グローバルサイエンスキャンパス(GSC)プログラムについて GSCサブコーディネータ 春山 修身(49 理・物) 1 .はじめに 科学技術振興機構(JST)は現在、高大接続の一 また、成果の海外発表をもターゲットとしている 環として「スーパーサイエンスハイスクール (SSH) ため、英語での口頭発表力、聞き取り能力、読解 支援プログラム」を行っている。このプログラム 力、文章力の向上やコミュニケーション能力も要 は、原則として高校のなかで課題研究を行う。ま 求されるため、短期の海外研修も行う予定である。 た、上記を含めて次世代の科学技術を担う人材育 3 .GSC の教育・研究課程 成のためのプログラムが多岐に亘って実践され、 本プログラムの 本学もそのひとつである「女子中高生の理系進路 教育・研究課程の 選択支援プログラム(平成 21、23、24 年度 JST) 」 あらましを図 1 の に応募採択されて本学での呼称「科学のマドンナ チャートにまとめ プロジェクト」として、中学・高校生を対象とする て 示 す。1 年 目 は 理系教育啓蒙活動の実績を積み上げてきた。 基礎コースとして 今回 JST の提唱するグローバルサイエンスキャ 55 コ マ の 授 業 を ンパス(GSC)プログラムは、理数系に興味を持つ 神楽坂地区で月 2 高校生を大学に通学させて教育・研究指導を行い、 回程度日曜日に行 その成果は海外の学会発表や論文発表に耐え得る う。このうち、前半の 35 コマを入門編として分野 ものを目指している。本学は、その多彩な理数系 融合型の授業を数学、情報、物理、化学、生物につ 教員のリソースを利用して、こうした高校生の多 いて行い、後半の応用編では生徒の希望により専 図 1 GSC 教育プログラムの概略 様なニーズに応じた教育・研究を行える環境にあ 門分野の授業をそれぞれ 20 コマずつ分けて実施 り、また、本学がこれまでに輩出した多くの理数系 する。2 年目は、発展コースとして選抜した生徒 教員の経験・知見を集約することにより、本プロ (20 名を予定)の希望する課題テーマについて研 グラムを実践する体制が整っていると考えられる。 究室での個別指導により研究を進める。発展コー 本年度は全国の 8 大学(北海道大学、東北大学、 スでは指導教員の研究室での研究が主となるの 筑波大学、東京理科大学、慶応義塾大学、京都大 で、研究室の大学院生、学生、あるいは留学生と 学、岡山大学、九州大学)のプログラムが採択さ コミュニケーションをとりつつ研究を進めること れた。このうち、東北大学と京都大学は初年度募 になる。本プログラムが目標とするグローバル性 集定員 150 名、その他は 70 名である。 を涵養するための方策としては、①幾つかの授業 2 .意義と目的 を英語で行う、②本学の学生の英語会話力の向上 本プログラムは、高度な理数力を現有する、あ のために用意してある自己学習プログラム、TUS るいは潜在的に持つ高校生を対象に、自然科学の English Online(TEO)システムを利用する、③ 諸分野の研究に必要となる基本的な論理性、思考 授業あるいは休み時間帯に、主として留学生との 力、分析力、発想力、表現力、課題発見・解決力を free-Talking の時間帯を設けてコミュニケーショ 育成して、現高校教育において時間的また人為的 ン力の向上と、英会話力の向上を目指す、④発展 制約のために達成が困難とされる高度な理数系教 コースの中の選抜された生徒を対象とするが、 育・研究を行うことを目的としている。したがっ キール大学(ドイツ)と連携して短期(夏休み期間 て、生徒の教育研究指導は、大学での講義および を想定)研修を行う。このとき、ドイツの高校生 大学研究室での個人指導が主となる点はこれまで と共同して実験を行うことや、授業参加(勿論、 の SSH 支援プログラムと大きく異なる点である。 英語での)を想定している。 32 15・1 理窓 4 .これまでの経過と現状 4 .1 実施組織とコンソーシアム 本学でのプログラムの実施を担当する組織は、 実施責任者藤嶋昭学長、実施主担当者山本誠副学 藤嶋 昭学長の講演(10 月 12 日) 長、コーディネータ森田昌宏、サブコーディネー タ春山修身以下各分野の責任担当者は、秋山仁 ていない生徒も多かった。定員は 70 名であるが、 (数学) 、太原育夫(情報) 、北原和夫(物理)、渡辺 将来への意欲を主に評価して 119 名を合格とした。 正(化学)、太田尚孝(生物)、川村幸夫(英語)で 4 .3 選抜から現状まで ある。各分野を構成する教員数は現在 29 名である 上記の写真は、初日 10 月 12 日に行った学長の が、発展コースを実施するときに、各県に分散し 講演(タイトル:時代を変えた科学者からのメッ て居住する生徒のニーズに応えるため、研究指導 セージ)である。この日はプログラムのオリエン を担当する教員を神楽坂地区、 飾地区、野田地 テーションと、生徒の英語能力の判定とその後の 区に配置する必要があるので、教員メンバーは今 能力向上の評価のため TOEIC の試験を行った。2 後逐次増員する予定である。また、事務方は主に 回目(10 月 19 日)の授業は将来育成講座として、 神楽坂地区学務課が担当している。 数学・情報、物理、化学・生物分野における総合 今回のプログラムでは東京を中心とする近隣 的な授業を、それぞれ秋山先生、北原先生、黒田 の 3 県(埼玉県、千葉県、神奈川県)に絞って募集 先生が行った。3 回目(11 月 9 日)は、コンピュー を行うこととして、一都三県の理窓会支部とりわ タウイルスや知的所有権などの情報倫理について け理窓教育会にご協力をお願いした。JST がプロ 山本(芳)先生が、また研究者倫理について渡辺先 グラムを実施するに当たって教育委員会とのコン 生が授業を行った。4 回目(11 月 30 日)から、分野 ソーシアムの設立を条件としたために、7 月に埼 融合型授業の初回として秋山先生の数学の授業を 玉県、千葉県、神奈川県、横浜市、川崎市、神奈川 3 コマ、先生の著作のテキストを用いて行った。 科学技術アカデミーとコンソーシアムを設立して 5 .今後の予定と展望 生徒募集にご協力をお願いした。今回、東京都は 今後の予定のあらましを時系列的に列挙する コンソーシアムに加わらなかった。 と、来年 3 月に基礎コース修了式、発展コース選 4 .2 第一期募集と選抜 抜試験。5 月末に第二期基礎コース生選抜試験。 第一期生の選抜試験を 9 月 21 日(学校行事で当 8 月に発展コース生のドイツでの夏期研修。再来 日が都合の悪い受験生のために 23 日を予備試験 年 3 月に第一期発展コース生の修了と第二期発展 日とした)に行った。一都三県の理窓会教育部会 コース生選抜、となる。第一期発展コース修了生 の皆様のお骨折りにより、予想を遥かに上回る の中に国内外の専門学会での発表が出来る生徒 140 名あまりの生徒が応募し、コンソーシアムに や、国際オリンピックに出場できる生徒が現れる 加わっていない県からの応募もあった。選抜試験 ことを願っている。 当日は午前中に小論文を出題し、午後に教員を 6 本プログラムは今年秋が第 1 期生の募集年で四 グループ(各グループ 4 名構成で、1 名が高校教員) カ年の継続のため 3 期生の修了で終了となる。プ で分担して面接(10 分)を行った。応募の生徒はほ ログラム終了後に本学独自の類似のプログラムを とんど 1 年生にも関わらず、これまでに校内であ 行う案や、プログラム参加者を何らかの AO 入試 るいは校外での活動を活発に行っていた生徒や、 に反映させるなどの案が浮上しており、是非将来 自習によってこの年代の生徒に比べて高いレベル 的に実現させたいところではある。なお、GSP 関 に達している生徒の応募があった他、意欲は高い 連の詳細は(講義の内容・スケジュールなど)は、 もののまだ特定の理数系専門分野に興味が特化し http//www.tus.ac.jp/gsc/ を参照して下さい。 33
© Copyright 2024 ExpyDoc