鉄鋼スラグを用いた路面処理の事例について(PDF)

鉄鋼スラグを用いた路面処理の事例について
(独)森林総合研究所森林農地整備センター
大分水源林整備事務所
〃
本庄
戸高
徳之助
竜一
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はじめに
大分水源林整備事務所では、昭和36年から平成25年度までに、約1万4千ヘク
タールの植栽を実施し、林齢構成は、Ⅵ齢級以上の間伐等の対象となる面積が9千h
aあり植栽面積の6割を占めています。これらの水源林を管理するための作業道は平
成25年度までに723kmを開設しています。当センターの作業道は、崩れにくい
作業道整備のため、丸太工法ののり留工を施工しており、また降雨時の路面水の処理
については、水の流れを想定し丸太横断工を設置し路面洗掘に配慮した構造としてい
ます。近年の台風・集中豪雨による路面の洗掘等の被害については、路面排水施設で
対処出来ないような想定以上の水が流れて路面の被害を防止出来ていないのが実態と
なっています。
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路面洗掘の現況・対応について
路面洗掘・
植物の侵入
路面洗掘状況
台風・集中豪雨による、路面の
洗掘被害は、勾配が急で路面排水
路面水に対処するため
が困難な所で多く見受けられま
す 。路 面 排 水 等 の 処 理 を 施 し て も 、
コンクリート舗装の耐洗掘性と同じ機能を
対処出来ない箇所については、コ
もつものとして、鉄鋼スラグに注目
ンクリート舗装による施工とな
り 、経 費 が 掛 か り 増 し と な り ま す 。
こ の た め 、路 面 水 に 対 処 す る た め 、
・簡易な施工で水と反応して固まる性質
コンクリート舗装の水の洗掘に強
・コンクリート舗装と比べて安価
い性質と同等の機能をもつ、鉄鋼
鉄鋼スラグ(厚10cm)
1,100円/m
スラグに注目しました。鉄鋼スラ
コンクリート舗装
(厚10cm)
6,900 円/m
グの性質として、簡易な施工で水
と反応して固まり硬化後は水の洗
掘に強い性質があります。鉄鋼ス
ラ グ は m あ た り 1 ,1 0 0 円 と コ ン ク リ ー ト 舗 装 の m あ た り 6 ,9 0 0 円 と 比 べ て 約 1
/6となり安価です。
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鉄鋼スラグについて
鉄鋼スラグは、鉄鋼製造に伴う副産物です。冷却の方法等により、異なる特徴を
持 っ た 「 徐 冷 ス ラ グ 」「 水 砕 ス ラ グ 」「 製 鋼 ス ラ グ 」 に な り ま す 。
鉄鋼スラグの概要
副産物
使用されている鉄鋼スラグ製品について
徐冷スラグ
主原料
鉄鉱石
高炉徐冷スラグ
副原料
石灰石
コークス
鍋車
路盤材・粗骨材
使用される鉄鋼
スラグの種類
主に使用され
る用途
LCー40
製鋼スラグ
簡易舗装材
カタマSP
製鋼スラグ
+
水砕スラグ
簡易舗装材
認
定
CS-30
製鋼スラグ
+
除冷スラグ
道路用路盤材
認
定
製品名
スラグ
(300kg/T)
高炉スラグ
高炉スラグ
(溶融)
スクラップ
溶銑
セメント原料・
細骨材・地盤材料
溶銑
加圧水
酸素吹錬
製鋼スラグ
生石灰
溶鋼
製鋼スラグ
採
用
水砕スラグ
高炉水砕スラグ
高炉
副
原
料
大分県リサイク
ル製品認定
受鋼
台車
採用
製鋼スラグ
溶鋼
製鉄原料・路盤材・地
盤改良材・土木用材
転炉
認定されて
いない
鍋車
• 簡易舗装材であり大分県リサイクル製品に認定
されているためセンターで採用
スラグ
(130kg/T)
出典: 新日鐵住金 鉄鋼スラグ カタマSP のご紹介より
当事務所では環境に配慮して、大分県リサイクル製品に認定された簡易舗装材と
して使用されているカタマSPを採用しました。
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鉄鋼スラグの施工方法について
鉄鋼スラグの施工に4つの工程がありま
す。
①鉄鋼スラグを搬入する。②バックホウ
で敷均しをして良く散水する。③再度、散水
しながら振動ローラで締め固めを行う。④養
生する。
鉄鋼スラグの施工方法
出典: 新日鐵住金 鉄鋼スラグ カタマSP のご紹介より
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試験施工箇所について
今回、試験的に鉄鋼スラグを施工した箇所は、大分県の南部に位置する佐伯市弥生
町です。施工期間は平成24年9月~平成24年12月で、大分県リサイクル製品
に認定されたカタマSPを施工しました。カタマSP施工後の平成25・26年で林
道施設災害復旧事業の災害基準の1日当たりの降雨量が80mmを超えた日数は、平
成 2 5 年 で 5 日 、 平 成 2 6 年 8 月 ま で で 3 日 で 、 年 平 均 降 水 量 が 2, 002m m と 降 雨 量
が多い地域です。
センター造林地における鉄鋼スラグ施工箇所
施工箇所の気象について
年平均気温
17℃
最高気温(月平均) 28 ℃
最低気温(月平均)
7℃
年平均降水量
2,002mm
佐伯市弥生町
施工期間
平成24年9月~
平成24年12月
1日当たりの降雨量80mm超えた日数
平成25年(1~12月)
5日
平成26年(1~ 8月)
3日
施工延長
2,200m
カタマSP
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調査結果について
路面の洗掘は認められなかったことから、当初の目的通りコンクリート舗装に劣ら
ないことが確認されました。また、植物の侵入も認められなかったことから、路面の
保持に一定の効果があると思われます。
完成直後の状況
現在の状況
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今後の課題
鉄鋼スラグは水を使うため、低温である冬期間の施工は、養生中に表面に霜が出来
て路面が荒れるので避ける必要があります。養生期間中に大雨が降ると洗掘される恐
れがあります。施工箇所が山林のため、降雨の時の樹冠から落ちる大きな滴にも注意
の必要があります。急勾配箇所について、振動ローラの締固めが十分行われない可能
性があるので、縦断勾配に配慮する必要があります。
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まとめ
路面の洗掘は認められなかったことから、耐洗掘性について当初の目的通りコンク
リート舗装に劣らないことが確認されました。また、植物の侵入も認められなかった
ことから、路面の保持に一定の効果があると思われます。以上のことから、敷砂利と
比較して若干費用が掛かる傾向にあるが路面洗掘及び植物の侵入も未然に防ぐことが
期待されるので、施工時期、縦断勾配に配慮して施工すれば、長期間維持管理費が低
減されるものと思われます。
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