H27 年 3 月 12 日 北条砂丘風力発電所 電気主任技術者 森井 強 [email protected] 直撃雷検出装置の構築と運転状況について 風車設備の概要 ・受電電圧:66kV ・認可出力:13,500kV ・運転開始:H17 年 11 月 18 日 ・発電機出力:1,500kW(定格風速 12.5m/s)×9機 ・ナセル地上高:65m ・ブレード直径:77m(最高地点の地上高:103.5m) ・製作者:Repower,現 Senvion(共にドイツ国) ・風車配置:鳥取県中部の日本海海岸沿いにほぼ東西 西← →東 1G 2G 350m 3G 350m 4G 350m 5G 1,730m 6G 620m 7G 600m 8G 380m 9G 500m 上記 m は風車間の距離、1G から 9G 全長は 4870m(1G~4G と 5G~9G とは一直線上ではないた め、全長 10m 短い) (要約) 近年、風車が直撃雷を受けブレード破損に至る事故が全国大で少なくない。また、ブレードにクラック が入った場合、運転継続により損傷が拡大する恐れがある。そこで、風車に直撃雷検出装置を設置し、 検出時に当該機を自動停止させる。発雷終焉後、現地でブレードの外観に異常がないことを確認し、ラ ッチングリセットにより風車自動起動させる。 公衆安全を最優先とし、ブレード破損による被害拡大防止を目的とする。対象機は全機とし、全機に直 撃雷検出装置を設置する。 1.経緯 (1)平成17年11月の運転開始以降、風車に落雷があっても停止する装置はなく、風車は連続運転 としていた。発雷終焉後、双眼鏡等により全機風車の外観目視点検を実施していた。だだし、風車 運転中は目視よりブレード音の聴取が主となる。 (2)平成23年ブレード先端部のクラックによる事故停止。4枚のブレードのクラック補修。14枚 のブレードドレンレセプターの交換。 (3)平成24年全機全ブレードの点検・補修実施。 (4)平成25年1~3号機全軸ブレード先端を摩耗防止テープで補修。他に3機4軸の点検実施。 (5)平成26年全機全ブレードの点検実施。点検結果により、後日6機8軸のピンホールおよび1機 1軸のクラックを修理実施。 2.直撃雷検出装置概要 風車に直撃雷が落ちた時に発生する磁界の大きさ(磁界センサで検出した一定以上の雷電流、検出 電流は500A以上)により直撃雷を検出し、その信号により風車を普通停止(緩停止)させるととも に、自動通知装置で主任技術者(担当者含む)携帯電話へメールにより自動送信する。また、24時 間監視の保守委託会社カスタマーセンターへも自動送信する。 【システム概要図】 雷検出センサー 記録装置&送信装置 メール発報 通信用アンテナ 風車コンバータ盤 (風車普通停止) 3.運用方法 直撃雷検出装置設置(平成26年11月設置)により、風車への直撃雷があれば風車自動停止する。 よって、風車ブレードへの落雷により、ブレードの損傷が発生した場合でも、風車継続運転はせず、 風車運転による設備被害の拡大と飛散による公衆災害への波及を最小限にくいとめる。 直撃雷検出停止した風車の再起動は、発雷終焉後の現地確認により、風車ブレード等の異常がない ことの確認による。 (1)運用期間:直撃雷検出装置設置後、通年とする。 (2)発雷終焉の判断:気象庁レーダー・ナウキャスト(雷)、風車周辺活動度2未満。ただし、発 雷終焉が夜間の場合の現地確認は、翌朝とする。 詳細運用については、別紙、運転要領「9-1(1)-a 雷検出装置による風車自動停止」による。 4.設置 (1)風車への装置据付 平成26年10月24日 ~ 11月10日 (2)風車への装置接続・運用開始 平成26年11月10日 ~ 11月14日 記録装置&通信装置(タワー内) 製作:音羽電機工業株式会社 品名:風車直撃雷検出システム 形式:LDW-45M-AR 雷検出センサ箱(タワー外・南向き) 通信用アンテナ(タワー外・東向き) 5.運転状況 別紙、直撃雷検出停止による発電停止実績による。 【号機別直撃雷回数】 西← →東 1G 2G 350m 3G 350m 13(1)回 5(1)回 4G 350m 5(1)回 5G 1,730m 4(1)回 6G 620m 9(3)回 7G 600m 7回 8G 380m 4回 9G 500m 4回 9回 ( )内は風車停止中の直撃雷回数再掲 6.中間報告 平成26年11月の運用開始以降、12月5日に2機動作してから、2月末までの間に計60回直 撃雷検出動作した。これは風車への落雷時確実に動作し、風車を安全に停止することにより風車への 被害拡大防止につながったと考える。 風力発電所エリアに落雷があった場合、設置前は終雷後運転中の風車全機を特別巡視していたが、 設置後は落雷検出停止機のみで良いこと。また、停止した風車のブレードを重点的に見ることにより、 巡視の精度が格段に向上した。安全最優先の運転ができた。 直撃雷検出停止の中には、1秒以内に2機同時動作(添付ファイルの黄色網掛け)が5件ある。隣 接風車(4号機と5号機は離れている、7号機と9号機の時、8号機は動作していない)とはいえ、 同時に異なる風車に落雷することは考えにくく、落雷検出感度によるものと推測する。 落雷検出停止後は、現地で双眼鏡等によりブレードへの異常の有無を確認し、風車を運転しており、 ドレンレセプタ等への落雷の痕跡、ブレードの汚れはあるが、現在までブレードの破損につながるよ うなピンホール、クラックは見つかっていない。一方、風車が落雷検出停止すると現地確認・リセッ ト操作が必要であり、夜間停止の場合は目視点検可能な翌朝となり、風車停止による逸失電力量も大 きくなっている。 7.今後の対応 予想以上に直撃雷検出停止が多く、その対応に苦慮している。直撃雷以外でも動作していることが 考えられるため、設置メーカーに次の3点について問い合わせ検討をする。 (1)他所の同型システムでの動作状況について (2)落雷検出感度の変更(直撃雷以外の誘導雷で動作の場合)について (3)落雷電流が記録できるようなシステムへの改造について 以 上 <追伸> 平成26年10月より前任者の魚住に代わり、森井が電気主任技術者を務めております。前任者のよう な知識・経験はありませんが、当風力発電所が安定的に発電でき、発電電力量増大による北栄町の発展 に、そして CO2 排出量の削減による地球温暖化防止に微力ながら貢献できるよう最大限努力する所存で す。 ご承知のとおり、風力発電は天候まかせの発電方式であり、現在のままでは絶対主役にはなれないこと を肝に命じております。主役になるためには、ベース電源機能、電力需要変動に追従した発電調整機能、 代替電源(他の電源が作業または故障停止した場合の代行発電)機能を持ち合わさなければなりません。 当然風力発電はそのようなことができる訳がありませんので、今ある設備を故障なく安全・安定に運転 することが私の使命であり、また目標です。よろしくお願いいたします。
© Copyright 2024 ExpyDoc