﹃ 国際標準化 の 動 き ﹄ - 丸善

連載 図書館のRFID
﹃ 国際標準化の動き ﹄
では、書店の万引き防止にもRFIDを利
SIL ︶と あ るのは、国 際 標 準 図 書 館 識
表1の三番目の要素、所蔵館識別子︵I
識別子だけという規定になっている。
用するという計画が進んでいる。多くの場
別 子︵ ISO 15511 International Standard
われていなければあり得るのである。最近
所で使われるようになると、それだけ、こ
Identifier for Libraries and Related
︶である。最近 ISO/TC46
で
Organizations
決まった国際標準で、各国ごとに図書館の
のような問 題が起きる可能性が多くなる。
準を決めなければならないし、本の移動が
館の識別子を作るための標準であるが、日
識別番号を管理して、国際的に一意な図書
このような混乱を起こさないためにも、標
3166︶などは、標準の内容としてはわ
れば、当然国際的な標準化が必要となる。
一国内に限られるものではないことを考え
は、図書館の識別のためにはこのISIL
ていない。今後の図書館関係の国際標準で
本ではまだISILの管理機 関が定まっ
般の人にどういう恩恵があるかといわれ
ところで、いま決まろうとしている新し
3. 何を決めている標準か?
かり やすいほうであるが、それでも、一
国立情報学研究所 宮澤 彰
1.RFID、図書館、国際標準
RFIDの 国 際 標 準 としては、チップ
ると、いささか説明しにくい。目録やメタ
データ作成にたずさわる人であれば、
﹁米
の技術的標準がある。これは、情報技術の
国﹂や﹁アメリカ﹂などの表記のゆれを
を使用していくことになるために、早急な
分野で、国際標準化機構と国際電気標準
防いで検索の精度を高めることができる、 い国際標準は、ISO 28560﹁図書館
対応が望まれる。いずれにせよ、この所蔵
会議合同の情報技術標準化委員会である
におけるRFID利用のためのデータモデ
館 識 別子と、資 料 識 別子を組み合わせれ
という答えが可能だろう。しかし、でき
ば、世界中の図書館のすべての資料が一意
とい う 委 員 会 が 決 めてい
ISO-IEC/JTC1
る。また、流通を主とした製品識別のため
ページほどの大きさであり、あまり複雑
ル﹂といい、三部に分かれている。各部とも
という団 体が主となって国 際 標 準
global
を決めている。ここで紹介するのは、図書
には、
一般利用者にとっての恩恵はさらに
図書館におけるRFIDの標準化の場合
の統一さえできていればよいことである。
長エンコーディング﹂となっている。これ
にもと
タ要素﹂
、第二部は﹁ ISO/IEC 15962
づくエンコーディング﹂
、第三部が﹁固定
ではない。第一部は
﹁一般的要求事項とデー
は
に気づいた読者もいるかもしれない。実
に識別できる識別子となるはずである。
のRFIDの使い方に関しては、 GS1 EPC た目録の利用者にとっては間接的な恩恵
であるし、別に国際標準でなくても国名
館の応用システムで使 うRFIDのデー
遠いものとなる。一般的には、システムの互
番のGS 1- 製品識別子は、その一部
桁化されたISBNのほかIS
表1を見てISBNがないということ
機構ISOの中の﹁情報とドキュメンテー
タ内 容に関する国 際 標 準で、国 際 標 準 化
30
ション﹂委員会TC の中のSC4という
用する図書館の側もより少ない費用で導
減が可能となり、また、そのシステムを利
換性によってメーカ側では開発コストの削
ザデータ要素の一覧を掲げる。
表1に、
この標準の第一部で決めているユー
だけでは、何のことだかわからないだろう。
書 館 の 資 料 と し て、こ れ ら 以 外 の 製 品
S N、楽 譜 の I S M N を 含 ん で い る。図
として
13
入が可能になる、といったところが、普 通
図 書 館 用のRFIDでは、タグに書き
コードが使われることがあるかどうかは
しかし、通常のRFIDチップの読みとり
ないの、と思うかは人によるかもしれない。
り一般的な使用が可能となっている。
わ か ら な い が、G S 1
- 製品識別子とい
うデータ要素名にすることによって、よ
しかし、国際標準が決まっていないと他
性能やデータ容量から言って、それほど
うに説明すれば、
一般利用者としては、まあ、 ましょう、という規定である。システム用
人事ではすまなくなってくる、という場合
多くのデータを使用することは現実的で
のデータ要 素はこの表とは別にある。こ
がありうる。RFIDを図書館でのゲート
はなく、このリストはむしろ、あり得るも
結構なことであれば進めてくださいと、他
ところで国際 標準といっても、縁がな
管理に使う 例は多いが、日本の図書 館で
のをできる限り並べたリストといえる。こ
略語が頻出してしまったが、標準化の世
いと考える人は多いだろう。図書館の世
借りた本を、外国に持っていって図書館に
界がこういった略語を使って名前を付け
界 に 限 ら ず 標 準 化のというのは、一般の
入り、出ようと思ったらブザーが鳴ってし
んなにあるの、と思うか、これしか許され
人が直接恩恵を受ける場合が少ない。た
れらデータ要素のうち、必須なのは資料
人事のとしてコメントするだけであろう。
とえば、日本がJP、アメリカ合衆がUS
まった、というようなことが、標準化が行
資料識別子
内容指示パラメータ
所蔵館識別子(ISIL)
セット情報
ユーセージタイプ
請求番号
ONIX メディアフォーマット
MARCメディアフォーマット
供給元識別子
発注番号
ILL 貸借館識別子(ISIL)
ILL 貸借側トランザクション番号
GS-1製品識別子
ローカルデータ A
ローカルデータ B
ローカルデータ C
タイトル
ローカル製品識別子
その他のメディアフォーマット
サプライチェーン段階
請求書番号
オプショナル資料識別子
所蔵館識別子(ISIL 以外)
所蔵館下位識別
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
名詞と考えておいてほしい。
などのよ うに決めた国 名コード︵ISO
表1. データ要素一覧
ている世界のためで、とりあえず、固有
込むデータ要素はこの表にあるものにし
13
冒 頭 か ら、 T C、 S C、 I S O な ど、 に主張される標準化の利点である。このよ
2.国際標準の必要性
分科委員会がすすめているものである。
46
10
丸善ライブラリーニュース 復刊第 4 号
の TC46/SC4
とい う
決 め て い る の は ISO
委 員 会であるが、実 際の検 討はその中の
2007年の始め頃からである。
15962を唯一のエンコーディング方
式 と す る こ と は 無 理 そ う と の 判 断 か ら、
2007年の春頃までの検討で最大の
方式を認めることにより、現在の日本の
日本としては、複数のエンコーディング
英国が妥協案として提示したものである。
で行われた。この委員会は、2006年の
問題となっていたのは、この標準はデー
5.国際標準に関する議論と日本の立場
ているかを示すフィールドである。これ
月に第一回目を開催し、その後2007
表1の二番目のデータ要素である内容
指示パラメータは、表1のデータ要素の
ワーキンググループWG
という委員会
うちどのデータ要素が実際に書き込まれ
は、処理の高速化のために導入されたも
11
ディングともに第二部で規定されている。 会 議で標 準 案が検 討されてきており、現
係 す る た め、 実 際 の 使 用 法 は エ ン コ ー
ので、エンコーディング方法と密接に関
2008年5月と開かれている。これらの
年5月、2007年6月、2007年9月、
含めないとする案を支持する人々は、プ
あった。エンコーディング方法を標準に
ング方式も含めて決めるのかという点で
タ要素だけを決めるのか、エンコーディ
の適用範囲を、HF帯に限ることにより、
協案に賛成した。また、第二部、第三部
るという可能性を視野に入れて、この妥
方式を将来第四部などの形で標準にいれ
ディング方式は、表1の各データ要素に
必要事項を規定している。このエンコー
というエンコーディング方式
IEC 15962
を 使って H F 帯 の タ グ に 書 き 込 む 際 の
なっており、この28560に対する対
が事務局をつとめる国内委員会がおこ
に 対 す る 日 本 の 対 応 は、 日
ISO/TC46
本工業標準調査会のもと、日本規格協会
まもなく国際規格案︵DIS︶として承認
15962の使用をこの標準の中で規定
見があったが煩雑になるので細部の紹介
ストでの検討が行われており、様々な意
3.に示した標準案が作られるまでに
い と い う 考 え 方 で あ っ た。 一 方、
ISO/
のエンコーディング方式を
簡単に述べてもこのような経緯が存在す
IEC 15962
支 持 す る 人 々 は、 相 互 運 用 性 の た め に、 る。こ れ ら の 会 議 の 他 に、メ ー リ ン グ リ
としては優れているが、読みとりや書き
うにした方式である。互換性を保つ方式
何が書いてあるかを正確に読みとれるよ
館 協 会ほか図 書 館 関 係 団 体も参 加し、I
験で、書籍関連業界の一部として日本図書
業省の主導するUHF帯RFIDの実証実
一方、国内では2004年から、経済産
考えていた。
このため、
15962のエンコー
資料識別子をエンコーディングする方式を
ジェクトを通じ、固定長で所蔵館識別子と
日 本 は、そのときまでの 実 証 実 験 プロ
たりして、現在の形で決着した。
トでの検討で、要素が増えたり整理され
の表1などは、主としてメーリングリス
は し な い。一 例 を 挙 げ れ ば、デ ー タ 要 素
れらに縛られることのないようにした。
国際的に一意の識別子を与え、その識別
すべきであると強く主張していた。
ISO/ 在委員会原案︵CD︶という段階であるが、
日本で計画中のUHF帯での応用が、こ
子とともにデータを書き込むことによっ
応も、その委員会で検討されてきた。
込みの性能にやや疑問が持たれている。
.おわりに
ディング方式を標準の中に組み込むこと
際標準としたものである。第一部のデータ
を取る必要が認識され、双方の委員 会か
この国内での標準化と、国際標準化の調整
性能に対する疑問の声が寄せられていた。
実装経験を持つ会社からも、15962の
でようやく標準案の投票まで来た。しか
国際標準の検討を始めてから約二年間
化も検討されてきた。2006年になって、 には反対であった。国内でRFID関連の
Cタグ研究委員会などの活動のもと、標準
要素を固定長方式でHF帯のタグに適用
し、この種の標準は実装されなければ意
オクテット、所蔵
このため、日本はWG の六月の会議の
6
らリエゾンを出して調整することとなった。
ロッパのいくつかの国が採用したものを国
第三部は、デンマークの国内規格をヨー
投票がおこなわれる。
て、どんな応用プログラムでも、タグに
第二部は、第一部のデータ要素を
ロフ ァイルと呼ばれる標準の実装情報
としてエンコーディング方式を示せばよ
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する場合の規定であり、資料識別子はオフ
セット3からはじまる
オクテットといったように、ビット
13
では国際標準というものは視野に入って
当然のことであるが、国内の実証実験
ル方式を支持し、15962方式の導入は、
にもデンマーク、イタリア等がプロファイ
イルに回すという案を強く主張した。他
席上で、エンコーディング方式をプロファ
多く使われていくであろうUHF帯での
要がある。また、現在の標準案は、今後
使われていくかは、今後の推移を見る必
256ビットまたは272ビットまでが基
2006 年 終 わり 頃の段 階では、国 際 標
いう ものも考 えられていなかった。一方、
が、実用化を先行できれば国際標準化に
いた。この会議では対立の溝は埋まらず、 これは、応用が未成熟ということもある
英国、米国、オーストラリアが支持して
おける主導権がとりやすいということで
もある。この分野における標準化活動の
エンコーディングについて触れていない。
本ブロックとして固定されているが、その
データ要素の定義と、複数のエンコー
九月の会議まで結論は持ち越しとなった。
ディング方式に分離する現在の形が提案
国際標準案の形が見え始めてきたのは、 さ れ た の は 九 月 の 会 議 の 席 上 で あ っ た。 必要性はまだまだ終わらない。
るとの共通認識を確認しただけであった。
準の方もまだ文章としてまとまった案の
4. 標準化活動
ない状 態で、ひとま ずは調 整が必 要にな
味がない。この標準が本当にどのように
いなかったし、未だ国内には存在しない
11
後ろの拡張ブロックは選択が可能である。
位置固定でデータ要素が規定されている。 I S I L 国 際 標 準 図 書 館 識 別 子 な ど と
たは
館識別子はオフセット からはじまる ま
21 16
最 初に述べたよ うに、この国 際 標 準 を
丸善ライブラリーニュース 復刊第 4 号
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