13. 労働安全用具技術分野 13.1 分野別標準化戦略の概要 【標準化・国際標準化活動の問題点、課題】 (1) 国内標準化活動 この分野では、安全帽、防護服、安全靴等人体の安全を守る製品について担当している。労働安全用具 は、生産現場の基本を支えかつ人体を保護する製品であるために、信頼性を重視した標準化活動は着実 に進めていく必要がある。 (2) 国際標準化活動 国内製品が多数を占めるため国際標準化活動は停滞ぎみの感はあったが、最近のグローバリゼーショ ンの流れから国際標準化に対する取り組みかたが大きく変化してきており、この流れを崩さないように関 係業界への普及、啓蒙等のソフト面も含めて進めていく必要がある。 13.2 平成17年度実績 13.2.1 国内標準化活動の実績 (1)国際規格を基にして防護服材料の機械的特性及びハンドナイフに対する抵抗性を評価する事等により、着 用作業者の障害等のリスクを軽減する事を目的に作成した原案を基に以下の日本工業規格を制定した 。 ①T 8050 防護服−機械的特性−材料の突刺及び動的引裂に対する抵抗性試験方法 ②T 8051 防護服−機械的特性−突刺抵抗性試験方法 ③T 8052 防護服−機械的特性−鋭利物に対する切創抵抗性試験方法 ④T 8120 防護服―ハンドナイフによる切り傷及び刺し傷を防護するためのエプロン、ズボン及びベスト ⑤T 8121−1 防護服―ハンドナイフによる切創及び突刺し傷を防護するための手袋及びアームガード―第 一部:鎖かたびら手袋及びアームガード ⑥T 8121−3 防護服―同上―第三部:布はく、皮革及びその他の材料の衝撃切創試験 (2)国際規格を基にして熱及び火炎に対する防護服の放射熱暴露の影響、熱伝導性の評価、防護服の取 扱い基準等について標準化し作成した原案を基に以下の日本工業規格を制定した。 ①T 8006 熱及び火炎に対する防護服−防護服の選択、管理及び使用上の一般事項 ②T 8020 熱及び火炎に対する防護服−放射熱量暴露による防護服材料の性能評価 ③T 8021 熱及び火炎に対する防護服−火炎暴露時の熱伝達指数測定方法 ④T 8022 防護服−熱と火炎からの防護―火炎伝ぱ性試験方法 ⑤T 8023 熱防護服及び装備品―熱風循環炉を使用する対流耐熱性試験の方法 (3)国際規格を基にして中性子線量当量(率)計の校正方法を標準化し、線量計の信頼性確保を目的に作 成した原案を基に以下の日本工業規格を制定・改正した。 -1- ・日本工業規格の制定 ①Z 4416 中性子用個体飛跡個人線量計 ②Z 4521 中性子線量当量(率)計の校正方法 ・日本工業規格の改正 ①Z 4331 個人線量計校正用ファントム (4)次の日本工業規格案を作成した。 ・新規制定案 ①防護服−粉末切削剤を使用するブラスト処理作業のための防護服 ②防護服−ハンドナイフによる切創及び突き刺し傷を防護するための手袋及びアームガード−第2部: 鎖かたびら以外の材料で製造された手袋及びアームガード ・改正案 ①T 8114 防振手袋 ②T8133 乗用車用安全帽(平成17年8月1日作成に着手、平成18年7月31日作成終了予定) ③T8134 自転車用安全帽(同上) 13.2.2 国際標準化活動の実績 (1)国際会議への参加:国際会議の開催実績と日本からの出席者数は,次のとおりである。 ①ISO/TC85(原子力)/SC2(放射線防護)への参加 ・ 会議名:ISO/TC85/SC2 開催日 :2005年3月28日より4月 1 日まで 開催地 :中国 北京 出席者 :2名 ②ISO/TC94(個人用安全−保護衣及び保護具)/SC6(保護めがね)への参加 ・ 会議名:ISO/TC94/SC6/WG1,WG2,WG3,WG4,WG5 開催日 : 2005年10月10日より14日まで 開催地 : 中国 北京 出席者 : 10名 ・会議名:ISO/TC94/SC6WG3 開催日 : 2005年5月5日 開催地 : イタリア ミラノ 出席者 : 2名 ・会議名:ISO/TC94/SC6WG2,WG4 開催日 : 2006年2月13日より15日 開催地 : サンディエゴ 出席者 : 6名 -2- ③ISO/TC94(個人用安全−保護衣及び保護具)/SC13(防護服)への参加 ・ 会議名:ISO/TC94/SC13/WG1,WG2,WG3 開催日 : 2005年6月1日より3日まで 開催地 : オランダ デルフト 出席者 : 11カ国27名 日本代表6名 ④ISO/TC94(個人用安全−保護衣及び保護具)/SC14(消防隊員用個人防護装備:FFPPE)への参加 ・ 会議名:ISO/TC94/SC14/WG1,WG2,WG3,WG4,WG5 開催日 : 2005年3月14日より18日まで 開催地 : 日本 東京 出席者 : 11カ国45名 日本代表10名 国際会議のWGでの規格案の作成等作業は,次のとおり。 WG1 (一般要求事項) : DTR21808投票コメントを審議 WG2 (建物火災用FFPPE) : CD11613.2投票コメントを審議 WG3 (原野火災用FFPPE) : CD16073.2投票コメントを審議 WG4 (有害物質用FFPPE) : CD20512(密閉タイプ4)について改訂CDを審議 CD20513(気密タイプ1)について改訂CDを審議 WG5 (レスキュー用FFPPE) : CD16074について改訂CDを審議 東京消防庁第2方面本部にてハイパーレスキュー隊の訓練を見学等 ⑤ISO/TC94(個人用安全−保護衣及び保護具)/SC15(呼吸用保護具)への参加 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG5,WG2&3/JPG2,JPG3 開催日 : 2005年6月6日より6月10日 開催地 : 独国, リューベック 出席者 : 2名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG6,WG2/PG1 開催日 : 2005年9月7日より9月9日 開催地 : 米国, セント・ポール 出席者 : 5名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG5,WG2&3/JPG2,JPG3,WG3/PG1 開催日 : 2005年9月19日より9月23日 開催地 : 伊国, ミラノ 出席者 : 3名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG2 開催日 : 2005年10月20日より10月21日 開催地 : 独国, サンクト オーガスティン 出席者 : 2名 ・会議名:ISO/TC94/SC15,WG1,WG2,WG3 -3- 開催日 : 2005年11月21日より11月25日 開催地 : ブラジル,リオ デ ジャネイロ 出席者 : 3名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/WG1/PG5,WG2&3/JPG3 開催日 : 2006年1月17日より1月20日 開催地 : 米国, オーランド 出席者 : 2名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG4,WG2/PG1 開催日 : 2006年2月13日より2月17日 開催地 : 米国, サンディエゴ 出席者 : 7名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG5,WG2&3/JPG2,WG3/PG1 開催日 : 2006年2月27日より3月3日 開催地 : 仏国, パリ 出席者 : 2名 ・会議名:ISO/TC94/SC15/ WG1/PG1,WG1/PG2,WG1/PG6 開催日 : 2006年3月31日より4月7日 開催地 : 日本, 東京 出席者 : 8名 国際会議のWG,PGでの規格案の作成等作業は,次のとおり。 WG1/PG2 (呼吸用保護具の選択,使用及び保守管理) : CD素案作成 WG1/PG4 (試験方法 Part 1∼4) : CDに対する修正意見を提案 WG1/PG5 (ヒューマン ファクター) : TS素案作成 WG1/PG6 (Classification) ・・・・・・・: TR素案作成 WG2/PG1 (フィルタ)・・・・・・・・・・・・: 規格素案作成のための調査研究 WG2&3/JPG2 (ヒューマン インターフェイス) ・・・・・・・・・・: 規格素案作成 WG2&3/JPG3 (システム)・・・・・・・・: 規格素案作成 WG3/PG1 (呼吸ガス供給管理)・・・: 規格素案作成 13.2.3 調査研究等の平成17年度実績 -4- (1)調査研究等 ①国際規格適正化事業(個人安全・保護具:平成17年度∼平成19年度) ②社会基盤創成調査研究(防護服分野の調査研究:平成17年度∼平成19年度) (2)国際規格回答原案作成 ①ISO/TC85/SC2 (放射線防護)国内対策委員会 CD 2件 DIS 5件 FDIS 1件 NWI 2件及び定期見直し規格 9件の回答を作成した。 ②ISO/TC94/SC3 (安全靴)国内対策委員会 FDIS 1件の回答をした。 ③ISO/TC94/SC6 (保護めがね)国内対策委員会 規格案等の回答には至っていない。 ④ISO/TC94/SC13(防護服)国内対策委員会 CD1件 DIS3件 FDIS1件 NWI 2件の回答を作成した。 ⑤ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)国内対策委員会 CD 0件 DIS 0件 FDIS 0件 NWI 0件の回答を作成した。 ⑥ISO/TC94/SC15(呼吸用保護具) CD 5件の回答を作成した。 13.3 平成18年度活動計画 13.3.1平成18年度国内標準化の重点 <平成18年度に制定・改正する日本工業規格、新規制定・改正を図るJIS規格の原案作成> (1)防護服関係JISの制定 防護服の基礎部分を充実させ、我が国の防護服水準を引上げる事が重要であるために前年度に引 続き平成18年度において、次の日本工業規格案を制定する。 ①防護服−粉末切削剤を使用するブラスト処理作業のための防護服 ②防護服−ハンドナイフによる切創及び突き刺し傷を防護するための手袋及びアームガード−第2部 :鎖かたびら以外の材料で製造された手袋及びアームガード ③生物化学的危険物質に対する防護服−種類及び試験方法 ④生物化学的危険物質に対する防護服−防護服材料の血液介在性病原体に対する耐浸透性の測 定−Phi-174バクテリオファージを用いる試験方法 ⑤生物化学的危険物質に対する防護服−防護服材料の血液介在性病原体に対する耐浸透性の測 定−人工血液を用いる試験方法 (2)労働安全用具関係JISの改正 平成18年度において、次の日本工業規格を改正する。 ①T8141 防振手袋 ②T8133 自転車用安全帽 ③T8134 乗車用安全帽 -5- (3)日本工業規格案の原案作成 平成18年度において、次の JIS 原案の作成に着手する。 ①化学防護服−耐液体浸透性試験方法(制定) ②化学防護服−液体農薬に対する防護服の性能要求事項(制定) ③手持ちチェーンソー使用者用保護服−第1部(制定) ④固体粉じんに対する防護服−第1部(制定) ⑤固体粉じんに対する防護服−第2部(制定) 13.3.2 平成18年度の国際標準化の重点 (1)ISO/TC85(原子力)/SC2(放射線防護) 前年に引き続き、国内の検討体制の課題としては、TC85、SC2、SC5及びSC6の全体・相互交流が重 要となっているので、TC85の各SC幹事が結集してISO状況分析、対応検討について一層強化し、その 結果として我が国の実情を踏まえた提案を進める。 平成18年4月10日投票期限で「放射能標識の補助表示 DIS 21482」が入っている。この標識は途上 国での放射能に対する知識、技術が行き届かない人々に対する「危険表示」を目的としているが、本 DIS による標識案は基本形との相違や色使い等に課題がある為、国内では TC85原子力及び TC145 図記号とでの調整を計って投票する必要がある。その上で4月の投票を行う。 (2)ISO/TC94/SC13(防護服) 防護服の基礎整備、関係する産業人・研究者の増強を図り防護服に関する技術水準を向上させる事が 重要課題である。また、国際的であるバイオハザードに関連する防護服については我が国からの発信情報 として推進する必要がある。 (3)ISO/TC94/SC6(保護めがね) 国際委員会も20年休眠していた状況にあったが、2002.3より再スタートしている。この期に積極的に参 画する事により重要な規格制定を円滑に促進する事が必要である。 (4)ISO/TC94/SC15(呼吸用保護具) 昨年に引き続き欧米の製品と製品仕様が異なる我が国の呼吸用保護具を国際規格に採用して貰うべく 、国際会議を通じて働きかけていく。 (5)ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備) 第4回東京会議2005の終了後、国際事務局(豪)及びWG5コンビナが交替し、新たな体制で、次回、第6 回国際会議(米国)及びDISや改訂CDの審議も再開した。 13.3.3平成18年度調査研究等の実施 -6- (1)調査研究等の実施 ①国際規格適正化事業(個人安全・保護具:平成17年度∼平成19年度) ②社会基盤創成調査研究(防護服分野の調査研究:平成17年度∼平成19年度) (2)国際規格回答原案作成 ①ISO/TC85/SC2(放射線防護) 前年回答作成したCD,DIS等の進捗により、CD 2件、DIS 5件及びFDIS1件が予定される。その他新規 案件も予測している。 ②ISO/TC94/SC6(保護めがね) 17年度の積み残し、5件程度の審議事項が有るものと考える。 また、適正化促進の意味から国際会議 への出席を行なう。 ③ISO/TC94/SC13(防護服) 前年回答作成したCD,DIS等の進捗により、DIS1件及びFDIS3件を予定し国内対策委員会及びWG活動 を計画している。 JIS整備が進む状況にあって、性能、規格の確認実証試験を推進する。 ④ ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備) 前年度の審議遅れを回復のため、18年度は審議が活発化する予定。 現在、5つのWGに、6つのプロジェクトがあり、4件のCDと2件のDISが投票提案される。 また、国際事務局では、遅れていた第6回米国会議も、11月には開催する方向で検討中。 ⑤ISO/TC94/SC15(呼吸用保護具) 前年に回答作成したCD 5件について,さらに検討を行う。 -7- 専門委員会概要 専門委員会名 労働安全用具技術専門 委員会 規格数 : 88 TR数 : 0 【所掌範囲】 標準化対象分野は、主として鉱山保安、労働安全衛生、放射線(能)防護分野 である。 1. 鉱山保安分野:標識、保護具(CO マスク、安全帯)、測定器、検知器、防爆工具 2. 労働安全衛生分野:呼吸用保護具の選択・使用及び保守管理方法、保護具(安全 靴、防護手袋、安全帽、保護めがね、マスクなど)、測定器 3. 放射線(能)防護分野:バッジフィルム材料、フィルムバッジ、放射線保護具(防護 手袋、防護服、遮へいマット)など 4. その他:殺菌紫外線などの測定方法 【主なJIS】 M7602 干渉計形精密可燃性ガス検定器 M7624 安全帯 T 8101 安全靴 T 8147 保護めがね T 8151 防じんマスク Z 4323 広範囲用フィルムバッジ Z 4811 放射性汚染防護用作業服 【主なISO/IEC】 ISO1757 個人用写真線量計 ISO3837 産業用安全帽 ISO4849 個人用眼保護具-仕様 ISO4855 個人用眼保護具-光学試験方法 ISO6529 防護服-液体薬品に対する防護空気不浸透性素材の液体浸透に対する抵 抗性の測定 【強制法規等における活用状況】 労働安全衛生法、鉱山保安規則、消費生活用品製品安全法において、JIS の規定内容 の一部又は JIS 番号を引用している。 【主な関係省庁、関係団体】 厚生労働省労働基準局 (社)日本保安用品協会
© Copyright 2024 ExpyDoc