銀河円盤及びバルジのX線放射観測 銀河系内拡散X線放射研究の現状と課題 奈良女子大学 山内 茂雄 Outline • 銀河系内拡散X線放射とは ! 研究の背景 ! 銀河系内拡散X線放射の起源は? 何が問題か • 硬X線撮像分光装置時代の観測 • 銀河系内拡散X線放射の特徴と課題 • まとめ 天の川銀河のX線観測 • どんな天体がX線を放射しているか? ! コンパクト天体、拡散X線放射の存在 ROSAT:MPE MAXI:JAXA 銀河中心は明るくない 拡がったX線放射 EXOSAT: Warwick et al. (1985) コンパクト天体を含む連星系 銀河系内拡散X線放射 てんま衛星による観測 • 天の川に沿って存在する拡がったX線放射 ! 既知の点源のない領域の観測 ! 強い鉄輝線を伴った、温度が数千万度の熱制動放射 スペクトルの発見 光学的に薄い高温プラズマガスからの放射 Koyama et al. (1986), Koyama (1989) 高温プラズマからの鉄K輝線 ぎんが衛星 • 鉄:原子番号26 T〜5x107 K 電子2個 He様鉄イオン → K輝線エネルギー 6.7 keV T〜108 K 電子1個 H様鉄イオン → K輝線エネルギー 6.97 keV K輝線のエネルギー Yamauchi (1991) ガスの温度と鉄の電離状態 He様鉄 6.97keV 6.7keV 6.4keV H様鉄 He様鉄 H様鉄 106 107 108 109 K プラズマガスの温度 " 6.7 keV鉄輝線は数千万度の高温ガスの指標 " 6.97 keV/6.7 keV輝線強度比は温度の指標 銀河系内拡散X線放射 ぎんが衛星 鉄ラインマッピング観測 ラインX線天文学 連続X線 銀河中心成分 6.7 keV輝線 銀河中心領域の 活動によるものか? 銀河円盤成分 Scale height〜100pc 107-108 Kの高温プラズマガス: 天の川に沿って存在!! 銀河バルジ成分 Koyama et al. (1989), Yamauchi et al. (1990), Yamauchi & Koyama (1993) 銀河系内拡散X線放射の起源は? 何が問題か 1) 真に拡がった高温プラズマガスの場合 銀河中心 (n〜0.03 cm-3) 銀河円盤 (n〜0.003 cm-3) 全熱エネルギー 〜1054erg(超新星103個分) 〜1056erg(超新星105個分) 最大散逸時間(サイズ/熱速度) 4x1020 cm/108 cm/s〜105 年 3x1020 cm/108 cm/s 〜105 年 模式図 〜4x1020cm 銀河中心成分 〜3x1020cm 銀河円盤成分 " 巨大なエネルギーの供給が必要 " 銀河中心:銀河中心BHの爆発?/超新星爆発?100年に1回 " 銀河円盤:超新星爆発?1年に1回 大問題 銀河内における発生率(30年に1回程度)を遥かに超える • 銀河バルジ:超新星爆発を起こすような質量の星はほとんどない 銀河系内拡散X線放射の起源は? 何が問題か 2) 暗い天体が個々にもつ高温プラズマの重ねあわせ " X線強度は弱いがたくさん存在しているので、 見かけ上拡がった放射として見えている? " それはどんな天体か? 強い鉄ラインが説明できない 私たちの知っている天体には、X線スペクトルが 合う天体がない 私たちが知らない天体か? 硬X線撮像分光装置時代の観測 " X線望遠鏡を使って観測したら、すべて暗い天体に 分解することができるか →空間分解 " 空間構造/温度構造 →大局構造 " 拡散放射成分のスペクトルは? →スペクトル解析 関連天体のスペクトルとの比較 空間密度 空間分解 あすか衛星による銀河面サーベイ観測 銀河系内の星間物質による吸収の影響のない波長でのサーベイ観測 銀河中心領域 銀河円盤領域 • 200を超える天体を検出 このうち60%以上は新発見 1000光年 • 大部分は分解できない拡散成分 Yamauchi et al. (1996), Kaneda et al. (1997), Sugizaki et al. (1999, 2001), Sakano et al. (2002), 他 空間分解 あすか衛星による観測 • 分解できた天体の寄与は 10% 程度 Fluctuation analysis: 大部分は一様な放射 → 3’x3’に110天体以上 天体の明るさ Fx < 10-14 erg/s/cm2 Lx < 2x1031 erg/s at the 4kpc arm N > 1 x107 sources 天体密度 n > 10-3 pc-3 Sugizaki et al. (1999) 空間分解 Chandra衛星による観測 " 分解できた天体の寄与は 10-15% 程度 Ebisawa et al. (2001,2005) " もし点源起源であるならば、F2-10 keV < 3x10-15 erg/s/cm2 で 急激に数が増える天体が必要! 空間分解 Chandra衛星による長時間観測 Chandra Deep Field: (l, b)=(0.113, -1.424) The authors conclude that we have resolved as much as 88+/-12% of the GRXE emission into point sources at energies near the 6.7 keV line. どのような天体か? CV? Active binary stars? Revnivtsev et al. (2009) 硬X線撮像分光装置時代の観測 " X線望遠鏡を使って観測したら、すべて暗い天体に 分解することができるか →空間分解 " 空間構造/温度構造 →大局構造 " 拡散放射成分のスペクトルは? →スペクトル解析 関連天体のスペクトルとの比較 空間密度 大局構造 あすか衛星による観測 • X線強度と電波強度の分布の比較 ! +/-30度以内に集中 連続X線 6.7 keV輝線 Yamauchi et al. (1993) Sugizaki et al. (2001) 大局構造 RXTE/COBE衛星による観測 • X線強度と近赤外線強度の分布は よく似ている ! COBE/RXTE/6.7keV line ! 近赤外線:小質量星からの光 ! X線:高温ガスからの光 • 未発見の小質量星、白色矮星連星 がたくさんあるのではないか! Revnivtsev et al. (2006) 大局構造 銀河系内拡散X線放射の銀緯依存性 Cool component: scale height b〜3 deg Hot component: scale height b〜0.5 deg Kaneda et al. (2001) Scale height=100 pc程度 大局構造 銀河系内拡散X線放射の銀緯依存性 RXTE scan Revnivtsev & Molkov (2012) Scale height=107 +/- 5 pc 銀河系内拡散X線放射スペクトル すざく GCXE GRXE Uchiyama et al. (2013) 高電離したSi, S, Feから輝線 →光学的に薄い高温プラズマガスからの放射 大局構造 すざく衛星による鉄輝線の観測 6.7 keV 6.97 keV 点源の分布 銀河中心成分 銀河円盤成分 6.7 keV line Yamauchi et al. (2009), 他 Line ratio 高 • 天の川に沿った方向 温 • 6.7 keV 強度分布, (6.97 keV)/(6.7 keV) " 系統的に違う → 起源が違う " GCXEと点源とは分布が合わない Uchiyama et al. (2011) 銀河面拡散X線放射 鉄輝線スペクトルの例 Yamauchi et al. in prep. F6.97keV/F6.7keV F6.4keV/F6.7keV 0 0.5 1 0 0.5 1 F6.97keV/F6.7keV F6.4keV/F6.7keV 0 0.5 1 0 0.5 1 Intensity (x10−8 photons s−1 cm−2 arcmin−2) 1 10 100 1 10 100 1 10 100 6.4 keV 6.7 keV 6.97 keV 40 20 0 −20 Galactic longitude (degree) −40 Intensity (x10−8 photons s−1 cm−2 arcmin−2) 1 10 100 1 10 100 1 10 100 大局構造 すざく衛星による鉄輝線の観測 Chandra Deep Field 0 2 6.4 keV 6.7 keV 6.97 keV 4 Absolute Galactic latitude (degree) Yamauchi et al. in prep. 鉄輝線強度比 • 6.4 keV/6.7 keV line ratio 銀河中心ではX-ray reflection nebulaの寄与大 バルジ領域では銀緯が高くなると徐々に減少 (銀河円盤領域では、統計が悪くはっきりしない) • 6.97 keV/6.7 keV line ratio 領域ごとで異なる値 GCXEの温度 > GRXEの温度 大局構造 すざく衛星による輝線の観測 6.7keV 2.45keV 6.97keV 2.62keV Uchiyama et al. (2013) 硬X線撮像分光装置時代の観測 " X線望遠鏡を使って観測したら、すべて暗い天体に 分解することができるか →空間分解 " 空間構造/温度構造 →大局構造 " 拡散放射成分のスペクトルは? →スペクトル解析 関連天体のスペクトルとの比較 空間密度 CV, Coronal starのスペクトル CVの例 Active binaryの例 EX Hya Ezuka & Ishida (2009) UX Ari Guedel et al. (1999) CVやActive binary の鉄ラインは決して強くない! • CVsのEW(6.7keV) < 300 eV, Z(Fe) ≤ 0.5 solar (e.g., Ezuka & Ishida 2009, Baskill et al. 2005) • Active binary starsの6.7keV line Z(Fe) ≤ 0.3 solar (e.g., Guedel et al. 1999) CV/Active binary合成スペクトルによるfit GRXE (28.46, −0.20) normalized counts s−1 keV−1 0.1 0.01 CV AB_highT 10−3 CXB AB_lowT FeI line χ 10−4 5 0 −5 2 Energy (keV) 5 • Model CV multi-kT model kTmax=20 keV Z=0.5 solar AB 2mekal model kTlow=0.5 keV kThigh=2 keV Z=0.3 solar 鉄輝線強度が説明できない Yamauchi et al. in prep. 連続成分、輝線強度を満たす 点源の空間密度 • 表面輝度 η nL nL S = ∫ dx ≈ ∫ dx ≈ Δx 4π 4π 4π ! 半径4kpcの円盤内に一様に分布していると仮定 ! CVの平均光度:LCV〜5x1031 erg/s (1031-1034 erg/sの平均) ! ABの平均光度:LAB〜1030 erg/s (1029-1031.5 erg/sの平均) • 必要となる空間密度 観測値 nCV 〜 (0.6-3)x10-5 pc-3 ! 2-10 keV fluxから (Patterson 1994, Patterson 1998, # nCV〜10-4 pc-3 Schwope et al. 2002, Rogel et al. 2008) n < 5x10-4 pc-3 -3 -3 AB # nAB〜5x10 pc (Fleming et al. 1989, Sazonov et al. 2006) 3.5x10-3 pc-3 (Warwick 2014) ! 6.4 keV line fluxから # nCV〜10-4 pc-3 (EW=150 eVを仮定) 広帯域スペクトル • Excess emission above 10 keV = 非熱的放射 ぎんが 他 RXTE Yamasaki et al. (1997) Kokubun (2001) 広帯域スペクトル Kaneda et al. (2001) Power-law component: b〜2 deg 以上の領域で目立ってくる 銀河系内拡散X線放射の特徴と課題 • 空間分解 ! Chandra Deep Field:大部分は点源に分解 # (l, b)=(0.113, -1.424) ← バルジ領域 # 銀河中心、銀河円盤も同じと考えてよいか? • 大局構造 ! 銀河系の構造や赤外線放射の分布と良く似ている # 銀経+/-30度以内に集中/バルジに対応した放射の存在 # 銀河面領域:Scale height =100 pc程度 • A5: 90 pc, F0: 150 pc, G5: 250 pc (Allen’s Astrophys. Quantities) ! 星の分布と必ずしも一致しない # 少なくとも銀河中心領域には超過成分がある 銀河系内拡散X線放射の特徴と課題 • X線スペクトル ! 高階電離した鉄からの強い輝線 # 既知のCVやABよりも強い輝線 # CV/ABであるなら、観測されているよりも高密度で存在す る必要がある # 強い鉄輝線を含む5-8 keVの温度を持つ天体が必要 • そのような天体が高密度で存在している? n > 10-3 pc-3 # 非熱的放射の存在 ! 輝線強度比 # 銀河中心、銀河バルジ、銀河円盤領域で系統的な差 • XIS視野内には3000天体以上が含まれていなくてはならない • 多くの天体の平均を見ている→同じようなスペクトルになるはず! • 場所毎に異なる天体が担っている? まとめ 銀河系内拡散X線放射 • 銀河円盤、銀河中心、銀河バルジ領域に存在する ! 銀河系の構造や星の分布と相関 • 熱的成分には低温成分と高温成分がある 強い鉄輝線あり • ベキ型関数スペクトルで表される非熱的X線放射が存在する ! 銀河円盤から離れた領域で目立ってくる? 起源は何か • 暗い点源の重ね合わせ? ! CV/Active binary star? 強い鉄ラインをもつ未知の天体? ! 鉄輝線、スペクトル、空間分布の違いの理由は? • 真に拡がった高温プラズマガスはある? ! エネルギー源は?
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