第118号「自尊心を育てよう」

共創・共育・共感
尾鷲市教育長だより
2015.3.27.(金)
第118号
自尊心を育てよう
もうすぐ4月。新しい出会いと学びの始まりの季節です。学校は、家庭や
地域の方々に支えられ、子どもと教職員が、また子どもたち同士が、つなが
り合い学び合い、互いに影響を与え合いながら、かけがえのない自分自身を
創り出していく場所です。
新しい年度におきましても、家庭や地域の皆様には、子どもたちの確かな
学びと豊かな育ちのために、多大なご支援をお願いしたいと思います。
学校の外の生活に子どもたちの主体性を伸ばすチャンスが豊かにあった一
時代前は、学校的な学力が家庭や地域で育まれた生活力とミックスされて、
ある程度たくましい総合的な人間力が育つことが保障されていました。
し か し、 現代は そ うではありません 。「自立した一人の人間としてたくまし
く生きていくための総合的な力」=「人間力」は低下してきています。これ
からは、もっともっと情報やモノが過剰になる時代になっていくことが予想
されています。そして、子どもたちの自然離れ、実体離れによりバーチャル
な世界での生活がさらに進むと思われます。
そうなると、人間のあり方がより根本から問われることはさけられません。
人間は外からの刺激、例えば朝太陽の光を浴びることでセロトニンというホ
ルモンが分泌され脳が活性化されます。そうした自然とのふれ合いの中で、
また実物とのふれ合いの中で、感性も磨かれ豊かになります。さらに子ども
たちの人間としてのさまざまな力は、まわりの人・モノ・こととのふれ合い
によって磨かれ伸びていきます。
たくさんの人・モノ・こととふれ合う機会をもった子どもは、やはりたく
さんの何かを学んでいます。ふれ合えばふれ合うほど、多くを学びます。
ただ、大人と違って、子どもは、ふれ合った人そのままを無批判に受け止
め、マネをすることが多いものです。ですから、子どもが小さければ小さい
ほど、マネをしてもよい人とのふれ合いがとても大切になります。
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親であれば、自分をマネしてもらってもいいように、常々子どもに言って
いることは親自らが実行し、模範になるのがよいでしょう。しかし、親がい
つも模範であればそれはそれでよいことなのですが、親も人間です。同じ家
に住んでいれば、よいところだけでなく欠点も見られますので、親だけの教
育力にも限界があります。
そこでおススメしたいのが、歴史上の偉人やイチロー、本田圭祐、錦織圭、
羽生結弦など、夢の実現のために努力を惜しまない現代のすごい人の話を機
会あるごとにしてあげることです。そういう話は、夢があり、可能性に挑戦
していこうという意欲を引き出すことができます。
私が子どもの頃の伝記では、野口英世博士の話が人気でした。子どものこ
ろ貧しく、2歳のときのやけどで左腕が不自由なため、いじめられたのに、
一生懸命勉強して医者となり、人類のために医学の発展に尽くし、世界中の
人々から尊敬されました。
伝記は、子どもの心と頭にしっかりと残るものがあります。それと同時に、
親自身も、その生き方から学ぶことがあります。それを言葉に出して話して
あげることです。
「これ、お母さんも読んで感動した伝記なの。今読んでも、立派な人だと
思うわ。お母さんも困っている人のために何かしてあげたいわ」
このとき子どもは、偉人の生き方と母親の心にふれ合うことになります。
その経験は、子どもの中で少しずつ蓄積され、いつしか可能性に挑戦し、未
来を切り拓いていく力となるでしょう。
20世紀最高の知性と言われ、ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタ
イン博士は、3歳になるまで思うように話せず、小学校では「のろま」と呼
ばれ、学業では落ちこぼれでした。
しかし、父親は落ちこぼれのわが子を心から信じ、こういって励ましまし
た。「 人間 に生ま れ てきたというだけで、神様から選ばれた子なのだ。必ず、
何かの役割をもっている。おまえも、きっと立派な人間になる」と。
父親に信じてもらい、励まされ続けた彼は、まわりの人が自分を評価して
くれなくても、ありのままの自分を信じ、自分をダメだと思うこともなく、
自尊心を失うこともありませんでした。そして、いつしか世界の頭脳をリー
ドする存在になりました。自分の子どもをダメだと評価するのではなく、そ
の潜在能力や人間として与えられた役割を心から信じ、励ましてくれる人が
いたからこそ、ありのままの自分を受け入れ、自分自身の可能性を信じ、自
尊心をもって自分の好きな道を歩むことができたのです。
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