2. 上限・下限

解析学演習 A 第一
担当 河井, 菅
平成 27 年 4 月 17 日 (第 2 回)
2. 上限・下限
上限・下限
♦ 空でない集合 A ⊂ R が上に有界 (resp. 下に有界) であるとは,
ある M ∈ R が存在して, すべての a ∈ A に対して a ≤ M (resp. a ≥ M )
が成り立つことをいう. このような M を A の上界 (resp. 下界) という.
上にも下にも有界な場合は単に有界であるという.
♦ 上に有界 (resp. 下に有界) な集合 A ⊂ R の上界 (resp. 下界) には最小値 (resp. 最大値)
が存在する. これを A の上限 (resp. 下限) といい, sup A (resp. inf A) とかく.
A が上に有界 (resp. 下に有界) でなければ sup A = +∞ (resp. inf A = −∞) とかく.
♦ 実数列 {an }∞
n=1 や実数値関数 f (定義域を D とする) に対しては, sup{an |n ∈ N} や
sup{f (x)|x ∈ D} を sup an や sup f (x) などとかく場合が多い (下限についても同様).
n∈N
x∈D
デデキント (Dedekind) による実数の切断と連続性公理
♦ R の空でない部分集合 A, B が次を満たすとき, 組 (A, B) を実数の切断と呼ぶ.
(i) A ∪ B = R
(ii) すべての a ∈ A, b ∈ B に対して a < b
♦ (A, B) を実数の切断としたとき, A に最大値があるか, B に最小値があるかのいずれ
か一方が成り立つ. これをデデキントの公理という.
問題 2-A (デデキントの公理と上限・下限の存在). 次の問いに答えよ.
(i)* デデキントの公理から, 次の (∗) を導け.
{
上に有界な集合の上界全体には最小値が存在し,
(∗)
下に有界な集合の下界全体には最大値が存在する.
(ii) 逆に (∗) を仮定してデデキントの公理を導け.
問題 2-B. 次の集合 A の上限と下限を求めよ.
}
{
(
)
√
1 n
n∈N
(ii) A = {x ∈ Q |x ≤ 2}
(i) A = (−1) 1 −
n
{
(iii) A =
}
| sin x| x>0
x ∞
問題 2-C. {an }∞
n=1 , {bn }n=1 ⊂ R を有界な数列とする. このとき sup(an + bn ) ≤ sup an + sup bn
n∈N
n∈N
n∈N
および inf (an + bn ) ≥ inf an + inf bn を示せ. また, 等号が成立しない {an }, {bn } の例を挙げよ.
n∈N
n∈N
n∈N
問題 2-D (上限・下限の特徴付け). 次の問いに答えよ.
(i) A ⊂ R を上に有界な集合とし, α = sup A とおく. このとき以下の (a), (b) が成り立つこと
を示せ. また, 下限についてもこれと同様の主張を考え, それを示せ.
(a) すべての a ∈ A に対して a ≤ α.
(b) 任意の ε > 0 に対し, α − ε < a を満たす a ∈ A が存在する.
(ii) 逆に上の (a), (b) を満たす α ∈ R が存在すれば, A は上に有界で α = sup A となることを
示せ. また, これと同様の主張を下限についても考え, それを示せ.
(iii) 条件 (b) を以下の (b)’ に置き換えても (i), (ii) と同様の主張が成り立つことを示せ.
(b)’ A に含まれる数列 {an }∞
n=1 (⊂ A) で α に収束するものが存在する.
問題 2-E (有界単調数列の収束). 上に有界な単調増加数列, および下に有界な単調減少数列は収
束列であることを示せ.
(Hint : {an } ⊂ R を上に有界な単調増加数列としたとき, lim an = sup an を示せ.)
n→∞
∞
問題 2-F 実数列 {an }∞
n=1 , {bn }n=1 を,
)n
(
1
,
an = 1 +
n
(
)n+1
1
bn = 1 +
n
n∈N
(n ∈ N)
によって定義する. このとき以下の問いに答えよ.
√
x1 + x2 + · · · + xk
(i) 不等式
≥ k x1 x2 · · · xk (x1 , x2 , . . . xk > 0, k ∈ N) を利用することに
k
よって, x ̸= 1 なる x > 0 と n ∈ N に対して,
(
)n+1
xn + 1
> xn
n+1
が成り立つことを示せ.
(ii) {an } が上に有界な増加数列, {bn } が下に有界な減少数列であることを示し, さらにこれら
が同じ値に収束することを示せ.
問題 2-G (アルキメデス (Archimedes) の性質と有理数の稠密性). 次の問いに答えよ.
(i) 次が成り立つことを証明せよ (これをアルキメデスの性質という).
任意に与えられた正の実数 x に対して, n > x を満たす自然数 n が存在する.
(Hint : N が上に有界でないことを, 例えば問題 2-D (i) を用いて背理法により証明せよ.)
(ii) (i) を用いて次のことを示せ (これを有理数は実数の中で稠密であるという).
任意の実数 a に対して, 有理数列 {an } で lim an = a を満たすものが存在する.
n→∞
(Hint : (i) より, 任意の n ∈ N に対して, m ≤ |a|n < m + 1 を満たす m ∈ N が存在する.)