフラインの確保 日常のくらしや社会を支えるライフラインは、災害時にはかけがえのない生命を守る最 も重要な位置づけとなります。 自然災害によりライフラインに支障が生じると、日々の生活に与える影響はもちろん、 救援や復旧作業等、災害対応能力は著しく低下し、大きな障害をもたらします。 そのため、各ライフラインに従事する企業は、どのような事態にあってもサービスが止 まることのないよう、より一層強固な体制づくりをしています。 山梨県では、有識者による防災体制のあり方検討委員会を設置し、地域防災計画の見直 しなどを進めていますが、自然災害はいつ発生するかわかりません。ライフライン確保に 向けた具体的取り組み方針を盛り込んだ早急な体制の確立を求めます。 提言2-9 一人暮らし高齢者などの安否確認における対策 山梨県内を襲った豪雪がきっかけで、高齢者、特に一人で生活されている方への安否確 認は重要な問題であることが浮き彫りとなりました。豪雪への対応においても、全県を掌 握されるまで数日を要しました。今回の教訓を生かした、安否確認について各自治体との 連携策を求めます。 提言2-10 子どもたちの通学における安全確保 全国的にも、通学中の子どもたちが巻き込まれる交通事故や、犯罪にさらされる事案が 相次いで発生しており、従来の交通安全対策では対応できない状況にあります。 山梨県は、通学路の点検を実施し、通学路にある危険な場所を明らかにし、かけがえの ない子どもたちの生命と安全を守るため、関係機関や地域が連携して安全に通学すること ができる環境の整備を求めます。 4 提言2-11 中心市街地の活性化 県都甲府市の中心市街地の活性化を図るため、空き店舗を活用した新規創業や商業活性 化に取り組まれていると承知しています。しかし、様々な取り組みを行なっているものの 成果となって現れない状況にあります。 活性化に向けたイベント開催などに助成するとともに、甲府市中心市街地活性化基本計 画に記載された事業への支援を求めます。 提言2-12 地域における買い物弱者への支援 郊外型の大型店との競争や不況による経営難などから、地域における小規模な個人商店 が少なくなり、生活用品の購入が困難となる高齢者や障がい者(買い物弱者)が増加して います。この課題解決に向けた検討と対応策の実施を求めます。 提言2-13 無駄のない食生活の啓発 日本では、年間約 1,700 万トンの食品廃棄物が排出されていると言われています。この 中には、本来食べられるのに廃棄されているものも多くあります。 山梨県として、食品関連事業者における賞味期限・消費期限の適切な設定、ならびに、 再生利用の推進、消費者に対する食生活の見直しや無駄のない消費生活の啓発などを通じ、 食品ロスの削減に向けた対策を求めます。 提言2-14 企業のコンプライアンスの強化 大手のホテルや百貨店レストラン等における不適切なメニュー表示の事例が相次いで明 らかとなりました。一般消費者の保護を最優先し、商品表示に関するコンプライアンス強 化のため事業者に対する対策が重要です。 山梨県として、食品関連企業などへのコンプライアンスの徹底を求めます。 提言2-15 特別養護老人ホームの拡充 山梨県においても高齢化が進んでいる状況にあり、今後はさらに深刻化してきます。そ の中で、家族の介護のために企業を退職したり、通常勤務で働くことができない人も多く いることが報告され、さらに、施設の入居期限の問題や次の転院先を探すなどの精神的不 安も発生しています。 労働者が安心して働き続けられるためにも施設の拡充と支援を求めます。 提言2-16 自殺防止の水際対策 電車への投身事故が多数発生しています。自殺者が発生する背景には、うつ病などの健 康問題、不況の影響による経済・生活問題などがあり、今後も増加する傾向を示していま す。自殺防止のための根本的な対策として、住民の身近な窓口となる市町村など関係機関、 関係団体とも連携し、メンタルヘルス対策など相談体制の整備・充実や、自殺防止に中心 的な役割を果たす人材の養成や水際対策など、地域における自殺対策の更なる強化を求め ます。 5 3.教育・環境政策 提言3-1 教育環境の整備と少人数学級の更なる充実 山梨県におきましては、2014 年度より公立小中学校全学年において 35 人学級が実施さ れました。このことにより、より一人ひとりに行き届いた教育活動が実施されることと思 います。今後は加配定数増を含めた教職員定数の改善で更なる教育環境の整備を求めます。 提言3-2 地球温暖化対策の明確化 震災以降、地球温暖化対策については、国内排出量取引制度や温暖化対策税などの基本 政策について曖昧となっています。ポリシーミックスの観点から、その役割や位置づけに 関して国の方針も重要ですが、山梨県としてどのように推進していくのかの議論の必要性、 また、方針・考え方などの合意形成に向けた取り組みを求めます。 提言3-3 動物との列車衝突の防止(鳥獣被害対策の強化) 近年、野生鳥獣による様々な被害が深刻化している中で、鉄道山間部においての日本鹿 等、動物との列車衝突も多発しています。鉄道会社も防護柵等を設置して効果をあげてい ますが、県においても被害を食い止めるため、適正な水準の個体数調整が必要です。 市町村および農林業関係者と協議し、管理捕獲などの計画的、継続的な対策強化を図る よう求めます。また、個体数調整後は、地域振興食材として、魅力ある食材として活用さ れる取り組みを求めます。 4.連合山静神会議(連合山梨・連合静岡・連合神奈川)統一政策提言 提言4-1 富士山火山防災対策 山梨・静岡・神奈川の三県による広域的な行政課題の取り組みについては、これまでに 昭和56年「三県広域問題協議会」の設置、平成18年「山静神サミット」を開催し、観 光振興、安全・安心の確保のための防災対策、環境対策などについて連携して取り組んで きました。 三県による広域的な行政課題への取り組みについては、以下の観点で、 「取り組みの見え る化」および「行政間連携の深化」を図られるよう求めます。 (1)三県による広域的な行政課題の取り組みについて、情報の一元化を図り、県民に対 する認知度向上を図るよう求めます。 とりわけ、 「富士山火山防災マップ」および「富士山の噴火警戒レベル」など、富士 山火山防災対策に係る情報について周知徹底を強化されるよう求めます。 (2)本年10月に実施される富士山火山三県合同防災訓練を踏まえ、避難計画の検証、 避難対策および広域にわたる行政・関係機関との連携における課題を検証し、広域 避難計画の実効性を高めるよう求めます。 6 連 合 山 梨 の 運 動 1.労働基準法遵守の取り組み 連合山梨が通年的に取り組みを行っている「何でも労働相談ダイヤル」の相談内容を 見ても、労働基準法の違反は後を絶ちません。特に景気の後退などによる、不当解雇・ 退職強要・契約打ち切りなどの相談に加え、差別(嫌がらせ)も多く寄せられています。 連合山梨は、労基法の周知・徹底や街頭宣伝行動を行い、労働基準法違反の撲滅を呼 びかけています。 2.格差社会・二極化社会是正に向けた取り組み わが国経済は、景気が緩やかに回復していると言われていますが、多くの働く者・生 活者がそれを実感するまでには至っていません。 働く者を取り巻く現状を見ると、雇用者に占める非正規労働者の比率は過去最高の 38.2%に達しています。正社員と同じ業務に従事する非正規労働者が拡大する一方で、 均等・均衡処遇は進展せず、年収 200 万円以下のワーキングプアと言われる層は 1,100 万人近くに及ぶなど極めて厳しい状況に置かれています。 さらに、教育分野での格差の固定化、医療・福祉分野についても二極化が生じていま す。連合山梨は、この格差社会・二極化社会を是正し、公平・公正・安心な社会への転 換を目指して、通年の取り組みとして、キャンペーン活動、経営者団体や労働局等公的 機関への申し入れなどを展開しています。 3.循環型社会を目指すエコライフ21活動の取り組み 連合は、1998 年から「連合エコライフ 21」地球温暖化対策行動月間を設定し運動を展 開してきました。夏季における軽装の運動(政府が提唱するクールビズ)は、連合内で は当然のこととして定着しています。 環境省の「チームマイナス 6%」への参加、電力不足の解消のため組織内外での取り組 みも展開しています。 山梨県においても、これらの取り組みをさらに広げ、温暖化対策先進県となるような 取り組みを求めます。 4.教育対策専門部会の取り組み 連合山梨では、「連合・教育改革 12 の提言」に基づき、山梨の教育のあり方について 組織内論議や山梨県への提言、教育フォーラムなどを計画し、学校現場や子どもたちの 将来について論議を深めています。この運動へのご理解を求めます。 5.労働基本権を保障した公務員制度改革の取り組み 連合は、公務員の労働基本権保障をはじめとするILO勧告の早期実現、労使協議に もとづいた公平・公正、透明で納得性のある評価制度を確立し、国民が信頼できる行政 と透明な公務員制度改革を実現することを求めています。 6.未組織労働者を支援する取り組み 連合山梨は、顔の見える運動の窓口として、パート・派遣・有期雇用者の労働問題を 把握して取り組みをすすめるために「未組織労働者支援センター」を設置し、構成組織 以外の労働者に対しても広く支援を行っています。この運動へのご理解を求めます。 以上、連合山梨の運動に対しまして、ご理解をいただくとともに積極的なご支援・ご 協力をお願いします。 7
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