和倉温泉地域における熱利用の案件形成調査事業[H26年度成果概要] 立山科学工業株式会社 温泉熱の効果的利用法の可能性検討として、本事業では熱 交換器等の熱源地域での直接利用のみならず、蓄熱と熱移 動を可能とするアイテムにより、同機能を有するシステム構 築を検討する。その最適化利用ケーススタディを実施するこ とで、その環境負荷低減効果、事業成立性および課題を明 確にする。 取り組みの背景 実施地域の概要 和倉温泉は、1000年以上の歴史を持つとされ、全国有数の 高級温泉街を持つ格式のある温泉地域である。その温泉の 配湯を一手に担う和倉温泉合資会社において、温泉熱の有 効活用の可能性を確認することは地域的先進性がある。ま た、複数地域での需要検討先としては七尾市内や能登島を 想定している。 日本における温泉熱利用の可能性 温泉が持つ再生可能エネルギー、特に排熱として有効活用 されていなかった熱エネルギーの有効活用は、我が国が大 きな賦存量を持つ地熱活用の中でも、喫緊の課題である。 温泉イメージ 日本には現在17箇 所の地熱発電所が あり、約53万kWの 電気をつくっている。 日本全体の電力量 の0.4%に相当する。 地熱エネルギーの利用 エネルギー需給のアンバランス 再生可能エネルギーの多くはその出力変動が大きいが、 温泉熱は比較的安定している。しかしながら需要変動と の乖離は大きく、その最適化によって利用可能性は大き くかわる。 和倉温泉と能登島 和倉温泉地域 実施体制 申請者である立山科学工業 がデータ取得調査各種機器 検討・最適化検討等を行い 、富山大学 の環境地球化 学研究室により地熱流体の 挙動解析と地熱利用におけ るスケール問題対策技術の 調査を担当する。 立山科学工業 富山大学 和倉温泉 • • 調査対象 協力 • • 温泉熱ポテンシャル 泉質・スケール調査 実施体制図 1 技術の特徴 設備の概要 事業名:○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○ 全体システム概念 全体構成イメージ 調査検討地域内の温泉源がもつ熱エネルギーポテンシャ ルと、電力、熱需要プロファイルを、季節変動、時間変動を 含むデータを取得を試みた。一方で、ヒートポンプ式エアコ ン/給湯器や熱交換式給湯/暖房装置、そして蓄熱と熱 輸送機能を持つ装置の詳細仕様、性能等を調査して最適 な仕様の選定を行なう。これらの調査と選定をもとに、ハイ ブリッド温泉熱利用ケーススタディシミュレーションにより、 CO2排出量の削減効果の最適利用ケースを導出し、同時 に行なうコスト試算により、事業可能性を合わせて検討し た。 源泉温度(90℃と想定)を入浴に適した温度(約40℃)ま で低下させるエネルギー差の複数地区での利用を検討す る。機器構成には源泉から減温させる際の熱交換器をコア にして、その温度差エネルギーを利用する機器、給湯用、 暖房用各熱交換器、吸収式エアコンシステム、融雪装置等 を検討候補とし、余剰熱エネルギーを他地域/施設にて 利用可能とする蓄熱・熱輸送概念をも検討範囲する。これ らから効果的な利用構成となるケーススタディを行なった。 源泉, 90℃,max.700L/min 熱移動 最大 交流棟 暖房 約7万GJ/年の熱源 HEX 他温泉 75℃ 600L/min 源泉槽 75℃ 50〜100L/min 源泉 約90℃ 約1400L/ min 約40℃ 毎分約700L/ min 温泉施設 熱交換 総湯温泉 42℃ 50〜100L/min 総湯様 暖房 総湯様 予熱 熱交換 75℃→50℃ 総湯様 給湯加熱 熱交換 50℃→42℃ T ra n s H ea t C o n ta in er P 吸収式冷凍機 熱需要施設( ゴ ルフ 場、 娯楽施設など ) 温 排 水 熱の移動 T ra n s H ea t C o n ta in er 吸収式冷凍機 システム(ケーススタディ例)イメージ など 全体構成イメージ など 2 工夫点 本年度実施した調査内容 事業名:○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○ 熱エネルギーのカスケード利用の高度化 調査項目/調査方法/調査結果 熱エネルギー有効利用にはカスケード利用が効果的。 熱移動システムを介しての需要先では、温度水準も低い 事から、さらに同利用法の高度化が求められる。本調査 の実証段階等においては、需要先の選定とともにこれら 工夫の必要性が想定される。 本年度実施した上記調査項目につき下表にまとめる。 調査項目 熱利用ポテンシャル 高温 熱交換式暖房 熱需要 給湯・HPエアコン 調査方法 調査結果 和倉温泉合資会社様より同意を得て、 二つの源泉での配湯データを取得でき た。 候補施設への視察 訪問、協力要請、お よびデータ取得と集 熱移動システムが適応可能な約10km 約を行った。 圏内にて3箇所での熱需要データを取 得できた。 融雪 低温 CO2排出量削減効 果 熱エネルギーのカスケード利用例 時空間をこえた熱輸送機能(トランスヒートコンテナ) 再生可能エネル ギー利用率試算 熱媒油 熱媒油はPCMとの比重差によりゆっ くりと上昇します。 (比重 PCM 1として、熱媒油 0.6) 熱媒油配管(吸引) コスト試算 ケーススタディ分類 の上、熱需要施設に おいて現状使用して いる化石燃料と電力 量から各試算(CO2 削減効果、再生可能 エネルギー利用率、 コスト)を行った。 各ケーススタディについて、年間約 400tCO2から1100tCO2の削減効果と なる。 各ケーススタディについて、約40%弱か ら約75%強の再生エネルギー利用効 率となる。 熱移動システム導入を行うケーススタ ディについて、燃料代削減と設備導入 /維持コストを試算し比較した。 熱交換器 熱媒油配管(戻り) コンテナ構造 潜熱蓄熱材(PCM) コンテナ構造と畜放熱メカニズム 環境中に廃棄されていた低温排熱を利用 年間を通じて冷暖房・給湯熱源として利用可能 オフラインによる搬送で需要先拡大 CO2の削減 使用燃料削減による経費低減(輸送燃料・ポンプ動力は 増) 3 本年度の成果 事業名:○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○ 二酸化炭素排出削減効果 和倉温泉地域において未利用だった温泉熱を利用して源 泉近隣施設だけでは年間約400tのCO2削減可能性にと どまるものが、熱移動システムを最大限導入すると、CO2 削減効果を年間約1100tへ向上する可能性があきらかと なった。 コスト試算 熱移動システムを 最大限利用した場 合、年間約二千二 百万円の燃料費 削減効果があるが 、ほぼ同額がラン ニングコストとして 必要になることが 明らかとなった。 まとめ 前項調査結果より、本事業の実証(調査)要素である下記 各項目につきまとめる。 熱移動を可能とするアイテムの導入を検討することで、温 泉排熱を最大限利用することへの可能性調査については 、3箇所からの熱需要データを取得し、それらの合計熱需 要をも上回るポテンシャルがあることがわかった。 供給側は安定して2MWのポテンシャルがあるが、その最 大限利用については複数の配湯先への(温度的要素など )同意が必要であることがわかった。 供給元だけでの熱需要は供給ポテンシャルに対して極め て限定的であり、熱移動システムの導入は排熱利用の効 果を数倍大きくできることがわかった。 本調査でおこなった3箇所の熱利用施設を超える熱供給 ポテンシャルが明らかとなり、実証展開等に際しては、さら なる熱需要施設での熱/電力プロファイルの調査が必要 であり、以後得られるデータを元に最適システムを再構築 する必要があることがあきらかとなった。 具体的導入結果(最大限熱利用が可能なケーススタディ105 による)は以下のとおり。 省エネ効果:約370kL/年 エネルギー利用率:約18% CO2削減効果:約1100tCO2/年(約60%) 再生エネルギー熱依存率:約58% ※ 投資回収 :補助金有(3/4補助と仮定)14年、補助金無54年 ※熱輸送(運搬)に伴う車両機器を専用とせず、運搬コストを除いた場合。 4 課 題 今後の展開等 事業名:○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○ 温泉関係者に対する同意取り付け 温泉熱エネルギーのポテンシャルは明らかとなっているが 、その現実的利用には関係者に対する理解が必須条件で あり、複数の管理/関係者にプロジェクト同意取り付けを頂 けることがひとつの課題といえる。また、温泉利用流量も無 尽蔵ではなく、そのくみ上げ量によっては枯渇/資源減の 可能性もあり、実際の導入にはこれらの継続検討が必須で ある。 他地域への導入可能性 日本には有数の温泉が存在するため、本事業と源泉管理 形態や熱需要特性が似ている地域/施設を対象とする展 開可能性は非常に高い。その展開へは地域特有の泉質調 査による独自判断と、管理/関係者への同意取り付けが 展開への課題と考えられる。 日本には3000を超える温泉地 が全国的に存在していて、温泉 熱利用可能性が非常に高い国 土であることがわかる。 想定される課題 想定される課題としては下記のような点が考えられる。 ポテンシャルとして有する温泉熱エネルギーが事実上 利用可能な観点からどれくらいの流量/温度得られる か 熱移動先で効果的利用が可能な熱需要先の選定 既設で利用している熱交換装置等との併設関係 熱輸送機能の費用対効果 スケール対策 スケール問題 問い合わせ先:立山科学工業(株)技術本部 電話:076-438-3088 日本の温泉地分布 他需要地域への熱輸送システムの導入 熱移動機能はCO2排出量削減に効果があるが、その 導入コストは無視できるものではない。現在の燃料価 格では、その燃料費削減効果がほぼランニングコスト に等しく、イニシャルコストを償却できる可能性は低い。 環境負荷低減優位性があることからも、導入補助等に よる導入促進や、自治体等が実施主体者による導入 が期待される。 Email : [email protected] 5
© Copyright 2024 ExpyDoc