鷹狩と鷹匠の文化誌

鷹狩と鷹匠の文化誌
NPO法人 日本放鷹協会 波多野幾也
(c) H.KATO
インタビュアーとインタビューイ
• 「新修鷹経」(「新しい鷹狩り」) 818年
ちなみに神聖ローマ帝フリードリヒII世
(プロイセンの「大王」とは別。フリードリヒI世−赤髭−の孫)
の「Die kunst von falconry/The Art of falconry」 は1260年
• 「鷹経弁疑論」(「『新しい鷹狩り』を読み解く」) 1503年
機能と文化
• 世界のどこでも鷹は鷹
飼育・使役に用いる道具が要求される事柄は同じ。
その前提下で何が異なるか?
• 植生によって適した鷹の「種」は異なる。狩りの手法も異
なる。それによって何が異なるか?
• 特別の機能を求められない部分は「文化」が自由に発現
し得る。
「やま」と「もり」
• 鷹狩りの舞台は深山ではない
雲南・モンゴルに例外あり
• 日本では、古くは「やま」っぽく、下るにつれ、里地に・・・
いずれにしても多すぎる木は邪魔
• 諏訪大社における保護
• 「山岳」と「やま」は異なる
鷹狩りに出かけた太田道灌はにわか雨
に降られ、みすぼらしい家に駆け込む。
家には若い娘がいた。
﹁蓑を貸してくれまいか。明日にでも城の
者に届けさせるから﹂
と道灌が頼むと、娘はいったん奥に引っ
込み、ヤマブキをひと枝、無言で差し出し
た。
道灌は﹁
花が欲しいのではない﹂
と怒り
ながら城に帰る。
城でこの話をすると、近臣の一人が膝を
進め、
﹁後拾遺集に醍醐天皇の皇子・
中務卿兼明
親王が詠まれたものに
という歌があります・・・﹂
と。
道灌は大いに恥じ、翌日、その家へと馬
を飛ばしたが、その家はもうもぬけの殻
だった。道灌はこれより、歌の道にいっそ
う精進するようになったという・・・
七重八重花は咲けども山吹の
実のひとつだになきぞ悲しき
太田道灌の伝説
太田道灌の伝説
• ヤマブキを見てそれとわかる
• 八重のヤマブキは実をつけない(一重の野生種は実をつ
ける)ことを知っている
• 「実の」と「蓑」がかけてあることを理解
• 後拾遺集の歌を知っていることが前提
• ヤマブキの花期に何を狩っていたのか?
• 鷹の換羽管理はどうしていたのか?
大伴家持の長歌
大君の 遠の朝廷ぞ
み雪降る
越と名に負へる
天離る
鄙にしあれば
山高み 川とほしろし 野を広み 草こそ茂き
鮎走る
夏の盛りと
島つ鳥
鵜養がともは 行く川の
清き瀬ごとに 篝さし なづさひ上る
露霜の 秋に至れば
野も多に 鳥すだけりと ますらをの 友誘ひて
鷹はしも
あまたあれども
矢形尾 の
我が大黒 に 白塗の 鈴 取り付けて
朝猟に 五百つ鳥立て
夕猟に 千鳥踏み立て
追ふごとに 許すことなく
手放れ も
をち もかやすき
これをおきて
またはありがたし さ慣らへる
鷹はなけむと 心には 思ひほこりて
笑まひつつ
︵後略︶
尾羽
「責鷹似鷹拙抄」
(群書類従所収)
矢形尾
「養鷹弁疑論」
(群書類従所収)
鷹狩りとは?
瑞鷹 佐藤光華
東毛歴史資料館
月刊太陽より
川越仙波東照宮蔵
鷹狩りについて皆さんが
知っていることは?
鷹狩りとは
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鷹「で」狩る cf.巻き狩り、ウサギ狩り・・・
何を狩るのか
どんな場所で行われるのか
いつ行われるのか
どのように狩るのか 呼べば戻ってくるのか
獲物を持ち帰ってくるのか
どのように訓練するのか
どんな道具を使うのか
鷹狩りとは
• 飼い慣らした猛禽を使って
• 小鳥やキジ、カモ、ウサギ、キツネ、シカなどの獲物を捕る
• どんな猛禽? 4大グループ コンドル
ワシ・タカ・ハゲワシ・ミサゴ・ヘビクイワシ
ハヤブサ
フクロウ・メンフクロウ
鷹狩りの手順模式図
ハヤブサ
獲物
タカorハヤブサ
イヌ
ヒト
好適種
・ハヤブサ類、ワシ・タカ類
・さらにその中の好適種(狩りのスタイル)
100グラム∼10キログラムの中で
200グラム∼2キログラムが普通
ハイタカ、オオタカ、アカオノスリ、モモアカノスリ、クマタ
カ、イヌワシ、コチョウゲンボウ、ハヤブサ、シロハヤブ
サ・・・
オオタカ
ハヤブサ
クマタカ
ツミ
ハイタカ
道具 1 全般
・足→足革(足との接触部分+ヒトが握る部分)
→(接続紐)→ヨリモドシ→大緒→止まり台・止まり木
・革手袋
・HOOD/頭巾
・鈴
・ルアー・采(ザイ)/生き餌
・細紐 訓練途中に
・BAGなり布袋なりの携帯道具
・餌入れ
・笛
(・ラジオテレメトリーシステム)
道具 2 係留用具
足革(足との接触部分)・・・革
足革(ヒトが握る部分)・・・・革(欧・日)または組紐(中東)
(接続紐)・・・・・・・・・・・・・・・組紐(日)
ヨリモドシ・・・・・・・・・・・・・・・金属
大緒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・組紐(欧・日・中東)
または革紐(欧)
止まり台・止まり木・・・・・・・「岩」タイプと「枝」タイプ
道具 2 係留用具
↑George.E.Lodge (C)Tryon Gallery 1995
Archibald Thorburn → 道具 2 係留用具
架(ほこ)と架垂(ほこだれ)
「鷹かがみ」より
「日本の犬と狼」より
燈台架(牛糞灯台型)
道具 2 係留用具
モトオシ
脚革
道具 2 係留用具
大緒
道具 3 手袋とHOOD
革手袋
・5本指、革製
・2∼3本指、革製
・手貫、革・絨緞(中東)・紙と藁(日)
HOOD/頭巾
・布、平面裁断(日)
・軟質の革、立体裁断(中東)
・硬質の革、立体裁断(欧、モンゴル)
道具 3 手袋とHOOD
道具 3 手袋とHOOD
和風の隼頭巾と洋風のHOOD (Anglo Indian 式)
道具 4 鈴
・足に(欧・中東)
・尾羽に(東アジア)
道具 4 鈴
道具 5 囮(ルアー)・采(ザイ)/生き餌
・革と獲物の羽/獲物の毛皮
・紙(日)
鳩袋
采
ルアー
道具 6 細紐
訓練途中に(日本ではルアー代わりの
ハトに付けても)
・8の字巻
・荷造り紐式巻(日)忍縄(おきなわ)と忍縄筒
道具 7 餌入れ
↑ 丸鳩入
→ 餌合子
→ 口餌籠
道具 8 携帯道具
BAGなり布袋なりの
・合切袋式
・各個式
歴史
・4000年前?
・中央アジア? ・記録 B.C.4c ぐらい? ギリシャ、エジプト、中国
・A.D.4cごろ ローマ、日本
伝播
盛んな地域
・ヨーロッパ
・中国、ただし非漢民族(含日本)
・インドから中東
・アフリカ、東南アジア、海洋地域、オーストラリア、
アメリカは「歴史的には」空白
特徴
・文化的条件よりも自然環境条件の影響大
・入手可能な種、狩り場、獲物 ←おおむねセット
・開けたところではハヤブサ、木が多ければタカ
“BIRD FOR THE LURE, BIRD FOR THE FIST”
「大羽、小羽」 ←↑航空力学
※ワシはやや別カテゴリー
※「王者の特権」のひとつ
※右手か左手か
比較文化的な見どころ
・「王者の特権」のひとつ
・右手か左手か
・他の狩りとの競合
・肉のためか娯楽か
・鷹の捕獲
網懸と巣鷹 EYAS, PASSAGE,. HAGARD
交流
・イスラムとヨーロッパ
・漢民族と周辺 ・鴨場とコイケル
・モンゴル民族
・フランス革命
・インド・パキスタン
・英国植民地、サファリ
交流・・・たとえばHOOD
North Afghanistan
Hawk Eagle Hood
Indian Hood
Anglo-Indian Hood
Turkmenistan Eagle Hood
Dutch Hood
Arab Hood/
Bahrain Hood
Dutch Hood
Dutch Hood
Syrio-Dutch Hood
Syrio-Arab Hood/
Syrio-Damascus Hood
Damascus Hood
Damascus-Dutch Hood
交流・・・たとえばHOOD
Anglo-Indian Hood
Dutch Hood
Arab Hood/Bahrain Hood
交易
・ヴィーキングとイスラム
・漢民族と周辺 金から朝鮮半島へ
・朝鮮通信使 対馬
・松前口
・供給地としてのパキスタン
発展
・伝統のない地域含む全世界に
・種の多様化 エキゾチック種
・飼育下繁殖 数千∼1万羽/年
人工授精 ハイブリッド
・・・家禽化
・経験則の再確認
・原理の抽出
・テレメ、データロガー
ヨーロッパ
・シロハヤブサ、ハヤブサでライチョウ、ヤマウズラ
・オオタカで鳥・ウサギ[ノウサギ、アナウサギ]
・小鷹(ハイタカ、コチョウゲンボウ)で小鳥
両足に鈴
フェレッティング
東ヨーロッパではイヌワシ偏愛
西アジア
カザフ、キルギス、モンゴル
・セイカーハヤブサ、ラナーハヤブサ
・オオタカ?
・イヌワシ(モンゴル) チンギス・ハーン
乗馬での狩り
右手
南アジア
パキスタン、アフガニスタン/インド
・セイカーハヤブサ、ラナーハヤブサ、ラガーハヤブサ
・アカガシラコチョウゲンボウ
・ミナミハイタカ
※Lahore bell
※holsband
中東
・セイカーハヤブサ、ハヤブサでノガン
・セイカーハヤブサでノウサギ、
イヌと組ませてレイヨウ
・「バイザラ」 アラビア語でオオタカ?
伝わった当時にはオオタカがいたか? つまり木があったのか?
東アジア
・オオタカで鳥・ウサギ
・シロハヤブサ、ハヤブサで鳥
・小鷹で小鳥
尾羽根に鈴、白い羽
雲南、満州、高麗、百済
日本
・オオタカで鳥・ウサギ
・小鷹で小鳥
・ハヤブサ類も使わないではないが・・・
・繊細で緻密・・・言い換えれば辛気臭い
・文化的影響の他に、環境の制限
タカでの狩りは面倒、ハヤブサでの狩りは単純。
木立や薮はみな違うが、「空」はどこでも空。
日本の鷹狩りの 歴史
・仁徳帝43年9月 酒君 百済から
・万葉集、大伴家持
・新修鷹経 9c cf.フレデリックIIの著書が13c
・7∼10c 一条、村上etc
・兼光、源政頼 百済から 中興の租 鷹書増える
・武家と公家 諏訪大社、持明院、西園寺
・「尾羽打ち枯らす」 王の大権の形骸化
・徳川から明治以降
日本の鷹狩りの歴史
「鷹狩図屏風」より
「年中行事絵巻」より
川越仙波東照宮蔵
「春日権現験記絵」より
花見鷹狩図屏風 より
日本の鷹狩りの特徴
捕りたい。捕るところを見たい。
が、薮多く、視界が限られる。
遠くで捕るのではなく、目の前で。
→ヤラセへの傾倒
→狩り場の整備
→羽合わせ
ヤラセへの傾倒
江戸期、特に吉宗以降に儀式化
鶴の飼い付け 目黒権兵衛
キジを杖で打ち落とす
巣鷹の重用 大物捕り
鷹匠の演出家化
狩り場の整備
•鷹場制度 御拳場、御捉飼場、御借場
•各種の制限
•鴨場
「天皇の鷹匠」より改変
鴨場
新宿御苑・浜御苑、
新浜鴨場・埼玉鴨場、
村山貯水池・羽田空港・栗林公園
浜離宮庭園
引堀跡(栗林公園)
東京都公園協会
羽合わせ
「天皇の鷹匠」より
羽合わせ
「鳥筋に羽合わす」
伝統の伝承
諏訪流
酒君→源政頼→諏訪大社の贄鷹、
禰津神平
→小林家鷹 (信長、秀吉に仕える)
・・・江戸時代は目立たず・・・ (明治維新) 小林鳩三(13)→小林宇太郎(14)
→福田亮介(15)→花見薫(16)
→田籠善次郎(17)
理念と技術体系と要素技術
•
•
•
•
「鷹を主人と思って仕える」ように
「丸い」鷹
「網掛」の扱い
動作の「型」
「日本伝統狩猟法」より
「日本伝統狩猟法」より
鷹狩りの手順模式図
ハヤブサ
獲物
タカorハヤブサ
イヌ
ヒト
狩りの手順
・獲物のフラッシュが先か、鷹のスタートが先か? A 獲物のフラッシュ先行型 主にタカ類で キジ科猟鳥、カ
モ、ウサギ
B 鷹のスタート先行型 主にハヤブサ類 キジ科猟鳥、
カモ
※狩り場が重要
※犬は有用 “GOOD DOG MAKE GOOD HAWK”
ヨーロッパの鷹狩り猟犬
・A獲物のフラッシュ先行型では
フラッシングドッグ スパニエル、テリア
・B鷹(ハヤブサ)のスタート先行型では
ポインティングドッグ ポインター、セッター ※(レトリーバー) ハヤブサが獲物を蹴り、獲物が深い薮の
中に落ちた時
・3タイプ計数頭を同時に使うことも
日本の鷹狩り猟犬
日本の伝統的な鷹狩り猟犬 ※「犬骨折って鷹の餌食」
フラッシングドッグ
・品種改良は行われず、拾ったイヌを使役
仔犬の素性の見分け方など
・菜食(非内温動物食)を強制
・「片口止まり」と
「諸口止まり=お放し犬」
・変ったものとして、「鴨寄せ」芸 →
・・・コイケルとの関連も?
鷹の餌としての「餌犬」もまた別にあり・・・
日本の鷹狩り猟犬
「日本の犬と狼」より
永富白の肖像
「日本の犬と狼」より
日本の鷹狩り猟犬
先犬(ハナイヌ)を
付けての訓練
日本の鷹狩り猟犬
年齢あるい
は経験
止まりかた
初年
止ま
らず
片口止
まり
放し掛
け
∼4歳
止ま
らず
片口止
まり
放し掛
け
5歳以上
止まらず
片口止
まり
諸口止まり
放し掛け
平犬
呼称
新犬
古犬
不明
淘汰され
たか?
古疲れ
寄犬
留犬
お放し犬
放し犬
日本の鷹狩り猟犬におけるリード
止まらず
片口止まり初期
片口止まり後期
放し掛け
留犬、お放し犬、放し犬
係留時、
普段の移動時
大の首縄+緤 または
大の首縄+鍍(鎖のこと)
小の首縄+緤 または
胴縄+緤
儀礼で
参加の機会ナシ
小の首縄+首輪+攣緒
(胴縄併用もあった)
訓練時 また
猟野で打ち入り
前
猟野で打ち入り
後
儀礼色強
小の首縄+首輪+攣緒
(胴縄併用もあった)
儀礼色弱
小の首縄+緤 または
胴縄+緤
大の首縄+遣縄 または
胴縄+遣縄
大の首縄+遣
縄
または
胴縄+遣縄
大の首縄+早走
または
胴縄+早走
小の首縄+前後の鈴 または
胴縄+前後の鈴
念のため類走(捌縄)をつけることもあり、
その場合は、
胴縄+前鈴?+類走(捌縄) または
小の首縄+前鈴?+類走(捌縄)
緤(きづな)系
木綱、緤(上古)
山椒の木
二尺五寸
詳細不明
木綱、緤(中世)
紺麻糸シケ打ち
一丈二尺五寸
先端に一尺五寸に紫摺革といわれる力革
がつき、その先に旋子(さらに小さな輪か短
い紐がつくのだろう)
木綱、緤(近世)
鍍、鎖
鉄
四尺五寸
先端に旋子(まちかね)、手元に四寸の鎖
留
攣緒、牽緒
真紅唐糸の組み打
ち、ときに紫、浅黄
色
二丈五尺
中央に紅革または紫革の二尺五寸の力革。
一端に房、他端に二寸の坪。別パーツとし
て坪一寸付きの房
藁に苧を混ぜた三
つ編み
馬上用は七尋あるいは九尋
三尺
手元を細く
遣縄系
遣縄、遣索、はしり、はしり
縄、犬はしりの縄、はすわ、
走縄、はり縄、手縄(上古)
早走系
先端に二寸の坪。
手元は端から一尺五寸のところにサクリが
ついた。
徒歩用は四尋一尺、三尋半
遣縄、遣索、はしり、はしり
縄、犬はしりの縄、はすわ、
走縄、はり縄、手縄(下って)
(柿渋)染麻糸シケ
打ち、または組み
打ち(浅黄色、浅黄
に白を打ち混ぜる
流もある)
二丈五尺、あるいは一丈二
尺、一丈二尺五寸、一丈五
尺
先端に一寸の坪
山縄
(柿渋)染麻糸
七尋半、あるいは四尋半、三
尋半
おそらく同上
七尺五寸または二尋
先端に八分の坪
早走、捌縄、捌索、縄、捌き、 藤、葛、葉かつら
(おそらくはオオツ
さばし、数走、類走
ヅラフジ)
中東の鷹狩り猟犬
アラブのレイヨウ狩り
・まずハヤブサがレイヨウに追い付き、
しがみついて速度を落とし・・・
・サルキーが追い付いてとどめをささずに待つうちに・・・
・ウマまたはラクダに乗った鷹匠が追い付く
・・・やや例外的
http://www.sheikhmohammed.co.ae/japanese/history/history_falconry.asp
日本の鷹道具の素材
• 皮革 ふすべ革 ごめん革 漆皮 漆革
• 木材 枝をそのまま/製材して ヒノキ、クヌギ、フジ、サ
ンショウ・・・
• 竹 柄として、小杭、針
• 紙 西之内紙(楮紙、茨城)
寸法単位に格別の注意必要。
1尺は何センチか?
• 布 生絹 甲斐絹 花色木綿
• 糸 絹(穴糸、太白糸等)
• 植物繊維 畳表(琉球表)、麻(苧麻)
• 金属 鉄・銀・真鍮
• 貝 漆細工
• 骨・角 シカの角 モトオシ、工具に
• 漆、奴留手/白膠木 、柿渋
• 糊 生麩糊、姫糊 一閑張り、尾羽保護
飼育に用いる道具
• ア 架(とまり木)
水平棒状・・・鷹部屋の架、外架、
台架、陣架、地架
その他・・・野架→撞木、草架、
燈台架
• イ 架垂れ 素材、紋様
• ウ 大緒 素材、鐶(モトオシ=
よりもどし)、結び方
• エ 足革、イギリ
「日光東照宮の宝物」より
「鷹かがみ」より
架(とまり木) • 基本型・・・水平、架垂とセット 治療用には樋架
鷹部屋の架、外架、台架、陣架 木の種類も季節などにより ヒノキ・スギ/クヌギ
一時的使用には「はざ棒」の竹なども
台架
地架 雛育成用、繋がない
陣架
いずれも「鷹かがみ」より
架(とまり木) 外架
「日光東照宮の宝物」より
架垂
1メートル四方ほど、または1×2メートルほどの四角い布
• 架木の下を潜らないため、ブラ下がり死の予防
• 肉球プリント、更紗や金襴などの上等の布、虎と豹の毛
皮、シンプルな藍染などの布、琉球表に裏打ちしたもの、
陣架などにはムシロ
• 架木にかけるか、竹などを通して上端を固定し、下端も
固定する
• 座敷で鷹を見せることがなくなるとシンプルに・・・
「古今要覧考」より
「美術に見る日本スポーツ」より
架(とまり木)
• 草架 一時的泊架、機能的には
陣架と同じ
• 燈台架 ハヤブサ用
「養鷹弁疑論」
(群書類従所収)より
有識.com
架(とまり木)
• 野架→撞木 手で保持する ハイタカによる「撞木鷹」
月刊太陽より
「日本伝統狩猟法」より
「鷹かがみ」より
大緒
• 大緒 要所を革で補強した絹の組紐 鷹を繋ぐのに用い
る
流派、鷹の種類、鷹の履歴、季節などによって、色・長さな
ど使い分け
結び方も各種使い分け
いずれも群書類従所収 「荒井流鷹書」より
「古今要覧考」より
別冊 「太陽」より
「美術に見る日本のスポーツ」より
大緒2 細部
• モトオシ(ヨリモドシ) 瓶子∼と通常のもの
金属製と角製
「日光東照宮の宝物」より
「古今要覧考」より
脚革
•足革、イギリ 鷹の足に直接付ける
「古今要覧考」より
脚革
「古今要覧考」より
保定に用いる道具 • 伏衣 江戸以前、明治以後
• 足袋(あしぶくろ)
「教草」より
手入れ道具
•
•
•
•
爪嘴小刀
火針、ヘラ、灸用のコテ
クジリとウグイス
羽虫取り・・・明治以降
「新修鷹経」
(群書類従所収)より
「教草」より
輸送に用いる道具
• 尾袋
「生絹に限る」(藤原定家)
下っては和紙(渋紙+生紙)
• 糊付け 生麩糊(小麦粉糊)
「古今要覧考」より
鷹を据える道具
• 鷹を据える道具
鷹手貫、エガケ 「羽合わせ」との関連?
• 藁と紙から革へ
「春日権現験記絵」より
忍縄
• 経緒、招縄/置縄 おぐなわ
麻、のちに絹の細紐
• 忍縄筒 竹、江戸期まで素朴、鴨場の発達に伴って洗練?
• 忍縄袋 生物袋が元か? 鴨場の発達に伴って使われ
なくなっていく
「教草」より
「古今要覧考」より
「美術に見る日本のスポーツ」より
棒状の道具
•
•
•
•
•
•
勢子棒系 狩杖、勢子杖、犬飼狩杖
獲物を飾りながら持ち運ぶ・・・鳥柴
ピックアップ系 捻、揚木
采(ザイ)系 招ぎ餌の一種として
策(ブチ)系 鷹匠用、犬飼・犬曳用
志奈比(撓い、竹刀)
棒状の道具
• 勢子棒系 狩杖、勢子杖、犬飼狩杖
「古今要覧考」より
棒状の道具
• 獲物を飾りながら持ち運ぶ・・・鳥柴
キジ
ヒバリ
「斉藤朝倉両家鷹書」
(群書類従所収)
「年中行事絵巻」より
棒状の道具
• 獲物を飾りながら持ち運ぶ・・・鳥柴
キジ雌雄
冬 春
小鳥、ハギ
ウサギ
キジ一羽
「鷹経弁議論」
(群書類従所収)
スズメ、ササ類
棒状の道具
• ピックアップ系 捻、揚木
「鷹経弁議論」
(群書類従所収)
棒状の道具
• ピックアップ系 捻、揚木
「古今要覧考」より
棒状の道具
• 采(ザイ)系 招ぎ餌の一種として
「古今要覧考」より
棒状の道具
•策(ブチ)系 鷹匠用、犬飼・犬曳用
「古今要覧考」より
棒状の道具
•策(ブチ)系 鷹匠用、犬飼・犬曳用
「日本の犬と狼」より
棒状の道具
• 志奈比(撓い、竹刀)
鈴、鈴板と鈴緒
「古今要覧考」より
鈴、鈴板と鈴緒
• 凝り性の表れ
樫鳥装束、連雀∼
• 大糯の木の葉、鼈甲、あわび、鹿の角、熊の骨、角、牙、
魚鱗、木材
「古今要覧考」より
鈴、鈴板と鈴緒
鈴、鈴板と鈴緒
「古今要覧考」より
鷹を手元に戻すために
• ア 餌袋→餌器、餌合子
• イ 餌袋→口絵籠、丸鳩入
• ウ 餌袋→生物袋、鳩袋、転じて忍縄袋
鷹書より
「古今要覧考」より
「斉藤朝倉両家鷹書」
(群書類従所収)
「鷹かがみ」より
鷹を手元に戻すために
「血溜まり」 「血こぼし」の
餌袋からの連続性に注目
「古今要覧考」より
「美術に見る日本のスポーツ」より
鷹を手元に戻すために
「美術に見る日本のスポーツ」より
堀内讃位
鷹を手元に戻すために
イヌのリードの類
• ア 首縄、首輪、胴輪
• イ 緤(きづな)系 繋ぐため
・・・緤、鎖、牽緒
• ウ 遣縄系 狩り場で保持して
・・・遣縄、遣索、はしり、はしり縄、犬はしりの縄、はすわ、
走縄、はり縄、手縄、山縄
• エ 早走系 狩り場で手から放して・・・早走、捌縄、捌索、
縄、捌き、さばし、数走、類走
イヌのリードの類
緤(きづな)
系
木綱、緤(上古)
山椒の木
二尺五寸
詳細不明
木綱、緤(中世)
紺麻糸シケ打ち
一丈二尺五寸
先端に一尺五寸に紫摺革といわれる力
革がつき、その先に旋子(さらに小さ
な輪か短い紐がつくのだろう)
木綱、緤(近世)
鍍、鎖
鉄
四尺五寸
先端に旋子(まちかね)、手元に四寸
の鎖留
攣緒、牽緒
真紅唐糸の組み打
ち、ときに紫、浅
黄色
二丈五尺
中央に紅革または紫革の二尺五寸の力
革。一端に房、他端に二寸の坪。別パー
ツとして坪一寸付きの房
藁に苧を混ぜた三
つ編み
馬上用は七尋あるいは九尋
三尺
手元を細く
遣縄系
遣縄、遣索、はしり、は
しり縄、犬はしりの縄、
はすわ、走縄、はり縄、
手縄(上古)
早走系
先端に二寸の坪。
手元は端から一尺五寸のところにサク
リがついた。
徒歩用は四尋一尺、三尋半
遣縄、遣索、はしり、は
しり縄、犬はしりの縄、
はすわ、走縄、はり縄、
手縄(下って)
(柿渋)染麻糸シ
ケ打ち、または組
み打ち(浅黄色、
浅黄に白を打ち混
ぜる流もある)
二丈五尺、あるいは一丈二
尺、一丈二尺五寸、一丈五
尺
先端に一寸の坪
山縄
(柿渋)染麻糸
七尋半、あるいは四尋半、
三尋半
おそらく同上
早走、捌縄、捌索、縄、
捌き、さばし、数走、類
走
藤、葛、葉かつら
(おそらくはオオ
ツヅラフジ)
七尺五寸または二尋
先端に八分の坪
イヌのリードの類
「日本の犬と狼」より
イヌのリードの類
犬の餌入れ
• 打飼袋(ヒトの打飼袋とは異なる) 草/すげ/麻で編む、布、革
「日本の犬と狼」より
「斉藤朝倉両家鷹書」
(群書類従所収)
犬の餌入れ
ハヤブサ用の道具 • ア 采 前出
• イ 頭巾 甲斐絹と花色木綿
ハイタカ用の道具
• 活物袋
「教草」より
「美術に見る日本のスポーツ」より
ハイタカ用の道具
• 扇子
• 水筒
「美術に見る日本のスポーツ」より
「責鷹似鷹拙抄」
(群書類従所収)
クマタカ用の道具
• 宮内省で実験した際にはオオタカ用を転用
• 東北では、安価で実用的な工夫
• カケ/コテ、餌箱、足緒/足縄/小足縄、長緒、ヘラ、
ケラ、背負子/モリコ、山ナタ/ナガサ/マキリ、
「日本伝統狩猟法」より
「マタギ」より
「聞き語り 最後の鷹匠」より
教草
その他にも
• 鷹の贈答儀礼
• 獲物の贈答儀礼
• 規制と許可を巡る政治
• 鷹場支配 誰が実質的権限者か
• 鷹場を巡る大名同士の関係性
• 鷹、鷹狩りについての和歌 定家の「鷹百首」他・・・
• 獲物と地勢
• 鷹の行動要素の名称
• 「鴨の鋤焼」を始めとする料理
etc・・・・