極 低 圧 充 填 を用 いた新 鋳 造 システムによる大 型 ダイカスト部 品 の鋳 造 宇部興産機械株式会社 三 吉 博 晃 、明 本 晴 生 、山 下 輝 之 、中 嶋 一 裕 、○佐 々木 寛 人 (工 博 ) Casting of large die-casting parts with a new casting system using extremely low injection pressure Hiroaki Miyoshi, Haruo Akemoto, Teruyuki Yamashita, Kazuhiro Nakashima, ○Hiroto Sasaki Abstract Intensification of price competitiveness of die-casting parts, it is desired earnestly to cast large parts having larger projection area and length with lower cost facilities. In order to meet such a demand, new type of casting facilities, which utilized accurate gas pressurizing molten metal injection system and biscuit pressurize mechanism of conventional die-casting process, is suggested. In this study, effectiveness as the casting equipment and the quality of the large size die-casting part obtained by this facility were discussed. 1.はじめに ダイ カス ト 品 の 価 格 競 争 が 激 化 す るなか、よ り コンパ クトな設 備 で投 影 面 積 や流 動 長 の大 きい部 材 を生 産 することが求 められている。そのような要 求 に応 える為 、 筆 者 ら は 、 可 能 な 限 りメ タル 圧 を 抑 え た ダ イ カ ス ト 技 術 を 訴 求 し て き た 1 ) 。 し か しな がら 、 従 来 の ダ イ カ ス ト の 延 長 線 上 か ら の ア プ ロ ー チ では 、 超 高 速 射 出 や そ の リ ア ルタイム制 御 等 の最 新 技 術 を駆 使 し、さらに、真 空 鋳 造 やバリ 抑 制 技 術 を 組 み合 わせたと しても、 要 求 品 質 を 確 保 し なが ら 低 減 で き るメ タル圧 は限 ら れて い る 。他 方 、高 圧 ・高 速 射 出 充 填 を前 提 とする限 り、射 出 装 置 図1 試験鋳造設備外観 やそれに耐 え得 る型 締 め装 置 が必 携 となることから設 備 の 大 幅 な コ ン パ ク ト 化 は 困 難 で あ る 。 そこで 、 筆 者 ら 表 1 鋳 造 試 験 設 備 型 締 部 の主 要 仕 様 は、従 来 のダイカストから脱 却 し設 備 はダイカストに比 項 して簡 素 ながら、主 として厚 肉 の強 度 ・耐 圧 部 材 に適 型締力 用 されている低 圧 鋳 造 に軸 足 を移 し、これに、精 密 な 型 開 閉 ストローク ガス 加 圧 制 御 や ダ イカ ス ト の ビス ケッ ト 加 圧 機 構 を 取 り 押出力 込 んだ新 しい鋳 造 プロセスを考 案 した。本 研 究 では、 加 圧 シリンダ推 力 30ton この新 プロセスにて低 圧 鋳 造 の課 題 である湯 流 れ性 センターピンストローク 100mm 湯 口 閉 塞 St:25mm の改 善 を図 り、低 圧 鋳 造 、重 力 鋳 造 、スクイズ鋳 造 は 最 大 メタル圧 20MPa センターピン径 φ120 もとより、これらの工 法 が不 得 手 としてきた大 型 薄 肉 ダ トに油 圧 シリンダを連 結 し、その反 力 を受 けるフレーム イカス ト 品 をも 鋳 造 可 能 とす ることを 目 標 に掲 げ 、 上 述 を外 周 に配 置 した型 締 部 と、新 規 導 入 した低 圧 鋳 造 要 素 技 術 を具 現 化 した鋳 造 試 験 設 備 を準 備 した。そ 用 保 持 炉 を主 要 構 成 とし、さらに、付 帯 設 備 の制 御 盤 、 して、最 初 の取 り組 みとして、厚 肉 強 度 部 材 である自 油 圧 ユニット、作 業 床 ならびに安 全 柵 からなる。本 鋳 動 車 足 廻 り品 の鋳 造 を行 い、スクイズ鋳 造 品 相 当 の 造 試 験 設 備 の外 観 を図 1に、設 備 の主 要 仕 様 を表 1 品 質 が得 られることを確 認 し ている。本 報 告 では、その に、鋳 造 試 験 に用 いた低 圧 鋳 造 用 保 持 炉 の構 造 を 試 験 設 備 を用 いて自 動 車 の 一 体 型 サス ペンションメン 図 2 に示 す。図 中 に示 すとお り、低 圧 鋳 造 保 持 炉 の ガ バーの鋳 造 を試 みた結 果 について記 述 する。 ス 加 圧 制 御 には 精 密 か つ 高 応 答 性 ガス サ ー ボ バルブ 目 定 格 180ton 備 考 型 開 閉 シリンダ 29ton 含 1105mm 29ton を活 用 した精 密 レギュレータを、また、加 圧 室 蓋 の上 2.実 験 方 法 方 にはレーザーセンサーを配 置 し、耐 熱 ガラス製 の点 2.1 試 験 設 備 検 窓 を介 して湯 面 変 位 を常 に観 測 するようにした。 試 験 設 備 は他 既 存 設 備 から流 用 した型 開 閉 ユニッ 2.2 鋳 造 動 作 える。湯 溜 りから離 れている厚 肉 部 位 には必 要 に応 じ てス クイズピンによる局 部 加 圧 を行 う。⑥ 凝 固 完 了 後 、 セ ン ター ピ ン とス ク イズ ピ ン を原 位 置 に 戻 す 。⑦ 型 を 開 いて製 品 を取 り 出 す。保 持 室 の炉 床 のタップ弁 を開 い て注 湯 室 と加 圧 室 に次 のショットの溶 湯 を補 給 する。 2.3 鋳 造 試 験 金 型 図 4に市 販 部 品 の形 状 を参 考 に製 作 したサスペン ションメンバーの金 型 キャビティ図 を示 す。製 品 外 形 寸 法 は880 ×405 ×65mm、 金 型 キ ャビ ティ の 投 影 面 積 は 1100cm 2 、最 小 リブ肉 厚 、最 小 底 板 厚 はそれぞれ2mm、 4mm、製 品 部 ゲート厚 は5mmである。製 品 部 重 量 は約 7kg 、 ラ ン ナ ー 、 オ ー バ ー フ ロ ー 、 湯 溜 り 部 を 含 む 全 鋳 込 み重 量 は約 8kgである(製 品 部 歩 留 り約 88%) 。セン ターピンはキャビティ充 填 完 了 と同 時 に 最 大 速 度 で下 降 して湯 口 を閉 塞 する。湯 口 閉 塞 ストロークは25mmで あ り 、 こ の ス ト ロ ー ク を 超 え たと こ ろ か ら 湯 溜 り 部 が 加 圧 図2 低圧鋳造用保持炉 され、キャビテ ィ部 にメタル 圧 が伝 達 され る。セン ター ピ ンは湯 溜 り部 のメ タル の凝 固 によ る 抵 抗 と バ ランス する 位 置 で停 止 する。 図 3 低 圧 ダイカストの動 作 図 3に本 プロセスの一 連 の動 作 を溶 湯 の動 きを中 心 に模 式 的 に説 明 する。 ①窒 素 ガスセパレータ、精 密 レギュレータを介 して加 圧 室 に窒 素 ガスを導 入 し加 圧 室 の湯 面 を押 し下 げる。 湯 面 変 位 は常 時 レーザーで監 視 し金 型 への溶 湯 充 填 状 況 をモニターする。② 加 圧 室 の湯 面 を下 げること で注 湯 室 の湯 面 が上 昇 し金 型 への溶 湯 充 填 が始 まる。 ③ガス圧 をさらに増 大 し溶 湯 を金 型 に充 填 する。④ レ ーザーセンサーにて金 型 に溶 湯 が充 たされたことを検 知 した後 、センターピンを下 降 させて湯 口 を閉 塞 する。 湯 口 閉 塞 後 はガス 加 圧 を止 め、湯 口 付 近 の溶 湯 を速 やかに注 湯 室 に戻 す。⑤センターピンをさらに下 降 さ せて湯 溜 り部 を加 圧 し金 型 内 のメタルにメタル圧 を伝 図 4 サスペンションメンバー鋳 造 品 形 状 2.4 試 験 合 金 および鋳 造 条 件 サ ス ペ ン シ ョ ン メ ン バ ー の 鋳 造 に は 市 販 の ADC12 合 金 を使 用 し、溶 湯 温 度 を 680℃あるいは 730℃に保 持 して実 験 に供 した。金 型 離 型 剤 は㈱MORESCO 社 製 のグラフェース GT-400 を希 釈 率 30 倍 にて用 い、 金 型 温 度 については、キャビティの製 品 端 部 表 面 が 150 ℃以 上 となるよう、適 宜 捨 打 ちを実 施 しながら鋳 造 データならびにサンプルを採 取 した。 3.鋳 造 試 験 結 果 及 び考 察 3.1 ガス加 圧 による金 型 キャビティへの溶 湯 充 填 3.1 (1) 精 密 レギュレータによるガス加 圧 制 御 ガス加 圧 充 填 時 のガス圧 を制 御 する精 密 レギュレ ータの制 御 精 度 、ならびにガス圧 変 化 に対 する金 型 キ ャビティ内 溶 湯 の応 答 性 を調 べる為 、精 密 レギュレー タを介 した種 々のガス加 圧 設 定 条 件 にて金 型 への溶 湯 充 填 を行 った。ガス圧 の制 御 精 度 の確 認 は、精 密 レギュレータに付 属 ならびに低 圧 鋳 造 炉 加 圧 室 蓋 の ガス配 管 に設 置 した圧 力 センサーにて行 い、実 際 の 溶 湯 の動 きについては、加 圧 室 上 方 に配 置 した湯 面 変 位 観 測 用 のレーザーセンサーにてガス圧 変 化 に対 する湯 面 の追 従 性 を確 認 した。ガス加 圧 は注 湯 室 の 溶 湯 を湯 口 に到 達 させるのに必 要 なガス圧 である 10k Paを起 点 に、0.1 秒 、1 秒 ならびに 3 秒 で各 目 標 ガス 圧 に到 達 するよう精 密 レギュレータの2次 側 圧 を設 定 し、目 標 値 到 達 後 はそのまま 2 秒 間 同 一 圧 力 を保 持 するようにした。 図 5に精 密 レギュレータのガス設 定 圧 を 30kPa として 昇 圧 時 間 を 0.1 秒 (a)、1 秒 (b)、3 秒 (c)、ならびに設 定 圧 60kPa にて昇 圧 時 間 を 0.1 秒 (d)とした際 に得 られ たガス 圧 および湯 面 変 位 波 形 を示 す。精 密 レギュレー タのガス 圧 はいずれの 設 定 圧 、昇 圧 時 間 に対 してもほ ぼ設 定 どお りに 立 ち上 が り、 オー バーシ ュ ー トは 生 じて いな い 。た だ し、 精 密 レギ ュ レ ータ の 圧 力 に 対 し、 加 圧 室 の到 達 圧 力 はいずれも 1kPa 程 度 低 目 になっている こと、さらに、3 秒 より昇 圧 時 間 を短 くした条 件 では、加 圧 室 の最 高 圧 到 達 時 間 と精 密 レギュレータのそれとの 間 にタイムラグが生 じていることが分 る。このタイムラグ は昇 圧 時 間 設 定 が短 いほど差 が顕 著 となり、設 定 圧 30kPa で昇 圧 時 間 0.1 秒 の場 合 の遅 れ時 間 は約 0.5 秒 であるのに対 し、同 30kPa で昇 圧 時 間 1.0 秒 では約 0.3 秒 の遅 れとなっている。 一 方 、実 際 の溶 湯 の挙 動 、 すなわち、加 圧 室 の湯 面 変 位 についても上 述 と同 様 の遅 れが 認 められ、 精 密 レギ ュレ ータが 設 定 圧 に到 達 してから加 圧 室 の湯 面 がその圧 力 に相 当 する位 置 に 移 動 して安 定 する迄 に、設 定 圧 が 30kPa で昇 圧 時 間 0.1 秒 の場 合 で 0.8 秒 程 度 の遅 れが生 じている。これら 加 圧 室 圧 力 の圧 力 ドロップやタイムラグはいわゆるガス 配 管 の圧 力 損 失 によるものと考 えられる。一 方 、湯 面 変 位 の 遅 れ に つ い ては 、 前 述 の 圧 力 損 失 に 加 えて 圧 力 伝 達 媒 体 の窒 素 ガスが圧 縮 性 であることや溶 湯 が 金 型 キャビテ ィに 流 れ込 むことで生 じ る流 動 抵 抗 、さら に、未 充 填 の金 型 キャビティ領 域 に存 在 する空 気 の 背 圧 も 影 響 し て い る と 考 え ら れ る 。 ここ で 確 認 さ れ た 圧 力 ド ロ ップ や 遅 れは 、 設 定 と 大 き く 乖 離 す る もの ではな 図 5 精 密 レギュレータによるガス圧 制 御 試 験 く再 現 性 もあることから、実 鋳 造 上 は問 題 無 いと判 断 のガス 加 圧 条 件 を示 す。パ ーシャルショットは低 ガス圧 される。ただ し、 ガス 加 圧 条 件 設 定 の際 は、これ らの 現 条 件 からサンプル採 取 を始 め、エアベントの閉 塞 や凝 象 を考 慮 する必 要 がある。 固 に よる 流 動 停 止 によ ってキ ャビティ の 溶 湯 充 填 挙 動 3.1 (2)ガス昇 圧 時 間 と湯 温 が溶 湯 充 填 挙 動 に及 に変 化 が認 められなくなるまでガス圧 を上 げた。また、 ぼす影 響 溶 湯 温 度 の影 響 も確 認 する為 、サンプル鋳 造 は湯 温 精 密 レギュレータを用 いて種 々のガス圧 、昇 圧 時 間 を 680℃と 730℃の2水 準 で実 施 した。 にて金 型 キャビティへの溶 湯 充 填 を行 うパーシャルショ 図 6 (a) に 湯 温 680 ℃ で 実 施 し た 一 連 の パ ー シ ャ ル ットを実 施 し、ガス 加 圧 充 填 によるサス ペンションメンバ ショットサンプルの外 観 を示 す(図 中 の各 数 値 はサンプ ーの湯 流 れ挙 動 を確 認 した。表 2にパーシャルショット ル 重 量 を 示 す)。 完 全 充 填 に近 い サンプル は得 られな かった が、 ガス 圧 が 大 き く昇 圧 時 間 が短 い 条 件 ほ ど湯 先 が乱 れて空 気 を巻 き込 むことや、先 走 りした湯 がエ 廻 りが良 好 になり、ガス圧 を 60kPa とすることでオーバ アベントを閉 塞 することで空 気 の背 圧 が生 じ、それ以 ーフローのみならず製 品 端 部 のチルベントへも溶 湯 が 後 の溶 湯 充 填 を阻 害 したことが考 えられる。 流 入 することが確 認 された。 図 7( a) および図 7( b)に湯 温 680℃ならびに 730℃ 表 2 パーシャルショット条 件 で、ガス圧 60kPa、昇 圧 時 間 0.1 秒 の条 件 にて得 られ 昇 圧 時 間 [sec] た 鋳 造 サ ン プ ル の 各 部 の 詳 細 を 示 す 。 湯 温 680 ℃ の 14 ①0.1 ②1.0 ③3.0 サンプルには未 充 填 による小 さい窓 が随 所 に認 められ 16 ①0.1 ②1.0 ③3.0 る。また、内 側 の細 いリブ部 については、先 端 まで溶 湯 3 20 ①0.1 ②1.0 ③3.0 が十 分 に充 填 されているケ ースはほとんど皆 無 であり、 4 30 ①0.1 ②1.0 ③3.0 凝 固 した湯 先 の先 端 は自 然 凝 固 により流 動 停 止 した 5 40 ①0.1 ②1.0 ことを示 す丸 みを帯 びた形 態 を呈 している。一 方 、湯 6 60 ①0.1 温 730℃の鋳 造 サンプルは未 充 填 による窓 は前 者 より 条件 ガス圧 [kPa] 1 2 少 なく、細 いリブ部 への充 填 量 も増 えている。ただし、 壁 面 を伝 って先 走 りした溶 湯 が凝 固 したと見 られる薄 板 状 の先 端 形 状 や後 から遅 れて充 填 されてきた溶 湯 とそれとの不 完 全 な融 合 によって生 じたマクロ的 な湯 境 、それ以 外 にも小 さな湯 境 や湯 皺 が随 所 に認 めら れる。一 連 の結 果 から、充 填 力 の微 弱 なガス加 圧 充 填 においては空 気 の巻 込 み防 止 やキャビティ内 の背 圧 の 軽 減 に 加 えて 、 流 動 中 の 溶 湯 の 抜 熱 を 軽 減 す る 対 策 が 重 要 で あ ると言 える。 これについては、 今 後 、キ ャビティ減 圧 を始 め、断 熱 性 金 型 離 型 剤 の探 索 や金 型 表 面 処 理 による対 策 を検 討 していく所 存 である。 図 6(b )に前 述 と同 様 に湯 温 730℃で実 施 した一 連 の パ ーシ ャル シ ョ ッ ト サン プル の 外 観 を 示 す 。 ガス 加 圧 と溶 湯 充 填 状 況 の傾 向 は前 述 の 680℃の場 合 と類 似 しているが、両 者 を比 較 すると、低 ガス圧 条 件 の 16kPa では湯 温 730℃の方 が金 型 キャビティへの溶 湯 の充 填 量 が多 く、一 方 、高 ガス圧 側 の 60kPa では、逆 に湯 温 680 ℃の方 が充 填 量 は多 くなっている。これは、湯 温 が 図 7 パーシャルショットサンプル外 観 の詳 細 高 い 730 ℃の場 合 は金 型 壁 面 か らの 抜 熱 によ る粘 性 [(a)680℃ (b)730℃ ガス圧 はいずれも 60kPa] 増 大 が湯 温 の低 い 680℃よりも遅 れる故 にキャビティ内 3.2 センターピン加 圧 が溶 湯 充 填 性 に及 ぼす影 響 での流 動 抵 抗 が小 さ く、ガス 圧 が低 い条 件 ではそれが 3.2 (1)センターピン加 圧 実 験 条 件 有 利 に作 用 したものと考 えられる。一 方 、ガス圧 を 次 に、ガス加 圧 充 填 後 センターピン加 圧 を実 行 する 60kPa に急 激 に 昇 圧 し た場 合 は、流 動 す る 溶 湯 の湯 ことで、製 品 キャビティ部 への溶 湯 充 填 や鋳 造 サンプ ル外 観 品 質 の向 上 を図 る実 験 を行 った。この実 験 に おけるガス加 圧 充 填 は、湯 流 れ性 を重 視 し前 述 のパ ーシャルショットの際 の最 大 ガス圧 よりもさらに大 きい 80kPa を目 標 圧 とし、湯 先 が湯 口 に到 達 する圧 力 であ る 10kPa から目 標 圧 の 80kPa までを 0.1 秒 、1.0 秒 、 3.0 秒 および 5.0 秒 の4水 準 の時 間 で昇 圧 する設 定 と した。一 方 、ガス加 圧 充 填 に連 継 するセンターピン動 作 については、精 密 レギュレータのガス圧 が 60kPa お よび 80kPa に到 達 した時 点 でセンターピン動 作 を開 始 する設 定 とした。なお、溶 湯 温 度 については、前 述 の パーシャルショットにて湯 流 れが有 利 と見 られた 730℃ を選 択 した。上 述 の実 験 条 件 を表 3に示 す。 表 3 センターピン加 圧 実 験 条 件 条件 精 密 レギュレータ センターピン動 作 ガス圧 昇圧時間 動作開始 メタル圧 [kPa] [sec] ガス圧 [MPa] [kPa] 1 80 0.1 80 13~20 2 3~5 80 0.1 60 13~20 80 1, 3, 5 60 13~20 3.2 (2)センターピン加 圧 タイミングおよびガス昇 圧 時 間 の影 響 図 8に表 3に示 した各 条 件 で得 られたガス圧 、湯 面 変 位 およびセンターピン動 作 の各 パラメータからなる波 形 の 代 表 例 を 示 す。図 8 (a)および図 8 (b ) はセンターピ ン動 作 を開 始 するタイミングを精 密 レギュレータの到 達 ガス圧 でそれぞれ 80kPa、60kPa としたものである。セン ターピン駆 動 開 始 圧 が低 い 60kPa では、加 圧 ストロー ク は 80mm 弱 ま で 前 進 し て い る 。 一 方 、 開 始 圧 が 80kPa の場 合 、センターピンは 60mm ほどで停 止 してい る。セ ンタ ーピン の 挙 動 にこ のよ うな 差 異 が 生 じた 理 由 は、前 者 の 場 合 は動 作 開 始 タイミン グが 早 いゆ え に湯 溜 り部 に溶 湯 が十 分 充 たされていない状 況 でセンター ピン が 動 作 を 開 始 し 、 湯 溜 り 部 に 流 入 し た 溶 湯 にセン ター ピ ンが 接 す る 迄 の 間 、 ほ ぼ 無 負 荷 の 状 態 でセ ンタ ーピンが前 進 して いたものと 推 察 される。 一 方 、精 密 レ ギュ レータ によ る昇 圧 時 間 を 長 く した図 8 (c) および図 8 (d ) で は 、 昇 圧 時 間 の 延 長 に 伴 い セ ン タ ー ピ ン の 停 止 ス トロー クが 短 くなって い る。 これは、上 述 と逆 に、 湯 溜 り部 に溶 湯 が補 給 される時 間 が長 くなったことで湯 溜 り 部 の溶 湯 量 が増 えた為 と考 えられる。ただし、充 填 時 間 が長 くなったことで製 品 部 やランナー、湯 溜 り部 に 先 行 して流 入 していたメタルの凝 固 が進 みセンターピ ンの 前 進 を 妨 げ て い たことも 推 察 され る 為 、これ ら の条 件 では有 効 な押 湯 効 果 が得 られていなかった可 能 性 も考 えられる。なお、センターピンの動 作 については、ス トローク波 形 から明 らかなように、動 作 開 始 からストロー ク停 止 、即 ち、メタル圧 昇 圧 完 了 迄 に約 3秒 を要 しか なり緩 慢 な動 きとなっている。これは、センターピンを駆 図 8 鋳 造 波 形 の代 表 例 動 するシリンダの油 圧 供 給 源 によるところが大 きいこと から、本 結 果 を受 けて、センターピンの動 作 速 度 やメタ ル圧 を増 大 する対 策 を施 すことにした。 図 9 にセンターピンの動 作 開 始 タイミングが金 型 キャ ビティ部 への溶 湯 充 填 に及 ぼす影 響 を示 す。製 品 部 重 量 は サンプル 全 体 の重 量 から ランナーと 湯 溜 り部 の 所 が 多 数 認 めら れる。 また、 金 型 離 型 剤 が 転 写 されて 重 量 を差 し引 い た値 と してお り、チル ベン トやオ ーバー いる部 位 も湯 溜 り部 やランナーに限 られており、全 体 フローに流 入 したメタルを含 んだ値 とした。ガス圧 的 に圧 力 の伝 播 が不 十 分 と見 られる。現 状 の外 観 品 60kPa および 80kPa のデータを比 較 すると、両 者 ともに 質 には改 善 の余 地 がかなり残 されており、前 述 のキャ 重 量 のばらつきが大 きく、広 い範 囲 でオーバーラップし ビティ減 圧 、断 熱 性 離 型 剤 の探 索 や金 型 の表 面 処 理 ているが、後 者 の方 がデータの下 限 値 が高 く、かつ平 の検 討 に加 えて、センターピン加 圧 の動 作 速 度 やメタ 均 値 も大 きい。一 方 、前 者 は前 述 のとおり、キャビティ ル圧 を増 大 する対 策 が必 須 と考 えられる。 部 や湯 溜 り部 への充 填 が過 渡 的 な状 態 にある為 か、 データのばらつきの範 囲 がより大 きく不 安 定 な状 況 に あることが推 察 される。 図 11 センターピン充 填 加 圧 サンプルの外 観 4.まとめ 図 9 センター加 圧 動 作 開 始 タイミングの影 響 従 来 の 低 圧 鋳 造 プ ロセス に ダ イカス ト 様 のビス ケ ット 図 10にガス昇 圧 時 間 が金 型 キャビティ部 への溶 湯 加 圧 機 構 を組 み込 むとともに、精 密 ガス 加 圧 制 御 やレ 充 填 に及 ぼす影 響 を示 す。図 中 に示 すとおり、製 品 ーザーセンサーを活 用 した溶 湯 充 填 挙 動 の見 える化 部 重 量 の最 大 値 は昇 圧 時 間 2 秒 付 近 にあることが分 などの技 術 を取 り入 れた新 しいタイプの鋳 造 プロセスを る。前 述 のセンターピン加 圧 ストロークの挙 動 からも推 考 案 した。0.1MPa 未 満 の極 微 弱 なガス圧 充 填 をベー 察 されたとおり、ガス昇 圧 時 間 が極 めて短 い 0.1 秒 で スとする本 プロセスにてサスペンションメンバーの鋳 造 は製 品 部 重 量 のバラツキが大 きく不 安 定 な状 況 になっ を試 みた結 果 得 られた知 見 は以 下 のとおり。 ている。一 方 、ガス 昇 圧 時 間 が 3 秒 より長 い条 件 では (1)微 弱 なガス加 圧 充 填 においては、僅 かな背 圧 が 製 品 部 重 量 が次 第 に減 少 していく傾 向 が認 められる。 溶 湯 充 填 を阻 害 することから、空 気 巻 込 みの防 止 やキ これは、充 填 時 間 が長 くなることで湯 溜 り部 への溶 湯 ャビティ内 の空 気 の除 去 が重 要 である。 供 給 が増 え る一 方 、キャビテ ィやランナー部 のメタル温 ( 2 ) 本 プ ロセ ス では スリ ー ブ、 チ ッ プ に よ る 溶 湯 の 抜 熱 度 の低 下 や凝 固 の進 行 により、湯 溜 り部 からの押 湯 効 の影 響 は無 く、さらに、センター湯 口 にて湯 流 れ上 有 果 が期 待 できない状 況 になっている為 と考 えられる。 利 な方 案 を採 用 することができる。ただし、金 型 への溶 湯 充 填 時 間 はダイカストに比 して長 い為 、薄 肉 品 の鋳 造 においては金 型 を流 動 する溶 湯 の抜 熱 を軽 減 する 対 策 が必 要 である。 ( 3)本 プロセスでは ガス加 圧 の際 の昇 圧 時 間 やセンタ ーピンによる加 圧 工 程 への切 り替 えタイミングを最 適 化 する必 要 がある。前 者 にはガス圧 を精 密 に制 御 する精 密 レギ ュ レ ー タ が、ま た 、後 者 には レ ーザ ー セン サ ーに よる湯 面 変 位 の見 える化 が有 効 である。 ( 4)溶 湯 充 填 補 給 源 お よび 押 湯 機 能 を 果 た す 湯 溜 り 部 の形 状 は(直 径 、高 さ、体 積 )、鋳 造 する製 品 の重 図 10 ガス加 圧 昇 圧 時 間 の影 響 量 や肉 厚 を考 慮 して設 計 する必 要 がある。 3.2 (3) センターピン加 圧 サンプルの外 観 図 11 に、センターピン加 圧 を実 施 した一 連 の条 件 の なかで最 も製 品 部 重 量 が大 きいサンプルの外 観 を示 参考文献 す。ガス 加 圧 のみで充 填 したサンプル に比 べて外 観 は 1) 佐 々木 寛 人 ,石 橋 直 樹 ,明 本 晴 生 ,釼 祐 一 郎 かなり 改 善 され て い る が、 細 いリ ブ 部 へ のメ タル 充 填 が 不 完 全 な箇 所 やメタルの凝 固 により流 動 が停 止 した箇 :2010 日 本 ダイカスト会 議 論 文 集 (2010),89-95
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